VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ラーメン一杯を賭けた、ビルディファイト。始まります




胡椒と鰹節のレトロゲーム対決 ~中編~

ビルディファイトのアーケード箇体の中に顕現したコロッセオ。其所では今、2人のファイターによる腕比べが行われていた。

 

「相っ変わらず、硬ェ…なっと!」

「そっちは速すぎだろ!どんだけ俊敏に能力配分置いてんだよ…くっ!」

 

ブシカッツォの操作するビルドキャラ:リーエルが脚部装備のリジェクターアーマーで、スケートに似た浮遊移動を行ったと思えば、アーマーが火を噴き出して加速し、一気に間合いを詰め切る。

 

加速+アーマーのブーストによる積乗が重なり、A-Zの操るノブ=ナッシュの脚部に纏う戦闘用ガントレットに蹴り技となって直撃。

 

しかしノブ=ナッシュ━━━否、A-Zも負けてはいない。直撃を受けた瞬間、わざと転ぶ形で威力を流し、即座にダウンより復帰する事で、本体と装甲のダメージを最小限度に抑えて見せた。

 

「ホント、一丁前に硬ェな。コイツにどんだけ苦しめられたか…!」

「そりゃ当然。受けて、受けて、受けきって、最後にドカン!が、ノブ=ナッシュのスタイルなのだ!」

「お前の後出しは、毎度毎度反則レベルなんだよなぁ!少しは自重しろや!」

「メタりまくってるのに文句は言わねぇけど、そっちも自重しやがれっての!」

「メタ張らねぇと簡単に勝てねぇからやってんだよ!」

「嗚呼そうかい!」

 

喧嘩腰にギャーギャー言い合いながら、リーエルの上空踵落としを捌いたノブ=ナッシュが拳連打の技『ラッシュ』で、リーエルの脚部のリジェクターアーマーに連続で直撃させる。

 

「なら、コイツでどうだ!」

 

距離を取って再加速し、イナズマターンでノブ=ナッシュの背後に回り込み、リーエルが背中に『ジェットキック』という蹴り技を入れる。其の一撃にノブ=ナッシュの体勢が前に崩れるも、お前も道連れにしてやるとばかりに、リジェクターアーマーを左手で鷲掴み、雪崩れ込むようにして投げ技の『道連れ落とし』と共に、地面へ自分とリーエルを叩き着けた。

 

「残念だったな、多少の被弾は織り込み済みだぜ!ブシカッツォ!」

「解っちゃいたが、こうもやられると無性に腹立つわA-Z…!!!」

 

色々言い合いながらも、2人は今同じ感情を抱いている。『楽しい』のだ、此の一瞬が。隠した策を如何にしてぶつけるか、組んだコマンドをどのタイミングで使用するか。

 

シナプスを通じて、全身を走る電気が肌をヒリ付かせ。指先の感覚や視覚聴覚の全てまで、此の戦いに勝つために脳のリソースを費やす、此の昂りが。

 

「おい、A-Zとブシカッツォが戦ってるぞ!」

「え、マジで!?ヤッバ!」

「うぉぉぉぉ!すげェ!!!」

 

そんな2人の戦いを見たゲーセンの利用者達が次々にやって来て、そう時間が掛からない内に周りを観衆が囲い込み、大画面に写されるライブ中継をスマフォで撮影したり、興奮で奇声を上げたりする者まで現れる。

 

「ボルテージが高まってるな、ブシカッツォ」

「良いねA-Z、盛り上がってきた」

「負けても文句は言うなよ?」

「魅せる戦いも、ゲーマーの仕事だろ?」

「其れもそうだ。が…お前相手に手は抜けねぇよ!」

「全く以て同意見ッ!!!」

『『勝つのは…俺だァ!』』

 

ノブ=ナッシュのガントレットとリーエルのリジェクターアーマーがぶつかり合う。火花は散り、炎は燃え、歓声に店内は沸き上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーエルとノブ=ナッシュ。此の2体のキャラを例えるならば、かの有名な『矛盾』が思い浮かぶだろう。

 

対極のビルド(速攻VS耐久)

対極の能力値(攻撃型VS防御型)

やられる前にやる(ブシカッツォ)受け切って勝つ(A-Z)

どちらも正反対の勝ち方を目指すプレイヤー。

 

反対であるが故に、互いの強さも弱さも解る。

そして其れを、倒して超えんとするのだ。

 

「そらそらそらぁ!!」

「ちぃっ…!」

 

リーエルの脚部装甲たるリジェクターアーマーが、火と蒸気を大きく上げながら、連続蹴りの技『ガトリングスタンプ』を小刻みに、ノブ=ナッシュの腕部脚部を守るガントレットに叩き付けていく。

 

