アラバの大太刀救出戦
チームを対カイセンオーに再編成し、エムルはサンラクの頭に乗っかる何時ものポジション、アラバはレーザーカジキを俵担ぎする形で、海鮮物合体カイセンオーを確認した位置へと向かう、サンラク・エムル・アラバ・レーザーカジキ。
隠密行動によるステルスは当然ながら行うが、やはり厄介なのは空中を泳ぐ人魚達だ。端整な見た目で
其の見た目に反して振り撒かれる歌声のデバフは、プレイヤーやNPCの
ある意味『護衛系ミッション』といった形で、割り切りつつ落ち着きながらも、辿り着きますはカイセンオーの居る場所。改めて見ると、本当にゴチャゴチャ合体をしている。
「ち○こですわー!?」
「バカ、女の子が大声でそんな事言っちゃいけません!」
「俺の愛刀は恥部ではないぞ!」
エムルの発言に、サンラク・アラバがツッコミを入れる。そしてサンラクは此の場に、ペンシルゴンを連れて来なくて良かったと考えた。何せ彼女は下ネタも好んでおり、仮に『見てくれ僕のエクスカリバー(股間)』なんて言った日には、間違い無く噴き出す未来が見える。
と、サンラクが視線を移せば、プルプルと怒りに震えるレーザーカジキが、
「カジキさんに、イカさんに、カニさんを………!そんな『酷い姿』に変えたのを…………!僕は絶対に、許しません!!!」
「えっ、怒るトコ其処?」
展開されたフレイム・ジャベリンの発展魔法たる『フレイム・クラスター』が、カイセンオーに叩き付けられる光景は、嘗てユニークシナリオ【兎の国からの招待】の実戦的訓練で最後に戦った、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
詠唱破棄がされながらも、其の威力は凄まじく。リュカオーンとの戦いを越えて、レベル95に至った青の魔術師の実力に陰り無く、愛する魚や軟体類に対する侮辱たる異形への怒りに偽り無し。
「っ、くぅ………!」
そうして彼の
其れは四肢を崩壊させながら、自身は痙攣し続けて。だが最後には、力無く触手を落とし、ゲル状の身体を地面にぶちまけながら、身体を構成するポリゴンを崩壊、爆発四散を遂げたのである。
「えぇ………」
「プワァァァ………」
サンラクとエムルが、レーザーカジキの攻撃に言葉を溢す。魔法使いの上位職たる魔術師………火・水・風・土の四属性魔法に比重を置き、バフは自身や味方の被弾を抑えるように敏捷関係と、自他の魔法威力を高める物に絞り込んで習得。
此の手の魔法職に有りがちな、多種多様の魔法を取り過ぎによる、器用貧乏になる事を防ぎながら、自身の攻撃能力を高めるビルドが『レーザーカジキ』というプレイヤーなのだと、サンラクは感じた。
「なぁ、エムルよ。さっきのカイセンオーって、種族的な分類は何なんだ?」
「アレは確か『
「キメラ、か」
ファンタジー物でもポピュラーな存在に納得しつつ、カイセンオーが取り込んでいた大太刀はどうなったのか見れば、持ち手部分にゲル状の液体がくっ付いていたものの、刀身含めて無事だった様であり。大太刀を拾い上げ、アラバが刀身に頬擦りしている。
「良かった……!おぉ、良かった……!無事だった!」
「高々武器一本で、随分と大袈裟なリアクションだな……。もしかして其の武器、お前の家の家宝だったりするん?」
どうにも気になったサンラクが声を掛けると、アラバは何かを決心したかのように、刀身を此方に見せながら言った。
「………あぁ、そうか。紹介が遅れたな。サンラク、レーザーカジキ、此れは俺の相棒の大太刀たる『
そして刀身からピョコッと現れたのは、『半透明な見た目をした青い肌を持つ女性』で。彼女は此方を見て
『…………ドウモ』
「う"ぇっ」
「ぴぇっ!?」
「わぁ……」
精霊とはキメラ以上に有名であり、ファンタジー物のゲームではドラゴンや天使に悪魔と並んで、御約束といって良い程に登場する存在だ。
シャンフロにおける精霊………所謂『スピリット』はエムルやレーザーカジキの話によれば『意志を持った竜巻』であり、発生すれば後先考えずにエネルギーを使い果たし、何れ消える存在なのだとか。
だが時に極稀ながら、自身を構成する確固たる自我に、魔力を自力で得られる術を獲得する事によって、存在を維持出来る者も居る。そういった存在は『ユニークシナリオ』の重要NPCだったり、エリアボスとしての地位に落ち着くそうだ。
「ネレイスのように存在が消えかけた精霊を、何らかの方法で消滅を防ぎ、世界に留まる事が出来た精霊。他の者達は
アラバの話を聞いていると、サンラクはネレイスなる精霊が、アラバの優しさに浸け込んだ『クズ精霊』であるように思えてきた。
「彼女もそんな精霊の一人でな……存在が維持出来ずに消えそうになっていたのだ」
「あ~………成程、おおよその流れが読めた。其のネレイスを放っておけないと鉱人族の所に何とか運んで、其の大太刀の中に封印………いや、話の内容からすると『合意』した上で住んで貰ったって感じかな?」
「……君は俺達を観ていたのか、サンラク!?」
「んな訳あるかい。で、話を聞くに其の大太刀には精霊が宿っていて、使い手が魔力を与える……多分ある程度は武器自体が魔力を集めたり、武器に宿った時点で精霊は魔力供給の術を会得出来る………こんな所か」
ボーイミーツガールに、諸々の要素を混ぜたらこんな感じだろう勘だったが、どうやら当たりだったらしく。アラバがパクパクと、口を開けたり閉じたりしていた。
「コホン………とは言え、そう簡単に出来る物ではない。消えゆく精霊と同調し、同意を得なければ契約は結べないからな。彼等彼女等を無理矢理武器に封じ込めるのは、流石に無理らしいぞ」
どうやら精霊を武器に宿すのも前提条件が有るらしいが、サンラクは此の手の方法を行ったタイプを『ゲーム』で体感した事があった。
「あー凄いっぽい。『最終的に大量の精霊を詰め込んで、大量破壊兵器とかにするヤツ』だ」
主に
「「何だって(ですって)!?」」
「落ち着け、ジョークだジョーク………ん?」
そう、レーザーカジキだ。彼の視線が真っ直ぐに、サンラクに注がれている。そうして僅かな沈黙の後、先に口を開いたのはレーザーカジキで。其の言葉は『とあるゲーム』を乗り越えたプレイヤーが手にする、共通の『報酬』であり。
「あ、あの………サンラクさん。……………『三分間』、どうしましたか?」
「!!!!!!」
其の言葉を聞いた瞬間、サンラクの瞳孔が一際大きく見開かれる。まさかこんな所に………神ゲーにて同郷の、其れも同じ
「俺は『飛び蹴り』からのインファイトを叩き込んだ。お前は?」
「僕は『ドロップキック』を……繋ぐ形でアルゼンチンバックブリッカーから、パイルドライバーに……」
御互い言い合いたい事は有るだろう、だが送る言葉はたった一つで良い。
『
明かされた事実。レーザーカジキは『フェアクソのプレイヤー』だったのだ。
神ゲーに同郷が居た