VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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解放されし者走り、捜索隊は玉座と蝦蛄に挑む

反転都市ルルイアスに存在し、幾多もの淡い青に染まる家屋は、昼間の間は腐れつみれ或いはマーマンゾンビ等と呼ばれる其れ等が徘徊する街並みに塔を、七日間という期間で攻略する為に侵入可能な場所では、セーブ&ログインログアウトが出来る様になっている。

 

其の内の一つ、他と比べれば貧相な街外れの小さな一軒家の扉を丁寧に、壊さない様にゆっくりと開きながら、周囲を確認して(彼女)は外に出た。

 

「陽務君………旅狼(ヴォルフガング)の皆さん…………怒ってる、でしょうか………」

 

夜の帝王との死闘で解き放った、アルマゲドンの反動によるデバフは抜けている。足を引っ張り続けた制約と、自身の恋路を邪魔するゴタゴタは、確りと片付けて来た(・・・・・・)

 

だがしかし、シナリオ開始から無言でのログアウトに加え、ログイン出来ずに半日経過という事態。其れもユニークシナリオEX開始直後からの離脱、そう簡単に許されないと思っている。 

 

其れでも───────此のまま謝らずに彼等の元に戻ろうなら、其れこそ『旅狼の移籍』に大きく関わる事は避けられない。

 

「…………急がないと、謝らなくちゃ………!」

 

ユニーク一式装備・双貌の鎧と神魔の大剣(アンチノミー)がセットで繰り出す究極の切札(アルマゲドン)で仕留められなかった場合に備え、インベントリに収納していた装備………全種装備時に『近接武器による攻撃に大幅な補正を掛ける』能力を持つ『鬼叫甲冑一式』と、大振りのスレッジハンマーこと『致命の大鎚(ヴォーパルスレッジ)改十四』を抱えた開拓者が想い人の元へと走り出す。

 

其の刹那、上空を突き破り水柱を上げながら落ちてくる、巨大なヤドカリと其の背中に乗る蝦蛄が、彼女の視界に映ると共に、一人の男の声がルルイアスに響き渡る。

 

『全員、敵襲ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!』

(今の声、ペッパーさん………!待っていて、陽務(ひづとめ)君………!)

 

敏捷系強化スキルや魔法を使い、最大火力が走り出す。今までルルイアス攻略に加われず、出遅れしてしまった分を、あの巨大ヤドカリと蝦蛄の討伐を御手伝い(サポート)して払拭する為に………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何じゃあのヤドカリ!?背中にシャコ乗せてねーか!?」

「でっかいですわ!?めっちゃ大きいですわ!?」

「巨大なお城ですね!」

「何という巨体……!」

「でかい……」

「なにあれ……あんなモンスター初めて見たよ……」

「大きなヤドカリさんに、大きなシャコさん……!」

「あんなモンスターも居んだね……!」

 

ペッパーの声をトリガーに、同時に動いた捜索隊の面々が建物の合間より見たのは、少し離れた位置に着地した、巨大ヤドカリと巨大蝦蛄のコンビ。

 

遠かれど尚も巨大な『動く山』或いは『機動要塞』たる其れは、凝視した事により『アーコリウム・ハーミット"廃罪玉座(ルインスロン)"』という名前を示し、そしてモンスターの名を見たサンラクと京極(キョウアルティメット)は御互い、同じ感情と意見を抱く。

 

「ねぇ、サンラク。あのモンスターだけどさ……何だったけ?えっと……『えくーぞでぃーなり』ってヤツじゃない?」

「『エクゾーディナリー』な、京ティメット。どうやらモンスターの名前の最後に、四文字が付く奴が其れらしいな」

 

嘗て死火山にてブルックスランバー"最速走者(トップガン)を討伐した京極と、昨夜のルルイアスにてアトランティクス・レプノルカ"覇頭衝角(プロモスピア)"を倒したサンラクは、エクゾーディナリーか否かの見分け方に気付きつつも、どっしりと鎮座した要塞ヤドカリと、逆に此方へ侵攻してくる巨大蝦蛄を見る。

 

頭部口元を四本の突起物が折り畳まれて収納され、伊勢海老の如く髭と足を備え。赤い血の色に似る表面の甲殻達には如何にも毒と言わんばかりの、無数の紫の小さな棘達が陳列。

 

尾節部分が五つに分かれ、各々が蠍の尾の様に分離した其れは、サンラクからすれば『キメラモンハナシャコ』と呼ぶに相応しく、凝視して見た所『キリューシャン・スフュール"恕志貫徹(ファースリィオ)"』と表示された。

 

「おいおいおい、嘘だろ!?あのキメラモンハナシャコもエクゾーディナリーかよ!?」

「って事は両方討伐すれば、不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)も二つ獲得出来るって事だね。良いじゃん良いじゃん、あのヤドカリとシャコを斬り刻んで倒してあげよう………!」

 

事態を重く見たサンラクとは裏腹に、窮速走覇(トップガン)に匹敵し得る可能性を持つスキルが獲得出来るかも知れないと、武器を手に取り臨戦態勢を整えた京極。サンラクは上空に居るペッパーに、声高らかに状況を伝えた。

 

「ペッパーやべーぞ!あのキメラモンハナシャコも要塞ヤドカリと同じ、エクゾーディナリーモンスターだ!」

「マジかよオイ!?」

 

まさかのエクゾーディナリーモンスターが二体同時襲撃というヤバい事態に、ペッパーもNPCも居る事を踏まえて、パーティーに指示を出した。

 

「アイトゥイルとノワ、エムルさんとシークルゥさんは俺と一緒に一度後ろへ!皆はアーコリウム・ハーミットとキリューシャン・スフュールが何をしてくるか解らない以上、一旦様子見と攻撃モーションの確認から!!敵の攻撃から兎に角生き残る事を最優先に、特にシャコの『パンチ攻撃』は地上としても水中としても扱われてる『反転都市ルルイアスの性質』と、相性が鬼レベルでヤバい!注意して!!」

『了解!』

 

いの一番にやらなくてはならないのが、サンラク呼称のキメラモンハナシャコの進路を変更させる事だ。此のままで進軍を許せば、あの蝦蛄の行く先に在るクターニッドの一式装備を動かすエネルギータンクが埋め込まれた、女性の石像を踏み潰す危険すら有る。

 

特定のアクションをしなければ引っこ抜けず、攻撃も弾かれる反射の力で護られてはいるが、絶対に安心してはいけない。先ずはあの蝦蛄とヤドカリを倒して、脅威を排除する事が最優先事項だ。

 

彼等彼女等のパーティーは、今此の刻此の瞬間を以て『一式装備エネルギータンク捜索隊』を改め、新たに『要塞ヤドカリ&巨大蝦蛄討伐隊』へと(あざな)を変更。二体の不世出の存在との戦を開始したのであった………。

 

 

 

 






強敵を打ち倒せ


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