VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ロールプレイの形




再起と前進のアドバイス

シャングリラ・フロンティアに搭載されている物理エンジンや、AIの精度は同世代所か過去のフルダイブ型VRゲームを凌駕する性能を誇る。

 

アイテムやプレイヤーに状況から『察して』、答えを出せる程に優秀であり、現実世界の会話と殆ど同じように出来るのは、凄まじいの一言に尽きる。

 

「スチューデさん、此のカトラスを御存知で?」

「あ、当たり前だ!此れはパパの………『僕様の親父のカトラスだぞ』……!此れ、を何処で……!」

 

震える手でカトラスを握り、スチューデは言う。持ち主が割れた所で、其の要素を思考に取り入れつつ、ペッパーはスチューデの視線と同じ高さに身を屈め、話を展開していく。

 

「此の都市にはクライング・インスマン号で見た、マーマンゾンビ以外にも『四本の塔』が在ります。そして其のカトラスは封将…………此処では『アンモナイトの騎士に似たモンスター』が、其れを持っていました」

「じゃ、じゃあ………パパは…………」

 

ペンシルゴン(天音 永遠)ならば、こういう時に『嘘』を用いる。嘘に嘘を重ねて、其れをオセロの如く引っくり返し、最終的には本当の事の様に変えてしまう。

 

自分にはそんな真似は出来ない…………故にヴァイスアッシュやジークヴルム、イリステラにも通用したロールプレイをぶつける。大事なのは、彼の『今の立ち位置を明確にさせる』事。向かうべき先を見定めるには、其処から始めなくてはいけない。

 

「スチューデさんの御父様は、アンモナイトの騎士モンスターに戦いを挑み、死んだのでしょう。あのモンスターが其のカトラス持っていたというのは…………そういう事です(・・・・・・・)

「ッ…………」

 

梓のロールプレイには、必ず『揺るがない真実』を含めて話をする。其の匙加減を調節し、話の展開を続け、嘘は『隠し味』として僅かに加えるのだ。

 

カトラスを握るスチューデの手が益々震えている、ペッパーは更に話を加速させにいく。

 

「此の反転都市ルルイアスに引き込まれた、スチューデさんの御父様は、部下を逃がす為にアンモナイトの騎士モンスターと戦い、命を落とした………其れは『何故だと思いますか』?」

「そ、れ……は………」

「──────其れはスチューデさん。貴方と、そしてスカーレットホエール号の船員達の為です」

 

船員達はスチューデの事を船長と認めているかは、自分には解らない。其れでも彼等の反応から察するに、スチューデの事をちゃんと船長として見てくれている。

 

「彼は己の命を賭してでも、貴方と船員達を守り抜かんと、命尽きる其の瞬間まで戦った。貴方の御父様は、偉大な人です…………スチューデさん、貴方はそんな偉大な御方の遺した、スカーレットホエール号の『船長』に成りたい。そう言いましたね?」

「そ、そうだ!僕様は………ッ!」

「なら、貴方が『成すべき事』は何ですか?此処で恐怖に怯えて、家具の下や影に縮こまっている事ですか?」

 

「否ッ」と彼はスチューデに、強く真っ直ぐな瞳を向けて言う。

 

「偉大な御父様を『超える』事。彼が成し遂げ(・・・・)られなかった(・・・・・・)『生きてルルイアスから脱出する事』を成し遂げる……………違いますか?」

「!」

 

子は親の背中を見て育ち、そして何時かは其の背中を越えていく物。そうして人は長い歴史を、血筋を、遺志を。後世に繋ぎ、紡ぎ、継承してきたのだから。

 

「前を進むのが怖いなら、俺やサンラク、秋津茜にルストとモルド。オイカッツォにペンシルゴン、レーザーカジキにサイガ-0さんが。開拓者の自分達が導と成り、其の進む道先を照らす光として、後に進む人達の道となります」

 

そうして静かにペッパーは立ち上がり、彼はこう言ってロールプレイを締め括った。

 

