対決、クターニッド
ドラマなんかでよく有る、父親がちゃぶ台返しで机を引っくり返した時の料理達は、こんな気持ちだったのかと思う浮遊感と共に、地面……否天井に叩き付けられた一向だったが『痛い』と思うだけでダメージによる体力減少は無かった。
「皆、大丈夫か!?」
「顔打ちましたわ………」
「俺等は大丈夫だ!」
『ワゥ!』
自分を含め全員無事だった事を確認していると、フィールドに変化が起きている真っ最中で。此所まで探索していた街並みや
「皆さん、上を!」
レーザーカジキの声で全員の視線が上を向く。其処には満天の星空と天ノ川、そして月が煌々と光輝きながら、自分達をフィールドを照らし続けているのだ。
「六日振りか……?空を見たのは」
「フィールドが変わっていきます……!」
柱が等間隔に、煉瓦が階段を作り、中心地が擂り鉢状になっていく。今自分達が居るのはまるで『観客席』の中腹地点、中央に広がる野球ドームクラスの広さを誇る其れは、まさに『イタリアのコロッセオ』を彷彿とさせていた。
「コレあれですね、イタリアの肝っ玉!」
「其れ、は………コロッセオ、ですね」
「其れです!」
『ッ』以外合ってないじゃんとツッコミたくなったが、今はそんな事を言っている場合じゃない。
「取り敢えず、ボス戦に入ったのは間違い無いとしておいて………だ。クターニッドは何処に居る?」
観客席を見回してもルルイアスの街並みをコロッセオに再構築するという、超常極まる御業をやってのけたクターニッドの姿が影一つとて無い。一定の地点まで行かないと現れないタイプか?
だとすれば、コロッセオの中心に向かうのが正解だろうか?そう思考を巡らせていた時だった。
『示せ』
「ん!?」
「びえっ!?」
『ワゥ?』
だがそんな事はどうでも良いんだ、今は重要な事じゃない。もっとヤバイのはプレイヤー以外のNPC…………ユニークモンスター・夜襲のリュカオーンの小さな分け身たるノワを除き、見渡せばシークルゥ・アイトゥイル・エムル・アラバとネレイス・スチューデが『恐怖』に陥って上を見上げ、其の場から一歩たりとも動けなくなっている事が一番ヤバイ。
クターニッドの声にはNPCの行動を封じる特殊な状態異常────仮称とするなら『恐怖状態』を付与するのか?というか『恐怖』の感情を振り撒けるクターニッド、滅茶苦茶ヤバイ。
まさかとは思うが現在のクターニッドの状態と
『示せ。継がれし遺志を、受け継いだ名を』
「何て?」
「だぁーっ!? ヘリウムガスでも良いから、もう少しマシな声質で喋れやクターニッドォ!!」
サンラクの意見には同意するが、今クターニッドが物凄い『フラグ』じみた事を言った気がするのは、気のせいでは無い筈だ。受け継いだ名を───此れは間違い無く『自分に対して向けられた』言葉。
ウェザエモンが使った
「サンラク、さん…!…上、です……!」
サイガ-0の言葉に全員の視線が上に向く。見上げた上空には、展開された『
六日前に自分達をルルイアスへと引き込んだ、巨大な蛸の姿とまるで『異なる姿』を見ながら、ペッパーは参加メンバーに指示を出し始めた。
「一先ずアラバさん達を別の場所に避難させよう、此のままだとサンドバッグにされる可能性が高い」
「其れに関しちゃ、俺も同意見だ」
「僕が避難誘導しておくね」
「あ、僕も御手伝いします!」
モルドとレーザーカジキが、アラバ・スチューデ・シークルゥを避難させる中、サンラクはエムルを頭に乗せ、ペッパーはアイトゥイルの胴体に巨剛触手を巻き付け、自身の近くへと寄せると、ノワもペッパーの足元へと走り寄ってきた。
ペッパーはサブ
グランシャリオを納める黒鞘に右手を触れて、リュカオーンの愛呪による装備不可能力を一時的に取り除き、右手に勇者の剣は装備される。
「あの高さじゃ、近接職は届かないだろうね」
「私のスキルや魔法も同じく」
「剛弓でも距離減衰で届かない……」
流石に手の届かない場所にクターニッドが何時までも居るとは思えないが、其れにしたって距離が離れている。そんな中、サイガ-0はペッパーと秋津茜を見て言った。
「恐らく今の参加者の中で、最も高く飛べるのはペッパー、さんの……『ミルキーウェイ』に、最長射程の魔法は……秋津茜、さんの【
「私の出番ですか!?」
「茜ちゃん、一旦ステイ。OK?」
「…………秋津茜、ステイ」
早速行動を起こさんとした秋津茜を、
サイガ-0のアルマゲドンを『万が一』にも耐えられた場合のサブフィニッシュ手段として、絶対に温存しておきたい手札だ。
と、そんな此方の作戦がある程度整ったのを見計らっていたのか、はたまた『待つ』という制限時間を超過したのか。魔方陣の『角』から出てきたのは『八本の巨大な蛸足達』、其れが一斉にプレイヤー達へと襲い掛かる。
「全員散開!蛸足が来たぞッ!!!」
ペッパーの声に、此の場にいた全員が其の場から離れる。其の刹那にプレイヤー達が居た場所に、蛸足達が襲来して突き刺さったかと思えば、其の八本の蛸足から一本に付き『十数本の細い触手』へと枝分かれ、其れ等が『槍』の如く地面に突き立てられていく。
「おいおいッ!?枝分かれに加えて、当然の権利みたいに『ホーミング能力』搭載かよ!?」
「っお、あぶねっ!?」
ウェザエモンの
「さて、どうやって攻略しようか………!」
大元が八本の枝分かれが十数本、恐らく百近いホーミング触手攻撃に晒されながら、ペッパー含めて今戦っているメンバー全員が、思考を巡らせていた其の時。再び脳内にクターニッドの声が響く。
『揺るがぬ心で進め、さすれば届かぬ高みは無く』
「あぁもぅ、集中力が削がれるなぁ……!」
「うるせぇ……!」
「頭に響く………!」
ペンシルゴンにオイカッツォにルストも、クターニッドの放つ台詞に不快感を示している。秋津茜もサイガ-0も回避するそんな中、メンバーの中で唯一人だけ……サンラクは此の触手攻撃を見ながら、投擲スキル『パドロン・スロー』で
彼には予感が有ったのだ………ラビッツの
剣は飛んで行き、触手に突き刺さった其の瞬間。新品の掃除機のコードが、巻き取りボタン一つで凄まじい速度で戻る様に、投擲攻撃を受けた其の分裂触手が上空の魔法陣に吸われて引っ込んで行ったのを視認し、サンラクの脳内で攻略への
「触手だ!あのクターニッドが放った触手を攻撃して、魔方陣の中に返送するんだ!」
サンラクの言葉に皆動き出した。攻略法が見付かったなら、一気に行くべし!
触手を追い返せ