VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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君はどう対処する?




暴走鎮めるは、死神の一振

モンスタートレインと呼ばれる行為がゲームには有る。大量のモンスターのヘイトを連れ回す行為、又は其れを利用してのMOD狩り(スロート)を行い、経験値とドロップアイテムを手に入れる方法にして、フルダイブ型VRゲームが主流となった現代よりも前の時代、ディスプレイを用いてプレイするMMORPGでも使用されたアクションでもある。

 

此れをやる場合に周りには他のプレイヤーが居ない事や、長時間トレインを行わない事等、ゲームエチケットが多数存在する『迷惑行為』の一つとして取り上げられている為、サンラク程のプレイヤースキルを持つ人物が其れ(・・)を起こしたなら、意図的にやっているor余程の事が無ければ起きる事は無い。

 

(問題は何でサンラクの頭に、何時もの鳥じゃなくて『鮭の頭』が着いてるかだよなぁ……。アレは多分ルルイアスで拾ったんだとして、如何なる原因でモンスタートレインを起こしたかだが………。おそらく此方に向かう途中で『鮭の被り物』を見付け、手に入れた所でマーマンゾンビか人魚に気付かれ、逃げてる内にエムルさんとアラバさんを逃がすタイミングを見失った。

で、ウツロウミカガミでヘイトに責任転嫁したけど、周りからの雪崩れ込みに追い込まれて、にっちもさっちも行かなくなったので、最終自衛手段として『ランダムエンカウンター』を使ったって所だろうか?)

 

アイトゥイルやエムルを始め、ヴォーパルバニーや猫妖精(ケット・シー)といった極一部のモンスター達には、自力では『どうしようもない状況下』に置ける自衛の最終手段として、ランダムエンカウンターと呼ばれるスキルを習得している事がある。

 

其の能力は『使用者のスキルレベル×倍以下で尚且つ使用者よりレベルが高く。周囲に存在する非アクティブ状態のモンスターをランダムに一体召喚する』といった効果を持ち、状況に応じては危機を脱する事も破滅をも招くとされる、まさに『一か八かの大博打』に等しい力である。

 

サンラクの叫び声に、エムルとアラバの悲鳴から、奇しくもペッパーは大体の状況を把握するに至って。

 

「ペッパーはん!エムルが!」

「当たり前だ!助けに行くよ!」

「………ッ!はいさ!」

『ウォウ!』

 

右脇にノワを、頭にアイトゥイルを乗せながら、空中ダッシュスキルを全開に、ペッパーがルルイアスの空を駆け出す。

 

「取り敢えず、あのマーマンゾンビ達は巨大リュウグウノツカイが、トレインで轢き殺しているから良いとして………。お、サンラクがウツロウミカガミを使った」

 

傑剣への憧刃(デュクスラム)と思われる片手剣を振るい、ヘイトを切り離しつつ逃げるサンラクと、残された残像に群がるマーマンゾンビに、其れ等を纏めて轢き潰す巨大リュウグウノツカイで一種の混沌(カオス)が出来上がり、付近にはドロップアイテムの数々が。

 

そして逃げたサンラクを見れば、近くの建物の屋根にて革手袋を付けた右手を胸に叩き付けて黒雷を解除、魚を頭からバリボリと貪り喰らいながら、エムルとアラバに思いっきり怒られている。

 

「まぁ……うん、あのリュウグウノツカイと周りのドロップアイテムは貰っていくとしよう」

 

ペッパー的にも此れはあまり好ましくは無いが、エムルを助けるという大義名分を得たので、速攻で倒すに限る。取り出すは『短い白鞘に収まった短刀』。右手で鞘を、左手を逆手に(・・・)柄を持ちて、抜き放った刀身は『白の刃と金の峰』を持つ。

 

「コイツの初陣には『うってつけ』だ……ビィラックさんの元で真化を行い、強く・硬く・軽く成った『白磁(はくじ)短刀(たんとう)』。其の名を『秀刀(しゅうとう)白金(しろがね)】』、一気に決めようか!」

 

秀刀【白金】……『カイゼリオンコーカサスの甲殻』を使い、白磁の短刀の真化を行った此の武器は、武器種は短刀と変わらない反面、逆手持ちでしか(・・・)装備出来ないデメリットを抱えている。だがしかし、ペッパーが其のデメリットを持ちながらも使うのは、其れを被っても尚余りあるメリットが、此の武器には内蔵されているからだ。

 

