VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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スチューデのイベントの後先




五の逢魔時から夜。勇者は座礁船へ向かいて宝を探し、現実にて魔王と言葉を交わす

「おぅ、ペッパーにカッツォ。何かクソガキ『変わったか』?」

「何と、言いますか……あの子、は……ちょっとだけ『大人』っぽくなった、気がしますね……」

 

ユニークシナリオ【深淵の使徒を穿て】における重要NPC・自称大海賊スチューデの変わり様をログインで見たサンラクと、続けてログインしたサイガ-0が、成り行きを知っているだろうペッパーとオイカッツォに話し掛けてきた。

 

「実はさっき、アンモーン・オトゥームの居た塔の周りの家屋を調べてさ。スチューデさんの御父様の帽子とカトラスの鞘、遺書を発見してね。届けたらああなったんだよ」

 

キリッとした目付きでカトラスを抜き、刃零れが無いか入念なチェックをして、時々擦れ落ちそうになる帽子のポジショニングを戻す小さな海賊は、ルルイアスに引き摺り込まれて来た時と違い、明らかに成長を確信させる出で立ちをしていた。

 

「成程な。あの時ペッパーが見せたロールプレイの続きを、キッチリやったって訳か」

「そうだね。多分、スチューデさんは大丈夫」

 

今の彼の瞳の奥には、覚悟と勇気いう名の火が重なり、炎と成って灯っている。此の二つが有れば人間大抵の事は何とか出来ると、RPGやシミュレーションゲームでは相場が決まっているのだから。

 

「ロールプレイ……ですか?」

「簡潔に説明するとですね、レイ氏。始まりは───」

 

サンラクは簡潔に事情を説明、サイガ-0とオイカッツォは其れを聞いて、ユニークシナリオが同時進行している事と、ペッパーがロールプレイもイケるタイプのプレイヤーであると納得するに至る。

 

「─────という事なんですが………」

「成程、です」

「TRPGしてみたいなぁ………」

「VRでも出来るソフト有るのか?」

「応よペッパー、今度其れ教えるわ」

「マジで?」

 

ほんの少しだけ盛り上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルルイアスの巨城でのイベントや会話を経て、時刻は午後六時半過ぎ。現在ペッパー・オイカッツォ・サンラク・サイガ-0・アイトゥイル・ノワ・エムルは、ルルイアスの座礁船エリアに在る、ガレオン船の一つに来ている。

 

「サンラクさん、コレは……?」

「レイ氏は初めて来ましたか。ルルイアスに在る座礁船、此処には財宝が在るんですよ」

 

サンラクの案内でやって来た、船内の一室。目の前に在るのはキンキラキンに輝く、金銀財宝宝箱の山。彼の事だから三日目の午前中に根刮ぎ取りきったのかと思っていたが、サイガ-0の為に残していたのだろうか?

 

「あの、コレは貰っても……?」

「えぇ。残ったのは俺達が回収しますんで、好きなだけ持ってって下さい」

 

ニッコリと微笑むサンラクにサイガ-0は暫し考えた後に、(彼女)は「では少しだけ」と輝く宝の山脈から、自身のインベントリの重量限界を加味して少々貰い。残った分はサンラク・オイカッツォ・ペッパーで分配、インベントリアへと収納しているとサイガ-0が質問してきた。

 

「サンラク、さん。オイカッツォさんと、ペッパーさんの……手首に着いてる、其れ……は?」

「コレっすか?簡潔に言うと『無限インベントリ』でして………。ユニークモンスター・墓守のウェザエモンの討伐報酬なんですが、オンリーワンって訳じゃなくて汎用アイテムらしく。神代に関係有るらしいので、何れ手に入る可能性が有るかと」

「成程………」

 

此れってよくよく考えれば、無限インベントリ持ちが三人居る時点で、座礁船内に在る大抵のアイテムは根刮ぎ地上に持って帰れるのでは?─────とでも考えているオイカッツォだが、座礁船エリアに有る本や海図やらは、三日目の時点で粗方回収してるんだよなぁ………と思うペッパー。

