VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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未来への咆哮




倶なる天に示す証明(ホシ) 其の十二

ユニークモンスター・墓守のウェザエモンことウェザエモン・天津気(アマツキ)が使用した七つ有る晴天流(せいてんりゅう)の一つにして、吐息によって生じる空気振動を利用した【(そら)】系統の奥義、そして発声と同時に不可視の衝撃波によるフィールド全域に渡る超広範囲攻撃『天鬼夜咆(てんきよほう)』が、クターニッドの真・ランダムエンカウンターで呼ばれた眷属や人魚、そして深海の猛者達を相手に炸裂する。

 

ペッパーが放つ息と衝撃波は、プレイヤーやNPCにリュカオーンの小さな分け身たるノワを傷付けず、かつ呼び出されたモンスターにダメージが与えられるように、音量調節を施しながらコロシアムを、クターニッドが浮かぶ空間を揺らし、マナ粒子の震えが眷属のマーマンゾンビや人魚に呼ばれたモンスターの身体を爆発させていく。

 

(天鬼夜咆の効果時間は、発動者の『スタミナ』と吸引した『空気』が尽きるまで継続する……!あのランダムエンカウンター、15秒ペースで発生しては15秒で吸引していく、かなり『特殊なタイプ』みたいだ!なら発声する際の出力を抑えつつ、一定のペースを刻みながら放ち続けろ……!此の状態だと、持って『二分』が今の俺が出せる天鬼夜咆の総合時間ッ!!)

 

不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)窮速走破(トップガン)を使えば、もう少し時間を延ばせるだろうが、後に控えているだろうクターニッドの最終形態たる『想像態』に備えるべく、此処では使わない選択肢を取った。

 

「空気を………違う、空気の中に含まれてるマナを振動させて、僕達がダメージを受けないで敵がダメージを受けるようにしてる……?」

「多分………そうだと、思います………。あんなスキルが有るなんて………」

「墓守のウェザエモンの使う、七つ有るスキルの一つ『天鬼夜咆』。ペッパーがウェザエモンの晴天流を使えるってペンシルゴンから聞いたけど、成程こういう原理だったか」

 

天鬼夜咆の能力は本来『大声を出して相手を怯ませる猿叫的な発声法(・・・)であり、同時に息を吐き出しきって大きく吸い込み、酸素をより多く補給する為のリセット技(・・・・・)』でしかない。だがウェザエモンレベルとも成れば、発声ですらもマナに干渉・其れを利用した攻撃方法へ転用出来るのだろう。

 

ランダムエンカウンターが続く中、およそ二分弱に渡り空気中のマナを振動させて、敵を爆発させながら倒していったペッパーだったが、此処で天鬼夜咆の効果が終了。腹から声を出し、スタミナが切れた事で動けないリーダーに代わり、皆も現れた手頃な敵を倒してクターニッドに食事を与えない事が大事になる。

 

「ペッパーがマーマンゾンビ共を粗方ぶちのめしてくれた!デカいのは最初(ハナ)から倒せるとは思ってねぇ、兎に角敵の数を減らして!減らして!!減らしまくれ!!!」

 

呼び出されたアルクトゥス・レガレクスは吸い込まれ、何回目かのランダムエンカウンターで呼ばれた、空母鮟鱇ことスレーギヴン・キャリアングラーの注目(ヘイト)をサンラクが集めて、艦載機となった眷属達を引き寄せた所をオイカッツォ・ペンシルゴンが叩き、討伐する。

 

だが15秒が経過してスレーギヴン・キャリアングラーは残っていた艦載機眷属共々、クターニッドの口の中に吸い込まれてしまい、エネルギーを与える事になってしまう。

 

「くっそ、一体何時になったらランダムエンカウンターは終わるんだよ………!」

「一分で四回ペース、此処まで四分越えの計十九回……!」

「武器の耐久もそろそろヤバいね……槍も切り替えなくちゃ」

「カッツォは良いよな、拳でぶん殴れるから武器消費しないの」

「いやいや、此れでもめっちゃ疲れるんだが?」

 

