VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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其の存在は




勇者達は強き王と戦う。援軍は(きた)りて、玉座が動く

とあるモンスターの話をしよう。

 

キリューシャン・スフュールと呼ばれる、伊勢海老とモンハナシャコが融合したようなモンスターが居る。

 

深海の水圧と冷気に殺意、そして生存競争が満たす『冥府の深海』で暮らす彼等の肉は程好く引き締まり、甘露かつ此の世の物とは思えぬ美味なる味わいは、かのアルクトゥス・レガレクスやアトランティクス・レプノルカも好んで(・・・)食する。

 

スレーギヴン・キャリアングラーや其の眷属達も狙ってくる他、命辛々アーコリウム・ハーミットの背中の生態系内に逃げ込んでも、其所で暮らしている生物達に狩られる結末が待っていたりと、悲惨にして散々な結果が待ち、成体に成るまでに五体満足で生き残れる個体は極僅か。

 

即ちキリューシャン・スフュールは、深海の食物連鎖のピラミッドの中では『下の上』或いは『中の下』辺りの、言ってしまえば捕食者ではなく『被食者』の側に居る、悲しい生き物でもある。

 

しかし…………散々な目に有っている彼等が無事、成体まで生き残れたのならば。其の突起より繰り出す一撃は深海を貫く轟速の衝撃を放ち、全身に纏う甲殻は強靭を極め抜き、食物連鎖を生き残った危機感知は随一と呼べる程になるのだ。

 

 

 

では。

 

 

 

最強の一個体を育てる為に、己の死を是とする思想を持つアーコリウム・ハーミット"廃罪玉座(ルインスロン)"に『王』となるように選ばれ(・・・)、其の背に乗せられて自らの食糧に困る事(・・・)が無く(・・・)、強者に立ち向かう環境に恵まれていたのなら(・・・・・・・・・)

 

選ばれたキリューシャン・スフュールの一個体は、アーコリウム・ハーミット"廃罪玉座(ルインスロン)"に『感謝』し、其の期待に応えられる様に、自らを『更に鍛えていく』ようになる。与えられたモンスターを食し、其の能力を取り込んで己の身体を大きく、更に巨大に更に頑強にしていくように『脱皮』を繰り返し続け、通常の成体個体を超えて強くなっていく。

 

そうして玉座に相応しき『王』となり、君臨する一個体は深海の王の『威光』に屈する事も、深海の空母が放つ『魅惑の匂い』に惑わされる事も無く、己を育てたアーコリウム・ハーミットの為に戦い、生き永らえさせる為の『最強の戦士』となる。

 

其の揺らぐ事の無い、絶対の王として玉座に座した者を、冥府の深海に住まう命達はこう呼ぶのだ。

 

 

 

"恕志貫徹(ファースリィオ)"……と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソモンハナシャコがーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

「サンラク、クールクール!!他のメンバーも攻め過ぎるなよ!」

「というかアイツ、めっちゃ硬いんだけど!?斬撃効かないし!!」

「弓矢も目玉や口辺りにしか刺さらない……」

「加算出力のマジックエッジも効かないですわ……!!」

「物理も魔法も効かない……どうやって倒すの……」

「酔伊吹も魔人斬も駄目さね……」

『グルルル……!』

「こうなったらシークルゥさん達以外全員で突撃しましょう!きっと何とかなりますよ!」

秋津茜(アキツアカネ)さん!?其れは玉砕ですよ!?」

「流石に無謀が過ぎるで御座る!?」

 

キリューシャン・スフュール"恕志貫徹"のヘイトを買ったサンラクが派手に吹っ飛ばされ、危うく死に掛けの身となり。インベントリアにぶちこんでいた魚を頭から貪り食らいながら、怒りの籠った叫びがルルイアスに木霊す。そして他のメンバーもキメラモンハナシャコを相手に各々の感想を言い合いながら、攻略法を思考し続けていた。

 

『海のボクサー』とも呼ばれる蝦蛄は、頭付近にある突起を用いたパンチを放つ事で狩りを行うのだが、其のパンチが先ずヤバい。あのキメラモンハナシャコの突起には『海中に漂うマナを集束・蓄積』させ、元となった生物と同様に『衝撃波』を放つ事が可能だ。

 

至近距離で食らえば強靭なタンクは砕け散る運命が待ち、更に言えば其のパンチはマナと空気を振動させてブッ放す『空気弾』扱いであり、防御やパリィが実質不可能な『ステルス攻撃』という悪辣さと、突起は四本在るので四連射してくる場合もある。

 

