夫婦魚人との戦い
Q、廃人とは如何なる者か?
A、其れは人が人としての最低限の時間すらをも、其の一項目に捧げている人間を指す。
Q、廃人とは如何なる者か?
A、ゲームで有るならば、システムに許された上限へと至る求道者、または至った者を指す言葉。
Q、廃人とは如何なる者か?
A、「◯◯さんからの突破報告待機」等々、取り敢えず『此の人がいれば安心』という期待を背負う者を示す証。
Q、総じて廃人が持つ『モノ』とは如何なる事柄を指すか?
A、其の物事に置ける絶対的な揺るがぬ『力』を持つ者。或いは其れを証明した者を指す。
そして今宵、
反転都市ルルイアスの四方に存在する塔、其の一角に座す最後の封将にして、夫が『黒』の妻が『白』の身体をしながら、全身の全てがヌメヌメした粘液で『物理攻撃』の一切が如何なる原理か
「ヘイヘイヘイヘーイ!どうした、どうしたァ!」
「スキルに物理攻撃は駄目だが、戦えない訳じゃない!」
「魔法や斬撃は効かなくても!」
「ホラホラ、チャンスだよー?」
『ルゥオウ!』
サンラクが避けタンクを、ペッパーが聖盾イーディスを構え、
「アイトゥイル!今!」
「【
「エムル、やれ!」
「【
「僕も行きます!【ロック・ジャベリン】!!!」
アイトゥイルの風属性斬撃魔法が、エムルの出力増大魔法刃が、レーザーカジキの土属性魔法が、白い身体の妻たるスレイビール・ハイドーラに突き刺さり、絶叫とも呼べる悲鳴が上がる。
「おーおー。おしどり夫婦なのは良い事だが………」
「モルド」
「解った!」
「よっしゃ、
スレイビール・ハイドーラの悲鳴に、動きが止まるスレイビール・ダーゴーン。其の隙をモルドのバフ魔法を施されたルストが、其の手に握る魔法弓から矢を放ち、眼を射抜いて潰し。死角となった視界を駆けるオイカッツォが、追撃で青を纏うエフェクトと共に顔面を打ち抜く。
「焔よ猛れ、其は熱波で喉を震わす猛獣の咆哮。其は光輝にて暗闇を食い破る猛獣の牙。眼に映る敵へ猛れ、高らかなる
シャンフロに存在する魔法には『三種類』発動条件が在る。
始めに『詠唱』を経た発動。此の場合は詠唱中に動けなくなったり、呪文を一言一句間違えずに唱えなくてはいけないといった、妥当な制約を持つ代わりに『魔法が持つ効果をプレイヤーのステータスが許す上限まで発揮して発動』することが出来る。
例を挙げるならレーザーカジキの持つ切札【
次に『詠唱を全カットした無詠唱』による発動で、シャンフロの魔法職のプレイヤー内では、此の方式が一番ポピュラーである。
スペルスピードによる即効性が保証される代わりに、効果・火力・射程・範囲等の減少は避けられず、魔法戦士などの詠唱よりも優先すべき事項が在るプレイヤーや、そもそも滑舌的な問題で詠唱自体が不得手なプレイヤーは、此のパターンを多用する。
最後に『
そしてサイガ-0が使った炎属性の魔法は、あろう事か『完全暗記による詠唱』。其れも魔導書の類いを一切見ずに、何回も『獣』や『猛る』等で混雑しそうな部分が有る中で一言一句を間違える事も無く、流暢な発音と共に詠唱しきってみせたのである。
白亜の騎士の掌から凄まじき、火山の噴火に等しい熱がサイガ-0の魔力を一片も残さぬばかりに貪り喰らい、未だ満たされぬとばかりに顕現した炎の獣は、塔を揺るがす咆哮を上げ。ヤバいと感じてか、咄嗟にガードせんとした夫半魚人が食らい付き、其の身を守る粘液が一秒も保たずに蒸発、夫半魚人の絶叫が塔全体に響き渡った。
そして追い打ちとばかりに、
「いやぁレイちゃんは、魔法も凄まじいねぇ……」
「前衛も極めれば、魔法職にも届くのか……」
こんがりローストにされたスレイビール・ダーゴーン&スレイビール・ハイドーラは、其の身を構成していたポリゴンを爆散させ、後にはドロップアイテムとしての素材と、クターニッドの一式装備を動かす為に必要な『ブリオレットカットが施された掌サイズのガーネット』がドロップする。
「ラスト、だな」
そう言いつつ、ガーネットに一番近かったペッパーが其れを拾い上げ、フレーバーテキストをチェックする。
クターニッドが振るう『────』。其の黄光は生きとし生きる、全ての命の『──』を反転させる。其の光からは、誰もが逃れる事は出来ない。
此のエネルギータンクは『八つ』在る………其等を全て揃え、正しき場所に納めて輪廻させし時に、深淵の盟主と力を分けた鎧は目覚めるだろう。
(此れで八つ目……深淵を見定む蛸極王装を動かすのに必要な、エネルギータンクは全て出揃った訳だ。残りは一式装備が何処に在るかだが………正直在処に関しちゃ『ノーヒント』な訳だし、残された五日間でルルイアス全土を隈無く捜索しないと……)
そうして結論を出しつつ、ペッパーは最後の封将を倒した事で、クターニッドとの戦いに移行するのではと周囲を見渡したが、何も変化が起きなかった。
「封将を全部倒しても、イベントが起きるって訳じゃないみたいだな」
「自動的にクターニッド戦に移行しなかったのは、せめてもの救いか……」
ユニークモンスター故に初見殺しを仕掛けてくると思っていたが、どうやらそうでは無かったらしい。
「となると、ルルイアスの中央………『あの城』にクターニッドが居るだろうな」
塔から外を覗き見れば、ルルイアスの中心地に聳え立つ廃れた
「さて…………封将は全て討伐したが変化は起きなかったので、残り四日間は各々自由行動にしようと思いますが、異論は有りますか?」
ペッパーの問い掛けに、皆『異議無し!』と答えて。封将討伐パーティーは現地解散し、塔の階段を下り降りて、皆セーブポイントへと戻っていく。
「ふぁぁ………疲れたァ~」
「お疲れ様ですわ、サンラクさん」
皆がセーブポイントへと帰る中、欠伸と共にぐぐぐっと身体を伸ばしたサンラクに、頭に乗ったエムルが彼の肩を揉み解していく。
「あ、あの……!サ、サンラク……さん!」
「ん?どうしました、レイ氏」
そんな折にサイガ-0がサンラクに話し掛けてきて、指先を当てたり離したりしながら、モジモジしてくる。軈て何かを決意して、彼に話をしたのであった………。
皆各々の戦い