VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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アラバの大太刀救出戦




二人&一羽&一匹 VS 海鮮物合体カイセンオー

チームを対カイセンオーに再編成し、エムルはサンラクの頭に乗っかる何時ものポジション、アラバはレーザーカジキを俵担ぎする形で、海鮮物合体カイセンオーを確認した位置へと向かう、サンラク・エムル・アラバ・レーザーカジキ。

 

隠密行動によるステルスは当然ながら行うが、やはり厄介なのは空中を泳ぐ人魚達だ。端整な見た目で空を飛び(水中を泳ぎ)、デバフを振り撒くアレはパッと見ではNPCかと間違えてしまう。

 

其の見た目に反して振り撒かれる歌声のデバフは、プレイヤーやNPCの機動力()を奪う実に厄介な物で、歌声を止めない限りはエムルやアラバ、レーザーカジキが動けなくなるので、デバフが効かない&空中戦が出来るサンラクが速急に対処に当たる………という事態が、少なくとも三回は発生した。

 

ある意味『護衛系ミッション』といった形で、割り切りつつ落ち着きながらも、辿り着きますはカイセンオーの居る場所。改めて見ると、本当にゴチャゴチャ合体をしている。

 

「ち○こですわー!?」

「バカ、女の子が大声でそんな事言っちゃいけません!」

「俺の愛刀は恥部ではないぞ!」

 

エムルの発言に、サンラク・アラバがツッコミを入れる。そしてサンラクは此の場に、ペンシルゴンを連れて来なくて良かったと考えた。何せ彼女は下ネタも好んでおり、仮に『見てくれ僕のエクスカリバー(股間)』なんて言った日には、間違い無く噴き出す未来が見える。

 

と、サンラクが視線を移せば、プルプルと怒りに震えるレーザーカジキが、致命の錫杖(ヴォーパル.ロッド)を握り締めており。錫杖の切っ先を翳し、火炎を帯し魔力で出来た炎の槍を無数に展開する。

 

「カジキさんに、イカさんに、カニさんを………!そんな『酷い姿』に変えたのを…………!僕は絶対に、許しません!!!」

「えっ、怒るトコ其処?」

 

展開されたフレイム・ジャベリンの発展魔法たる『フレイム・クラスター』が、カイセンオーに叩き付けられる光景は、嘗てユニークシナリオ【兎の国からの招待】の実戦的訓練で最後に戦った、妄執の樹魔(ルーザーズ・ウッズ)の様々な魔法攻撃を彷彿とさせる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

詠唱破棄がされながらも、其の威力は凄まじく。リュカオーンとの戦いを越えて、レベル95に至った青の魔術師の実力に陰り無く、愛する魚や軟体類に対する侮辱たる異形への怒りに偽り無し。

 

「っ、くぅ………!」

 

そうして彼の魔力(MP)が尽き果てる程に叩き込まれ、砂埃が晴れた先には全身に風穴を空けられ、こんがりと焼き焦げ、倒されたカイセンオー………を動かしていたであろう海月(クラゲ)が、ズタボロにされてのたうち回って。

 

其れは四肢を崩壊させながら、自身は痙攣し続けて。だが最後には、力無く触手を落とし、ゲル状の身体を地面にぶちまけながら、身体を構成するポリゴンを崩壊、爆発四散を遂げたのである。

 

「えぇ………」

「プワァァァ………」

 

サンラクとエムルが、レーザーカジキの攻撃に言葉を溢す。魔法使いの上位職たる魔術師………火・水・風・土の四属性魔法に比重を置き、バフは自身や味方の被弾を抑えるように敏捷関係と、自他の魔法威力を高める物に絞り込んで習得。

 

此の手の魔法職に有りがちな、多種多様の魔法を取り過ぎによる、器用貧乏になる事を防ぎながら、自身の攻撃能力を高めるビルドが『レーザーカジキ』というプレイヤーなのだと、サンラクは感じた。

 

「なぁ、エムルよ。さっきのカイセンオーって、種族的な分類は何なんだ?」

「アレは確か『喰纏種(キメラ)』ですわ。自身が食べたり、取り込んだを自分の身体の一部にするんですわ」

「キメラ、か」

 

ファンタジー物でもポピュラーな存在に納得しつつ、カイセンオーが取り込んでいた大太刀はどうなったのか見れば、持ち手部分にゲル状の液体がくっ付いていたものの、刀身含めて無事だった様であり。大太刀を拾い上げ、アラバが刀身に頬擦りしている。

 

「良かった……!おぉ、良かった……!無事だった!」

「高々武器一本で、随分と大袈裟なリアクションだな……。もしかして其の武器、お前の家の家宝だったりするん?」

 

