VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ルルイアスの城、探索




四の夜の壱。勇者一向、重要事項を知る

反転都市ルルイアス……其の中央に鎮座する巨城にやって来たペッパー達一向は、二手に分かれての捜索を開始して、既に三十分が経過していた。

 

「ペンシルゴン、そっちには何か有ったか?」

「駄目だね………此の部屋含めて粗方見たけど、使えそうなオブジェクトやアイテムらしき物は、一切見当たらない」

「此方もなのさ」

『ワゥ……』

 

ベッドの下や上、タンスの全引き出しに裏側等を隈無く探したものの、出てきたのは埃と衣服の切れ端と、廊下に立つ錆び付いた甲冑の持つ、此れまた錆びけたハルバートと腰に刺された剣しか無い。

 

(一階に無いとなれば、二階か最上階………。クターニッドは地下に居ると仮定して、城が在るって事は此処を治めていた『王様』が居たと見て良い)

 

ペンシルゴンは言っていた。シャンフロとは世界観を『考察』して、其れを元に『攻略』する事を基本としているゲームであると。ならばクターニッドは何を以て、ルルイアスに居るのか?何故に都市を丸々一つ、深海にて引っくり返しているのか?

 

都市が在るという事は、当然ながら『人』が居た筈であり。此の大都市を支える為、牛やら羊やらの『家畜』も少なからず存在していた。だが都市の家屋には人が営みを形成していただろう、生きていた『証拠』が何処にも無かった。

 

つまり──────

 

「此の城の何処かに誰かが書き遺した『日誌』か、其れに近しい物が置いてある筈だ……!ペンシルゴン、ノワ、アイトゥイル。二階へ行こう」

 

一階では目ぼしいアイテムは無かった……ならば次の階層を探すのが、古今東西新旧問わず探索ゲームに存在する、絶対の醍醐味である。

 

ペッパーの呼び掛けに、一人と一羽と一匹は二階へと続く上り階段を駆け上がり、二階へと急ぎ向かうのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ペッパーさん。一階はどうでしたか?」

 

二階への階段を駆け上がり、廊下を進んでいたペッパー達は近辺を捜索していた、レーザーカジキとシークルゥに出逢う。

 

「収穫は無かったよ………あれ、ルストとモルドは?」

「御二人は最上階を探索すると言ってまして、僕とシークルゥさんで二階の部屋を見て回ってました。でも鍵に成りそうなアイテムは見付からず………」

「かなり広いで御座るからな、此の城は………」

 

やはり複数人で手分けして探すのが正解だったかと考えながら、ペッパーはレーザーカジキとシークルゥに質問をしてみた。

 

「レーザーカジキ、シークルゥさん。此の二階で『王様が自室としていた部屋』を見掛けなかったかな?」

「王様の部屋、ですか?」

「可能性としては其処に『日誌』が置いてあると思うんだ」

「………あ、そういえば。シークルゥさん、さっき通り過ぎた部屋の扉だけ、少し『大きくなかった』ですか?」

「………!うむ、確かに彼処やも知れぬな」

「案内を御願いします」

 

レーザーカジキ&シークルゥの案内の元、二人と一羽と一匹は後に続き、そうして辿り着いた部屋の扉は確かに、走り過ぎて行った他の部屋よりも大きな物であった。

 

罠の可能性を考慮し、慎重に扉を開けて。アイトゥイルの持つ桃燈で室内を照らしながら潜入するも、部屋には人の気配も無く。其の部屋に在ったのは、無数の本棚と机に一冊の本が置かれているのみ。

 

「何というか………『執務室』っぽいね、あーくん」

「そうだな………。一応周囲警戒を怠らずに、読んだらイベント発生の可能性も有るから」

 

レトロホラゲーなら此の手の日誌を読み終えた瞬間、最後の敵との鬼ごっこ開始、捕まればガメオベラ───なんて展開は御約束も御約束だったので、警戒するに越した事は無い。

 

では、読むとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

『海の果てより、忌々しき【青】が来て何れ程の時が経ったであろうか。

 

西に続き既に南の街は【青】に呑まれ、此の島より逃げ出さんとした大臣達を乗せた船は、此の島を蝕むもの以上の【青】によって海の底へと引き摺り込まれた。其の光景は民のみならず、王である我等すらも絶望させるに事足る光景であった。』

 

 

 

(いや待って!?待ってってば!?開幕初手、最大火力で殴ってくるの止めて下さい、死んでしまいます!!?というか何ですか青って、ルルイアスは何かの侵略を受けてたの????)

