隠密行動
「よっせっ、ほいっと………」
アラバの片手剣捜索の為、人魚のデバフソング無効可能な
建物の影から壁を登り、そろ~りと慎重に地上を見下ろせば、三~五体の小隊を組んでいるかのように、クターニッドの眷属とされた半魚人が。空中を見上げたなら、二か三人程の魚に下半身を喰われた様々な髪色をした女性達が、空中を優雅に游いでいる。
「しっかしなぁ………見付かっちゃいけねぇっうのは『ステルスゲー』に近いなコリャ。おまけに音を立てたり視界に入っちゃ駄目ともなりゃ、まるで『グラダンⅣ』の鬼畜監視地帯をバグ技無しで抜けた感覚を思い出す………」
『ステルスゲー』と呼ばれるゲームジャンルが在る。
所謂『かくれんぼ』に該当する物で、敵の視線を掻い潜り、オブジェクトを使いながら、目的地まで移動するという物である。レトロゲーム等のディスプレイタイプの時代では、ダンジョン探索を含めたポピュラーな表現でもあり、俯瞰の視点でキャラクターを操作・必要なアイテムの回収と迷宮制覇といった形が用いられていた。
『グランドダンジョンズⅣ ~運命の皇子と竜鬼神の野望~』というゲームがあった。フルダイブ型VRゲームが主流となった現代…………其の黎明期に販売されたゲームタイトルであり、嘗てレトロゲーム界隈を盛り上げたとされる『グランドダンジョンシリーズ』の
其の内容として、主人公にして世界の命運を託された皇子は、災禍迫る大陸に在るという一度入る度に、無限に地形を変えるダンジョン内を散策。地下へ或いは上層に通じる階段を通り制覇しながら、時に宝や仲間を増やして、時に竜鬼神の軍団と衝突しながら、軈て真の黒幕との世界の存亡を懸けた戦いに挑む…………といった所。
では何故、此の話を今のタイミングでしたかと言うと、だ。説明した『グランドダンジョンズⅣ ~運命の皇子と竜鬼神の野望~(フルダイブリメイク)』は、
フルダイブ型VRゲームの黎明期にはよくあった事だが、映像技術の進歩に追い付けずシステムに問題を抱えた結果、クソゲーの烙印を押されたタイトルは数知れず。何よりも、そう何よりも━━━━━━━此のグランドダンジョンシリーズは、フルダイブ型VRゲームとの相性が致命的に『ミスマッチ』だったのが原因だった。
此のグランドダンジョンシリーズはステルスゲーのジャンルであり、見付かれば基本的に終わり=GAME OVER判定が下される、珍しいシステムがある。元々俯瞰の視点で見るからこそ躱わせていた敵の視線が、三次元的なサーチライトやスポットライトで視線が届くともなれば、回避移動はより困難を極め。
何よりも其の会社は、人間やモンスターの『視力限界』を徹底的に追求した結果、本来序盤で躱わせる筈な雑魚敵がスナイパー並の視野を発揮するという、まともにクリアさせるつもりがないクソっぷりを発揮した。其の上最終盤のステージともなれば、道中の敵は直感じみたフェイント所か、其所からじゃ絶対発見出来ないだろという、明らかに調整ミスで草食獣と肉食獣の混じったハイブリッドキメラアイズで、プレイヤーを待ち受けるという極悪さ。
そうして悪評や非難を浴び続け、ゲーム評価サイトでも堂々の星1という『名作グランドダンジョンシリーズの唯一の汚点』やら、あるゲーマー曰く『グランドダンジョンシリーズ黒歴史』という不名誉で袋叩きにされた結果、販売会社は開発元から裁判請求を受けて多額の賠償金を支払い、最終的に倒産。
グランドダンジョンズⅣ ~運命の皇子と竜鬼神の野望~(フルダイブリメイク)は、名実共に『幻のクソゲー』としてフルダイブ型VRゲームの歴史に其の名を刻む事となったのである。
「武田氏に去年の誕生日プレゼントで貰ったが、アレは本当にヤバかったな………」
正直あのレベル程では無いとは信じたいが、セーブポイントまでモンスタートレインをして、アラバやヴォーパルバニーズ、そしてクソガキ含んだNPCに被害を拡大させる事だけは防ぎたい所だ。幕末で培い会得した、相手の視角を意識しながらの移動を行い、サンラクは昼間のルルイアスを駆け抜ける。
途中腐れつみれの半魚人に見付かり、追いかけ回されたりしたが、ウツロウミカガミを用いてエスケープを行いつつ、進撃を続けた先でサンラクは此の都市の一角に居る、一体のモンスターに遭遇した。
胴体部の半透明なゲル状の何かと、四肢にコードの如く接続された半透明なコード。よく見れば中心に居る『
右腕にはカジキのものと思しき、鋭いソードを融合させ。左腕には牡蠣か、牡蠣の貝殻を盾のように装着し。右足には触手、否。吸盤の形状からイカの触手を束ねたモノで。左足には甲殻類、恐らく蟹などに見られる細身の脚。そして股の間には『全長1m越えの片手剣』………ではなく、下手な大剣よりも巨大な『大太刀』がぶら下がっていた。
其の姿は正に、其の手のジャンルが好きな人間には堪らない存在。日曜の朝の風物詩の一つ『戦隊シリーズ』で御馴染みの『合体メカ』。そう、此の場合は━━━━━━━!
