ブチカマス
ペンシルゴンの槍撃により片目を潰された、クターニッドの怒号がコロシアムを揺るがす。全身に力が込められて、明らかに強烈な一発が飛んで来そうな予感がある。
其れでもペッパーには『避ける』という選択肢は存在しない。サイガ-0は詠唱へ入った、サンラクは作戦遂行の為に位置に着いた、他の皆も万が一に備えて退避させた。
「スゥ──────フゥ……………!」
此れで心置き無く、
クターニッドが雄叫びと共に、槍撃を繰り出したのは、ほぼ同じタイミングだった。
VVVVVVVoooOOOOOOOOOooooooooaaaaaaAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!
「ッ……………さぁ来い!『ヘイト集束』!」
紡がれた勇者の言霊を蛸極王装が読み取り、
「行こう、天獄!────────
白と黒、陽と陰、光と闇。二つの要素を反転させ、一時的という条件の元に『世界の理』を変える力を、人の身で執行可能とする神代技術の輝きが、クターニッドへ解き放たれる。
「貴方がルールイアに!いいえ………ルルイアスの塔に施した
刺突が直撃し、ペッパーは貫かれて────いない。彼はインパクトの瞬間、背中に在る八本の巨剛触手を自身の背後に在る地面に突き立て、身体が吹き飛ばないように『固定』していたのだ。同時に天獄は、クターニッドが放った刺突の『衝撃』を独りでに吸収、白い部分が眩い光を放ち始めた。
六道極円盾:天獄には
恰かも其れは蛇口から注がれた水が、ホースを通じて押し出され放出されるのと同じように。理論上は『如何なる敵の攻撃も一発限り』にこそなるが、敵の攻撃を倍以上の火力で打ち返せるのだ。
「サンラクッ!」
「行くぞ、クターニッド!ギックリ腰になりやがれ!超過機構ッッッッ!!!」
ペッパーの叫びとほぼ同時、クターニッドの背面に回ったサンラクが左腕に装着した、
翡翠と黄金の大型籠手には既に『
「ブチ咬ます──────【
出力85%による一撃、更にはクリティカルでの直撃。其の刹那を見抜いての、ペッパーが握る天獄の黒の部分が光って。次の瞬間には深淵のクターニッド・想像態の全身を自身が放った攻撃エネルギーと雷による衝撃、更には風によるノックバックが襲い掛かり、其の巨体に帯嵐状態と帯雷状態の二種の状態異常が付与されて。
同時にサンラク自身にも、超排撃による反動ダメージが襲い掛かり、籠手がミシャ……!と嫌な音を立てて『破損状態』となって、幸運による食い縛りが発動。体力を1残して、其の身が夜空へと吹っ飛ぶ。
「壁じゃなければラッキーだ!アラバ~!たーすーけーて~!!!」
「友よ、どうして自信満々で情けない台詞を叫べるんだ!?」
吹き飛んだサンラクをキャッチし、溜息を付くアラバ。
「あ、クターニッドは!?」
雷と風による一撃で腰を打たれ、自身が放った攻撃をカウンターされ、クターニッドの巨躯が倒れる光景と。
Vo,VoaaaaaAAaaaaaaaaaaa…………!!!
「サイガ-0さん!俺を踏み台に!」
「はい!
自身を踏み台として切り、彼を使って跳躍したサイガ-0が握る大剣に、白と黒の二重螺旋のエネルギーが迸りながら、クターニッドの眉間に最大火力の究極にして必勝をもたらす一撃が、クリティカルヒットする瞬間だった。
「ッ!?」
螺旋状のエネルギーが一発……二発……三発と多段ヒットを続けて、六段目に入った其の瞬間。クターニッドの背中に生えて接続されていた骨輪から、いきなり八本の巨大な触手が展開。其れ等が高速で飛び出したかと思えば、アルマゲドンのエネルギーに絡み付き……『七段目から先を絞り上げて爆砕したのだ』。
「嘘だろ、よりによって『ダメージストップ』!?」
「そ、んな………っう!」
ボスキャラで良く有りがちな、一定体力以下になると其れ以上のダメージを止めてしまう、謂わば『システムトラップ』が存在している。まさかクターニッドが其れをやって来るとは思いもしなかった上に、完全に虚を突かれる事になるとは。
しかしながらアルマゲドンを磨り潰し、破壊するという荒業をやってのけたクターニッドも、タダでは済まなかった。荒々しく振るっていた八本の触手達は力無く、だらりと垂れてはコロシアムの客席を粉砕していき、六段目までにはなるが顔面で受けたクターニッド自身も、今までとは目に見える程に消耗している。
そしてサイガ-0にとっては、必勝を約束する切札にして究極の一撃を以てしても、敵を仕留め損ねた事実と代償が、一気に襲い掛かって来た。
アルマゲドンで万が一
其れは使用プレイヤーは戦闘終了までの間、スキル及び魔法の一切までもが『発動を封じられる』事を
「ペッパァ!レイ氏を連れて、コロシアムの外に出ろ!作戦会議だッ!!」
「解った!失礼します、サイガ-0さん!」
巨剛触手を操ってサイガ-0の腹部に触手を絡め、無限潜航と共に浮かんで全力水泳をしたペッパーは、アラバに抱えられたサンラクと共にコロシアムの外に待つ、仲間達の元へと避難するのだった………。
早急に立て直せ