其の力は
クターニッドが創り出した白のワイングラスこと、白の聖杯。其処から放たれた白の光が、プレイヤーとNPCを例外無く包み込む。然して其れも一瞬、真っ白になった視界は元の状態へと戻り、開拓者は瞼を開く。
「皆、大丈夫───か、へ?」
今自分は確かに声を掛けた筈だ、だが現に『オカシイ』事が起きている。何で自分は今……………
「えっ、コレどうなって………えぇっ!?何で
「は?えっ、嘘だろ!?」
前を見れば
「んじゃこりゃああああああ!?」
「えっ、何で俺半裸になってんの?!」
「いや、槍の使い方解らない………」
「此方は弓の使い方知らないんだけど」
「な、何ですか……コレ………!?」
「えっと………重装備、初めて振るいます……」
「コレどうなったの……?というか、杖……」
「刀は経験無いんだけど……」
「な、何がどうなってるのさ……えっワイ?」
「アタシどうなってるですわー!?ってエエエエエ!?」
『ワゥ?』
十人十色の反応、そして各々から放たれた声を聞いた事で、
「作戦会議だ!全員一回此所から退避ッ!!!」
ペッパーの声が響き、一同はレーザーカジキとモルドがNPC達を避難させた場所へと向かう。
『助けてで御座る』
「サンラク、此れはどういう事だ!?」
「俺様とアラバの身体が
「ネレイス、ウサギのカラダ……ハジめて」
アラバからスチューデの声が、スチューデからアラバの声が、そして
「おおよそ正解です、スチューデさん。俺達はクターニッドが新たに創り出した『白の聖杯』で『アバターを入れ換えられている』状態に在ります。解りやすくするなら、キャラクターAを動かしているプレイヤーαとキャラクターBを動かしているプレイヤーβが、操作キャラを交換した感じ」
何かしらの条件を満たしたのか、其れともノワをテイムした事が原因なのか。何にせよプレイヤーの中身を入れ換える力は、ステータスを入れ換える『藍』、性別を反転させる『青』、ダメージを回復に変える『紫』が霞んでしまうレベルの悪辣さを誇る。
「えっと……今入れ替わってるのが、アラバとスチューデに」
「サンラクと俺ことオイカッツォ」
「ペッパーさんと私
「ルストとペンシルゴン、アイトゥイルとエムル、ネレイスとシークルゥ」
「
「私と、レーザーカジキさん……ですね」
混乱するのは目に見えて明らかだ。何せ使い馴れたキャラクターをボス戦闘の途中、しかも別のキャラクターに変えられるというのは、悪辣極まりないヤバさを持つ。更に言うと此の入れ換えは、パーティー全体を『
「うぅ……大剣が使い辛い………」
「えっと、其の……ごめんなさい」
「ペンシルゴン、弓はないの?」
「私、槍武器メインなんだよねぇ~」
慣れないアバターを扱う場合、どうしても『ステータスやアイテム』、其のアバターが装備している武器や防具、其れ等の性能を確認しなくてはならない。ともなれば、パーティー間での『トラブル』が起きるのは必然であり。
「うわ、何だ此のアイテム………てかサンラク、インベントリの水晶や鉱物アイテム何?」
「だぁー!?人様のインベントリを勝手に覗くんじゃねぇよ、バカッツォ!?」
「ハァー!?減るもんでもないし、教えたって良いじゃん!」
「ハイハイ其所のバカ一号と二号落ち着く!」
『ぎゅえ!?』
案の定サンラクとオイカッツォが、ユニークモンスター戦にも関わらず、緊急事態下で喧嘩に発展しそうになったので、ルスト(inペンシルゴン)が二人の脛に思いっきり蹴りを叩き込み、物理的に静かにさせた。
が、そんな最中に一向を『緑色の光』が襲い、世界がクターニッドによって再び引っくり返る。
「っ!?」