対するノブ=ナッシュは、ガトリングスタンプに手も足も出せないのか、頭と腹部を守るように必死にガードする事しか出来ていない。

 

「おいおい、A-Z押されてねぇか!?」

「ビビんな、攻めろー!」

「いけー!ブシカッツォー!!!」

「このまま攻めきれ!いけるいける!」

 

ガードによりノブ=ナッシュの体力の減りは少ないものの、此れを何時までも続ければ、何れガントレットはアーマーブレイクによって破壊されてしまう。

 

其れでもA-Zはノブ=ナッシュのガードを解かない。受けて、受けて、ひたすらリーエルのラッシュを受け続け。

 

「このまま………いや、違う!!」

 

突如としてブシカッツォは、リーエルのラッシュを停止し、距離を取った。

 

「え、何で止めたんだ!?」

「詰めきれたろ、今の場面……」

「いや……今のブシカッツォの判断は正しい」

 

砂塵舞うコロッセオに立つノブ=ナッシュは、リーエルのガトリングスタンプによりガントレットにダメージは受けども、体力は最小減少で済んでおり。

 

「…………良いね、ブシカッツォ。そのまま攻めてくれてたら、勝てたんだが」

 

各プレイアブルキャラクター並びに、ビルドキャラクターが放つ逆転への一手を生み出す『必殺技』、其の技を起動する為の『必殺ゲージ』のメーターが、ノブ=ナッシュはレベル3寸前(・・)まで到達していた。

 

「まさか、さっきのラッシュを受けたのって…!?」

「そうだ、A-Zはノブ=ナッシュの体力と耐久なら確実に耐え切れると踏んで、必殺ゲージをレベル3付近まで持っていく為に受けていたんだ」

「マジかよ…!」

 

防御型ならではの、しかし防御型だからこそ出来るゲージ調整。例え必殺技を外し、ガントレットが破壊されても、持ち前の体力と耐久ならば、再度ゲージを貯められる。A-Zは其れを狙っていたのだ。

 

「あっぶね…。お前のレベル3必殺は、食らったら間違いなくKOされる。だがまぁ、バカスカ受けてくれたお陰で此方は先にレベル3を越えられたぜ(・・・・・・)……!」

 

しかしA-Zの予想より早く、ブシカッツォのリーエルはレベル3までゲージを蓄積し、早くも必殺技発動の構えを取っている。

 

『レベル3・FINISH MOVE!』

『エクスプロージョン・チャージ!!!!』

 

必殺技発動音声が筐体のスピーカー部分より鳴り響き、リーエルに装着された脚部のリジェクターアーマーの全ジェネレータが解放。エンジンが唸りを上げながら蒸気と炎を噴き上げ、同時にI字バランスを取るかのように、脚を高く天に翳した身体が、高速回転を開始。

 

蒸気と炎による紅白の竜巻がコロッセオに生まれ、リーエルが何を仕掛けてくるか解らぬ中、ノブ=ナッシュは左腕のガントレットを前に出し、空手家特有の受けの姿勢で

 

「遅いッッッッッッ!!!」

「!?」

 

 

 

 

 

 

A-Zが殺気を感じ、咄嗟に動かした其の時。

 

赤と白の閃光が、ノブ=ナッシュの左側を(はし)り。

 

左腕のガントレットが、木っ端微塵に弾けた。

 

 

 

 

 

「え………」

「何ぃいいいいいいいいいいいい!?」

「は!?今何した、ブシカッツォの奴!!」

「いや、まだ来るぞ!」

 

ブシカッツォのリーエルが繰り出した必殺技により、A-Zのノブ=ナッシュの左腕ガントレットが破壊され、観衆がざわめき、どよめくが、直後に第二撃が体勢を崩したノブ=ナッシュを直撃。

 

車に轢かれたように宙を舞い、背中からコロッセオに叩き付けられてしまう。体力が削られ、必殺ゲージがレベル3を突破するが、先程の一撃で体力調整は『完全に崩された』。

 

「は、速過ぎる…!!」

「何が起きてるのか、全然わからねぇ…!?」

「A-Z!ヤバイぞ、3発目が来る!?」

 

直角を描くようにターンをしたリーエルが、電光石火の如く赤と白の閃光となって、起き上がろうとしているノブ=ナッシュに迫ってきた。

 

「………そうゆう(カラクリ)か、ブシカッツォ!」

 

超接近するブシカッツォのリーエルに、ノブ=ナッシュを操るA-Zが取った行動は――――『両脚のガンドレットを盾に頭をガードする事だった』。

 

「お、おいいいいいいい!?」

「何やってんだよ、A-Z!!」

「うわあああ!!?やられるぅぅぅ!?」

 

