VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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クソゲーハンター、ロックロールへ




四の夕。明かされるは高嶺の花の一面

「おぅ、楽郎。お前斎賀さんと何時の間にフラグ建てたんだ?」

 

五限目の休み時間。昼休みは逃げ切れたが、其の間にクラスの男子組が結託したのか、包囲網が形成された結果として楽朗は男子勢に尋問を食らっている。

 

「いや、心当たりが無いんだけど……」

 

其れは間違い無い事実である。何があってこうなったのかは、流石の楽朗にも解らないのだから。

 

「裁判長・雑ピ。どう思います?」

「被告人・楽郎、とりま死刑で」

「『麗らかなる紫陽花』の出来はどうですかねぇ?」

「ばっ!?おま、何時から見てた!?」

 

裁判長にしてピアスで耳に穴を空けたら、雑菌が入ったせいで恵比寿様みたいな耳朶になったクラスメイトこと『雑ピ』に、最近作った『ポエム』の事を聞けば、全員の視線が彼の方へと向いた。こういう面倒事は、他者売却でのヘイトコントロールに限る。

 

尚、彼の作った其のポエムは、未完成では在ったものの『詩集に載せても良いんじゃないか?』な評価を得た、歴代最高レベルだった事を記載しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーン…コーン…カーン…コーン─────♪

 

雨が降る空模様に、聴き馴れたチャイムが鳴れば学校という戦場は終わりを告げて、生徒達は各々が所属する部活へと、そうでない者達は自宅への帰路に着く。

 

クソゲーハンターこと陽務(ひづとめ) 楽郎(らくろう)は無論後者の人間であり、技術革新によってフルダイブ型VRゲームが主流となっている今日、彼はまだ見ぬクソゲーを求めては通っている場所が在る。

 

『GAME-SHOP ロックロール』………楽郎が攻略してきたVRゲームの大多数を購入した此の場所で、彼は今日も今日とて『何時もの言葉』を以て店主に言うのだ。

 

「なんかいい感じのクソゲーあったりします?」

「いらっしゃい。相変わらずだねぇ楽郎君、クソゲーを求めるとはシャンフロは辞めちゃったの?」

 

レジエリアにて肩肘を付き、オレンジの半袖と青いジーンズ、店のロゴが入った紺色のエプロンを着けて微笑む女性が居る。彼女は岩巻(いわまき) 真奈(まな)、此のゲームショップを営む女店主である。

 

「いやいや。寧ろ絶賛やり込み中、神ゲーの名に偽り無しっすわ。ただまぁ、今やってるシナリオを終えたタイミングでクソゲーやっとかないと、感覚が鈍りそうなんで」

「へぇ~?君が其処まで言うとはね~」

 

クソゲーをプレイしてきたからこそ、其の対極たる神ゲーをどう思っているかを言い切れる。ゲームを語る楽郎の目は輝き、そして楽しそうな表情を真奈は見ていた。

 

「ところで、楽郎君。今日はどうして此処に?」

「いやぁ……クソゲー探しもそうだったんですが、確か『斎賀さん』って人に「ロックロールで待ってる」とか言われて。先に着いちゃったんですけど………って、どしたんです?」

 

彼の言葉に真奈の目は見開かれる。何せ『彼女』が……件の彼女が、まさか自分の見えない所で一歩前に進もうとしていた事に驚愕していたのだから。

 

「へぇ~………フフフ。此れは此れは………」

「?いや、何すか」

「………楽郎君、君も君で『鈍感』過ぎない?」

 

クソゲーに脳を支配され、ラブクロックのトラウマが抜けない限りは進展しなさそうな『フラグ』の匂いを感じ、ふと真奈は店に入ってきたは良いものの、楽郎を見てか近くの物陰に隠れてしまい、顔を出しては引っ込める斎賀 玲の姿を目撃する。

 

「ハーイイラッシャーイ、ソンナトコデツタッテナイデ、コッチニイラッシャーイ」

「あぅ………」

 

CVをケチった結果、無調教のボイスロイドに読ませた大根っぷりな台詞に、思わずツッコミたくなる楽郎だったが、改めてソソソ………とやって来た斎賀 玲と向き合う。

 

「あ、斎賀さん。昼間はどうも」

「は、ひゃい!昼間はどうも………です………」

「…………………………」

「…………………………」

(いや、何か言ってくれねぇか!?)

(どどどど、どうしよう………シャ、シャンフロでのルルイアス探索しませんかって、そ、そそそそ……其れをいいい……………きょ、きょきょきょ!!!)

 

沈黙が支配する。楽郎にとっては玲が何をしたいのか解らず、玲にとっては緊張で思考回路が再びオーバーヒートを起こし、話が一向に進まない。

 

故に─────数多の『ギャルゲー』を制覇した真奈は、煮え切らない此の状況を打破するべく、楽郎に幾つかの質問をし始めた。

 

「ねぇ、楽郎君。時に『数字の(ゼロ)』って日本語(・・・)でなんていうか知ってる?」

「!」

「えっ?そりゃまぁ『レイ』ですよね」

「フムフム、じゃあその逆に(レイ)英語(・・)にしたら(ゼロ)だね?」

「まぁそうなりますね」

 

此処までやっても尚気付かない楽郎の鈍感っぷりが凄いのか、はたまた目の前に居ながらも切り出せない玲が悪いのか。はぁ………と、真奈は小さく溜息を付いた後、楽郎へと答え合わせをするようにこう言ったのである。

 

「じゃあさ───────」

 

 

 

 

 

 

 

「君の目の前に居る、(レイ)(ゼロ)にしてみたり、その逆にしてみよっか?」

 

 

 

 

 

 

 

真奈の突然の言葉に、玲はバッ!!!と真奈に対して身構えて。対する楽郎は、頭の中で情報の精査が開始される。

 

(名前が斎賀 玲、玲をゼロやレイに変えたりして、で…………あ?斎賀 レイ、サイガ レイ………サイガ ゼロ………?…………!サイガ-ゼロ……『サイガ-0』!?いや、いやいやいや………ユニーク自発出来ないバカッツォや、鉛筆戦士にペッパーだって、流石にPNくらい少し変えるぞ………?)

