VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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事を終えて




修羅場は不世出存在討伐の後に

改めて思うが、龍威吹(リュウイブキ)増乗幅響門(パワーゲート)って『鬼に金棒』レベルのクソタッグだわ。

 

焼き払われたルルイアスの街並みと、アーコリウム・ハーミット"廃罪玉座(ルインスロン)"のドロップアイテム(超稀少な素材)の一つも残らなかったのを見て、サンラクが思った事である。超々高火力と焼却能力は、苦労して討伐したモンスターの素材をも纏めて焼き払い、最終的に戦利品一つも無しというのは追い打ちとして、凄まじいダメージが入るのだ。主に精神方面(メンタル)的な意味で。

 

「わぁ!レベルアップと、新しいスキルを覚えましたよ!」

「俺もだわ。レベルカンストだからボーナスポイントは入ってないけど………」

「おう、良かったじゃねぇか」

 

不世出の存在(エクゾーディナリーモンスター)の討伐者には、レベルアップ時にステータスポイントのボーナスと、不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)に其のモンスターの素材がドロップする。要塞ヤドカリの素材は焼き払われたのだが、こんな事も有ると寛容を以て許す事も大事だ。

 

「ペッパーと茜ちゃん。二人はどんなスキルを手にしたの?」

「俺は『守示貫鐵(ファースリィオ)』。内容としては使用から三分間は、防具を差し引いた肉体の耐久力を三倍と、肉質及び装甲貫通と破壊属性による効果を受けなくなるらしい。まぁどんなに耐久が上がっても、人間死ぬ時は死ぬからな」

 

肉体其の物の耐久を三倍に、破壊属性による部位破壊を受けなくなるのは単純明快ながら、タンク職の面々が喜ぶスキルだ。サイガ-0の視線がペッパーに向けられている事からも、此れはペッパーではなくサイガ-0が取った方が良かったと、サンラク達は考えた。

 

問題は秋津茜の取った(・・・・・・・)不世出の奥義の方だった。

 

「えっと………私は『ルインスロン』ってスキルでして、一定時間ステータスとダメージが半減しちゃうんですけど、条件を満たせば一分で死ぬ代わりに『全ステータスが十倍』になるみたいです!」

 

彼女が口走った圧倒的な強化倍率に、此の場に居る全てのプレイヤーとNPCの視線が向けられる。ある者は『大当たり枠そっちかよ!?』の驚愕、ある者は『其のスキル欲しいなぁ』の羨望、またある者は『其れが有ればもっと記録を伸ばせるかな………』と期待、更にある者達は『不世出の存在を探してみよう』と決意したり、ある種の混沌が其所には在って。

 

「あ、ペッパーさん。えと………其所に居る『バディドッグ』は?」

 

サイガ-0が指差す先………ペッパーの足元に寄り添いながら、少し大きくなった(・・・・・・・・)黒い毛並みを擦り当てるノワの姿が在って。

 

「あ~…………コホン。サイガ-0さん、此の子の『正体』を秘匿して頂けるならば、御話しても宜しいですが……どうしますか?」

 

一際真剣な眼差しを向けてくるペッパーに、サイガ-0は暫く思考と沈黙の後に「解りました」と頷き。彼は息を吸って吐いた後、事実を以て(彼女)に伝えた。

 

「此の子の名前は『ノワ』。自分が今日ログインしたセーブポイントのベッドの近くに居た、小さなモンスター。正体は『夜襲のリュカオーンの小さな分け身』、自分の目の前に『テイムしますか?』と表示が出たのでテイムしたら、今受けてるリュカオーンのユニークシナリオとは違う『別のユニークシナリオ』が発生したんです」

「へぇ~………?其れは其れは、随分と興味深い話だねぇ???」

 

非常に聞き馴れた声に、バッと振り向いたペッパー。其の視線の先に居たのは、両目のハイライトが完全に消失して、怒髪衝天状態のペンシルゴン&ギリギリギリギリと歯軋りしながら目を血走りさせて、呪詛の如く『ユニーク……!ユニーク………!』と呟きまくるオイカッツォの姿。

 