幸い其の攻撃には予備動作として、突起を引っ込めた後に頭部の髭を上下に三回振る所謂『プリショットルーティーン』を挟むらしく、其れを見れば『ギリギリ』なんとか躱わせるが、其れをギリギリでしか躱わせなくしている『理由』こそ、五つに枝分かれした蠍の尻尾に似る尾の部分から放つ、超高速ホーミング+当たれば強制数秒スタンを与える『海月の触手による毒攻撃』。

 

此れを食らった直後に、プリショットルーティーンに入られた場合、一秒未満の時間しか無い中で回避をしなくてはならないという、悍ましい凶悪コンボとなる。だがしかし、そんな事は(・・・・・)キリューシャン・スフュール"恕志貫徹"を語る上で些細な事でしかないのだ。

 

此のモンスターの最大の特徴にして、真なる強さはステルス空気弾を連続で飛ばす事でも無ければ、超高速と強制スタンの触手攻撃でも無い。全身に纏う甲殻………其の『圧倒的な耐性と耐久力』こそが、キリューシャン・スフュールの『成体』まで生き残れた者達が共通して持ち得る、凶悪極まる力。

 

冥府の深海に置ける幾千の食物連鎖と、外敵達の脅威に晒されながら、何度も何度も脱皮を繰り返し続けて強くなった成体の鎧は、アルクトゥス・レガレクスの巻き付きや噛み付き、果てにはブレスにも殆ど傷が着かず。

アトランティクス・レプノルカの体当たりは、逆にレプノルカ自身がダメージを受け、深海の槍たるビームは流石に無傷とはいかずとも、五体満足で耐え凌ぐ程だ。

 

そして不世出のアーコリウム・ハーミットに王として選ばれた『幸運』と、身体を鍛えられる食事と戦闘の『環境』に恵まれた個体であるが故に、不世出へと昇り至れた"恕志貫徹"の甲殻は成体個体の其れを更に凌駕する、凄まじい頑強さを誇る。

 

(全く……兎月(とつき)暁天(ぎょうてん)】の王撃ゲージ消費で武器に付与した『装甲破壊』は愚か、組み合わせた『装甲貫通』すら殆ど効かないって、何を食ったら其処まで至れるんだよ、此の化物蝦蛄の甲殻は………!!)

 

本来硬い甲殻や装甲を破る為に存在する、装甲破壊や装甲貫通効果だが、キリューシャン・スフュールの不世出には全くと言って良いレベルでダメージが通らない。此のタイプには、ペンシルゴンが持つカレドヴルッフのような『肉質貫通効果』or手元に在るグランシャリオで斬るのが一番有効と言えるか。

 

未だに動かずに、キリューシャン・スフュール"恕志貫徹"の戦いを見ている、アーコリウム・ハーミット"廃罪玉座"に不気味さを覚えながらも、ペッパーはミルキーウェイで空中を駆け走り、高速ホーミングの触手攻撃を躱わし抜き、頭へ打撃を叩き込みつつ王撃ゲージを増やし、回復から復帰したサンラクもまた己の武器・兎月(とつき)煌枹(こうばち)】を使い、強靭な甲殻を叩き据えては熱を奪い取っている。

 

(しかし『デカイ』な。此のキメラモンハナシャコ………ん?)

 

殴り付け、ステルス空気弾を回避し、強制スタン触手の躱わすペッパーは、刻蓬封点認視界(エディア・キュリス・ウラタナ)&龍脈を映す視覚(ドラスティエル・ナルクト)をコンボで点火。そうして見えてきたキリューシャン・スフュールの『体内構造』を見た事で、とある『疑問』を抱く。

 

(…………どういう事だ(・・・・・・)?いや、何だコリャ?)

 

構造を電気信号を透視で見た事で露になった、キリューシャン・スフュール"恕志貫徹"の構造に、疑問符を浮かべた其の瞬間だった。

 

ゴッッッッッッ!

 

『ギュリリリア!?!?』

 

飛んできた『何か』によって、キメラモンハナシャコの顔面がルルイアスの大地に、思いっきり叩き付けられる。此迄相応のバフや打撃で殴ってきたのを、僅か一瞬で上回った凄まじい一撃。そして──────

 

「見付けました………!」

 

着地と同時にスレッジハンマーの支柱部分を突き刺し、鬼神を思わす一式装備を纏う、シャングリラ・フロンティアの【最大火力(アタックホルダー)】こと『サイガ-0』が、戦場へと到達。

 

そして…………自ら育てた王を一撃で怯ませたサイガ-0を見たアーコリウム・ハーミット"廃罪玉座"もまた、最大の障害となる鬼人を排除するべく、鎮座より動き出したのである………。

 






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