 

だとしたら、其の正体を確かめるには『ゲーム内の名前』で呼ぶのが、一番の近道ではないか。少なくとも楽郎にとっての、此の場における『最善手』が選択された事により、彼は目の前に居る女の子に向けて言った。

 

「レイ氏?」

「しぁえふぁえんいおぁ!?!?!?」

「えっマジで!?」

 

目の前に居る赤面の美少女にして、同じ高校に通う同級生。リアルで文武両道の良家の御嬢様な高嶺の花は、世界が認める『おま国ゲー』ことシャングリラ・フロンティアに【最大火力(アタックホルダー)】として名を刻んだ、クラン:黒狼(ヴォルフシュバルツ)切札(ジョーカー)・サイガ-0其の人だったのである………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斎賀 玲=サイガ-0。

 

ゲームでよくある、ストーリー進行で謎の覆面キャラの意外な正体が解き明かされるのと同じ衝撃が、現在の楽郎を襲っていた。同時に彼の脳内では色々な情報や可能性が過って、精査されていく。

 

(マジかぁ………まさか玲さんがレイ氏だったとは、予想外にも程が有るだろ)

 

「えっと、真奈さん。もしかして玲さんに俺のPN教えたり?」

「ごめんね~。玲ちゃんが『サンラク』ってプレイヤーの事を『熱心』に話に出してきてたから、もしやって思ってね?」

 

ゲームで名前を統一するのは、一種のプレイスタイルではある。だがそうとなると、ますます『解らない点』が出てくるのだ。

 

現在彼女を含め、自分達はクターニッドのユニークシナリオを攻略中であり、シナリオが終わって地上に帰れば間違い無く黒狼との『戦争』が待っている事。

 

そして此のタイミングで、自身のリアルバレという諸刃の剣を突き立ててでも、其れを行ってきた『理由』が楽郎には解らない。

 

だが─────彼女が其の行動を起こした理由を『考察』・『仮説』を立てる事は出来る。

 

先ずサイガ-0は自分とシャンフロにて『フレンド登録』を行っている事、そして自分達のクラン:旅狼(ヴォルフガング)への移籍を希望しているとのクランリーダー(ペッパー)と、他ならぬサイガ-0本人の発言。

 

つまり其処から導き出されるのは──────

 

((サンラク)との『独自のコネクション』の形成、そして他者よりも一歩『先んじる』事か………!)

 

全ては此方の隠し持つ『ユニーク関連』を知る為の布石であり、セカンディルでのフレンド登録に、サードレマの救援信号時の即駆け付け。更にはリュカオーン戦時の全力を含めて信頼させ、最終的に自分のリアルを代償として此方のリアルを解き明かす、とんでもない一手を打ったのだ。

 

おまけに共通の趣味を持ってる者が近くに居ると嬉しいという心理的現象を刺激し、ルルイアスという物理的脱出不可の閉鎖空間という特殊フィールドを逆手に取った、まさに『此の瞬間まで私の掌の上だったんだよ、お前はなぁ!!!』な台詞が脳内再生余裕な事態になったのは、最早言うまでも無い。

 

(成程、やってくれる………!)

 

此処までやられては、スタンディングオベーションの他無い。流石文武両道の高嶺の花・斎賀 玲、全て彼女の計算の内だったという訳だ。

 

「あ~……レイ氏。今日ってシャンフロ出来たりしますか?今日含めると、残りあと四日日しか無いですけど」

「ふぇ!?あ、はい!今日と五日目は夕方から、六日目と七日目は夜から動けます!」

「了解です。あ、あと専用のチャット部屋のID送りますね」

 

一先ず不明であったサイガ-0の予定を聞き出せたので良しとしつつ、楽郎は玲のスマフォへ【ルルイアス最前線】と題したチャット部屋の入室パスワードを送った。

 

「では、玲さん(・・・)。今日六時にシャンフロにて」

「ヒュッ」

 

そうして楽郎はサイガ-0衝撃の正体によって、当初の目的だったクソゲー探しを忘れてしまい、ロックロールを後にする。残されたのは斎賀 玲と岩巻 真奈、そして店内の複数の客のみで。

 

「数年越しの快挙ねぇ~………ありゃ玲ちゃん?」

「───────エヘ、エヘヘ………」

「玲ちゃん、戻っておいで」

「ほぴゃあ!?」

「本当はあの場面、貴女から誘った方が良かったけど、寧ろ同じイベントをやってるって点を加味すれば、今回の成果は『上々』よ。というか、楽郎君も無自覚で玲ちゃんを下の名前で呼んでたし。…………兎に角此処からは間髪入れずに、ドンドン距離を詰めていきなさい」

「は、ひゃいっ………!」

 

ニヤニヤと笑う女が赤面する乙女へ、次なる一手を打つべくアドバイスを送っていくのだった…………。

 

 

 

 






同級生は最大火力(アタックホルダー)




※尚、此の後真奈さんは今夜の夕食にドンペリを開ける予定、そして旦那さんの為に真心込めたオムライスを作った。

半熟卵のオムレツとデミグラスソースたっぷりの奴で、境さんの胃は滅茶苦茶回復し、彼は感動の嵐で泣いた。


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