VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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攻略法開示




暴君を打ちのめすは、気高き志と不屈の精神

「あのアトランティクス・レプノルカを倒す方法だって!?」

 

アトランティクス・レプノルカ"覇頭衝角(プロモスピア)"と半裸を抱えてのドッグファイトを繰り広げる最中、彼が言った言葉に勇者が驚きの声を上げる。

 

「あぁ。ペッパー、お前が空を飛べるお陰で見えた攻略法だ。一瞬で良いから塔の付近の地面を見てくれ」

「………?」

 

チラッと下を見れば、抉り穿った様な『線』が引かれている。おそらくサンラクが言っていたビーム攻撃によって出来たモノであろう。だが不可思議な事に、ビームの痕跡は塔の所で『30度の角度で』、別方向に(・・・・)線が引かれている。

 

「何か反射(・・)されたみたいな跡が………?」

「そう、其処なんだ。此処ルルイアスの四方に聳える塔………ビームを受けても傷一つ付かないのを見て、最初は破壊不能オブジェクトだと俺は思っていた。だがビームの攻撃跡が別方向に伸びている事で、塔は『破壊不可』ではなく『攻撃を反射する特性』を宿していると、答えに至った訳さ」

 

サンラクの説明によって明かされた、塔が持つ能力。其れによってペッパーは、サンラクがやらんとする作戦に気付いた。

 

「……………おい、まさか。其の反射を『真正面』からぶつけて、アトランティクス・レプノルカの変異体にカウンター(・・・・・)を仕掛ける気か、サンラクは…………!!!?」

That's right(其の通り)!だが、此の方法は空を飛べるペッパーか、水中判定で泳げるアラバのどっちかの力が必要になる。アラバはセーブポイントに居るから、まさにグッドタイミングだったって訳さ」

 

そう、サンラクが閃いたのはアトランティクス・レプノルカの不世出(エクゾーディナリー)たる覇頭衝角のビーム砲撃を、塔にぶつけて反射・大ダメージを与えるカウンター戦法。あれだけの威力と破壊力ならば、体に纏っている雷や炎から察するに耐性が有れども、無事では済まない筈だ。

 

「全く……とんでもない事を考え付くな、サンラク」

「だが、現実味は有るだろ?」

「………………OK、作戦を頼む」

「解った、先ず始めに━━━━━━」

 

そうして伝えられた作戦に、ペッパーの表情は引き吊る。何せ此の作戦はスイッチ中に、ペッパーが生き残る事が大前提である為、自分の死=作戦失敗に直結するという状態だった。

 

「━━━━━ってな感じだが、やれるか」

「っ……………ふぅ………!解った、解ったよ!やってやろうじゃねぇの!討伐したらドロップアイテムは山分けな!」

「良いぜ、さぁ作戦開始だ!」

 

空中を飛ぶペッパーが、サンラクを放して上に昇り。

アトランティクス・レプノルカ"覇頭衝角"は、ペッパーを無視して獲物たるサンラクを追い。

ターゲットのサンラクは、機動系スキルを数種類点火し、冥帝鯱に宣言する。

 

「二属性一角鯱、いや………アトランティクス・レプノルカ"覇頭衝角"!帝王殺しの時間だ!」

 

都市を駆け、建物の合間を飛び抜け、半裸の鳥頭は単身塔を目指して進む。そして冥帝鯱もまた、サンラクを追い掛けて、雷による爆撃を撒き散らす。

 

水晶群蠍(マブダチ)の時もそうだったが、お前等の思考ルーチンってのが、ずっと気になってたんだわ」

 

インベントリアによるエスケープ。例えるなら目の前に居た蠅が突如として消えた時、人は蠅の消えた付近を『見張る』。飛び回られても邪魔な上に、近くに来られたら来られたで不快だからこそ、其れを打ち落としたくなる。

 

だとすれば、だ。

 

アトランティクス・レプノルカ"覇頭衝角"の自身に対するヘイトを、何かしらの方法で『誤認』させられたなら。其の待ち伏せモーションは『解除』されるのでは無いだろうか?

 

其れがサンラクの出した、対待ち伏せ&潜伏奇襲への回答であり。

 

「さぁ、答え合わせと行こうや!」

 

傑剣への憧刃(デュクスラム)を手に、再使用時間(リキャストタイム)を終えたウツロウミカガミを起動。己のヘイト『のみ』を置き去りとして、数秒間残存する虚像(デコイ)を産み出すスキルを用い、付近の建物の影に身を隠す。

 

「一分の間、御機嫌取りを頼むぜペッパー!【転送:格納空間(エンタートラベル)】!!」

 

残像に攻撃を続ける冥帝鯱と、上空にて待機するペッパーを残してサンラクがインベントリアへ隠れる。

 

「すぅ……ふぅ……!おい、アトランティクス・レプノルカ"覇頭衝角"ァ!!!其の角折ってやるから覚悟しな!」

 

大声で宣言したペッパーを、冥帝鯱は見上げるも其の視線はサンラクの残像に戻り、角を叩き付けては攻撃を続けている。

 

「そうかい、そうかい…………じゃあ此れでも食らいやがれ!」

 