先ず此の武器の耐久値は『装備者の歴戦値』によって左右され、積み重ねた戦いの重さと潜り抜けた戦いの数が、此の武器の耐久に其のまま直結する。

 

次に装備者の歴戦値が一定値以上の場合、此の武器で繰り出すスキルによる『クリティカルの発生率』が飛躍的に跳ね上がる。武器の性質上、刀としても剣としても扱われる特性とも相俟って、各種斬撃スキルにも対応している。

 

「サンラク!此のリュウグウノツカイ、俺が貰うよ!!」

「ペッパー!」

 

サンラクに声掛け、ペッパーは二つのスキルを起動する。シャイニングアサルトによるブーストで更に速く、同時に白金の刃が黒いエフェクトを帯びて、リュウグウノツカイ─────アルクトゥス・レガレクスの『首』辺りを切り裂き、彼の手には『クリティカル』の感触が伝わった。

 

「──────死神の斬撃(デス・マサカー)

 

其の一閃を放った後、ペッパーはサンラクの近くに着地。僅かながら落下ダメージを被るも、彼は其れを必要経費と割り切って、インベントリアに収納されている食べられる魚を頭から噛り、咀嚼していく。

 

「内臓の臭みやらが鼻に来るぜ…………」

「おう、ペッパー。今お前、ギガリュウグウノツガイに何したんだ?」

「まぁ見てて、100秒で『決着』が着くから。っと、リュウグウノツカイが来たよ!」

 

巨体を畝りしならせ建物を粉砕し、マーマンゾンビや人魚を薙ぎ払いながら、アルクトゥス・レガレクスがペッパーとサンラクのチームに襲い掛かる。

 

「すげぇパワーだな、ギガリュウグウノツガイ!………いや、アルクトゥス・レガレクス!まるで『暴走列車』だ!」

「まぁ、ルルイアスの環境下じゃなけりゃ苦戦するだろうけど………よっ!」

 

互いにグラビティゼロを起動、建物の合間を跳ね駆けながら、アルクトゥス・レガレクスの十八番たる突撃を回避し、距離を放した所で襲い掛かるブレス攻撃を生き残ったマーマンゾンビや人魚に押し付けて、時間を稼ぐ。

 

そしてペッパーが繰り出したスキルから、丁度100秒が経過した其の瞬間。アルクトゥス・レガレクスの巨体が一際大きく痙攣し、両眼からは光が失われ。泳ぐ力を無くした巨体が地面に落ち、ルルイアスの街を押し潰し、其の身を構成するポリゴンは崩壊を開始して。

 

「アルクトゥス・レガレクス、大いなる巨体を畝り動かし、敵を薙ぎ払う竜王魚よ。次に戦う時は、タイマンで戦おう」

 

ペッパーの言葉の後に、アルクトゥス・レガレクスは爆散。大量の素材(ドロップアイテム)の山脈が形成され、深淵の街に再び静寂が訪れる。

 

「え、死んだ………?」

「うん。死神の斬撃ってスキル、色々と条件が有る代わりに100秒後に一部のモンスターを除いて、確定即死を敵に叩き付けられるんだ」

「マジかよ……致命魂(ヴォーパルだましい)腕輪(うでわ)やっぱ壊れアクセサリーだわ」

 

ペッパーの説明から、大方の理由を突き止めたサンラクは、鮭の頭の濁った視線で彼の右手首に光る腕輪を見ながら言った。

 

「で、サンラクよ。其の鮭仮面は何なの?」

「コレ?『リッチマン・キング・サーモンの頭面(かしらめん)』ってアイテムでさ。移動途中に此れ着けてた腐れつみれを見付けて、ブッ飛ばして入手したんだが………」

「クターニッドの眷属に囲まれてしまってな……其処でエムルがランダムエンカウンターを使い、あの巨大魚を呼び寄せ、我等は逃げていたのだ」

「ビリビリで死ぬかと思いましたわ!」

 

ルルイアスの限定ドロップアイテムだろう其れを手にする為に、NPCと共に行動しながらもリスクを取ったサンラクは、アラバとエムルに「スンマセン……」と謝っている。

 

彼等彼女等が無事だった事に安堵しつつ、ペッパーは自身が討伐したアルクトゥス・レガレクスの素材を一つ残さず、インベントリアに収納。代わりにサンラクがトレインしてきた、マーマンゾンビの素材は彼に全て渡す事にしたのであった………。

 

 

 






騒動解決


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