越えて、越えろ
紫の聖杯によるダメージ反転が働いている間、クターニッドはダメージを受けた杯を『自傷によって再生させる特殊行動を取る』。
アバターと色調が反転する最中に緑の聖杯を叩きに行き、一時撤退する最中に其れを目撃したオイカッツォ(inサンラク)によりもたらされた情報は、集合地点に居たプレイヤーやNPCの顔色を、困惑や憤怒に疲弊で色付けていく。
「…………取り敢えず現状確認だね。今発動してる反転はアバター反転の白、色調を反転させる緑」
「後、ダメージを回復に変える紫」
「そう。しかも厄介なのは、クターニッドが持っている杯の効果は『重複』する上に、発動中に破壊したら戦闘終了まで『継続』される可能性が高い」
光った杯の種類を覚え、反転が元に戻った所を見計らって、杯を壊さなくてはならない。更には破壊する順番やタイミングによって、此の後に控えているだろう
と、此のタイミングで『黒い光』が放たれ、プレイヤーやNPCを包み込む。
「うわっ!?」
「今のって何色!?」
「色調反転中だから………白、だって……おぉ?!」
視界に
「も、元に……戻った……?」
「成程、クターニッドが持ってる杯は『ランダム』に光るが、同じ杯が光れば効果が切れて『元に戻る』って訳だ………!」
自分が製作・育成した元々の
「サンラクさん、大体『30秒』間隔で光が来ましたわ!」
「よし、ナイスだエムル!」
アバターや色調、ダメージが回復に変わろうとも、時間を計ったエムルによって、クターニッドが持つ杯の発光間隔が割れた。其れによってペッパーの思考が、ある攻略法を導き出すに至る。
「皆、今装備してるクターニッドの一式装備には発光間隔と同じ時間だけ、装備者から半径30m内限定の反転能力を行える機構が有る。其れを使ってクターニッドの反転の能力に対抗出来ないか、少し確かめてみたい」
「OK。頼んだぞ、リーダー!」
一同が動き、ペッパー・
「色調反転中の白の杯は『黒色』!」
「紫の発光前に出来るだけ削り切る、やるよ三人共!」
「了解だよ、ペンシルゴン!」
「ペッパー、囮は頼むぞ!」
「任せとけ!アイトゥイル!ノワ!ルストとモルドの援護を頼む!」
「はいさ!」
『ワゥ!』
ペッパーが深淵を見定む蛸極王装の能力の一つ『
回復の力を納めた液体の入った硝子瓶が、黒の杯に当たって砕けて割れて。黒の杯にブチまけられた
「ペッパーが見付けた攻略法、まさに此の時の為に取っておけって事だったか……!」
「今ダメージ反転中だから、間違っても誰かに誤爆するのだけは止めてよ三人共!」
初見殺しも甚だしいが、其の初見殺しに備えてポーションを買い込んでいたペッパーもヤバい。実際回復をポーションではなく魚で代用したからこそ、此の局面において白の杯に明確なダメージを与えられているのは事実。
だが此所でクターニッドはペッパーに対し、黒の杯をぶつけに行くという荒業に出たのだ。其れも回復ポーションを大量に浴びた状態であり、何よりも反転効果が働く此の状態は毒液まみれに等しい物であり。
「ッ、危な!?」
下手すれば自分の纏う鎧を溶かされると、咄嗟のガードではなく反射的に回避の選択肢を取ったペッパー。そして『お前なら其の行動を取るよな?』と言わんばかりに、クターニッドの目が
同時にプレイヤーとNPCが見ている視界が、一瞬で『黄緑色の光』に包まれる。
「ダメージ反転が元に戻った!レーザーカジキとルスト、そしてエムルにアイトゥイルは遠距離攻撃で白の杯を狙え!」
「回復ポーション投げ中止!今なら普通にダメージが通るよ!」
「────射抜く!」
「【
「行きます【アクアクラスター】!」
「【
サンラクとペンシルゴンが、クターニッドの注意を惹くペッパーをサポートするように、メンバーに指示を出し。ペッパーが注意を惹き付けた事で、安全に移動出来た魔法と物理の遠距離攻撃手段持ち達が、一斉に色調反転した黒の杯────即ち白の杯に持ち得る最大火力による集中攻撃を、此れでもかとばかりに叩き込む。
バフをモリモリに盛られた剛弓から放たれた一矢が、加算詠唱による威力上昇を施した魔法刃が、雨のように叩き付ける水の槍達が、旋風に乗って敵を裂き斬る妖の名を乗せる風魔法が、黒の杯へと打ち込まれ。再びアバターの反転なんぞさせんとばかりに、ある種の憤怒が籠った怒濤の攻撃達によって杯には致命的な亀裂が迸り。
「貰うよ、白の杯!」
振り下ろされる触手の合間を潜り抜け、次の発光まで残り五秒といった所で、京極の繰り出した
「オイカッツォ!」
「はいっ───よぉ!」
同じく其所へ全力でダッシュし、京極が作った
「よっしゃあ!白の杯ブッ壊」
「30秒ですわーーーーー!!!」
「何でくっ………!?ステ────」
黒の杯が存在を維持する力の
そして兎月【
「な──そうか、色調反転中の黄色は『藍色』か!!何が入れ替わって!?」
ステータスを要求しない
天獄が装備出来なくなった事で、一式装備時限定能力が封じられたペッパーは、ミルキーウェイを起動。グランシャリオを、巨剛触手より離れて地面に落ちた武器達を、速攻拾ってインベントリアに入れ込み、更に回収したイーディスを構え、突差に
「あーくん!今確認したけど、入れ替わったのは『筋力と耐久』だよ!」
「敏捷かスタミナだったらヤバかった………!」
ペッパーが立ち上がった其の刹那、まだ『20秒』しか経っていないのにも関わらず、クターニッドが持つ『橙色の杯』が瞬き輝き、視界を『橙色の光』が開拓者達とNPCを包み込む。
今再び、クターニッドによって世界が引っくり返された。
反転地獄に躍り狂う