VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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謎解きの時間




藍色の輝き、悪辣を越えるは廃人の力

ペンシルゴンのオハナシ、そしてリュカオーンの小さな分け身たるノワへの宣言という、修羅場な時間を越えた後に一同は当初の目的であるクターニッドの一式装備を動かすのに必要な、宝石型のエネルギータンク探しの為に南西エリアに戻ってきた。

 

「確か此処等辺だった筈……あ、有った!有ったぞ、皆!」

 

ペッパーが発見し、皆を呼び寄せる。彼の指差す先に額にブリオレットカットが施された、掌サイズのアクアマリンが埋め込まれた女性の石像が鎮座していた。

 

「良かった、無事だったみたいだ……」

不世出存在(エクゾーディナリーモンスター)と戦ったからなぁ……。損傷無いようで何よりだわ」

 

エネルギータンク探索隊として捜索していた面々は、戦いで破壊されていたのではないかと内心ヒヤヒヤだったので、ホッと一安心し。

 

「あ、あの……サンラク、さん……コレが?」

「……あぁ、レイ氏。コレが俺達が探している物なんですよ」

「成程………」

 

サンラクの説明でコクリと頷いたサイガ-0を見ながら、ペッパー達は改めて石像に向き合う。

 

「女性の石像に埋め込まれている此の宝石は、各々にギミックが施されている。其れは特定のアクションを行わなくては、外す事は出来ないようになっていた」

「確か緑は『目を閉じて視界を遮る事』で、紫は『回復ポーションを振り掛ける事』………」

「青は『ネカマ』が取らなきゃ外れない、だったっけ?」

「そう。で、最後のアクアマリンは『何のアクション』をすれば取れるか、一切解らない状態で有る訳だが………俺が先に調べてみる」

 

兎にも角にも触らなくては話しにならないと、ペッパーが一番槍として石像とアクアマリンの隙間に指を掛けた、次の瞬間。突如として彼は、己の身体から『力が抜けた様な』気持ち悪い感覚を味わった。

 

「うぉ!?」

「あーくん!?」

 

バッと指を放せば、其の感覚は消えて。何が起きたのかとステータスを開いても、能力や状態に変化は無い。

 

「ペッパーどうした?」

「アクアマリン掴んで引っ張ろうとしたら、気持ち悪い感覚と力を奪われた変な感じを味わった」

「どゆこと其れ?」

「解らん……」

 

そう言ったペッパーに、一同は顔を見合わせて。次は誰が行くかで、じゃんけん大会が勃発しそうになるも、ルストが前へと出て其れを掴む。

 

「あ、ルスト!?」

「ッ…………」

 

ペッパーが言っていた、力を奪われる感覚に襲われながら、彼女はステータス画面を開き。そして藍色の宝石がもたらす『力』を、皆に伝えた。

 

「……『ステータス』」

「えっ?」

「今ステータスを見た。私の筋力と敏捷が入れ(・・)替わってる(・・・・・)

『…………は?』

 

ルストが己の身を以て報せた、藍色の力………其れは『ステータスの反転』。プレイヤーの持つ能力数値を、ランダムに入れ替える其の力は、回復を反転させる『紫』に比肩するレベルの『悪辣さ』を誇る。

 

タンク職から敵の攻撃を受け止める筋力と、耐え凌ぐだけの耐久を奪う事。避けタンクや軽戦士から敏捷とスタミナという、最大の武器たる足を奪う事。魔法職からMPという、能力を行使する為の力を奪う事。

 

所謂『特化型プレイヤー殺し』の能力を宿した其れは、ペッパー達に衝撃を与えるのに、充分過ぎるものであった。

 

「モルド、バフ」

「あ、うん!」

「ぼ、僕も御手伝いします!」

 

モルド・レーザーカジキのバフを乗せ、ルストがステータスを開きながら引くも、暫くして入れ替わったステータスが『更に入れ替わる』という事態が発生し、ルストは手を放してしまった。

 

「一定時間で取らないと、ステータスを更に入れ替えられる」

「えぇ………」

 

即ち筋力と別ステータスを入れ替えられる中で、速攻で抜き取らなくてはいけない上に、入れ替えられても影響が少ないプレイヤーでなくては、何時まで経っても取る事は不可能だという事実を、開拓者達は突き付けられたのである。

 

「あ、の………サンラク、さん。皆さん………私に任せて、下さい………」

「レイ氏?」

 

そんな中、話を切り出したのはシャンフロ内最強の攻撃力を誇る、最大火力(アタックホルダー)の保持者・サイガ-0。よく見れば複数のバフスキルを同時点火したようなエフェクトが、業火の如く其の身を包み込み。

 

其の指がアクアマリンと石像の間の窪みに掛かり、力強く引っ張り始め、同時に筋力と幸運の数値が入れ替わる。だが─────最大火力という一つの称号を得ても尚、色褪せる事の無い幾多のレベルダウンビルドに加えて、アクセサリーや神秘(アルナカム):世界(ワールド)によって支えられたステータスは、一切の陰り無し。

 

(此処で陽務君の役に立って見せる!彼の隣に立てるようになる為にも!)