「俺達は数日後………此の反転都市に引き込んだ元凶たる、深淵のクターニッドへ戦いを挑みに行きます。其の時までにスチューデさんは、自分の成すべき事を見定めておいて下さい」

 

勇者は道を示した。後は彼の………スチューデ自身の覚悟と勇気が、鍵を握っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペッパー………お前スゲェな」

 

スチューデを奮起させるロールプレイを終えて、今ログインしている他のプレイヤー達と合流したペッパーは、サンラクから先程のロールプレイに対する評価を受けていた。

 

「ペッパーさん、凄くかっこよかったです……!」

「ああいう感じでロールプレイをするんだ……」

「カッコイイですね!」

 

「進むべき道を指し示しただけだけどね……」と言いつつ、ペッパーはチャット部屋にて赤鯨のカトラスや封将討伐の事を記載し、改めて今居るメンバーに話をする。

 

「今俺達は三体の封将を倒したが………残り一体の封将を倒した瞬間に、クターニッドとの戦いに突入する可能性が少なからず在ると思うんだ」

「確か遠距離・近距離・魔法………残りはスキルだな。奴が『ギミックボス』であるとして、進行には封将の全討伐は必須………か」

 

深淵のクターニッドと力を分けた一式装備、深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)を動かす為に必要な八つのエネルギータンク。

 

四体の封将と、ルルイアス内の何処かに在る四つの女性石像の額に埋め込まれた其れを見付け出さなくてはならず、そして肝心要の一式装備本体は何処に在るか解らない状態。其れをクターニッド本人が持っている可能性はなきにしもあらずだが、一先ず置いておく事にしよう。

 

と、此処でルストがこんな提案をしてきた。

 

「ねぇ、サンラク。ペッパー」

「ん?どうした、ルスト」

「今此処には、現状動けるメンバー全員が揃っている」

「はい」

「だから、今。残り一つの女性の石像に埋め込まれてる、一式装備のエネルギータンクを捜索するというのはどう」

「成程………良いかも知れない」

 

オイカッツォ・ペンシルゴン・京極がログイン出来ない今、動けるプレイヤー達で残り一つのエネルギータンクを発見、何時でも最後の封将を討伐可能な状態としてしまう………というのがルストの意見だった。

 

「エネルギータンクの緑はルルイアスの南東、紫は北東の区画に在った。あとオイカッツォは北西で、青を見付けたと言っていたな………」

「という事は、残りの一個は……!」

「ルルイアスの『南西』の何処かに在る、と」

 

モルドとルストの答えに、ペッパーとサンラクは頷いた。

 

「だが、南西エリアに移動して広範囲を探索するとなると、当然マーマンゾンビや人魚に見付かる危険性が高くなるな………」

「あぁ。此処はルルイアスが夜に成るタイミングを見計らって、チーム分けをしよう」

 

話し合いの結果、サンラクをリーダーとする秋津茜・ルスト・モルド・シークルゥのチームA。

 

ペッパーをリーダーとするレーザーカジキ・アイトゥイル・ノワのチームB。

 

アラバ・ネレイス・エムルで、万が一に備えて護衛対象のスチューデを守るチームに分け。休憩と夕食を取る為、一度ログアウトしていったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………緊張したなぁ」

 

シャンフロのアバター(ペッパー)から現実の梓に戻った彼は夕食として鶏の照り焼きに決め、早速調理に取り掛かろうとした時、自分のスマフォのEメールアプリに一通のメールが届いている事に気付く。

 

「メール………?宛先はペンシルゴンからか。何だろ…………えっ?」

 

一体どういう内容なのかをチェックするべく、メールの本文に目を通した彼は絶句、からの布団に大の字で倒れて。暫くの間を置いて再び立ち上がると、夕食の準備を始めた。

 

其のメールは、ルルイアス攻略後に『二つの狼による戦争をほぼ決定付ける』という、梓にとって最も避けたかった凶報(・・・・・・・・・・)として、もたらされたのだから。

 

 

 

 






最後の女性石像探し、そして凶報


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