VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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其の力は




倶なる天に示す証明(ホシ) 其の七

クターニッドが創り出した白のワイングラスこと、白の聖杯。其処から放たれた白の光が、プレイヤーとNPCを例外無く包み込む。然して其れも一瞬、真っ白になった視界は元の状態へと戻り、開拓者は瞼を開く。

 

「皆、大丈夫───か、へ?」

 

今自分は確かに声を掛けた筈だ、だが現に『オカシイ』事が起きている。何で自分は今……………秋津茜の身体で声を放っているんだ(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「えっ、コレどうなって………えぇっ!?何で私が居るんですか(・・・・・・・・)!?」

「は?えっ、嘘だろ!?」

 

前を見れば深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)を纏う自分(ペッパー)が居る。そして混乱した様子と声からは、明らかに自分とは違っていた(・・・・・・・・・)

 

「んじゃこりゃああああああ!?」

「えっ、何で俺半裸になってんの?!」

「いや、槍の使い方解らない………」

「此方は弓の使い方知らないんだけど」

「な、何ですか……コレ………!?」

「えっと………重装備、初めて振るいます……」

「コレどうなったの……?というか、杖……」

「刀は経験無いんだけど……」

「な、何がどうなってるのさ……えっワイ?」

「アタシどうなってるですわー!?ってエエエエエ!?」

『ワゥ?』

 

十人十色の反応、そして各々から放たれた声を聞いた事で、彼女()は白の聖杯が持つ悪辣極まる『能力』に気付く。

 

「作戦会議だ!全員一回此所から退避ッ!!!」

 

ペッパーの声が響き、一同はレーザーカジキとモルドがNPC達を避難させた場所へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『助けてで御座る』

「サンラク、此れはどういう事だ!?」

「俺様とアラバの身体が入れ換わってるぞ(・・・・・・・・)!?」

「ネレイス、ウサギのカラダ……ハジめて」

 

アラバからスチューデの声が、スチューデからアラバの声が、そして大海峡(だいかいきょう)依代(よりしろ)としている存在を得た者達(イグジステンツ)たるネレイスからはシークルゥの、逆にシークルゥからはネレイスの声が聞こえる。

 

「おおよそ正解です、スチューデさん。俺達はクターニッドが新たに創り出した『白の聖杯』で『アバターを入れ換えられている』状態に在ります。解りやすくするなら、キャラクターAを動かしているプレイヤーαとキャラクターBを動かしているプレイヤーβが、操作キャラを交換した感じ」

 

何かしらの条件を満たしたのか、其れともノワをテイムした事が原因なのか。何にせよプレイヤーの中身を入れ換える力は、ステータスを入れ換える『藍』、性別を反転させる『青』、ダメージを回復に変える『紫』が霞んでしまうレベルの悪辣さを誇る。

 

「えっと……今入れ替わってるのが、アラバとスチューデに」

「サンラクと俺ことオイカッツォ」

「ペッパーさんと私秋津茜(アキツアカネ)!」

「ルストとペンシルゴン、アイトゥイルとエムル、ネレイスとシークルゥ」

京極(キョウアルティメット)と僕ことモルド……」

「私と、レーザーカジキさん……ですね」

 

混乱するのは目に見えて明らかだ。何せ使い馴れたキャラクターをボス戦闘の途中、しかも別のキャラクターに変えられるというのは、悪辣極まりないヤバさを持つ。更に言うと此の入れ換えは、パーティー全体を『混沌(カオス)の方面』へと加速させる。

 

「うぅ……大剣が使い辛い………」

「えっと、其の……ごめんなさい」

「ペンシルゴン、弓はないの?」

「私、槍武器メインなんだよねぇ~」

 

慣れないアバターを扱う場合、どうしても『ステータスやアイテム』、其のアバターが装備している武器や防具、其れ等の性能を確認しなくてはならない。ともなれば、パーティー間での『トラブル』が起きるのは必然であり。

 

「うわ、何だ此のアイテム………てかサンラク、インベントリの水晶や鉱物アイテム何?」

「だぁー!?人様のインベントリを勝手に覗くんじゃねぇよ、バカッツォ!?」

「ハァー!?減るもんでもないし、教えたって良いじゃん!」

「ハイハイ其所のバカ一号と二号落ち着く!」

『ぎゅえ!?』

 

案の定サンラクとオイカッツォが、ユニークモンスター戦にも関わらず、緊急事態下で喧嘩に発展しそうになったので、ルスト(inペンシルゴン)が二人の脛に思いっきり蹴りを叩き込み、物理的に静かにさせた。

 

