何度目かの作戦会議
「マジかぁ…………クターニッドの奴、ダメージストップ持ちだったのか」
「アルマゲドンでイケるかと思ったら、まさかの初見殺しだね………」
「一応予想はしていた…………が、いざやられるとなると話が違うよ」
アルマゲドン発動、そしてクターニッドが展開した蛸足触手による爆砕行動でのダメージストップが、サイガ-0を運搬したペッパーと、アラバに抱えられたサンラクにより、避難していた参加メンバーと帰りの船を取りに行ったスチューデ以外のNPC全員に伝えられた。
「ごめんなさい……いきなり、触手が出てきて……狙いが逸れて、しまい……」
「いや、サイガ-0さんは悪くない。アレは俺が少しでも反応出来てれば、触手の一本か二本を止められた」
「二人共……『そういうの』は無し。此処からどうするかを、私達は考えるべき」
「ルストの言う通りだ、あの場面でペッパーもレイ氏も、やるべき事をやった。予定通り行かないなんて、ゲームやってりゃ日常茶飯事さ」
「そうそう。寧ろ『そういう事態』すら楽しんで、突発的な策練ってクリアするのがゲーマーでしょ?」
「…………だな。よし、此処からは『サブプラン』に移行する」
アルマゲドンによる討伐………クターニッドに施されたダメージストップという名の、システムトラップによって阻まれてしまった今、此処からはサブフィニッシュとして用意した『
「秋津茜、レーザーカジキ。二人は必殺技を撃てるだけのMPは有るか?」
「はい!サンラクさん達が集めてくれた魚と、自前のマナポーションを使えば『一発』は確実にいけます!」
「僕もマナポーションは有りますが、多分切札の増乗幅響門は使えて『一回』………マナ回復の魚を頂ければ『二回』は放てます」
「成程………ルストとモルド、エムルさんにシークルゥさん、アイトゥイルはMPは足りるか?」
「矢が五発しかないから剛弓は其れで打ち止め、魔法弓は打てて二十発が限界」
「自前のマナポーションでも、ルスト一人にバフするのが限界だね………」
「アタシはそろそろ、マナが尽きそうですわ……」
『ワゥル、ルルゥア』
「いざとなれば剣術で斬りに行くで御座る」
「ワイは酒がもう無いのさね……
「俺の大海峡はマナを与えれば、ネレイスが武器の耐久を回復してくれる。何とか戦えるぞ」
武器は耐久に優れた物でも、何十何百の敵を倒していればボロボロになる。耐久減少無効や耐久回復能力を備える武器は少なく、アラバの大海峡はネレイスが居る為にMPを使えば耐久を回復出来る能力が有るらしく、全員の視線(ガチな奴)が向けられた。
まぁ此方には鉱物系アイテムを砕けば希少度合で耐久値が回復するユニーク小鎚三兄弟や、王撃ゲージを100%消費で耐久値が回復する能力持ちの
「…………解りました。アラバさん、マナ回復の魚が有るので早急に捌いて、食べられる切身に分ける事って出来ますか?」
「お、おぅ!任せてくれ!」
「ありがとうございます。モルド、万が一に備えて購入したマナポーションを使って、ルストにありったけの強化を」
「あ、うん!」
魔力もカツカツの限界が迫る中、ルルイアスに招かれてからの食材確保の為に狩ってきた魚達が、此の局面で役に立つならばと、ペッパーは其れを喜んで擲つ。活け〆にして生物からアイテムにした事で条件を満たし、インベントリアに収納していた魚と、事前に購入したマナポーション達を取り出して、彼はアラバとモルドに渡していき。
そんな中、サンラクはクターニッドにアルマゲドンを当てるも、仕留められなかった事でペナルティを負い、此の場の誰よりも弱くなってしまった、
「ぶっちゃけ……どうですかね、レイ氏?」
「………多分、私が行っても……『足手纏い』だと、重々………承知して、ます………」
暫しの沈黙。廃人故に今の自分がどんな状態に在るか、
「
「解った」
サイガ-0の意思をサンラクが聞き届けた直後、轟音と共に迫り来る音がする。おそらくアルマゲドンの衝撃でダウンしていたクターニッドが復帰し、此方へと迫って来ている音だろう。
「ペンシルゴンと
「私はカレドヴルッフやグラダネルガも含めて、全力で使うつもりで居るよ」
「僕はちょっと刀がキツいかな………予備は有るとはいえ、そう何回も秘剣系スキルは切れないよ」
「一撃でも良い、特大の一撃をクターニッドへ叩き込んでくれ」
「解った」
「よし………全員注目!」
ペンシルゴンの、京極の言葉を聞き届けたペッパー。そして皆を見ながらに、彼はクランリーダーとしての号令を放つ。
「作戦名『天地開闢』も最終段階、サブフィニッシュプランまで使う羽目になった!勝っても負けても………何て生温い台詞は無し!事前報告も無いまま、シナリオEX開始から六日間!俺達はクターニッドさんの『遊び』に付き合わされた!………全員、蛸足に噛り付いてでも
応ッ!と全員が答えた其の瞬間、コロシアムを粉砕して現れるクターニッド。想像態との戦闘突入時よりも、明らかに背中に生える骨輪は巨大化、八つの宝珠より巨大極まる蛸足達を展開して、其れを脚代わりに使い歩く姿はさながら、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた『ウィトルウィウス的人体図』の如く、巨躯が宙に浮いている様にも見える。
「……レオナルド・ダ・ヴィンチの」
「………あ!確か大の字で寝っ転がってる、変なおじさんの絵ですね!」」
「ぶふっ!?って痛い!大丈夫だから、ルスト痛い!?」
「あぁ……秋津茜が言わんとしてる事は解るわ」
こんな状況でも笑えるモルドの笑いの沸点の低さを、ちょっと羨ましく思う。と、そんな中でサイガ-0が動いた。
「もしもの時の………
プレイヤーとNPCの視線を集める先、
サイガ-0が使ったのは何れも『強化魔法によるバフ』であり、自身の『全ステータスを大幅に上昇させる』能力を持つ【
自身よりも『巨大な敵』との戦闘する場合に、自身の『全ステータスを大幅に上昇させる』という【
そして魔法媒体によって獲られる『能力上昇の効果倍率と効果時間を超上昇』させる効果を内封する【
「因みに御値段は………」
「えっと……『八桁』くらい、は………します」
ブルジョワジーですか、資本主義の賜物ですよ。そんな事を心の内に留めていれば、バフ魔法を乗せきったサイガ-0が立ち上がり、近くに立て掛けてオブジェクト化させていたスレッジハンマーを手に取る。
成程、クターニッドを万が一にもアルマゲドンで仕留められなかった場合を想定し、武器や防具を外せないデメリット等の諸々を見越して別の武器を用意していたのだろう。流石は最大火力、勝利の道筋を今尚見失っていない。
「クターニッドさん………俺達の底力はまだまだこんな物じゃ無いですよ。見せてあげます!」
天獄を地面に刺し、グランシャリオを取り出したペッパーは、剣身に収まる蒼桃色の宝玉達を外して、七つ在る穴の内『鋒に最も近い七番目』と其の下の『六番目』へとセットし直す。
想像態・第二形態へ突入したクターニッドと、チーム不倶戴天の最終決戦が──────始まる。
決着へ往かん