雑魚敵が如何せん多い上に、耐久減少や耐久回復の武器を全員が持っている訳ではない。弓系統の武器は矢を放つだけで耐久値が減り、魔術師にとってMPの枯渇は死刑宣告と同義である。素手で戦う・武器の耐久減少無効・特定の方法で耐久回復等が無ければ、最大で七日間という長期戦を戦い抜くのは不可能に近いのだから。

 

「二十回目……来ます!」

 

クターニッドのランダムエンカウンターが発動、現れるは『超巨大な魔法陣が三つ』。其処から出てきたモンスター達は、ペッパー・サンラク・ペンシルゴン・サイガ-0・ルスト・モルド・レーザーカジキにとって、数日前に見たあの光景に等しく。

 

「ピェッ!?」

「何てことなのさ………!?」

「嘘だろ!!?全員今すぐコロシアムから退避!スチューデさん達NPCを守り抜いて!!早くッッッッ!」

 

最後のランダムエンカウンターにて呼び出されたのは、二属性鯱のアトランティクス・レプノルカに、要塞ヤドカリのアーコリウム・ハーミット、そして空母鮟鱇たるスレーギヴン・キャリアングラーという地獄絵図。

 

『称号【三強謁見(さんきょうえっけん)】を獲得しました』

 

深海三強に初めて出逢ったプレイヤーには、新たな称号が追加されて。そしてルルイアス大怪獣決戦の再演は、アトランティクス・レプノルカが放った蒼い大放雷と共に、コロシアムは愚か他の強者に対して喧嘩を吹っ掛けた事で開幕し、ペッパー達は其のとばっちりを諸に食らう羽目に成ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………皆~、生きてるか~………」

コレ(・・)がどう見れば大丈夫と思うか?」

「マジで死ぬかと思ったですわ………」

「デスヨネー………アイトゥイル~、ノワ~……生きてるか~」

「何とか………なのさ………」

『ワゥ……』

 

ランダムエンカウンターにて呼び出された深海三強達による、コロシアムを舞台にした大怪獣決戦は二属性鯱が放電をぶちかまし、空母鮟鱇が艦載機達を無作為にブッ放し、要塞ヤドカリが生物を無造作に産み出してぶつかり合うという、此の世の終末か何かと言える状況を創り出してコロシアムを壊滅状態まで追い込み、最終的には全員仲良くクターニッドの口の中に吸い込まれて消える結果となった。

 

「スチューデさん達は……!」

「大丈夫、です……!」

「俺様は無事だぞ……!」

「俺もネレイスも無事だ、ペッパーにサンラクよ……!」

『ヨカッタ………』

「僕もルストも無事です……!」

 

声がする方を見れば、サイガ-0がスチューデを抱えて現れ、アラバとネレイスにルスト&モルドが瓦礫の後ろから現れる。横に視線を移すと其所には、ペンシルゴンに抱えられる京極(キョウアルティメット)とシークルゥが、近くの瓦礫を押し退けてオイカッツォが這い出し、秋津茜(アキツアカネ)にレーザーカジキが続く形で現れて、全員の無事が確認された。

 

「カフェインが切れて来やがった………」

「俺もちょっとヤバい………」

「エナドリ飲んだのか二人共」

 

此処までサンラクとオイカッツォが機敏に動けていた理由が判った所で、クターニッドは待ってくれはしない。何よりも此の先の決戦を踏まえて、やらなくてはならない事が有る。

 

「スチューデさ「言うな!」…………」

 

其の言葉を言うより早く、スチューデはペッパーの言葉を遮った。

 

「解ってる……解ってるんだよ……!俺様は弱いから!此処に居たら、お前等の足手纏いになるだけって事くらい!だから………ッ!俺は『船を用意する』!船長だからな!!」

 