頭を守る為に出した直後に、ガントレットはリーエルの攻撃が直撃し、同時に音を立てながら、粉々に砕け散っていく。

 

「――――ッ!今だッ!!!!」

 

両脚のガンドレットが粉砕されていく中、A-Zはノブ=ナッシュの両足を、左へ流すようにローリング。唯一ガントレットが無事な右手で、リーエルの『左脚』を押すようにして叩く。

 

すると其の身体はバランスを崩して地面に倒れ込みそうになり、ブシカッツォはリーエル『右腕』を出して接触を防いだと同時、地面はガリガリガリガリ!と鉄が削る音と砂煙が発生する。

 

砂煙が晴れ、A-Zと観衆が見たのは。

 

 

 

 

 

 

リジェクターアーマーが右腕に装着され。

 

右足は素足へとなっていたリーエルの姿だった。

 

 

 

 

 

「え……!?」

「なんじゃそりゃ!?」

「腕に…アーマー着いてる…!?」

 

観衆が驚きの声を挙げる中、A-Zは早くも答えに辿り着いていた。

 

「其のリジェクターアーマー…『腕』にも装備可能な『多様式装備装甲(デュアリンクアーマー)』だったか、ブシカッツォ!」

 

多様式装備装甲(デュアリンクアーマー)…其れは通常の装甲以上に積載重量を食う代わりに、他の部位へとスイッチによる、装備変更を可能にする特殊な装甲。

 

種類や形によってマチマチだが、使いこなせれば非常に強力な武器となる。今回ブシカッツォが装備しているリジェクターアーマーは、脚部ではブースターに、腕部ではランスアームに似た機能を持ち、レベル3必殺技のエクスプロージョン・チャージで、回転を目眩ましに右足から右腕にシフト。

 

ノブ=ナッシュのガントレットと体力を、超スピードによる突進攻撃により破壊しに掛かったのだ。

 

「バレたか。割と初見殺しギミックとして結構自信あったのに、よく対応出来たなA-Z。………まぁだが、ノブ=ナッシュの右腕以外のガントレットはキッチリ破壊出来たし、おまけにそっちの体力調整もブッ壊してやった。

 

此処からクライマックスだ、勝たせて貰うぞ」

 

 

 

片や必殺技と隠し持った牙により、予想外の大ダメージを与えて、宿敵を追い詰めたブシカッツォのリーエル。

 

片や必殺ゲージはMAXに向かいながらも、体力調整の破綻に右腕のガントレット以外を失い、追い詰められたA-Zのノブ=ナッシュ。

 

勝負は最終局面に向かっていく………――――。

 

 

 

 

 






我が為に、研ぎ澄まされた牙を向け


ノブ=ナッシュ:本能寺の変時の織田信長がモチーフとしている、A-Zのビルドキャラクター。体力・耐久・技術に能力値配分を置き、両腕両脚ガントレット・腰部に軽量装甲を纏う。

コンセプトは『受けて、受けて、受けきって、最後にドカン!』の下に、必殺技で捲り返す後攻カウンター型。


リーエル:ブシカッツォ作のビルドキャラクター。攻撃力・俊敏・破壊力に能力値配分を行い、脚部に多様式装備装甲リジェクターアーマーと呼ばれる加速・攻撃力を大幅に上げる代償に、積載重量限界ギリギリの装甲を装備している。

またリジェクターアーマーは脚部では浮遊機動とブースターを用いた足技を、腕部装備時には最高速度到達と共に解禁される装甲破壊能力で、怒濤の攻めを得意とする。

リジェクターアーマーのモチーフは『戦国ARMORS』に登場する、五大(ごだい)甦土武(ソドム)の一柱・夜叉(ヤシャ)







コマンド:ビルディファイトは、既存のプレイアブルキャラクターやビルドしたキャラクターの技のコマンドを自由に入れ替えられる。普段使う技を出しやすくしたり、万が一に使えるように調節出来る。

コマンドには投・絞・打・組の4種類があり、絞め技オンリーにしたり、投打の二刀流も可能となっている。



必殺技:ビルディファイトではキャラクターは相手からのダメージを受ける、もしくは相手にダメージを与える、攻撃をガードする事により必殺ゲージが上昇していき、一定値を消費する事で強力な技を繰り出せる。

必殺ゲージはレベル1・2・3・MAXの4段階で、段階が上がる程に強力な必殺技となる。此の必殺技もカスタマイズする事が可能で、レベルMAXの必殺技は発動・直撃すれば何れもゲームセットを狙える物になっているが、最強クラスの必殺技は複数ストック出来ず、レベル1にセットした場合は性能が相応に低下する。

また必殺ゲージがレベル3の状態の場合、レベル2の必殺技からレベル1の必殺技へ繋ぐ事は可能で、逆も同じように出来る。
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