 

だが其の侵略を行っていたのが、どうやらクターニッドではなく青なる存在だという事が解った。続きはどうだろう?

 

 

 

『もはや街は【青】の占有物と化した。【青】に呑まれた民や家畜は、其の身を【青】の一部にされてしまう。

 

だが幸か不幸か、つい先日まで城の大部分に一族郎党で居座っていた潔癖症の大臣達が退去した事で、我々は後の憂い無く民を城へと避難させる事が出来る。今日此の日を以って城は、民に対して門を閉ざす事は無い。』

 

 

 

「此の青って一体何なんでしょう………」

「見る限りヘタレの王様って感じだねぇ」

「其れは言わんでやってくれ、ペンシルゴンよ………」

「其れにしても、青なる存在は中々に危険な雰囲気なのさね………」

 

ページを捲って解ったのは、青なる存在は『有機物』だろうが『無機物』だろうが『取り込める存在』であり、多分だが『触れたら一発でアウト』と断言して良いと思われる。

 

 

 

 

『【青】に挑み、奴の一部と消えた兵達の損失を差し引いても、この城は今生き残っている全ての民を収容できてしまった。本来ならば、此の数十倍は民がいたというのに【青】に対し、何も出来ずにいる己が恨めしい。

 

代々継承してきた輝かしい王冠の威光と、何れ訪れる救世の神を象る鎧を納めた箱は、私に資格が非ずように開く事は無い。其の二つ健在なれども、来たりし災厄に対して何も意味も成さなかった。』

 

 

 

「鎧………もしかして───!」

「おそらく、深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)と見て良いと思う」

「続きが気になります………!」

 

王冠と救世の神を象る鎧、此の二つは此処ルルイアスを統治していた王様の権威の象徴であった事。此れが何か、意味を持っているのは間違い無い。

 

ペッパーは其の手で、次のページを開く。

 

 

 

『じわじわと追い詰められていく焦燥と、大臣達が食料の大部分を持って船に乗り込んだのが、今も夢に出る程に酷く恨めしい。百余人の民の食い扶持を支えるには心許ない食料庫の光景が、絶望を積み重ねていく。我等はやはり此処で死ぬしかないのだろうか。』

 

 

 

「最終的に内ゲバ起きて全滅パターンだね、コレは」

「でも、部屋には争った形跡は在りませんでしたよ?」

「拙者もそう思うで御座る」

「ワイもシー兄さんに同意なのさ」

 

少なくとも青なる存在に捕まって取り込まれた……という訳では無いらしい。まだ続きは有るので、其れを読めば何か解るだろうか?

 

 

 

『嵐だ、全てを捩伏せ海へと還すような酷い嵐が此の国を襲った。だが国に深く根付いた【青】を洗い流す事は出来ない……。私を含めて、誰もがそう思っていた。』

 

 

 

おや、流れが変わったようだ。

 

 

 

『しかし───荒天を纏い、海より伸びた【青】を引き千切って其れは現れた。其の姿を如何に形容すればよいのか………其れは人を、家畜を、家屋すらをも呑み込んだ【青】を。

 

破滅をもたらす手招きを、唯々力尽くで振りほどき、逆に蝕み滅ぼす姿。其れはまるで、八つの首を持つ巨大な龍の様相であった。』

 

 

 

「八首の龍………クターニッドの事だね」

「でも、クターニッドって確か『大きな蛸さん』でしたよね?本体含めて触手と合わせたら『九頭龍』じゃないですか?」

「九頭龍で御座るか………あいや確かに」

 

(九頭龍……きゅうとうりゅう……きゅとぅりゅー……くとぅりゅー………『クトゥルー』?確か『クトゥルフ神話』の中にそんなヤツが居たような………あ、クターニッドのモチーフって『クタニド』か?)

