VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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戦いの後に




神ゲーから現実に戻り、勇者と魔王は言葉を紡ぐ

「いやはや、まさか此の私がゾンビアンコウのフェロモンにやられるとはねぇ………一生の不覚だよ」

「マジで助かった、というかアンコウのヤロー………あんな隠し玉(最終手段)持ってるとは思わなかったわ」

 

スレーギヴン・キャリアングラー"傀儡羅針(コンパペット)"を再誕の涙珠による蘇生討伐。そして最後に繰り出したガス爆発による、道連れ戦術を乗り越えたペッパー達は爆心地へと戻ってきていた。

 

破壊されたルルイアスの建造物達は、既に此処に住まう盟主にして、ユニークモンスター・深淵のクターニッドの持つ、反転の権能(チカラ)で元通りと成っていて。

 

「プレイヤー四人での討伐だからか、相応に有るな……」

 

スレーギヴン・キャリアングラー"傀儡羅針"……間違いなく不世出の存在(エクゾーディナリーモンスター)たる(エネミー)との戦闘に勝利したという証拠が、目の前に積み重なったマーマンゾンビや改造されていた眷属達、そして本体の素材が其れを、無言ながらに此方へ伝えていた。

 

「アンデットには聖水なんて言うけど、まさか一投400万の蘇生アイテムで倒すなんてね………」

「400万マーニをドブに捨てた気分だぜ……」

 

エンハンス商会の会員限定エリアで買えるとは言え、残機一つを減らしての討伐。此れが後々まで影響しなければ良いのだが………一先ずは不世出の存在を討伐出来た事を、素直に喜ぶとしよう。

 

「あ、そうだ。ノワって普段『何を食べるんだ』?」

『クゥン?』

 

ずっと気になっていた………夜襲のリュカオーンの分け身たるノワにも、空腹という概念が有るのでは……と。

 

ユニークモンスターとはいえ、テイムした以上は責任を持って世話をしなくてはならないと考えたペッパーは、ペンシルゴンのジットリとした視線に背中を刺されながらも、インベントリアに納めていた『食べられる魚肉』を手に乗せて、ノワの前に差し出す。対するノワは魚肉の匂いを嗅ぎ、軈て口に咥えるや地面に置きつつ、噛み千切って食べ始めたのだ。

 

「普通に魚肉もイケるか。食材候補に『魚の肉』をメモ………っと」

「というか、分け身とは言えユニークモンスターの『食事シーン』って、滅多に見られなくね?」

「あ、確かに」

「そういやそうだな……」

 

フラッシュを焚かずに、スクショ機能でパシャリと写真を取ったペッパー・サンラク・オイカッツォ。そして彼等彼女等の議題は、積み上がったスレーギヴン・キャリアングラー"傀儡羅針"を含んだ素材達に移る。

 

「分け前はどうする?」

「まぁ、無難に四当分かねぇ?」

「其れで良いと思う。まぁ、フィニッシャーのペンシルゴンにはレア素材渡すんで良いか?」

「さんせーい」

 

あっさりと決まり、四人はインベントリアに各々分け前(ドロップアイテム)を収納した。

 

「インベントリアってホント便利だわ。限界量無視して素材やらアイテムやら持ち運べるの」

「海底のモンスターと地上判定で戦えるのは、多分此処くらいだもんね」

 

他にも安全地帯の役割を担い、対策されたとはいえどインベントリアエスケープは健在の為、使い様によってはブッ壊れアイテムに他ならない。

 

「さて、皆の予定は?」

「俺はルルイアスで稼ぎ………と言いたいが、一旦抜ける。残り四日とはいえ、地上に帰ってから『妖怪一足りない』に泣かされるのはゴメンだかんな」

「夜のルルイアスで、レベリングと食材とアイテム稼ぎ。クターニッドの一式装備装着の為にも、ステータスポイントは残しときたいしな」

「俺は夕食を食べる為にログアウトするよ」

「私、ちょっと急用思い出したからログアウトするね」

 