 

そうして再び襲い掛かるステータス入れ替えに屈する事も無く、サイガ-0は別のバフスキルで其れすらも捩じ伏せ、ステータス反転を塗り潰しゴリ押した果てに、女性の石像に嵌まっていたアクアマリンは取り外されたのである。

 

「えぇ…………」

「うわぁ…………」

「脳筋此処に極まれり………」

「ヒュー♪」

 

シャンフロのトップクラン、其れも切札ともなれば此処まで極まるのかと一部のプレイヤーは、サイガ-0の実力を目の当たりにする事となり。

 

「あ、の……サンラク、さん。ど、どうぞ……」

「アッ、ハイ。ありがとうございます、レイ氏」

 

スッ……と、テキストを確認する事も無くアクアマリンを手渡してきたサイガ-0より、サンラクが受け取りつつアイテムテキストをチェックした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藍の宝閠(アクラシア・ジュエル)

 

深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)の胴装備、天輪界道(テンリンカイドウ)導人(ドウジン)にセットされ、一式装備を稼働させる為に必要となる、神代の時代に開発された宝石型のエネルギータンク。

 

クターニッドが振るう『────』。其の藍光は生きとし生きる、全ての命の『───』を反転させる。其の光からは、誰もが逃れる事は出来ない。

 

此のエネルギータンクは『八つ』在る………其等を全て揃え、正しき場所に納めて輪廻させし時に、深淵の盟主と力を分けた鎧は目覚めるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ステータス反転かぁ……いや紫に青に藍色に、寒色系の反転能力が何れもエグいんだが?んで、だ………クターニッドが操る反転は、魔法・スキル・近距離・遠距離・視界・性別・回復・ステータスの合計八種。てか、此の中じゃ藍色が一番ヤベェ。他のは基本『防御の反転』なのに、コイツだけ『攻めの反転』だ。

 

通常のスタイルを其のままに別のスタイル(・・・・・・)に切り替えれるのは、単純ながら一番恐ろしい物でもある。というかコレ、ステータス極振り連中にとっちゃ『嬉しいんじゃねぇか』?)

 

二種類のステータスに比重を置いて振り分けたプレイヤーからすれば、生命線となるステータスを其のままとして残りを入れ替える事で、別の役割を遂行出来る様になる。

 

何時だかペッパーが話していた、『マッシブダイナマイト』という筋力極振りプレイヤーが、もし仮に筋力と敏捷を入れ替えれば、其の瞬間に超高機動肉弾戦車が完成して突っ込んでくるという、ホラゲーじみた光景が出来上がるだろう。と此処でペンシルゴンが、皆に提案してきたのである。

 

「ねぇ。今此の場に、プレイヤーが全員居るよね」

「あぁ」

「じゃあさ………今から『残りの封将』倒しに行かない?」

「マジで?」

「クターニッドとの戦いに移行するかも知れない、でも逆に移行しないかも知れない。賭けてみる価値は有るんじゃないかな?」

 

ペンシルゴンの言い分も一利有る。現状の魔法攻撃を可能として居るプレイヤー達に、貯蓄しているマナポーションを渡して回復からの、魔法の最大火力で押し切ってしまうのも悪くはない。問題はクターニッドとの戦闘が、封将討伐完了の瞬間から始まるかは誰にも解らない。

 

ならば此処で封将を倒し、残りの日数でルルイアスを泳ぐ回復アイテムたる魚を掴み取り、最終日でクターニッドを攻略…………という道筋(ルート)を取るのも有りだろう。

 

「………皆、連戦になるが大丈夫か?無理だと思うなら、戦闘参加を強要しない」

「俺は行けるぞ、ペッパー」

「残りの封将、スキル無効何でしょ?物理で殴れる魔法職の出番だね」

「私も行けるよ」

「僕は不世出達との戦いで疲れたけど、まだまだ行けるよ」

「私は、行けます……!」

「私はMP回復すれば、竜威吹を放てます!」

「マナポーションで回復しますので、連れて行って下さい!」

「行ける」

「僕も」

「アタシも御手伝いしますわー!」

「ワイもなのさ」

「拙者も行くで御座る」

『ワウ!』

 

NPC含めて、満場一致の答えは出され。パーティーはルルイアスの四方の塔に座す、最後の将にして『スキル無効能力』を宿した封将─────『スレイビール・ダーゴーン&スレイビール・ハイドーラ』こと夫婦魚人が待つ塔へ向かうのだった…………。

 

 

 

 

 

 






夫婦魚人倒しへ


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