時間の限り、戦い続けろ
「やぁやぁ、私の愛しのあーくん。ノワちゃんとのデートは楽しかったかなぁ~?」
『グルルルルルルル…………!!!!!』
スレーギヴン・キャリアングラーとの大決戦を終えて、ヘトヘトのボロボロになったペッパー・アイトゥイル・ノワはセーブポイントへと帰還し、額に青筋を浮かべながら敵意をノワにぶつけるペンシルゴンと、其の敵意を相手にノワが喉を鳴らしつつ、真正面から相対する。
「デートって……ノワはルルイアスでの稼ぎに付いてきただけで、さっきまで巨大空母鮟鱇と死闘を繰り広げてさ」
「ふぅ~ん。証拠は有るのかな~?」
「疑り深いなぁ……」とインベントリアからスレーギヴン・キャリアングラーの素材を一部取り出してペンシルゴンに見せると、彼女も落ち着いた様子で深呼吸をする。
「どうやら本当みたいだから、君を信じるよ。あーくん」
「あぁ、因みに其の巨大空母鮟鱇って何か周りの生物を引っ張り寄せて、眷属にするとか何とか説明されてるっぽいのよね。多分彼奴等って共通して『雌個体』じゃないかな?其れと本体を倒したら、眷属も纏めて死ぬから稼ぎにオススメだよ」
スレーギヴン・キャリアングラーの素材の中には、特殊な『フェロモン』を散布・海中を泳ぐモンスターの『雄個体』を引き寄せて、自身の眷属として取り込んで改造してしまうという、とんでもない生態について記載されていた。
「へぇ?其の鮟鱇にフェロモン付けられたのかなぁ、あーくんは?」
「いや、リュカオーンの愛呪の影響で全部弾かれたけど?」
そう、ペッパーがスレーギヴン・キャリアングラーとぶっ通しで戦えた最大の理由の一つが、鮟鱇の放つフェロモンの効果を『リュカオーンの愛呪』による守りで一切を受け付けず、権能の悉くを弾く事が出来たお陰で、彼は戦い続けられたのである。
「成程ねぇ?結果的では有るけど、ノワちゃんは
『ワゥルゥ、ウォウ』
多分『お前の為じゃないんだが?あと彼はワタシのモノだからな?』とでも言いたげな鳴き声で、ノワはペンシルゴンに答えたと思われる。
「あーくん、私もルルイアスで大物探しに行くからね。あとさ───────」
そう言って、ペンシルゴンはペッパーに歩み寄って耳元で「今日の夜、君に電話を掛けるから。夜の十時にちゃんと出てね?」と耳打ちし、彼女は己の為の戦いをしにルルイアスへと歩き出して行った。
「ペッパーはん、相変わらずペンシルゴンはんは独占欲に満ちてるのさね」
「まぁ何時もの事だから……」
遠い目をしながら、ペッパーは二階に在るベッドエリアへ移動し、其の身を横たえる。
「一時間仮眠取ってくる、アイトゥイルとノワも其の間に確り休憩を。夕方にルルイアスで狩りをして、夜にペンシルゴンと出掛けてくるよ」
「はいさ!」
『ウォウル!』
目を閉じてログアウトをする寸前、ノワが自分の腹に乗っかって丸くなるのを目撃し、シャンフロにおけるペッパーの意識は、現実世界に居る梓の身体へと戻っていくのだった…………。
「よし、休憩終わりっ!さぁ、狩りの時間だ!」
「ペッパーはん、おはようなのさ!」
『ワォン!』
一時間後、現実世界で仮眠を取った事により思考がスッキリした梓は、シャンフロにログインし直してペッパーとして覚醒、開口一番にやる気を顕にする。
「お、ペッパーじゃねーか」
「よっ、クランリーダー。ペンシルゴンが随分上機嫌だったけど、何かあったの?」
「ペッパーさんですわ」
「ペッパーさん、こんにちわです!」
「あ、ペッパーさん!」
「ペッパー殿」
ふと横を見れば、鮭頭のサンラクにオイカッツォとエムル、レーザーカジキと秋津茜にシークルゥの姿が在り。特にクソゲーマーは身体を揺らし、プロゲーマーはニタニタと随分意味深な表情をしている。
「まぁ、色々在ったからなぁ………」
「へー、色々ねぇ?」
「色恋沙汰ですかぁ?お熱いねぇ???」
「…………其処の二人、絶対解った上で言ってない?」
「「其れは無いから安心しろ」」
「うん、絶対嘘だわ」
遠い目をしながら、ペッパーは溜息を一つ付いた後に立ち上がって言った。
「俺は此れから狩りに行くんだが、皆はどうする?」