どうにも気になったサンラクが声を掛けると、アラバは何かを決心したかのように、刀身を此方に見せながら言った。

 

「………あぁ、そうか。紹介が遅れたな。サンラク、レーザーカジキ、此れは俺の相棒の大太刀たる『大海峡(だいかいきょう)』……其処に宿る憑依精霊(イグジステンツ)ネレイスだ(・・・・・)

 

そして刀身からピョコッと現れたのは、『半透明な見た目をした青い肌を持つ女性』で。彼女は此方を見て喋った(・・・)

 

『…………ドウモ』

「う"ぇっ」

「ぴぇっ!?」

「わぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

精霊とはキメラ以上に有名であり、ファンタジー物のゲームではドラゴンや天使に悪魔と並んで、御約束といって良い程に登場する存在だ。

 

シャンフロにおける精霊………所謂『スピリット』はエムルやレーザーカジキの話によれば『意志を持った竜巻』であり、発生すれば後先考えずにエネルギーを使い果たし、何れ消える存在なのだとか。

 

だが時に極稀ながら、自身を構成する確固たる自我に、魔力を自力で得られる術を獲得する事によって、存在を維持出来る者も居る。そういった存在は『ユニークシナリオ』の重要NPCだったり、エリアボスとしての地位に落ち着くそうだ。

 

「ネレイスのように存在が消えかけた精霊を、何らかの方法で消滅を防ぎ、世界に留まる事が出来た精霊。他の者達は存在を得た者達(イグジステンツ)、そう呼んでいる。特に『鉱人族(ドワーフ)』は其処に着目してな………魔力を得られる力が無いのならば、此方から器と糧を与えてやれば良いのではないか、と」

 

アラバの話を聞いていると、サンラクはネレイスなる精霊が、アラバの優しさに浸け込んだ『クズ精霊』であるように思えてきた。

 

「彼女もそんな精霊の一人でな……存在が維持出来ずに消えそうになっていたのだ」

「あ~………成程、おおよその流れが読めた。其のネレイスを放っておけないと鉱人族の所に何とか運んで、其の大太刀の中に封印………いや、話の内容からすると『合意』した上で住んで貰ったって感じかな?」

「……君は俺達を観ていたのか、サンラク!?」

「んな訳あるかい。で、話を聞くに其の大太刀には精霊が宿っていて、使い手が魔力を与える……多分ある程度は武器自体が魔力を集めたり、武器に宿った時点で精霊は魔力供給の術を会得出来る………こんな所か」

 

ボーイミーツガールに、諸々の要素を混ぜたらこんな感じだろう勘だったが、どうやら当たりだったらしく。アラバがパクパクと、口を開けたり閉じたりしていた。

 

「コホン………とは言え、そう簡単に出来る物ではない。消えゆく精霊と同調し、同意を得なければ契約は結べないからな。彼等彼女等を無理矢理武器に封じ込めるのは、流石に無理らしいぞ」

 

どうやら精霊を武器に宿すのも前提条件が有るらしいが、サンラクは此の手の方法を行ったタイプを『ゲーム』で体感した事があった。

 

「あー凄いっぽい。『最終的に大量の精霊を詰め込んで、大量破壊兵器とかにするヤツ』だ」

 

主にフェアカス(・・・・・)が原因で、一種のトラウマを植え付けられたが。だが、此処で反応したのはアラバだけ(・・)では無かった。

 

「「何だって(ですって)!?」」

「落ち着け、ジョークだジョーク………ん?」

 

そう、レーザーカジキだ。彼の視線が真っ直ぐに、サンラクに注がれている。そうして僅かな沈黙の後、先に口を開いたのはレーザーカジキで。其の言葉は『とあるゲーム』を乗り越えたプレイヤーが手にする、共通の『報酬』であり。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの………サンラクさん。……………『三分間』、どうしましたか?」

「!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

其の言葉を聞いた瞬間、サンラクの瞳孔が一際大きく見開かれる。まさかこんな所に………神ゲーにて同郷の、其れも同じ地獄(・・)を潜り抜けた者に、こんな形で出逢えるとは!

 

「俺は『飛び蹴り』からのインファイトを叩き込んだ。お前は?」

「僕は『ドロップキック』を……繋ぐ形でアルゼンチンバックブリッカーから、パイルドライバーに……」

 

御互い言い合いたい事は有るだろう、だが送る言葉はたった一つで良い。

 

戦友(とも)よ……!』

 

明かされた事実。レーザーカジキは『フェアクソのプレイヤー』だったのだ。

 

 

 

 






神ゲーに同郷が居た


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