VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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動く、動け




四の昼。クソゲーハンター、出逢う

ルルイアスにて三時間に渡るフィッシュハンティングを行い、途中で乱入したアルクトゥス・レガレクスを倒してセーブポイントへ帰還、食べられる魚か否かをアラバに鑑定して貰った後、シャンフロからログアウトした翌日の正午。

 

最近台風が日本本島に接近しつつ有り、時折雨が激しく降っては大学校舎の窓硝子を強く打ち、水溜まりが重なった場所では、小さな海と言っても過言ではない水没状態の様相を呈していた。

 

そんな天気の中、大学の学生食堂にて梓は一人昼飯の食券で一番安いカレーライス(500円)を買い、カウンターにて手渡し。職員が盛り付けたカレーの乗ったトレイを受け取り、セルフサービスの紅生姜とコップ一杯の水を添えて、混雑していない席の端を選んで座る。

 

「いただきます」の合掌と共に、白米とカレーの境目にスプーンを差し込み、其れを口に頬張る。ほんのり辛いカレールーと、ホクホクでちょっと固めに炊かれたライス、此の二種の絶妙なバランスが食事の手を、益々押し上げていく。

 

(ルルイアスは四日目、秋津茜(アキツアカネ)京極(キョウアルティメット)、オイカッツォはログイン出来ない日だ。そろそろクターニッドについて、本格的に調べる必要があるかも知れないな………)

 

ユニークシナリオEX『(ヒト)深淵(ソラ)を見仰げ、世界(セカイ)反転(マワ)る』。ユニークモンスター・深淵のクターニッドの根城にして、都市丸々一つが『反転』の権能(ちから)によって、海中で文字通り『引っくり返った』特殊なフィールド。

 

おそらくプレイヤーが唯一『地上判定』の元、海中に潜むモンスターと戦える此の場所で、七日間の攻略を目指すシナリオであり。現在ルルイアスの四方の塔に居座る、各々が異なる無効化能力持ちの四体の封将(中ボス)を倒し、更には四方の塔の間に在る石像から『あるもの』をユニークシナリオ参加者のペッパー・サンラク・オイカッツォの三人は手にした。

 

深淵のクターニッドと力を分けた一式装備・深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)、其れを動かす為に必要不可欠となる八個のエネルギータンクを。後は装備本体を探し当て、正しい位置にセットする事で動かせる状態まで到達している。

 

(取り敢えずログインしてから、ルルイアスの中心に在る城に行ってみよう。アイトゥイルとノワは留守番、万が一って事が有るだろうし)

 

そうして思考しながら、およそ十分で昼飯を食べ終えた梓は「御馳走様でした」と合掌。午後からのコンビニバイトに備えて、行動を起こすのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、某高校の某クラス。勉学の時間の終わりを告げる鐘が鳴り、一部の生徒達にとっては負けられない……惣菜パン確保戦を告げる、開戦の号砲が高らかに鳴り響く。

 

「んん………やぁっと昼休みだぁ」

 

クラスメイトの大半が学級食堂にて販売される惣菜パン争奪戦の為、我先にと向かうのを横目にする他の生徒に紛れ、楽郎は腕を伸ばして首を鳴らし、登校途中のコンビニで買った焼きそばパンを取り出して、封を開いて一口噛る。

 

「………最近のコンビニパンも、中々美味くなってきたな」

 

ソースの濃淡加減が絶妙に、其れをサンドするコッペパンとの相性が良い。炭水化物(焼きそば)×炭水化物(コッペパン)=美味いとは言うが、此れを考え付いた人は素晴らしい。拉麺×ミニ炒飯の組み合わせも捨て難いが。

 

そんな事を考えている彼だが、何故か『視線』を感じていた。

 

「……………………………………」

 

幕末(・・)の世界をゲームで経験している彼は、ある程度になるが周囲から放たれる『気配』を、少なからず感知出来る。一時期上位ランカーをキルするべく、幕末をやり込んだ事が有るので、其の時に身に付いた感覚は今も生きている。

 

(人数は『一人』、場所は………『教室の後ろ側の扉付近』か?)

 

故に『其の方向』は解るし、大雑把だが『人数』も解るので、彼は口に含んだ焼きそばパンを飲み込んで、ゆっくりと気取られない様に立ち上がり、移動する。

 

(あ、居た)

 

扉の後ろに寄り掛かって、深呼吸をしている『茶短髪の学校の制服を着た女子』を彼は見付ける。クラスメイトの会話を己の記憶を引っ張り出してみれば、こんな情報が有り。

 

『同級生で文武両道の高嶺の花と言われる良家の御嬢様。道を往けばナンパ・学校からは男子から告白され、其れ等全てを袖にする強者。名前を斎賀(さいが) (れい)』─────との事。

 

そして自分を見ているのが、其の斎賀 玲であり。一体何を以て此処に来たのか、其の理由は楽郎にも解らない。

 

と、此処で玲と楽郎の目が合った。玲は赤面&バッ!と柔道家みたいな身構えをし、楽郎はいきなりの豹変に心中で「えぇ……」といった具合をし。更に周りのクラスメイトは、二人のやり取りに静まり返り。

 

「あ、あの……陽、務……君」

「エッア、ハイ、何でしょうか?」

 

顔を熟れた林檎の様に、真っ赤なモジモジと指先を突っ付いたり、クルクルと回したりしている姿を見た彼の脳内にカセットゲームの如くセットされ、未だに外れず抜けないトラウマクソゲー(・・・・・・・・)の『ラブクロック』、別名『ピザ留学』の記憶で軋み始めて脳が震え始めたのだ。

 

「ピザは嫌だピザは嫌だピザは嫌だ…………」

「あ、あの!」

「は、はいっ!?何でしょうか!?」

 

教室が静寂になる。そして玲の口から放たれたのは。

 

 

 

 

 

「えっと、その…………放課後に『ロックロール』、で…………私『待ってます』…………ッッッッッッ!?!」

 

 

 

 

行間が色々と吹っ飛ばされ、真意を聞くより尚早く顔を真っ赤にしながら、全力疾走していく玲の姿。そしていきなりの御誘いを受けた楽郎は、パチクリと目を開閉し続けて首を傾げ。

 

そして彼の肩を掴むは、同じクラスの男子勢。

 

「HEY、楽郎。カツ丼奢ってやるよ」

「えっ、何で?」

「何でってそりゃあな?」

 

周囲を見渡せば、男子達がジト目&笑顔で彼の肩を掴んでおり。楽郎は其の瞬間、周りに味方が居ない事に気付く。そして彼は肩を掴む、無数の手を振り払い────

 

「フレに呼ばれたんで部屋抜けますね^^」

「捕まえろォ!!」

 

全力で逃走した。

 

 

 

 






オサソイ(ゲーム屋行き)


※玲は此の後オーバーヒート気味になって、五と六限目は保健室で休む事に。本人は御話と御誘いが出来たので、滅茶苦茶頑張った方

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