VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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三日目最終追込




スリーデイナイツ・ファイナルオベーション

「はぁ…………まぁじかぁ……………」

 

フライパンで冷凍餃子を焼きながら、梓は水溶き片栗粉を流し入れて『なんちゃって羽根つき餃子』に仕立てつつ、先程の永遠との電話を思い出す。

 

『空いてる日が見付かったら、私の住んでる部屋に遊びに来てよ』───────まさか日本が世界に誇る、トップオブカリスマモデルの天音(あまね) 永遠(とわ)の住んでいる場所に誘われる等、彼女の熱狂的なティーンエイジャーや神格化している邪教徒にしてみれば、天に召されるに等しい事であり。

 

其れを見ず知らずな上に、こんな至って普通の人間でレトロゲームが好きな野郎が遊びに来た…………なんて事になれば、邪教徒達は自分に詰め寄ってくる事態に成り兼ねないし、何ならSNSで袋叩きや脅迫メールが届くのは目に見えて明らかと言って良い。

 

「おまけに電話が終わったと思ったら、住所だろう『マンションの部屋番号』と『入口のロック解除番号』を載せたEメール送ってくるとか。………何してんのさ、全くもう」

 

仮に誤発信したなら、十中八九というか100%特定班が動いて、住所特定の運び&ストーカー侵入で一大事になるだろう。そんな危険を犯してまで永遠がこうしたのは、単に自分に会いたいからと思いたい。

 

「まぁ当日までに、着替えの服や下着に変装用のアイテムの用意、後はマンション迄のルートを模索しようか」

 

羽根が良い感じに焼けたので、フライ返しで縁を剥がしつつ、用意した皿に乗せて完成。先に作った中華スープを汁椀へ、醤油受け皿に醤油を、マグカップに牛乳を注ぎ。若布やブロッコリーにレタスとプチトマトで作ったサラダ、そして炊飯器で炊いた白米を茶碗に盛れば。

 

「完成、なんちゃって羽根つき餃子膳……!」

 

冷凍食品と云えども、工夫一つで見映えも味も良くなる。其れが料理の面白さだと、梓は思っている。テーブルに持っていき、スマフォで写真を撮った後に「いただきます」と合掌。羽根が付いた事でパリッパリッと歯応えに新たなリズムが生まれ、他のメニューと合わせる事で交響曲(シンフォニー)が食欲を押し上げながら、彼の食の手を進めて。

 

十三分で夕食を完食後に「御馳走でした」と合掌、食器と調理器具を洗浄・水拭き用のタオルで拭き上げ、片付けた彼はトイレをした後にシャワーを浴びて。寝間着に着替えてドライヤーで髪を乾かし、布団を敷き直した彼はVRヘッドギアの動作チェック。

 

三日目のルルイアス海鮮ツアー、其のラストスパートを掛けるべく、シャンフロへと再ログインするのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ワゥオン♪』

「ペッパーはん、こんばんわなのさ」

「わととと……こんばんわ、アイトゥイルとノワ」

 

ログインして瞼を開ければ、早々に飛び付いてきたノワと、魚の刺身をつまみに晩酌をしているアイトゥイルの姿が、彼の前に映し出される。

 

「アイトゥイル、ノワの様子はどうだった?」

「アラバはんの切り出してた刺身を食べてたのさ。スチューデはんは、アラバはんやネレイスはん、エムルやシー兄さんにワイと話をしたのさね」

 

どうやら此方の言い付けを守り、ちゃんと大人しくしていたノワ。仮にもユニークモンスター、しかも自由気ままに夜を駆けている帝王がこんなんで大丈夫なのかと、思わずツッコミたくなるのは仕方が無い。

 

「さてと……今日最後はルルイアスでフィッシュハンティングをするよ。アイトゥイル、ノワ、準備は良いか?」

「はいさ!」

『ワォーン♪』

 

ルルイアスに居られる時間は、今日を除けば残り三日。まともに動けるのも、今日が終われば最終七日目しかない。クターニッド戦で対回復反転対策のポーションを残しつつ、此方は体力・MPの回復手段となる魚を夜の時間帯で手に入れておきたい所である。

 

