VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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襲い掛かる脅威




四の夜の伍。災禍の中に混沌、故に狙うは一斉討伐

自分達は今、地獄を見ている…………………ルルイアスの中心地、ルールイアと呼ばれた都市の巨城のテラスから見た景色に、此の場に居た全ての開拓者とNPCが思った事である。

 

アーコリウム・ハーミットの背中の貝殻から産み出された新たな生物達が、アトランティクス・レプノルカへと突撃し。其の生物達をスレーギウン・キャリアングラーがフェロモンを使って、諸とも強奪して自身の眷属化させんとし。

 

だが其の眷属や生物を一匹残らず、蒼い雷を振り撒き撃ち抜いて、感電死させながらスレーギウン・キャリアングラーに噛み付き、其のままアーコリウム・ハーミットにぶつけてサンドイッチにするアトランティクス・レプノルカの姿。

 

「シャンフロにも『MVM』の概念は有ったか……。いや其れにしたって『アトランティクス・レプノルカ』があの中じゃ群を抜いて強い………か?」

 

MVM、通称『モンスター(MONSTER) (VS) モンスター(MONSTER)』。

 

MMORPGでは時折見掛けるが、縄張り争い等でモンスター同士が対面した時に起きる現象の一つであり、其れによって環境に甚大な被害が及ぶ事もある危険な状態でもある。

 

空母鮟鱇を要塞ヤドカリにぶつける戦艦鯱、だが背中の貝から産み出される生物達が鯱の身体に食い付き、対戦艦鯱用にチューニングされた毒が次々と流し込まれて。しかし其れにも屈する事無く、鯱は噛み付いた鮟鱇の巨体を掲げて叩き付けんとした所に、貝殻を砲弾としながら突貫したヤドカリにカチ上げられ、鮟鱇を放してしまう。

 

「ナニアレ」

「大乱闘………なのかな?」

「ねぇ。サンラク君、あーくん。アレはどーゆー状況?」

「鯱がアトランティクス・レプノルカ、ヤドカリがアーコリウム・ハーミット、鮟鱇がスレーギウン・キャリアングラー」

「うん、モンスターの名前じゃなくてね?」

「まぁ……ルルイアスに迷い込んだ、としか言えないよなァ」

「ふぁあああ…………!」

 

あの場所は深海の世界が産み出した頂点捕食者による頂上決戦であり、ノワを除くNPC達はあまりの光景に呆けてしまい。だが此処でペンシルゴンが見付けたのは、此方に向かってくる小さな『二つの点』であり、其れは段々と大きくなって近付いて来て。

 

「アラバさん!」

「全員居るか!」

『スチューデ、ナかない』

「お、お前等!無事だったか!?」

 

空を泳ぎ、ネレイスと共にアラバと。彼の脇に抱えられて、泣きべそで顔がぐちゃぐちゃになり掛けながらも、何とか堪えるスチューデが来たのである。

 

「まさか深海の頂点捕食者達が、一同にルルイアスにて介するとは………!」

『ネレイスも、こんなコウケイは………ハジメテみる』

「いきなり雷が降ってきたと思ったら、変な魚まで来たんだぞ!何なんだよ、アレは!?」

「クソガキの意見に同意する」

 

ルストの言葉にペッパー含めた此の場に居る全員が、コクコクと首を縦に振って同意して。そして今も尚遠くで暴れまくる三体を見て、ふと皆の顔を見た時にサンラクだけが何かを思い至っているように見え。そしてサンラクもまた、此の場に集まった動ける面々の中でペッパーだけが、違う感情を抱いているのに気付く。

 

「おぅ、ペッパー。もしかしてだが『やる腹積もり』か?」

「奇遇だな、サンラク。実は俺も『同じ事』を考えてたわ」

 

同じ考えを抱くが故に通じる会話に、他の面々は首を傾げる。そしてペッパーはアラバに一つ質問をしてみた。

 

「アラバさん、アトランティクス・レプノルカとアーコリウム・ハーミット、其れからスレーギウン・キャリアングラーの『好物』………よく『好んで食べる魚』って有りますかね?」

「好んで食べる、か。………其れならやはり『キリューシャン・スフュール』だろうな。アレは深海の珍味と呼ばれる『シャコ』なのだが、成体まで生き残れた個体の肉は絶品に等しく、其の甲殻は並の鐵すら足下に及ばぬ強靭な素材になるのだ」

 

アラバの説明からペッパーはインベントリア内を確認、ニンマリと笑って。そして同じく深海三強たる鯱・ヤドカリ・鮟鱇の姿を見つめるサンラクと共に、皆に言った。

 

「今から俺とサンラクで、彼処で暴れ散らかしてる深海の頂点捕食者達を倒してくる。アラバさんのお陰で、ちょっと『攻略法』を思い付いた」

「アラバ達は四方の塔に避難しておいてくれ、多分鯱のビームや雷を反射出来る場所に居た方が安心………とまではいかないが、身を守るには最適だろうぜ」

 

見ているだけでヤバいというのが解る筈なのに、何を根拠にして『勝てる』と言うのか。其れは生還手段も無い中で、死地に赴く事と同じではないか。

 

「な、何で……お前等、怖くないのかよ………?」

 

そしてやはりと言うべきか、スチューデが震えた声で問い掛ける。だからこそ此処で、スチューデに対して行ったロールプレイ(・・・・・・)を重ねて示すのだ。

 

「スチューデさん。きっと貴方の御父様も、こんな気持ちだったのでしょうね………」

「えっ……………?」

「自分の後ろや隣に、大切な人や守りたい者が居る。自分が死ぬかも知れない中で、己の命以上に守るべき存在が在るなら。自分という『存在を賭けて』、敵に立ち向かえるんだって…………そう思うんです」

 

スチューデの父親が一体どんな人物だったかは定かではないものの、部下と息子を守って死んだのならば。きっと『そういう事』なのだろうと、自分は考えられる。

 

「あーくんが其処まで言うなら、私も無関係の知らんぷりで撤退…………って訳にはいかないんだよねぇ?」

『ワウ!ワウ!ワウ!』

「フフフ………其の通りなのさ、ペッパーはん」

「私だって、サンラクさんの御手伝いをしますわ!」

「わ、私も………です!」

 

ほんのり頬を赤らめながらもペンシルゴンがペッパーの隣に立ち、頭にアイトゥイルが乗り、ノワは『私もやるよ!』と吠えながら彼の足下に歩み寄って。サンラクの隣にサイガ-0が、頭にはエムルが飛び乗った。

 

「ぼ、僕は先にシークルゥさん達を、塔に避難させてきます!」

「モルド、私達でクソガキ達を護衛」

「う、うん!」

「ペッパー、サンラク……くれぐれも無茶はするなよ!」

『キをツけて』

「アイトゥイル、エムルよ。絶対に死ぬな……!」

「お前等…………!」

 

パーティーは此処に、二つへ分かれた。

 

ペッパーやサンラクを始めとする、攻撃力・機動力の有るメンバーが深海三強討伐組へ。遠距離攻撃手段を持ち合わせ、ヤドカリの産み出した生物や鮟鱇の眷属を遠距離から叩けるメンバーが、スチューデの護衛組に回って動き出す。

 

此処に三強落としにして、ルルイアス怪獣大決戦が幕を開ける…………!

 

 






特選隊、往く


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