其の存在は
とあるモンスターの話をしよう。
キリューシャン・スフュールと呼ばれる、伊勢海老とモンハナシャコが融合したようなモンスターが居る。
深海の水圧と冷気に殺意、そして生存競争が満たす『冥府の深海』で暮らす彼等の肉は程好く引き締まり、甘露かつ此の世の物とは思えぬ美味なる味わいは、かのアルクトゥス・レガレクスやアトランティクス・レプノルカも
スレーギヴン・キャリアングラーや其の眷属達も狙ってくる他、命辛々アーコリウム・ハーミットの背中の生態系内に逃げ込んでも、其所で暮らしている生物達に狩られる結末が待っていたりと、悲惨にして散々な結果が待ち、成体に成るまでに五体満足で生き残れる個体は極僅か。
即ちキリューシャン・スフュールは、深海の食物連鎖のピラミッドの中では『下の上』或いは『中の下』辺りの、言ってしまえば捕食者ではなく『被食者』の側に居る、悲しい生き物でもある。
しかし…………散々な目に有っている彼等が無事、成体まで生き残れたのならば。其の突起より繰り出す一撃は深海を貫く轟速の衝撃を放ち、全身に纏う甲殻は強靭を極め抜き、食物連鎖を生き残った危機感知は随一と呼べる程になるのだ。
では。
最強の一個体を育てる為に、己の死を是とする思想を持つアーコリウム・ハーミット"
選ばれたキリューシャン・スフュールの一個体は、アーコリウム・ハーミット"
そうして玉座に相応しき『王』となり、君臨する一個体は深海の王の『威光』に屈する事も、深海の空母が放つ『魅惑の匂い』に惑わされる事も無く、己を育てたアーコリウム・ハーミットの為に戦い、生き永らえさせる為の『最強の戦士』となる。
其の揺らぐ事の無い、絶対の王として玉座に座した者を、冥府の深海に住まう命達はこう呼ぶのだ。
「クソモンハナシャコがーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「サンラク、クールクール!!他のメンバーも攻め過ぎるなよ!」
「というかアイツ、めっちゃ硬いんだけど!?斬撃効かないし!!」
「弓矢も目玉や口辺りにしか刺さらない……」
「加算出力のマジックエッジも効かないですわ……!!」
「物理も魔法も効かない……どうやって倒すの……」
「酔伊吹も魔人斬も駄目さね……」
『グルルル……!』
「こうなったらシークルゥさん達以外全員で突撃しましょう!きっと何とかなりますよ!」
「
「流石に無謀が過ぎるで御座る!?」
キリューシャン・スフュール"恕志貫徹"のヘイトを買ったサンラクが派手に吹っ飛ばされ、危うく死に掛けの身となり。インベントリアにぶちこんでいた魚を頭から貪り食らいながら、怒りの籠った叫びがルルイアスに木霊す。そして他のメンバーもキメラモンハナシャコを相手に各々の感想を言い合いながら、攻略法を思考し続けていた。
『海のボクサー』とも呼ばれる蝦蛄は、頭付近にある突起を用いたパンチを放つ事で狩りを行うのだが、其のパンチが先ずヤバい。あのキメラモンハナシャコの突起には『海中に漂うマナを集束・蓄積』させ、元となった生物と同様に『衝撃波』を放つ事が可能だ。
至近距離で食らえば強靭なタンクは砕け散る運命が待ち、更に言えば其のパンチはマナと空気を振動させてブッ放す『空気弾』扱いであり、防御やパリィが実質不可能な『ステルス攻撃』という悪辣さと、突起は四本在るので四連射してくる場合もある。
幸い其の攻撃には予備動作として、突起を引っ込めた後に頭部の髭を上下に三回振る所謂『プリショットルーティーン』を挟むらしく、其れを見れば『ギリギリ』なんとか躱わせるが、其れをギリギリでしか躱わせなくしている『理由』こそ、五つに枝分かれした蠍の尻尾に似る尾の部分から放つ、超高速ホーミング+当たれば強制数秒スタンを与える『海月の触手による毒攻撃』。
此れを食らった直後に、プリショットルーティーンに入られた場合、一秒未満の時間しか無い中で回避をしなくてはならないという、悍ましい凶悪コンボとなる。だがしかし、
此のモンスターの最大の特徴にして、真なる強さはステルス空気弾を連続で飛ばす事でも無ければ、超高速と強制スタンの触手攻撃でも無い。全身に纏う甲殻………其の『圧倒的な耐性と耐久力』こそが、キリューシャン・スフュールの『成体』まで生き残れた者達が共通して持ち得る、凶悪極まる力。
冥府の深海に置ける幾千の食物連鎖と、外敵達の脅威に晒されながら、何度も何度も脱皮を繰り返し続けて強くなった成体の鎧は、アルクトゥス・レガレクスの巻き付きや噛み付き、果てにはブレスにも殆ど傷が着かず。
アトランティクス・レプノルカの体当たりは、逆にレプノルカ自身がダメージを受け、深海の槍たるビームは流石に無傷とはいかずとも、五体満足で耐え凌ぐ程だ。
そして不世出のアーコリウム・ハーミットに王として選ばれた『幸運』と、身体を鍛えられる食事と戦闘の『環境』に恵まれた個体であるが故に、不世出へと昇り至れた"恕志貫徹"の甲殻は成体個体の其れを更に凌駕する、凄まじい頑強さを誇る。
(全く……
本来硬い甲殻や装甲を破る為に存在する、装甲破壊や装甲貫通効果だが、キリューシャン・スフュールの不世出には全くと言って良いレベルでダメージが通らない。此のタイプには、ペンシルゴンが持つカレドヴルッフのような『肉質貫通効果』or手元に在るグランシャリオで斬るのが一番有効と言えるか。
未だに動かずに、キリューシャン・スフュール"恕志貫徹"の戦いを見ている、アーコリウム・ハーミット"廃罪玉座"に不気味さを覚えながらも、ペッパーはミルキーウェイで空中を駆け走り、高速ホーミングの触手攻撃を躱わし抜き、頭へ打撃を叩き込みつつ王撃ゲージを増やし、回復から復帰したサンラクもまた己の武器・
(しかし『デカイ』な。此のキメラモンハナシャコ………ん?)
殴り付け、ステルス空気弾を回避し、強制スタン触手の躱わすペッパーは、
(…………
構造を電気信号を透視で見た事で露になった、キリューシャン・スフュール"恕志貫徹"の構造に、疑問符を浮かべた其の瞬間だった。
ゴッッッッッッ!
『ギュリリリア!?!?』
飛んできた『何か』によって、キメラモンハナシャコの顔面がルルイアスの大地に、思いっきり叩き付けられる。此迄相応のバフや打撃で殴ってきたのを、僅か一瞬で上回った凄まじい一撃。そして──────
「見付けました………!」
着地と同時にスレッジハンマーの支柱部分を突き刺し、鬼神を思わす一式装備を纏う、シャングリラ・フロンティアの【
そして…………自ら育てた王を一撃で怯ませたサイガ-0を見たアーコリウム・ハーミット"廃罪玉座"もまた、最大の障害となる鬼人を排除するべく、鎮座より動き出したのである………。
現着