VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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決着への電撃戦




砕け不世出、継がれる奥義は誰の手に

ペッパーがキリューシャン・スフュール"恕志貫徹(ファースリィオ)"をウェザエモンの絶技『大時化(おおしけ)』による一投確殺で仕留めた頃。要塞ヤドカリことアーコリウム・ハーミット"廃罪玉座(ルインスロン)"と他メンバーは今も尚戦い続けていた。

 

「アポカリプス………ッ!」

「オラァ!」

「ハァッ!」

 

サイガ-0・サンラク・京極(キョウアルティメット)の三人が、各々の得物と共に前線を張り、アーコリウム・ハーミットの本体の甲殻に衝撃を与え、ダメージを積み重ねていく。だが其れでもヤドカリは止まらない………山と呼ぶべき巨体は今尚沈まず。

 

暴れ狂う玉座は、ルルイアスの家屋を粉砕しながら突撃し、其所から派生する貝殻に籠っての転がりに繋げるモーションは、単純明快な体格差によるアドバンテージと圧倒的な馬力の違いを開拓者達に見せ付ける。

 

秋津茜(アキツアカネ)!レーザーカジキの詠唱は何処まで進んでる!?」

「2/3辺りみたいです!」

「解った!レイ氏も京ティメットも、もう少し辛抱だ!ルスト・モルドはヤドカリ野郎に近付き過ぎるなよ、巻き込まれたら死ぬぞ!!!」

「大声で言わずとも解ってる」

「そっちも気を付けて!」

 

物理弓では効果が薄く、装備者のMPを参照し威力を決定する魔法弓を構えるルストに、バフを掛けるモルドが建物の上から応答。別の場所に移動しようとする要塞ヤドカリに矢を放ち、進路上に射刺して妨害する。

 

「回転攻撃にはマジックエッジどころかマジックチェーンも歯が立たないですわ……」

「拙者のタケミカヅチも同じく、止まってる数秒で引っくり返さねば、足止めにもならぬで御座る」

 

離れた秋津茜とレーザーカジキを見ながら、エムルとシークルゥは言葉を溢す。避けタンクのサンラクとタンクを担うサイガ-0、前衛の京極が敵の死地圏内(キリングレンジ)で立ち回り、ルスト&モルドのコンビが進路を塞いでいるのは作戦完遂の為であり、此の作戦の中核を担うのはレーザーカジキと秋津茜による『合体魔法攻撃』。

 

レーザーカジキが持つ切札にして、現在の彼が繰り出せる唯一の『門魔法』たる【増乗幅響門(パワーゲート)】に秋津茜が持つ切札の龍威吹(リュウイブキ)を通し、威力を超ブーストさせた上で叩き付けて、アーコリウム・ハーミットを守る巨大な貝殻を焼き溶かし、其の熱力で本体を外へ引き摺り出す事だからだ。

 

「にしても此のヤドカリ、随分と動きやがる……!」

「本体の耐久も………そうですが、やはり……貝殻が一番厄介………ですね」

「腹を外に出せれば、刀でもダメージは通りそうだけどね。一番はやっぱり『動きを止めて確実に当てる事』が正解か………結構難しくない?」

 

秋津茜の放つ極太のレーザー砲撃が、増乗幅響門でコロニーレーザーになった所で、結局当たらなければ意味が無いのは事実。即ち其れを当てるには十数秒の、決定的にして致命的な()を作らなくてはいけないのである。其れも機敏に動ける、此の要塞ヤドカリを相手に……だ。

 

(まぁ、其れに関しては思い付く節が有るんだが………問題はペッパーの到着と、レーザーカジキの詠唱に秋津茜の攻撃、其れが一つでもズレたら面倒な事に成りかねねぇ……!今日ばっかりは大人しく寝てろよ、乱数の女神(クソッタレ)!!!)

 

サンラクの考え、そしてペッパーの到着、乱数に対するお祈りゲーが始まらんとしていた中………動いたのはレーザーカジキだった。

 

「万里を越え、円環の門は開かれる……!潜り抜けし水よ激流へ…!潜り抜けし炎よ爆轟へ…!潜り抜けし土よ鳴動へ…!潜り抜けし風よ暴嵐へ…!雄々しき波動となりて困難を砕く導と成らん━━━━━!【増乗幅響門】!!!」

 

致命の錫杖(ヴォーパルロッド)を掲げ、エンチャント:ヴォーパルのブーストを組み合わせた、完全詠唱による巨大魔法陣が、アーコリウム・ハーミットを直線上とする形で展開される。

 

「っ、くぅ………!皆さん、御待たせしました……!」

「サンラクさーん!門が、門が出来ましたー!!」

「よっしゃ、ナイス!全員圏外退避ィィィィィィ!!!」

 

サンラクの合図を元に、秋津茜とレーザーカジキが居る建物と其の付近を巻き込む射線上から、猛スピードで避難を開始し。後は印を結んでいる秋津茜が龍威吹を放ち、門を通しての威力増大状態で叩き付けるだけだ…………そう思われていた。