二階から一階に降りれば、やはりというかリュカオーンの小さな分け身たるノワに、アラバ・スチューデはビビり、そそそ……と一歩後ろに下がっているのを見ながら、ペッパーはルルイアスから脱出した後の事が怖いと思いつつ、セーブポイントの建物を出て狩りへと向かう。

 

「しっかし…………改めて見ると、本当に凄いな」

「そうさね」

『ワゥ』

 

反転都市ルルイアスは、昼と夜とでは全く違う姿に変わる。昼間はマーマンゾンビ彷徨う冒涜の街に、夜は魚達が泳ぐ生命の街に様変わり。

 

海底()を見上げれば、選り取り見取りの様々な魚を始めとし、大物ともなればカジキにマンタやマグロ、超大物サイズまで視野に入れたなら鯨にジンベイザメが泳いでいるのを目撃する。

 

「さぁて、狩りをしましょうか!」

「はいさ!」

『ワン!』

 

夜という条件を満たした事で、星天秘技(スターアーツ):ミルキーウェイを起動したペッパーが深淵の都市の空を駆け走り、昼間とは違って影に居ずとも良くなったノワと、相棒たるアイトゥイルを肩に乗せながらに、左手に傑剣への憧刃(デュクスラム)を装備。

 

近くを泳いでいた鯛らしき魚を一撃で倒し、其の両脚は止まる事無く、次なる獲物を狙い澄まして進み続ける。

 

「どんどん狩るぞォォォォォォォ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後……………

 

「ん~大量大量………!」

 

鰹らしき『ノルヴィスクラッツェ』、滅茶苦茶速かった鮪こと『ルージェットマグロ』、鯛と思われる『ボンディングフィッシュ』に、巨大マンタの『ヴェールフラウス』。

 

コブタイに似た『ボクトゥスヘッド』、丸々太った寒鰤らしい見た目の『シャクサインドルタ』、消防車の放水ポンプを三倍の太さの巨大穴子たる『トーレスタム・オーロプ』等々、大小様々な深海の食用魚に成り得る物達を狩り、活け締めを行ってインベントリアに収納していく。

 

「やぁやぁ、あーくん。ノワちゃんとデートしてるのかなぁ???ん~????」

『ルゥゥゥゥゥゥゥゥ………!!!!!』

 

そんな折、聞き慣れた呼び名が耳に聞こえて振り向けば、ゴゴゴゴ………なるSEを背中から出して、ノワを黒い視線で睨むペンシルゴンと、ニマニマと笑っている京極(キョウアルティメット)の姿が。そしてやはり『お前を殺す』宣言を真っ向から叩き付けたペンシルゴンに、ノワも白眼と牙を見せながら、喉を鳴らして視線を送り付け、一匹と一人が見えない火花を散らし合っている。

 

「おやおやクランリーダー、此れは修羅場かな?」

「クターニッドとの決戦に備えて、回復能力持ちの魚をアラバさんに鑑定して貰うのと、ノワが好む味を調べてるだけなんだよなぁ……」

 

人間含めて生きる物が、背負う(ごう)たるものが『争い』なのだ。食糧・住みか・領土・豊かさ・宝・地位・女………多種多様な理由は有れども、譲れない者同士が出逢ったならば、片方が相手に譲るか、どちらがを押し退けても主張を通すかの、二択しかない。そうして強い者が生き残り、弱い者は淘汰され、歴史は作られてきたのだから。

 

「あーくんは私のモノだから………!」

『グルルルァ……………!』

(仲良くして欲しいんだけどなぁ………)

 

一人と一匹の争いを遠い目をしながら見つつ、彼は近くを泳ぐ魚を武器の投擲で仕留めて、インベントリアに入れていく。そんな彼を見ながら、京極は一人でニヤニヤと笑いつつも、近くを泳いでいた魚を切り殺してインベントリアに入れたのだった。

 

 

 

 

 

尚、此のバチバチの睨み合いはおよそ三十分続き、其の途中にアルクトゥス・レガレクスが乱入し、ペンシルゴン怒りの滅多刺しと京極の滅多斬りでエラを集中攻撃により沈んだ事を、此処に明記しておく。

 

 

 






恋とは何時だって戦争だ


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