 

TRPGをやった事が有るペッパーは、クトゥルフ神話について調べた記憶を引っ張り出した時、其の名前が浮かんだ。其の時の文面では確か、クタニドはクトゥルーの従兄弟であり、見た目こそ同じ姿をしているものの、本質は『人間達を守りたいと願う』強く優しい神なる存在だとか。

 

そうなるとクターニッドの行動に関しては、見方が変わってくるだろう。

 

 

 

『窮した我々にとって例え其れが【青】を制した後に、我等を蹂躙するものであったとしても。私が幼き日に壁画で見た、救世の神と異なっていたとしても。其れでも我等にとっては、正しく救いの神であった。

 

我等は其の威が我等に向く事に怯えながらも、蹂躙してきた【青】を打ち砕く神に声援を送り、願い、祈った。』

 

 

 

壁画という単語、何か重要な情報を秘めている可能性が有るが………其れよりもクターニッド 対 青、其の決着や如何に。

 

 

 

 

『そして遂に────【青】は沈黙した。神が【青】に勝利したのだ。最早街並みが我等を喰らう事もなく、誰が命じたわけでもなく、城門は開かれた。我等は誰が命じたわけでもなく神の前へと跪き、問い掛けた。貴方の名は………と。

 

果たして神は、我等の言葉に答えを返した。神は仰った。我が名はクターニッド、深き淵に座する者。神ならざれど、神なる力を振るう者と。

 

神は我等を救った見返りに、神は此の国と己と力を分けた鎧を欲した。』

 

 

 

「此れがクターニッドの盛大な『マッチポンプ』なら笑うしかないねぇ?」

「流石に其れは無いと思いますけど………。でもだからと言って、お魚さん達を酷い姿に変えたのは許せません………!」

「レーザーカジキ、其の怒りはクターニッドとの戦いにぶつけてやれ。今は其の時じゃない」

 

ペンシルゴンならやりかねないと、頭の片隅にて思いつつも、ペッパーは思考する。滅びの危機を止めた見返りとして、都市と己の鎧を取引した。少なくともクターニッドには、何かを要求出来るだけの『知能』が有るらしい。

 

 

 

『神は国と鎧を……我等のいないルールイアをこそ所望した。民の中にいた幼子が、無知故の蛮勇をして神へと問いを投げた。我等を追い出すのか、と。

 

神は怒らず、そして答えた。此の地は既に人が住むに適わぬと、死して尚地に染み付いた【青】……神曰く『狂える大群青』は何時の日か再び、全てを喰らわんとして蘇る。故に此の島其の物を、私が海の底へと持ち帰る。滅びの運命を是とするならば、勝手に住まえば良い─────と。』

 

 

此処までで判ったのは、三つ。

 

少なくとも、ユニークモンスター・深淵のクターニッドの行動は『善側』の行いである事。

 

嘗てルールイアを全滅寸前まで追い詰めた青こと、狂える大群青は『ヤバい存在』だという事。

 

そして此の狂える大群青は確実に『フィールドギミック』として、自分達に襲い掛かる可能性が在るという事だ。

 

 

 

『此の日記が誰かに読まれる事は、恐らくないであろう。だが私は此の日誌を、此の城へと遺す。此の世界には嘗て、ルールイアという国があった証であり、私がルールイアの王であった残滓である。

 

我等は生き残った民と共に島を去る………船出の刻は近い。我等は神に永遠の感謝を捧げるであろう。此の王城は既に、神によって要石と成った。玉座に在りし要の碑と共に在る神を象る鎧こそが、ルールイアの新たなる統治者の証であり、私は王の権威を誓いと共に譲り渡した。』

 

 

 

此の文面でハッキリと判った。此の城の何処かに在る王冠と、クターニッドと力を分けた一式装備こと深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)は、ルルイアスの反転の権能(チカラ)を成す要石でも有る事。

 

即ち此の二つを蘇らせた瞬間に、クターニッドとの戦闘が始まる可能性が高い。

 

 

 

『最後に………王権の継承の時に、私が父と母より語られた言葉を書き示す。

 

気高き心を持つ者よ、箱の前に立ちし時に其の重扉は開かれる。納められしは、救世の神を象る一式の鎧と円大盾、八の煌めきと共に刻む時を逆廻させ、其れは目覚める。

 

名を───深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)。幼子の私が最上階の天井壁画で見た、ルールイアを救う神の化身を示した(あざな)である』

 

 

 

此のページを最後に日誌は終わりを告げた。ペッパー・ペンシルゴン・レーザーカジキの三人は、互いに顔を見合せて。同時に同じ事を考えるに至った。

 

(((コレ、ヤバくない???)))

 

──────と。

 

 

 

 






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