皆の視線がスチューデに向く。小さな海賊は己の成すべき事を見付け、そして行動を起こさんとし。

 

「だから……良いかッ!お前等は『絶対にクターニッドを倒せ』!此れは『船長命令』だ!囓り付いてでも倒して、絶対に『全員で』!生きて此処から脱出するんだ!解ったか!?」

 

今にも泣き出しそうになりながら、他力本願と言わんばかりに絞り出した発破だった。だが、其れでも────小さな海賊の言葉は開拓者達とNPCの闘志に、確かな炎を灯したのだ。

 

「全く……クソガキが、一丁前な台詞を吐きやがって……!」

「コレで負けたら、一生の恥になる。────なので、負けるつもりは……無い」

「勿論です………!」

 

全員、力強く夜空を見上げて立ち上がる。スチューデの発破が予想以上に効いたらしい。涙を見せず、スチューデは地上へ帰る為の船を取りに、ほぼ全壊状態のコロシアムから外へと走り出す。

 

「レイ氏、リュカオーンを相手にやった『アレ』…………行けますか」

「はい…。……同じ手順は……必要、ですが……いけます」

「秋津茜、レーザーカジキ。二人にはアルマゲドンが万が一にも耐えられた場合に備えて、竜威吹(リュウイブキ)増乗幅響門(パワーゲート)の準備をして欲しい。クターニッドの一式装備の特徴から、体力お化けのモンスターの可能性が高い」

「はい………!」

「了解しました!」

 

視線の先には、漆黒の穴が佇む夜空とブラックホールが在り。其の黒き重力渦は光すら呑み込み、万物を押し潰す。無限に続く其の先には奥行きを視認する事、確かめる事は出来はしない。

 

だが、穴の(フチ)より伸びる()が掴み。深い淵より出で現れる姿は、まさしく其の名を体現している。

 

「深淵のクターニッド……………!」

 

深淵より這い出る蛸の頭と人の胴体を合体させた、旧神(クトゥルフ)を統べし神の化身たる其れは、血の赤色をした筋肉剥き出しの巨躯を持ち。

 

生命体魔法存在(・・・・・・・)であるからか、自身の魔法を皮膚の代用としているからか、黒い模様や文章と思しき羅列で全身を覆いつつ、自らがランダムエンカウンターにて呼び出した生物達を喰らい、己の身体へと作り変えて顕れた。

 

生きた魚や海生物をぐちゃぐちゃに混じらせ、継ぎ接ぎにして魔法を糸の様に縫い繋げたからか、潮の匂いの中で血と死の嫌悪感が混じり満ちた臭いが鼻を擽り。背中には喰らった生物達の骨で作った、仏像の後光の如く『円』と枝に実る果実に似た八つの異なる色の『宝石』が、怪しげな光を放ち。

 

そして聞こえてくるのは、クターニッドが放っているはずだというのに、複数人が一斉に喋っているかに聞こえる『声』だ。

 

 

『人よ、(あまね)く生まれ広がる一つ目の奇跡よ。人よ、前へ進み暗闇を照らす二つ目の奇跡よ。お前達は何を成す、何を為した。示せ、示せ、示せ。

天より撒かれし種よ、お前達は根を伸ばしたのか。私はクターニッド……………(とも)なる(そら)(いただ)く者、深き淵より世界を見遣(みや)る者、偉大なる軌跡の残照を知る者。

示せ、命の価値を。彼等の願いは、そして彼女の願いは、果たして叶ったのかを』

 

「えぇ、見せてあげますよ………俺達人間(・・)の持つ、可能性の()を!証明と言う名の()としてッ!!」

 

『闘争こそが命の本質故に、されば汝等…………そして勇者(・・)よ、証明せよ(・・・・)!』

 

チーム:不倶戴天 対 クターニッド第五形態にして最終形態たる『想像態』。此処に火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

 






ラストバトル


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