VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ブチカマス




倶なる天に示す証明(ホシ) 其の十五

ペンシルゴンの槍撃により片目を潰された、クターニッドの怒号がコロシアムを揺るがす。全身に力が込められて、明らかに強烈な一発が飛んで来そうな予感がある。

 

其れでもペッパーには『避ける』という選択肢は存在しない。サイガ-0は詠唱へ入った、サンラクは作戦遂行の為に位置に着いた、他の皆も万が一に備えて退避させた。

 

「スゥ──────フゥ……………!」

 

深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)の力で鎧を通しての呼吸を行いながら、ペッパーは目の前に立つ巨人(クターニッド)に向き合う。聖盾(せいじゅん)イーディスを近くに突き立てオブジェクト化し、他の武器もインベントリアやインベントリに収納している。

 

此れで心置き無く、六道極円盾(リクドウキョクエンジュン):天獄(テンゴク)の必殺技………【超過機構(イクシードチャージ)】に必要な条件たる『巨剛触手に武器を持っていない』が達成出来た事で彼は白黒の勾玉同士がくっ付いた盾を構え。

 

クターニッドが雄叫びと共に、槍撃を繰り出したのは、ほぼ同じタイミングだった。

 

VVVVVVVoooOOOOOOOOOooooooooaaaaaaAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!

 

「ッ……………さぁ来い!『ヘイト集束』!」

 

紡がれた勇者の言霊を蛸極王装が読み取り、状況改変(じょうきょうかいへん)が起動。自身の領域内に入ったクターニッドの一点に凝縮された刺突が、ペッパー『唯一人』に向けられる。

 

「行こう、天獄!────────超過機構(イクシードチャージ)!!!」

 

白と黒、陽と陰、光と闇。二つの要素を反転させ、一時的という条件の元に『世界の理』を変える力を、人の身で執行可能とする神代技術の輝きが、クターニッドへ解き放たれる。

 

「貴方がルールイアに!いいえ………ルルイアスの塔に施した権能(チカラ)!其の身で体験して下さい─────【完全反射(フルカウンター)】!!!」

 

刺突が直撃し、ペッパーは貫かれて────いない。彼はインパクトの瞬間、背中に在る八本の巨剛触手を自身の背後に在る地面に突き立て、身体が吹き飛ばないように『固定』していたのだ。同時に天獄は、クターニッドが放った刺突の『衝撃』を独りでに吸収、白い部分が眩い光を放ち始めた。

 

六道極円盾:天獄には特殊な超過機構(ユニーク・イクシードチャージ)として、敵の攻撃エネルギーを吸収・何倍もの威力にして瞬間的に打ち返す機能………【完全反射(フルカウンター)】が備わっている。

 

恰かも其れは蛇口から注がれた水が、ホースを通じて押し出され放出されるのと同じように。理論上は『如何なる敵の攻撃も一発限り』にこそなるが、敵の攻撃を倍以上の火力で打ち返せるのだ。

 

「サンラクッ!」

「行くぞ、クターニッド!ギックリ腰になりやがれ!超過機構ッッッッ!!!」

 

ペッパーの叫びとほぼ同時、クターニッドの背面に回ったサンラクが左腕に装着した、風雷皇の御手(サルダゲイル・アトゥヌ)を握り構えながらに、コロシアムの壁をグラビティゼロにて走り、腰目掛けて跳躍する。

 

翡翠と黄金の大型籠手には既に『放出せよ(Discharging up)』が施されており、クターニッドとの戦いで蓄積し続けたエネルギーが、荒ぶる風と雷と成って音を立てているのを、サンラクは耳にし。

 

「ブチ咬ます──────【超排撃(リジェクト)】!!!」

 

出力85%による一撃、更にはクリティカルでの直撃。其の刹那を見抜いての、ペッパーが握る天獄の黒の部分が光って。次の瞬間には深淵のクターニッド・想像態の全身を自身が放った攻撃エネルギーと雷による衝撃、更には風によるノックバックが襲い掛かり、其の巨体に帯嵐状態と帯雷状態の二種の状態異常が付与されて。

 

同時にサンラク自身にも、超排撃による反動ダメージが襲い掛かり、籠手がミシャ……!と嫌な音を立てて『破損状態』となって、幸運による食い縛りが発動。体力を1残して、其の身が夜空へと吹っ飛ぶ。

 

「壁じゃなければラッキーだ!アラバ~!たーすーけーて~!!!」

「友よ、どうして自信満々で情けない台詞を叫べるんだ!?」

 

吹き飛んだサンラクをキャッチし、溜息を付くアラバ。

 

「あ、クターニッドは!?」

 

雷と風による一撃で腰を打たれ、自身が放った攻撃をカウンターされ、クターニッドの巨躯が倒れる光景と。

 

 

Vo,VoaaaaaAAaaaaaaaaaaa…………!!!

 

 

 

「サイガ-0さん!俺を踏み台に!」

「はい!始源(ハジマリ)終焉(オワリ)(ウタ)え────!【アルマゲドン】!!!」

 

 

自身を踏み台として切り、彼を使って跳躍したサイガ-0が握る大剣に、白と黒の二重螺旋のエネルギーが迸りながら、クターニッドの眉間に最大火力の究極にして必勝をもたらす一撃が、クリティカルヒットする瞬間だった。

 

「ッ!?」

 

螺旋状のエネルギーが一発……二発……三発と多段ヒットを続けて、六段目に入った其の瞬間。クターニッドの背中に生えて接続されていた骨輪から、いきなり八本の巨大な触手が展開。其れ等が高速で飛び出したかと思えば、アルマゲドンのエネルギーに絡み付き……『七段目から先を絞り上げて爆砕したのだ』。

 

「嘘だろ、よりによって『ダメージストップ』!?」

「そ、んな………っう!」

 

ボスキャラで良く有りがちな、一定体力以下になると其れ以上のダメージを止めてしまう、謂わば『システムトラップ』が存在している。まさかクターニッドが其れをやって来るとは思いもしなかった上に、完全に虚を突かれる事になるとは。

 

しかしながらアルマゲドンを磨り潰し、破壊するという荒業をやってのけたクターニッドも、タダでは済まなかった。荒々しく振るっていた八本の触手達は力無く、だらりと垂れてはコロシアムの客席を粉砕していき、六段目までにはなるが顔面で受けたクターニッド自身も、今までとは目に見える程に消耗している。

 

そしてサイガ-0にとっては、必勝を約束する切札にして究極の一撃を以てしても、敵を仕留め損ねた事実と代償が、一気に襲い掛かって来た。

 

アルマゲドンで万が一敵を倒せなかった場合(・・・・・・・・・・)に、発動者は『幾つかのペナルティ』を負う。

 

其れは使用プレイヤーは戦闘終了までの間、スキル及び魔法の一切までもが『発動を封じられる』事を始めとして(・・・・・)、装備者のステータスには『軒並みデバフ』が乗し掛かる上に、武器防具の全数値は『1/50』まで減らされた挙句、装備を『外す事も着替える事すら不可能』になり、謂わば『戦力外通告』を受けるのと同義となるのだから。

 

「ペッパァ!レイ氏を連れて、コロシアムの外に出ろ!作戦会議だッ!!」

「解った!失礼します、サイガ-0さん!」

 

巨剛触手を操ってサイガ-0の腹部に触手を絡め、無限潜航と共に浮かんで全力水泳をしたペッパーは、アラバに抱えられたサンラクと共にコロシアムの外に待つ、仲間達の元へと避難するのだった………。

 

 

 

 

 






早急に立て直せ


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