サンラクの残像に御熱の様子を見ながら、ペッパーは風暴鬼の飛脚(マルトリアス・レッグス)を起動。三十秒の間任意で、筋力・スタミナ・技量の合計値を参照にした『脚から衝撃波を蹴り放つ』脚撃スキルで、冥帝鯱のシンボルたる頭角を連続で攻撃する。

 

飛ぶ衝撃波を乗せた蹴りを叩き付けられても尚、残像に攻撃する事を止めない冥帝鯱だったが、此処でサンラクの残したウツロウミカガミの効果が終了し、目の前に在った残像が消えて、其のヘイトがペッパーに移り(・・)

 

大口を開きながら一角を振るい、ペッパーに襲い掛かって来た。

 

「よっし、釣れた!!生き残ってやるっ!!!」

 

レディアント・ソルレイアのブーストを吹かし、蒼空を舞う勇者はアトランティクス・レプノルカ"覇頭衝角"と空中鬼ごっこに洒落込む。

 

「━━━━━━━【転送:現実空間(イグジットトラベル)】!」

 

インベントリア内から建物の影に再出現したサンラクは、ルルイアスの空を蒼雷で撒き散らし、ペッパーを撃ち落とさんとする冥帝鯱を見上げながら言った。

 

「よっし!ペッパーマジナイス!運営見てるかァ!お前等の作ったAIとの勝負は、俺とペッパーの勝ちだ!修正はクターニッドをブチのめした後の、大型アップデートでヨロシクゥ!!!」

 

ペッパーにオーダーした一分の猶予で塔を登り、冥帝鯱のビーム砲撃を反射する為に、サンラクはメロスティック・フットを発動してスタミナ減少を半減させ、全力ダッシュで塔の目の前に到着。

 

鞍馬天秘伝(くらまてんひでん)・グラビティゼロを同時起動。効果が重複する三十秒間で地面を、塔の外壁を跳ね、上へ上へと登る。そして塔の中腹を目指す中、サンラクが見たのは『貝殻を鎧の如く全身に纏うアンモナイト』。

 

ふと塔の外壁を跳ね上がっていくサンラクに気付いてか、アンモナイト━━━否『アンモ騎士』は其の体に似つかわしくない『触手を束ねた』であろう足を畝らせ、腰に指した『レイピア』を抜刀していた。

 

「アレがアラバの言ってた『封将(ふうしょう)』ってヤツか………。いや何つーか、アンモ騎士だな……」

 

魔法を無効化する封将が居るらしいが、果たしてあの封将が『其れ』なのかと気になるも、今は冥帝鯱に集中する事にして。空中でフリットフロートによる跳躍、塔の中腹に着地。反転都市ルルイアスを一望する充分な高さと、視界の内で冥帝鯱とチェイスを繰り広げ、飛び回るペッパーの姿が見えた。

 

「高さは丁度良い、ペッパーも良い距離と位置で飛んでるな…………!後は俺が、カウンターを決めるだけ━━━━━っ、ペッパァァァァァァ!!!其処から高度を下げつつこぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!」

「サンラク、位置に付いたか!今行くぞ!!!」

 

息を吸い込み、サンラクの声が落雷の雨の渦中に居るペッパーの耳に届く。レディアント・ソルレイアのブースト全開及び、ルーパス・アサイラムのルート割り出しで、蒼雷の雨を切り抜け飛び。

 

そして冥帝鯱はあの時から見失っていたサンラクが、塔の中腹に立っているのを目視するや、ペッパーの真上を超スピードで越えて突撃して行く。

 

「来たぞ!サンラク、武運を祈る!」

 

ペッパーが離脱する中、冥帝鯱は胸鰭に蒼雷を迸らせる。だが其の落雷攻撃はペッパーがヘイトを買い、塔から引き剥がした事で『距離』が足らない。

 

「至近距離は噛み付きや鰭に頭角による格闘や突撃、中距離なら蒼雷を用いた広範囲爆撃、其れも届かない距離だったら……………『出す技は一択しか無いよな』?」

 

冥帝鯱の上体部で燃え上がる蒼炎が静まり、胸鰭の電気がより強く迸り、頭角の先端にエネルギーが集束していく中で、サンラクは右手首のインベントリア・右手の封雷の撃鉄(レビントリガー)(ハザード)を構える。

 

「気分は『デュエガン』の速撃ちモード・(キワミ)だな。狙った時間を『ピッタリ』撃ち抜くっつう、中々にクソな部分も有ったが良い経験になった………!」

 

狙うのは冥帝鯱のビーム砲撃の発射と同時のジャストタイミング。速くても遅くても、作戦は台無しになる緊張感が襲い掛かるが、彼は其れを怖れない。

 

(封雷の撃鉄でドーピングして、サキガケルミゴコロで数秒後の死のビジョンから逆算。真界観測眼(クォンタムゲイズ)を発動し、発射タイミングでインベントリアエスケープを行う……!)

 

集束と膨張を繰り返し、頭角が煌々と蒼く光輝く中、サンラクは己の仕事を成さんとして。数秒の沈黙が永劫にも匹敵する時の交錯から、一瞬蒼い光がより強く輝いた瞬間。

 

超速度の閃光と深海を穿ち貫く『帝王の槍』が、ルルイアスの塔の中腹に立つサンラク目掛け━━━━━━━━解き放たれた。

 

 

 

 






勝負は一瞬


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