そんなこんな話をしてオイカッツォは来る時に備えてレベリングへ、ペッパー・サンラク・ペンシルゴンはセーブポイントへと戻って。帰還した拠点ではアラバが食材を捌き、シークルゥとスチューデに振る舞っているのを目撃する。

 

「おぉ、皆帰ったか。先程甘い香りが僅かに漂ったのだが、大丈夫だったか?」

「スレーギヴン・キャリアングラーのゾンビと戦ってたね。まぁ、ペンシルゴンの機転で勝てたが」

 

アラバの問い掛けに対してサンラクが説明した所、彼の口があんぐりと開きっぱなしになった。

 

彼曰く、スレーギヴン・キャリアングラーなるモンスターは、戦艦鯱のアトランティクス・レプノルカと要塞ヤドカリのアーコリウム・ハーミットに並ぶ、深海頂点捕食者の一角存在らしく、魚人族(マーマーン)からは異性の同胞や狩場の獲物を持っていってしまう、所謂『動く厄災』と揶揄されて恐れられているとか。

 

貴重な話を聞けたので、ペッパー・ペンシルゴン・サンラクは二階へ移動。ペッパーは少しインベントリアを確認すると言い、二人がベッドにてログアウトした後を見計らって。ノワに『良い子にしててね』と頭を撫でながら言いつつ、ベッドに横たわってログアウトしたのであった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の夕食は冷凍餃子とサラダに中華スープにしよう。ご飯は炊飯器のあまりを食べれば良いし、食事を終えたら一時間シャンフロをやって、明日に備えよう」

 

シャンフロからログアウトし、ペッパーから梓へと戻った彼は、夕食の献立と今日の残りの予定を決めて、早速準備に取り掛かろうとした、まさに其の時だった。

 

ピロロロロロ……とスマフォの着電アラームが鳴り、表示されているのは『永遠』の二文字。確か今日の夜に電話を掛けるやら何やらペンシルゴンが言っていたが、此のタイミングでかと思いつつ、彼は電話に応じる。

 

「もしもし」

『やぁやぁ、あーくん。貴方の自慢の彼女、天音 永遠だよー?』

「其れ自分で言っちゃう?………んで、トワ。電話を掛けてきたって事は何か有ったのか?」

 

リュカオーンの小さな分け身たる、テイムモンスターとなったノワのベタベタ具合だろうか。其れは其れで面倒な事になりそうな雰囲気しかしないのだが、果たして彼女の用件は如何に?

 

「実はねぇ、あーくん。今日の昼頃に『モモちゃん』から、電話が掛かって来たんだけどさ。クランリーダーの君と、サブリーダーの私に対する『とある打診』を頂いたのだよ。あ、因みにモモちゃんって言うのは『黒狼(ヴォルフシュバルツ)の団長・サイガ-100』の事なんだけど」

「………其の内容とは?」

 

永遠の話から、もう既に嫌な予感しかしてこない雰囲気を感じつつも、梓は固唾を飲みつつ身構える。そして永遠は彼に、打診内容を伝えたのだ。

 

「………………という感じだけど、如何かな?」

「成程ね。どのみち『戦争不可避』なのには変わらないって事、か……」

「そゆこと。実は此の打診に関して、前々から『私宛て』で何回か来てたんだけどさ。今回の一件で、漸く決心が付いたんだって」

 

深淵のクターニッドを倒して、ルルイアスから地上へ帰った後が怖いと思いながら、梓が非常に遠い目をしつつ先々の事を考えていた時だった。

 

「あぁ、其れからあーくんさ。君ってルルイアスの七日目って『一日フリー』なんだっけ?」

「ん?まぁ、そうだが………。ただ、クターニッドとの戦いが控えてるから、終わった後でなら良いけど」

 

永遠の問い掛けに梓は答えて。そして彼女は電話越しにこう言ったのである。

 

「そうか。じゃあさ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空いてる日が見付かったら、私の住んでる部屋に遊びに来てよ

 

 

 

 

 

 

と。

 

 

 

 






其れは魔王からの御誘い


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