反転すれば、また地獄
「うわっ、元の色は何色だ!?…………んんん!?」
色調反転下での橙色の杯が持つ、橙の輝きが世界を染め上げる。同時に自分の声が『異様に変声』した事と、
其れはまさに
「橙色=青色………!全員一回撤退して、もう一度作戦を建て直すッ!!!」
最大の障害たるアバター反転の白は破壊こそ出来れど、尚も残るは悪辣極まる紫と藍色、そして青に緑の四色の杯。だが其れでも、開拓者達は挫けない。熱意の焔が、己の瞳に燃え続ける限り。
「あ~~うん。色調反転状態だが、一応点呼を取るよ。先ず鮭頭はサンラクだよね?」
「どうも。
「ぶふぉう!?」
「ふっくくくく……鮭じゃん、鮪じゃないじゃん……」
「サンラク、あんまり笑わせるなよ………」
不意打ちで笑わせてきたサンラクだが、身長150cmの身体まで縮んだだけでなく、胸にはハンドボールサイズの膨らみが二つ付き、晒しのような物が巻かれている。
「あーくんも170cmくらいかね?ちょっと縮んだかな?」
「あぁ、ペンシルゴ………ン?」
目の前に乙女ゲーム内の攻略対象で、眼鏡が似合いそうな気取ったイケメンが立っている。元々のキャラメイクが凝ってるからか、性別反転しても似合っているのは、天から与えられた物の格差で、時折神様は無情だと思うのだ。
「いやぁ、コレ凄いよね。クターニッドの青い杯は、僕達の『性別』どころか『声帯』も反転させるみたいだ。コレは僕的に『大当たり』だよ」
「まぁじかぁ………俺『生えた』だけなんだけど」
「えっと、オイカッツォ……だよな?あと女性陣が居る中で、其れは流石にデリカシーが無くない?」
昔の戦国無双レトロゲーの耽美系イケメンに成ったからか、益々着物と袴が似合う明治時代風な姿をしている
だが見た目が変わらないというのは、一件『デメリット』にも見えるが、逆に見れば自身の身体を動かす事にプレイスタイルの比重を置いているオイカッツォには、全く問題無いと見れるのだ。
「クターニッドにすら『受け』認識されるって、相当じゃないのカッツォきゅん?いや、今はカッツォ君だったか………」
「うるせー。ばるんばるん胸揺らしてないで、服着ろって………あぁ、リュカオーンのせいで着ても、ギャグみたいに破砕されるんだっけな?サンラクちゃん?」
「90スレ突破おめでとう」
サンラクのカウンターにスン………と目が死んだオイカッツォ。そして一同の視線は、他のメンバーに向けられる。
ギッチギチの忍者服に浮かび上がった筋骨隆々の、言い方を変えれば脂が乗っているガチムチな筋肉と、額には狐の面をちょんと乗せた、カイゼル髭のおっさんフェイスの
少女漫画のイケメンを実体化させたかのような八頭身の男が、ぱっつんぱっつんの女性用服を着ているという、何とも形容し難い状態になったルスト。逆に男物の魔術師衣服に身を包んだ、少女漫画のヒロイン並の背丈まで縮んだモルド。
だが何故だろう、今の姿の方がルストとモルドが似合っている、此の不思議な感覚は………。
「な、なな…………」
「ぼ、僕どうなってるんですか……!?」
高校生の背丈まで縮んで纏う白亜の鎧がブカブカに成った上に、作っているボイスが『元の物』に戻っているサイガ-0と、逆に身長180cmでボンキュボンのスタイルになったマリリン・モンローフェイスのレーザーカジキという、これまたおかしな方向で性別反転が起きているプレイヤーが居たり。
が、そんな最中に『マゼンタ色の光』が襲い掛かり、今まで反転していた色調が元の状態に戻った。
「やっと戻ったか……面倒な事しやがって」
「さっきのは緑だね……色調反転から潰す?」
「ザンラグざん!なんか、なんか生えてるですわぁ!?」
「エムル、ステイ!」
『ワゥ?!ワゥ!?クゥン!』
「ペッパーはん、コレって!?」
「ノワ、アイトゥイル落ち着いて。深呼吸、吸って……吐いて……」
サンラクがエムルを、ペッパーがアイトゥイルとノワに落ち着くように指示を出す最中、今度は紫の光が世界を包み込んだのだ。
「今のって……!?」
「回復反転の紫、でもまだ『10秒』しか経ってないぞ!」
「サンラク、ペッパー!クターニッドはまだ実力の一片しか、我等に見せてなかったという事か!?」
「そういう事だと思います!」
『ワタシ、トクにカわってナい』
「性別が無いって事だろ!次!」
「俺様どうなっているんだ!?」
「少年から少女になっただけです!」
「ぐぉぉぉぉ……此のような辱しめを……!」
「はいはい、くっころくっころ!」
マッシブな鮫魚人が細身の鮫魚人になったアラバに、年相応の海賊少年は逆に海賊少女となり、精霊のネレイスは変化無く、逆に女に変わった事でシークルゥがヘタレたりと、カオスはカオスを呼び込んで面倒な事態になっている。
そしてそんな中で再び紫の光が放たれ、ダメージ反転が解除される。再び『10秒』という時間を置いて───である。
「いや、どうなってるんだ……?白の杯を壊したから『発狂モード』に入ったとか?」
「其れ面倒な事態になりそうな雰囲気しか無いんだけど?」
「理由は何だ、一応時間を測ってみるか?」
一定間隔で発光する筈が、いきなり『
ペッパーは直ぐにインベントリアに入れていた
「『色調反転』」
放たれる緑の光に同じく反転の力がぶつかり合い、ペッパーを中心に半径30m内の色調は『其のまま』、他全てが色調反転が施された状態へ変わる。
「うわぁ……マジかよ」
「クターニッドの一式装備、反転の能力同士で相殺出来るみたいだね」
「時間は!」
「はいな、今ので『30秒』ですわ!」
ランダムになっていた間隔、安定していた時の状況。其れ等を元にして、サイガ-0が『答え』に辿り着く。
「もしかして、ですけど………。コレ、って……クターニッドの、一式装備を『纏ってない』と、発光の間隔………は、10秒と20秒、そして30秒の
つまり現状、此のメンバーの中で安定して一式装備を着け続けられるのは、ペッパーとサイガ-0だけだという事実。そしてクターニッドの藍色の杯で、ステータスが変動された場合に其れを維持出来なくなる可能性が在る事。
其の要素を加味して、十人のプレイヤーは此の瞬間に『満場一致』の結論へと至る。
『藍色の杯を最優先でブッ壊そう』─────と。
戸惑い、混乱し、其れでも往く