ペッパーは一瞬の内に理解した、此れはもう逃げられないと。

 

「さぁて、あーくん…………。今からちょっと、アタシと『オハナシ』しようか?」

「アッハイ」

 

ペッパーは直ぐに正座態勢に移行し、ペンシルゴンのオハナシが始まったのだった。

 

尚、其のオハナシは一時間に渡って続いたものの、ペッパー自身が包み隠さずに此処までの経緯を含めて、全て正直に話した事。テイムしなかった場合にNPC含めて甚大な被害を与える可能性が在った事を踏まえ、彼女に説明をしたのでオハナシ『其の物は』三十分で終わった。

 

だが残りの三十分は、ペッパーがノワにベタベタされた事に対する、色々な御説教がペンシルゴンからペッパーに行われる事となり、此の場に居たプレイヤー及びノワ以外のNPC全員は『ペッパーはペンシルゴンの尻に敷かれている』と確信するに、そう時間は掛からなかった。

 

「はぁ~~~~………………あーくんの言い分も、ノワちゃんの事情も、ちゃんと私に包み隠さず話してくれたから許すけどサ」

 

大きな……其れも大きな溜息を付いて。ペンシルゴンは正座をしているペッパーの太腿に乗っている、リュカオーンの小さな分け身へと歩み寄り、身を屈めながら宣言する。

 

「ノワちゃん。あーくんや私達を邪魔しない限りは、君は私達『旅狼(ヴォルフガング)の一員』として認めてあげる。

 

 

 

 

だけどね────────

 

 

 

 

君があーくんに『変な事をしたなら』、私は君を『許さない』から。其の時は私が責任を以て、キッチリ『殺す』よ。………あーくんは『私のモノ』だから…………例え貴女が愛呪(あいじゅ)を以て彼を縛っても、彼は絶対に『アゲナイ』から。─────覚悟しておいてね?」

 

ニッコリと、しかしながらハイライトが無い瞳を以て、一歩も退くつもりも無い事を、リュカオーンの小さな分け身へと宣言するペンシルゴン。対するノワは彼女の意思や姿勢が本物である事を悟ってか、ギロリと白眼で見定めながら、狼特有の喉の鳴らしと共にペンシルゴンを威嚇した。

 

「なぁ、サンラク。ペンシルゴンって結構『独占欲の強い女』だったんだな?」

「だな、カッツォ。というか俺等の前で『そういう』事言えるの、改めて感服するわ」

「…………何と言いますか、とても修羅場……ですね」

「修羅場ですわ……」

「修羅場なのさ……」

「修羅場で御座るな……」

「私も好きな人が出来たら、思いきってやってみます!」

「茜ちゃん、茜ちゃん。其れは真似しなくて良いと思うよ?」

「おっかないなぁ………えっ、何で此方見てるの?ルスト?」

「…………別に」

「あわわわ………あ!」

 

最早カオスという他無い状況、其所で話題の切り替えを作り出したのはレーザーカジキだった。

 

「あの!実は僕達、アイテムを探してまして!捜索、再開しませんか!!!」

 

二体の不世出存在との戦いで吹き飛んでいたが、自分達は本来クターニッドの一式装備にして、深淵の盟主と力を分けたなる存在の深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)、其れを動かす為のエネルギータンクを探していたのだ。

 

「あ、確かに……サイガ-0さん。今から俺達が探している物の情報を『秘匿』して頂けませんかね?他のクランやプレイヤーにバレたら、色々と不味いので」

「は、はい。解りました」

 

コクコクと頷いたサイガ-0、そしてペッパー・ペンシルゴン・サンラク・オイカッツォ・京極・秋津茜・レーザーカジキ・ルスト・モルド・サイガ-0の十人プレイヤーと、シークルゥ・アイトゥイル・エムル・ノワの三羽と一匹の一つのパーティーは、石像に嵌まった残り一つのエネルギータンクを探しに旅立つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、クターニッドの持つ反転の力によって、ルルイアスの街並みが修復される光景を見たサイガ-0が驚愕したのは、言うまでも無い…………。

 

 

 

 

 






さぁ、宝石の謎解きへ


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