時は来たれり
午後六時、ピピピピッ♪ピピピピッ♪と決戦を告げるアラームが鳴り響く。
幕末で使った脳を休ませるべく仮眠を取っていた梓は、布団から身体を起こして其の足でシャワーを浴び、寝間着に着替えてドライヤーで髪を乾かし、小さなケトルで湯を沸かしながら、カップ麺とシーザーサラダ用の野菜達を冷蔵庫の野菜室から取り出し用意。
水菜は根元を確り洗って5cm幅、レタスは使う分だけ外して手で千切り、プチトマトは四等分に切って分け、ベビーリーフはさっと洗い、レタス→水菜→ベビーリーフの順に皿へ、プチトマトを縁に盛り込み。
湯が沸いた所で火を消しカップ麺に湯を注いで、シーザーサラダの仕上げにはクルトンを一まぶし、シーザードレッシングを掛けて完成させた。そして三分が経過した事でカップ麺も出来上がり、梓はテーブルに夕食達を持って行って「いただきます」と合掌。
カップ麺を啜りつつも、サラダの野菜達を咀嚼して栄養バランスと満足感を促しながら、およそ十分で完食。スープは炊飯器に残った白米でおじやにしようかとも考えたが、塩分も多く此の後の『決戦』も踏まえてた結果、勿体無いが棄てる事に。
そうして梓は再び布団に寝転がる、時刻は午後七時過ぎ。集合時間まで二時間を切った中で、彼はシャンフロへと帰還する。
「ペッパーはん。こんばんわなのさ」
『ワンッ♪』
「アイトゥイル、ノワ、待たせたね」
昨日のガレオン船捜索後にセーブポイントで使った家屋のベッドからペッパーが起き上がり、其れに気付いたアイトゥイルが頭に乗っかって、ノワは胡座をする彼のスペースにすっぽりと収まる。
「二人共、今日は決戦の日だ。準備は良いかい?」
「はいさ!」
『ワンッ!』
「よし、じゃあ行こうか!ルルイアスの中心地にある巨城へ!」
家屋の外へ出て周囲を確認し、
途中ミルキーウェイの効果は切れるものの、其れを加味しても移動距離をかなり稼げた。残りの距離はレベルMAXまで育成したグラビティゼロを起動、建物の壁を足場に高速跳躍移動を行って、ペッパーはルルイアスの巨城まで帰還する事に成功。
最後にトゥワイス・ジャンピングを利用して、NPC達が居る二階のベッドルームが在る部屋のテラスに、彼等は降り立った。
「お。やぁやぁ、あーくん。ちゃんと戻ってきたみたいだね?」
先ず声を掛けたのはアーサー・ペンシルゴン。にこやかながらもノワを見た瞬間にキッと睨んで怖い顔をして、ノワもまたペンシルゴンに対して喉を鳴らしながら威嚇する。
其の後ろにはサンラク・サイガ-0・ルスト・モルドのプレイヤーと、エムル・シークルゥ・アラバとネレイスにスチューデの姿が在る。
「皆、集まってくれて本当にありがとう」
「何改まってんだよ、ペッパー。お前が決めた事だろうが」
「ユニークモンスターとの戦いかぁ。うぅ……緊張してきた」
「モルド、シャキッと」
「いよいよですわ………!」
「うむ……遂に此の時が来たで御座る」
「深淵の盟主との戦いか……負けられん……!」
『ネレイスも、ガンバる』
「俺様だって!」
皆、気合十分の気炎万丈な様子であり、決戦を前に気圧された様子は無いらしい。
「えー……では決戦前に一つ、やっておきたい事があります。クターニッド討伐のチームと討伐作戦の名前を決めましょう」
「チームと作戦名ねぇ………」
「オイカッツォと
そんなペッパーの提案から、ユニークシナリオ参加メンバーでのチーム&作戦名の話し合いが始まり。
「チーム
「ルスト、其れだと文面から内容が伝わらないと思うよ………。えっと、じゃあ僕からはチーム・タコハンター、作戦名クターニッド撃破作戦……って、流石に安直過ぎるかな?」
「いや、安直なのでも良い。そうゆうのも欲しい」
「じゃあじゃあ、チーム名が
「エムル、其れだと玉砕しそうだから却下。俺はそうだな……チーム不倶戴天の作戦名天体観測」
「えっと私、は………ごめんなさい、思い付いてない、です……」
「チーム名ユニークキラーズ、作戦名タコ焼パーティー」
「………クターニッドって食べられるのかな?チーム名は逆天殺の、作戦名天地開闢」
ワイワイと話し合い、多数決の果てに『チーム・不倶戴天&作戦名・天地開闢』に決定。そうして午後九時に近付いた辺りで、オイカッツォ・京極・秋津茜・レーザーカジキの残りのメンバーがログインしてきた。
「お、待った?」
「遂に来たね」
「お待たせしました!」
「すいません、待たせてしまって」
「いやいや、チーム名と作戦名を考えてたから大丈夫」
プレイヤーが全員揃った所で、ペッパーは早速行動を起こす。自身のインベントリから取り出すは、クターニッドと力を分けた一式装備こと
「クターニッドの一式装備は、此のルルイアスの最上階に在る天井壁画が、起動のヒントになっていた」
スクショで撮影した写真を他のメンバーに見せながら、彼は其れを参考にして、エネルギータンクを装填出来る場所を探し。背中の八本のマントの根元に存在する『ブリオレットカットの空間』を発見した。
「手記には正しい場所にエネルギータンクをセットし、刻む時を逆廻させる事で起動するように出来ている。つまり─────エネルギータンクを各々正しい場所に嵌めて、最後に逆廻………『反時計回り』で此のマントを回せば起動するって事になる」
壁画通りに左から順に黄緑・青・赤・藍・黄・緑・橙・紫とセットし、最後に彼は背中に着くマントをグルリと、反時計回りに回して其れを逆廻させた。
同時に鎧には八色の光が伝わり、八芒星の模様には八色の色がオーロラの如く移ろい変わり、背中のマントにはセットされた宝石の色で各々が染め上がる。彼等は彼女等は同時に確信した、此所に深淵を見定む蛸極王装は蘇り、再び稼働したのだと。
「さてと、待たせたなオイカッツォ。約束の一番乗りだ」
「ヨッシャ!」
青の宝閠を交渉材料に、一式装備一番乗りの権利を得ていたオイカッツォが、其の装備に身を包んでいく。頭を胴を腰を脚を、次々と一式装備に取り替えていけば、鎧はプシューと音を立てて
「クターニッドの一式装備……何だろうね、装備者の体格に合わせて変化してるのかな?」
「またとんでもねぇな、此の一式装備は………」
頭・胴・腰・脚と全てを纏い、残すは盾の装備だけとなって。
「レベリングでポイントも稼いで置いた……さぁてどうな『ブブーッ』……うんまぁ知ってた、足んないだ………は?」
盾を装備せんとしたオイカッツォが必要ステータスが足らない事に気付いて、ポイントを振り分けようとして項目を見た瞬間、其の身はビタリと停止して視線がペッパーの方へ向き。こんな一言を呟いたのである。
「ペッパー…………『
まさかの装備条件に提示された、聞き知らぬ単語に全員が顔を見合わせて。そして全員が『…………は?』と呟くのだった。
隠しステータスという罠