 

だが、此処でアーコリウム・ハーミットは秋津茜とレーザーカジキが居る建物目掛けて、真正面より突撃を開始。其の距離がどんどん狭まってきたのである。

 

「な!?アイツ、秋津茜達を押し潰すつもりか!?」

「ッ、そんな………!」

「茜ちゃん!龍威吹を撃って!」

「ま、間に合いません!?」

 

印を一つ結ぶのに数秒、息を吸い込み吐くのに数秒、少なくとも『十秒』はいる。そして要塞ヤドカリの速度から残り『五秒』で到達して、自分とレーザーカジキを轢き殺すだろう。

 

作戦が水疱に帰す…………誰しもがそう思い掛けた、まさに其の時。

 

 

 

 

 

「おい!アーコリウム・ハーミット"廃罪玉座"!!目玉を見開いて、コイツを確り見やがれ!!!」

 

 

 

 

 

ヒーローは空中を駆けて現れた。

 

両肩には相棒のアイトゥイルとリュカオーンの小さな分け身たるノワを乗せ、ペッパーが両手に持ちて玉座に翳したのは、要塞ヤドカリが育て上げたキリューシャン・スフュール"恕志貫徹"の、甲殻や髭に突起であり。飢餓に見舞われながらも、自身が手塩に掛けた王が素材(無惨な姿)となって現れた事で、其の巨体が急停止する。

 

「ペッパァァァァァァァァ!!!!マジナイスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!秋津茜ェェェェェェェェェェェェェ!!!!」

「いけええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!秋津茜!!!!!」

『いけーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』

 

決定的チャンスの到来をサンラクが、走り駆けるペッパーが、仲間達が叫びが秋津茜の背中を押して。同時に彼女の目から、迷いは消える。

 

「はいっ!刃隠心得(はがくしこころえ)奥義(おうぎ)━━━━━【竜威吹(リュウイブキ)】ッッッッッ!!!!!ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

印を結び、唇を尖らせ、息を思いっきり吸い込み。正四方形の紋章を通じて、模倣されし天覇の龍王がブレスは放たれ、増乗幅響門を通じて夜襲のリュカオーンとの戦いの最中に、雲を払い除けて月光を戦場へ取り戻した、コロニーレーザー砲撃が放たれる。

 

其の一撃は王を殺され、茫然自失となったアーコリウム・ハーミットを。射線上となったルルイアスの街並みを襲い、其の場に在った物を文字通り跡形も無く(・・・・・)焼き払ってしまった。そして…………静寂をもたらしたルルイアスに、秋津茜・ルスト・モルド・レーザーカジキのレベルアップを告げるSEが鳴り響き。

 

キリューシャン・スフュール"恕志貫徹"を投げ殺したペッパーと、アーコリウム・ハーミット"廃罪玉座"へのフィニッシャーになった秋津茜の目の前には、各々のリザルト画面が表示されたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『モンスター不世出(エクゾーディナリー)……解明(クリア)!』

『討伐対象:キリューシャン・スフュール"恕志貫徹(ファースリィオ)"』

『エクゾーディナリーモンスターが撃破されました』

『称号【剛健(ごうけん)()(さい)】を獲得しました』

『称号【意思より強く、意志より堅く】を獲得しました』

不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)守示貫鐵(ファースリィオ)】を習得しました』

 

 

 

 

 

 

 

 

『モンスター不世出(エクゾーディナリー)……解明(クリア)!』

『討伐対象:アーコリウム・ハーミット"廃罪玉座(ルインスロン)"』

『エクゾーディナリーモンスターが撃破されました』

『称号【王権簒奪(オウケンサンダツ)】を獲得しました』

『称号【玉座に座する新たな王】を獲得しました』

不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)背在極座(ルインスロン)】を習得しました』

 

 

 

 

 

 






此処に決着



不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)守示貫鐵(ファースリィオ)

習得条件:キリューシャン・スフュール"恕志貫徹(ファースリィオ)"を討伐する

効果:使用から3分間、スキル使用者は防具を除いた耐久値が3倍となり、肉質及び装甲貫通と破壊属性による効果を受けなくなる。再使用時間(リキャストタイム)は7日半。

強者の暴意に曝されども、決して屈する事も倒れる事も無い、不屈の精神。其れこそが不世出の奥義





不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)背在極座(ルインスロン)

取得条件:アーコリウム・ハーミット"廃罪玉座(ルインスロン)"を討伐する

効果:発動時点よりスキル使用者の全ステータス及び与えるダメージを半減する代わりに、使用者の背中に紋章とカウンターが表示される。其の紋章が完成し、カウンターが100まで蓄積された場合、任意でカウントダウンを開始し、1分間使用者の全ステータスを10倍にする。ただし使用から1分が経過した瞬間に、スキル使用者は即死する。再使用時間(リキャストタイム)は12日。

己の死を是とし、変わらぬ運命をも受け入れ、尚も自らの命の輝きを見せる姿勢。其れこそが不世出の奥義。



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