休憩は適度に行おう
モンスタートレインをしていたサンラク達と別れて、正午付近に差し迫った頃。ペッパーは近くのセーブポイントへ移動、からの一旦ログアウトで現実世界の梓に戻った彼は、昼食に焼きそばを作る事に決めた。
人参・ピーマン・玉葱・キャベツ・もやしを野菜室から出し冷蔵庫からはパック焼きそば麺を二個、冷凍庫からは冷凍挽肉を取り出し、野菜はもやし以外を一人前で食べられる適量分を切り出し、一口大にカット。麺のパックには竹串で、無数の穴を空けてレンジに入れ。
其の間にフライパンを用意して油を少量敷き、加熱と共に適温になった所で、冷凍挽肉と切り出した野菜達を入れて強火で一気に炒めつつ、ある程度火が通ったタイミングで中火へ。
其処にコップ一杯の水をフライパンに投入し、蓋をして具材を蒸し焼きにしながら、レンジに入れていた焼きそば麺を取り出して袋の縁を切り、付属するソースと共にフライパンに入れられる状態を構築する。
水が飛んだタイミングで麺とソースの元を加え、更に隠し味でオイスターソースを一回し入れ、再度強火で一気に絡めて炒めきり、皿に盛り付ければ。
「よし、完成……!梓流『野菜たっぷり焼きそば』、良い出来映えだ!」
スマフォでパシャりと撮影、牛乳をマグカップに注いで『いただきます』の合掌。熱々の焼きそばをゆっくりと味わい、時折牛乳を飲みながら十五分掛けて完食。『御馳走でした』と合掌後、食器と調理器具を片付けてトイレを済ませ、彼は来週一週間の天気予報を確認する。
(来週の中盤辺りに台風が日本に接近……バイトに行ければ良いんだが大丈夫かなぁ………)
一抹の不安を抱きながらも、今の自分がやるべき事である、反転都市ルルイアスでの稼ぎと武器の鍛練、そして習得しているスキル達の成熟を行う事。来るレベルキャップ解放に備えて、今の自分にやれるだけの事をやっておく為、彼は再びシャンフロへと飛び込んでいったのであった………。
午後のルルイアス海鮮ツアーは、アイトゥイルの持つ『ランダムエンカウンター』で呼び出したモンスターとの戦い。読んで字の如く
「近接型のスーパーカイセンオーや射撃タイプのカイセンオーも居たが、ありゃあ『大物』だ……!」
「で、デカい『アンコウ』なのさ……!」
『グルルル………!!!』
今回呼び出された其れは、空中を優雅に。しかし力強く泳ぐ姿を、ペッパー・アイトゥイル・ノワはルルイアスの屋根から見上げて、各々の言葉を溢す。
アトランティクス・レプノルカが『泳ぐ巨大戦艦』であり、アーコリウム・ハーミットが『動く巨大要塞』であるならば、彼等の真上を泳いでいる全長350mクラスの巨大鮟鱇の周囲に『沢山の魚達が付き添い』、共に泳いでいるのだ。
其の魚達には『鋭い牙を生やされたり』、マンタの体に『ブースターかミサイルの様な巻き貝』が付いていたり、巨大な鯨には『全身に蛸足をドレスアップ』していたりと、キメラじみた
其れを行った『巨大空母鮟鱇』─────『スレーギヴン・キャリアングラー』が咆哮を上げたのと同時に、付き添う魚達が一斉に、ペッパー達に
「ペッパーはん、敵が来たのさ!」
「やるべきは『速攻』!
戦争レトロゲームでやって来た、対空母戦の心得!周りの飛行機は出来るだけ無視、敵軍隊の寝城を集中攻撃して叩き潰す!武器の損耗は
「ヨッシャ、空母鮟鱇撃沈作戦開始だッ!」
「うぉ、大丈夫かペッパー!?」
「あぁ、オイカッツォか………何回か死に掛けたが、何とか全員生きてるよ~」
「く、草臥れたのさ………」
『ワゥ~……』
およそ二時間の激闘の果てに、十数回の走馬灯に駆られたペッパーの繰り出した頭頂部への一撃が、スレーギヴン・キャリアングラーの生命活動の火を絶やし、本体と改造艦載魚達は遂に、ルルイアスの大地に沈んだ。
騒ぎを聞き付けてか、此方にやって来たオイカッツォが見たのは、積み重なったスレーギヴン・キャリアングラーと眷属となっていたモンスター達の
「ってかペッパー。お前一体何と戦ってたんだよ……滅茶苦茶素材落ちてるじゃん………」
「モンスターの雄個体を自分の眷属にして、改造して獲物を狩る巨大空母の雌鮟鱇………名前がスレーギヴン・キャリアングラーって言うね。滅茶苦茶苦戦したけど、アイトゥイルとノワのお陰で勝てたよ………」
此の空母鮟鱇、自身が死ぬと眷属としていた魚やモンスター達も纏めて死ぬらしく、神秘の影響も有ってか鮟鱇本体や眷属モンスター達の
しかしアトランティクス・レプノルカもそうだったが、此の鮟鱇も『体力お化け』のモンスターだった。
「なぁ、ペッパー。何かリュカオーン………じゃなくてノワだっけ、また『大きくなった』?」
オイカッツォが見つめる先、仰向けに素材の山に倒れているペッパーの腹に乗っている、リュカオーンの小さな分け身であるノワ。アーコリウム・ハーミット"
「多分テイムモンスターも『レベルアップ』してるんだと思う。じゃないと体格が大きくなるのに、説明が付かない」
ペロペロと頬を舐めては、ペッパーに甘えてくるノワ。実際危うい場面で幾度もヘイトを買って出てくれたのが、何を隠そうノワだった為に御褒美の甘える権利は、有って良いとは考えている。ペンシルゴンが見たら、また面倒な拗らせ方をしそうな予感しかしないが。
「うわ、希少な素材ばっかりじゃん………やっぱ『運命の輪』の効果?」
「あぁ。武器防具の損耗を加味しなければ、本当にすげぇ効果だよ」
シャンフロにおける『クリティカル判定』は、其のプレイヤーの持つ『幸運と技量』の二種のステータスの高さが、直接関係している。結果論だが、神秘:運命の輪と兎月【暁天】のベストマッチであり、王撃ゲージを消費すれば武器耐久値を回復出来る能力と非常に噛み合っていた。
「よし、休憩終わり!素材を回収して、一旦セーブポイントに帰るとしよう。オイカッツォはどうする?」
「俺は探索とマーマンゾンビとの戦いかな。カイセンオーって奴に遭ってみたい」
「そうか。気を付けてな」
「そっちもなー」
インベントリアにドロップアイテムを全て収納し、ペッパーとアイトゥイルにノワの一向はオイカッツォと別れて、セーブポイントへと向かって行ったのだった………。
空母を落として素材大量