「俺は夜のモンスターの素材を稼ぎてぇから行くわ」
「お、んじゃ俺も付いてく」
「僕は学校のテスト勉強が有るので、ログアウトします」
「私もです!」
「解った、レーザーカジキと秋津茜は頑張って」
ペッパーのエールに「「はいっ!」」と光面組は答え、ベッドに横たわりログアウトしていった。
「さてと、じゃあ行きましょうかね」
「おうよ、インベントリアには素材突っ込みたいからな」
「夕方のルルイアスで稼ぐぞー!」
「アタシも、お供しますわー!」
「ワイもさね」
『ウォウ♪』
皆各々の目標を抱え、三人と二羽と一匹は戦いへと飛び込む。セーブポイントから距離を取る為に離れ、マーマンゾンビや人魚の敵の視界を潜り抜けて、ルルイアスの空中写真からバトルフィールドに適したポイントに、彼等は移動する。
「此処だな………エムル、アレを頼む」
「またですわ!?またアレをするですわ!?」
「エムルさん、俺達が付いてますから」
「え、何するの?」
行間が読めないオイカッツォは首を傾げ、サンラクが何をしようとしているかを読んだペッパーは、エムルにそう言って。
「………………ルルイアスから地上に帰えれたら、沢山魔導書買ってやるよ。更にラビッツスペシャルパフェ食べ放題も特典に付けちゃう」
「本当ですわ!?マジですわ、サンラクさん!?」
(相変わらずチョロいなぁ、エムルは)
(食欲と欲望に対してチョロ過ぎる………)
(いやチョロいな)
(エムル、相変わらずチョロいのさ………)
サンラクは計画通りとニヤリとゲスな笑みを、ペッパーは大丈夫かなと心配に、オイカッツォは思わずツッコミたくなり、アイトゥイルは我が妹の行く末が気掛かりに、ノワは大きな欠伸をして前足を手入れする。
そして当のエムルはと言えば、やる気充分と言った表情で『ランダムエンカウンター』を使用し、ルルイアスにモンスターを呼び寄せ始めた。
「お、やぁやぁゲーマー諸君。何か面白い事をしているみたいだね?」
そんな折に噂を聞き付けてきたのか、はたまた恋人であるペッパーの気配を感じたのか、ペンシルゴンが屋根を伝って此方にやって来た。
「おぉ、ペンシルゴンか。今から俺達でエムルが召集したモンスターを、思いっきりブッ飛ばそうかと思っててな」
「ペンシルゴンもやる?」
「そうだねぇ………サンラク君呼称のカイセンオーとも戦ったけど、ちょっと物足りなかったからね~」
「サンラクさん、来ますわ!」
エムルの声に、全員がルルイアスの空を見上げれば水柱を上げて、呼び出されたモンスターが現れる。其の巨大を見たペッパーは非常に見覚えが有った────何せ先程自分とアイトゥイルにノワは、二時間の激闘を演じたモンスターであったが為に。
「マジか………スレーギヴン・キャリアングラーかよ……!?」
「アレがあーくんの言ってた、巨大空母鮟鱇か………!」
「あぁ、そう言えば深海の帝王が襲ってた奴に似てると思ったら、ソイツだったか」
「いや、でっっっっっか…………」
各々言葉を溢していた時だった。
『ルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!ワゥ!!!ワゥ!!!ワォゥウウウ!!!!!』
「ノワ、どうした!?」
突如としてノワが吠え出したのだ。其の様子たるや、あからさまに『あのスレーギヴン・キャリアングラー』に嫌悪感を抱いているようにも見える。
「なぁ………あの巨大鮟鱇『おかしくねぇか』?」
「えっ?」
「何て言えば良いのかな………『何か死んでる』様な気がしなくもないのよね、アレさ」
「マジで?」
サンラクとペンシルゴンが気付いた『異変』。其れはある意味『正しい』。
何故なら────────────
其のスレーギヴン・キャリアングラーは『既に死んでいるのだから』。
そして同時に。ペッパーとサンラクの二人には、とあるリザルト画面が表示されたのである。
『称号【
彼等は気付く、あのスレーギウン・キャリアングラーは
呼び出されたのは、死せし巨大空母
称号解説
称号【
深海にて、アトランティクス・レプノルカ"
因みに通常個体三体に遭遇すると手に入るのが【