が、そんな最中に一向を『緑色の光』が襲い、世界がクターニッドによって再び引っくり返る。

 

「っ!?」

 

緑色の光が収まると共に、一同の視界が開かれれば。青いコロシアムが『赤く』、皆の肌は『青白く』、見上げる空とノワは『白』で、輝く星と月は『黒く』見えていた。

 

「な、ナニ………コレ……?!」

「レイ氏、落ち着いて。コレ色調(・・)が反転してるだけだ」

「色調………た、確かに……」

「あぁ、見覚えが有ると思ったら其れか」

 

オイカッツォ(inサンラク)がレーザーカジキ(inサイガ-0)を落ち着かせ、魔神の丸薬(イヴィル・フォース)によって擬似的な色調反転を経験したサンラク(inオイカッツォ)は冷静に思考を続ける。

 

「取り敢えずは、クターニッドの持っている杯が光ると、何かが起きるのは確定と断言して良い」

「白はノワちゃんを除いての、プレイヤーはプレイヤー、NPCはNPCの『アバター』の入れ換え。緑は『色調』で青は『性別』、紫は『ダメージ』の藍色は『ステータス』だな」

「ルルイアスでの一式装備の宝閠(エネルギータンク)探しで判明したとはいえ、いざやられると此所まで厄介とはね………」

 

八種類だけと思われていた反転が、実は隠し要素でもう一つ有りました!なんて事はゲームでは有り得るパターンやハプニング、そして修正可能な範疇の誤差だ。

 

大事なのは今現在のクターニッドが持つ、五つの反転能力を発動する聖杯の『優先破壊順位の確定』をしなくてはいけない。でなければ、何時までも状況は好転しないのは明白なのだから。

 

「先ずは白と緑を破壊しよう。白はぶっつけ本番のアバターでボス戦を戦うのはリスキーだし、緑は色調が反転しているから何れが何れだか解らなくなる」

「後は発光の間隔だな。流石に引っくり返したまま進めるとは考えにくい、反転する以上は何処かしらで『元に戻るタイミング』が有る。其所を狙って杯を破壊するぞ!」

 

秋津茜(inペッパー)が最優先破壊対象を定め、オイカッツォ(inサンラク)が発破を掛けて、一同が動き出す。何にせよ、白と緑の聖杯各々の耐久を確かめる必要が有る。

 

他のメンバーが違うアバターに馴れるまでの間、ペッパー(in秋津茜)&秋津茜(inペッパー)にサンラク(inオイカッツォ)&オイカッツォ(inサンラク)が前に出て、異様に白くなったクターニッドの持つ杯を探そうとしたが、此所で重大な要素に気付く。

 

「あ!?そうだ、色調反転してるから何れが緑か解らないじゃん!?」

「白は一番奥の『黒い奴』!緑は……『マゼンタっぽい』の!」

「先ずは緑からですね!」

「よっしゃ、ぶちかませ!」

 

そう、色調反転の能力は何もプレイヤーだけに襲い掛かる物ではない。クターニッドが持つ反転の能力を宿した聖杯の色もまた、色調反転によって対極の色へと変貌するのだ。杯を傷付けない様な挙動と共に、迫る開拓者目掛けて触手の叩き付けを行うクターニッド。其れを回避しながら降りてきたマゼンタ色になっている緑の杯を、各々のアバターが持っている武器で叩く。

 

「ダメージはどうだ!?」

「くっそ、思った以上に硬いぞ!?」

「でもちゃんと、ダメージは入ってます!」

「よし、一度退避だ!色調とアバターが正常に戻った所を狙って、もう一回攻勢に転じる!」

 

緑の杯に攻撃を加えた事で、クターニッドの目玉がギョロリと四人に向いてくる。秋津茜(inペッパー)が直ぐに撤退指示を出して、オイカッツォ(inサンラク)が殿を行いつつ避難場所へと移動する。

 

だが其の時、クターニッドが持つ『黄緑色の杯』が輝き、世界が再び引っくり返された。

 

「今何が光っ!?………は?!?」

 

殿を買ったサンラクが見た物……………其れは先程ダメージを与えた『マゼンタ色の杯』、つまりは『緑の杯』を地面に荒々しく叩き付ける、クターニッドの姿であり。僅かに傷を与えた杯の傷痕を修復する(・・・・・・・)という光景だったのである。

 

其れを見たサンラクは脳内にて『色調反転下の黄緑=紫』という方程式の完成と、今の心境を叫ばざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

『おのれクターニッドォオオオオオオオオオ!!!』

 

 

 

 

 






反転の嵐、混乱する一同


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