緑色の光が収まると共に、一同の視界が開かれれば。青いコロシアムが『赤く』、皆の肌は『青白く』、見上げる空とノワは『白』で、輝く星と月は『黒く』見えていた。
「な、ナニ………コレ……?!」
「レイ氏、落ち着いて。コレ
「色調………た、確かに……」
「あぁ、見覚えが有ると思ったら其れか」
オイカッツォ(inサンラク)がレーザーカジキ(inサイガ-0)を落ち着かせ、
「取り敢えずは、クターニッドの持っている杯が光ると、何かが起きるのは確定と断言して良い」
「白はノワちゃんを除いての、プレイヤーはプレイヤー、NPCはNPCの『アバター』の入れ換え。緑は『色調』で青は『性別』、紫は『ダメージ』の藍色は『ステータス』だな」
「ルルイアスでの
八種類だけと思われていた反転が、実は隠し要素でもう一つ有りました!なんて事はゲームでは有り得るパターンやハプニング、そして修正可能な範疇の誤差だ。
大事なのは今現在のクターニッドが持つ、五つの反転能力を発動する聖杯の『優先破壊順位の確定』をしなくてはいけない。でなければ、何時までも状況は好転しないのは明白なのだから。
「先ずは白と緑を破壊しよう。白はぶっつけ本番のアバターでボス戦を戦うのはリスキーだし、緑は色調が反転しているから何れが何れだか解らなくなる」
「後は発光の間隔だな。流石に引っくり返したまま進めるとは考えにくい、反転する以上は何処かしらで『元に戻るタイミング』が有る。其所を狙って杯を破壊するぞ!」
秋津茜(inペッパー)が最優先破壊対象を定め、オイカッツォ(inサンラク)が発破を掛けて、一同が動き出す。何にせよ、白と緑の聖杯各々の耐久を確かめる必要が有る。
他のメンバーが違うアバターに馴れるまでの間、ペッパー(in秋津茜)&秋津茜(inペッパー)にサンラク(inオイカッツォ)&オイカッツォ(inサンラク)が前に出て、異様に白くなったクターニッドの持つ杯を探そうとしたが、此所で重大な要素に気付く。
「あ!?そうだ、色調反転してるから何れが緑か解らないじゃん!?」
「白は一番奥の『黒い奴』!緑は……『マゼンタっぽい』の!」
「先ずは緑からですね!」
「よっしゃ、ぶちかませ!」
そう、色調反転の能力は何もプレイヤーだけに襲い掛かる物ではない。クターニッドが持つ反転の能力を宿した聖杯の色もまた、色調反転によって対極の色へと変貌するのだ。杯を傷付けない様な挙動と共に、迫る開拓者目掛けて触手の叩き付けを行うクターニッド。其れを回避しながら降りてきたマゼンタ色になっている緑の杯を、各々のアバターが持っている武器で叩く。
「ダメージはどうだ!?」
「くっそ、思った以上に硬いぞ!?」
「でもちゃんと、ダメージは入ってます!」
「よし、一度退避だ!色調とアバターが正常に戻った所を狙って、もう一回攻勢に転じる!」
緑の杯に攻撃を加えた事で、クターニッドの目玉がギョロリと四人に向いてくる。秋津茜(inペッパー)が直ぐに撤退指示を出して、オイカッツォ(inサンラク)が殿を行いつつ避難場所へと移動する。
だが其の時、クターニッドが持つ『黄緑色の杯』が輝き、世界が再び引っくり返された。
「今何が光っ!?………は?!?」
殿を買ったサンラクが見た物……………其れは先程ダメージを与えた『マゼンタ色の杯』、つまりは『緑の杯』を地面に荒々しく叩き付ける、クターニッドの姿であり。僅かに傷を与えた杯の
其れを見たサンラクは脳内にて『色調反転下の黄緑=紫』という方程式の完成と、今の心境を叫ばざるを得なかった。
『おのれクターニッドォオオオオオオオオオ!!!』
反転の嵐、混乱する一同