「海鮮物合体カイセンオー……!というか、ヤバい雰囲気だ……………ん?んんん………??」
自分より少し高く、墓守のウェザエモンよりは小さな其れは、目算からすれば全長2m前後は在るだろう。よく見れば股の間にぶら下がる『剣』は、半魚人が持っているカトラス型の物とも異なる形状をしていて、持ち手の部分が『半分侵食』され、取り込まれているようにも見える。
「もしかしてアラバの言ってた『
おおよその位置を覚えつつ、ペッパーが撮影したルルイアスの上空写真にポイントを付けたサンラクは、再び其の脚でセーブポイントの建物へと戻るのだった……。
「あ、サンラクさん!私途中でゾンビ達に絡まれて群がられて死んじゃったんですけど…………そっちはどうでしたか?」
セーブポイントの在る建物に帰るまでに、数回ゾンビに気付かれて追い回されたが、どうにかモンスタートレインにさせずに帰還したサンラクを、リスポーンした
「収穫有りだな。だが、あのカイセンオー相手には近接だけじゃ、ちょっと心許ない。魔法職含めて少なくとも三か四人は欲しい」
「カイセンオー……?」
「ですわ?」
レーザーカジキとエムルが疑問符を浮かべたので、サンラクがカイセンオーの見た目と、大太刀サイズの武器が取り込まれている事を伝えた所、アラバの目の色が変わった。
「サンラク其れだ!其の大太刀は俺の武器だぞ!」
「アラバ落ち着け、敵にバレる。場所は覚えてるから俺とアラバが前衛確定として、エムルとレーザーカジキを後衛に連れて行きたい。秋津茜・シークルゥ・アイトゥイルは、スチューデの護衛での待機を頼めるか?」
「解りました!」
「はいな!」
「はい!」
「任せて下さい」
「おぉ!」
ペッパー・ペンシルゴンが居ない今、現場を纏めるサンラクはアラバ・レーザーカジキ・エムルのプレイヤー二人・NPC一羽と一匹のパーティーで、カイセンオー撃破に動く。
合体ロボは男の子のロマン
グランドダンジョンシリーズ:ディスプレイが主流だった時代に販売されていたゲームシリーズであり、レトロゲーマー界隈でも知らない者が居なかったとされる『名作』。全15作まで在り、4と7と10作目は別キャラが主人公を担当しながらも、ステルスゲーの王道を踏襲しつつ、新しいゲームの形を確立した。
レトロゲームであり、同時にディスプレイだったからこそ、其の強みを発揮したシリーズであった………。
ペッパー「グランドダンジョンシリーズ……其のゲームはレトロゲーマーの界隈で知らない人間は居ない。入る度に、昇降する度に無限に変化するダンジョン。敵に見付かるという危険に晒されながら、フィールドを探索してキーアイテムを探すというドキドキ。そして何よりもストーリーが素晴らしい………。
第1作から張られ続けていた伏線を第12作の最終盤にて回収し、最終となる15作で主人公達が其れを逆手に取った瞬間なんか、此処までシリーズをやり込み続けてきたファンへの、まさにサプライズというべき製作陣の熱量を感じた。
他にも声優陣の迫真の熱演とキャラの理解度、ファンの皆さんの声援に布教も相俟って、此のシリーズは名作と言われるに至ったと断言して良い(以後2時間以上語ったので省略)」