 

「あ、そうだ。どうせなら座礁船に在るアイテムも、全部地上に持って帰るなんてどうだ?」

「おっ、其れ良いね。骨董品で売れるヤツ有りそうだ」

「宝探しは……私も、好きでは……あります」

「食器とか持って帰るつもりか?」

「宝探しですわね!私頑張りますわぁ~!」

「フフフ……ワイも張り切るのさ」

『ワゥン♪』

 

サンラクの提案で始まった、座礁船宝探し。部屋の内部を探しては、遺された本に食器や雑貨を見付けたりしながら、当時の船乗り達の生活風景や残り香を感じつつ、近くに居るマーマンゾンビや人魚に気付かれぬよう、他の船も捜索。およそ一時間程の探索の果て、無限インベントリを持つペッパー・サンラク・オイカッツォは、骨董品と思われるアイテムを次々と入れていった。

 

そして午後八時を回る頃、ペッパーは探索メンバーに「明日の決戦に備えて先に上がるよ」と伝え。夜に移ろい変わったルルイアスの街並みを、アイトゥイル・ノワを肩に乗せながら星天秘技(スターアーツ)ミルキーウェイで駆け抜けて行き。

 

途中巨城に程近い家屋に入り、一羽と一匹へ隠れておくように指示を出した後、アイトゥイルには酒を贈呈し、ノワには食べられる魚肉を与えて思いっきり撫で撫でした後、セーブ&ログアウトを行って此の日のシャンフロを終えたのであった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「晩御飯はパスタにしよう。確かペペロンチーノ用に買って置いた、ニンニクと鷹の爪が冷蔵庫に在った気がする………」

 

シャンフロからログアウトし、ペッパー()から()へと戻った後、VRヘッドギアを頭から外して布団から起き上がる。主菜はパスタとして副菜は何にしようかと考えていた其の時、スマフォに着信電話が掛かってきた。表示は『永遠』の二文字があり、彼は直ぐに電話へと出る。

 

「もしもし、永遠」

『やぁやぁ、あーくん。シャンフロは楽しんでるかなぁ?』

「まぁまぁだな。さっきまでサンラク達と一緒に、座礁船エリアで骨董品らしきアイテムを物色して、インベントリアに収納してたよ。財宝関係は一定期間開ければ出るけど、其れ以外は『一回限り』な気がしてね。此のまま持って帰らないのは、勿体無いかなって」

 

金銀財宝宝箱は代わりが有るからこそ、何度でも入手出来るが、本や海図に資料といった『情報』というアイテムは例外だ。ましてや昔に執筆されて何らかの理由によって消失、残された本が一冊限りとも成れば、其処に乗せられた『付加価値』は計り知れない。

 

『ほほぅ?あーくんは其れを使って、何かしようとしてるのかね?ん~?』

「フフフ……内緒」

『可愛い彼女に教えてくれたって良いじゃーん?あーくんのケチ~』

「御楽しみは何時だって、最後に取っておくもんだぜ?」

 

そんな何気ない会話を重ねている時間は、自分の彼女になった永遠との会話は普段会えないからこそ、こうして話せるのが特別な時間だと思えるのだから。

 

『いよいよ明日、だね』

「あぁ。明日の夜九時に、クターニッドの一式装備の起動とオイカッツォへの装着、そしてルストに渡した王冠を元の姿に戻して、ユニークモンスターとの戦闘へ行こう」

 

旅狼(ヴォルフガング)のリーダーとサブリーダーとして、ユニークモンスター・深淵のクターニッドへの会議をし合う。其の先には黒狼(ヴォルフシュバルツ)との避けられぬ戦争が待ち構えている。だが今はクターニッドへ集中し、先々の事は頭の片隅に置いておく事に。

 

 

 

 

 

 

そして────────決戦の日はやって来る。

 

 

 

 

 






運命の時は来る


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