VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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最終局面




倶なる天に示す証明(ホシ) 其の十七

竜威吹(リュウイブキ)&増乗幅響門(パワーゲート)』の合体砲撃魔法で焼却する─────アルマゲドンが万が一にも、何らかの形でクターニッドを倒しきれなかった場合に備えて用意した、サブフィニッシュプランは先ず何よりもクターニッド本体の『十秒近く動きを止めなくてはいけない』という、絶対必須条件が存在している。

 

そう、ペンシルゴンの槍撃で片目を潰された際には、跳ね起き上がった挙動を見せ、今は八本の触手達を振り回しまくるクターニッドを相手に……だ。

 

「奴を止める手段……先ずはあの暴れ狂ってる『巨大な八本の触手達』を、何とかする!ルストはバフが終わり次第『背中に在る宝珠』を狙い撃って!近接組は適正距離を維持、突っ込み過ぎたら触手の薙ぎ払いにやられかねないぞ!」

 

Voaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!と怒号を上げて、しっちゃかめっちゃかに触手を叩き付けるクターニッド。質量なんぞ何処へやら、自分には重さの概念なんざ存在しないとばかりに、暴れ散らかしまくる光景は見方を変えれば、クターニッド自身が追い詰められているとも取れる。

 

そんな状況を見つめる中、サンラクがペッパーにこんな事を言ってきた。

 

「ペッパー。レイ氏がクターニッドを『跳ね飛ばしたら』、俺を触手に巻き付けて空まで急速で飛んでくれ。奴の真上を取ったら、急降下しつつ『俺をぶん投げろ』」

「…………策が有るんだな?」

 

無言、然れど力強く頷いたサンラクを見て、ペッパーもまた覚悟を決めた。

 

「解った。先ずは俺が、奴の動きを少しでも止めてみる。作戦決行のタイミングはサンラクに任せる」

「任せろ」

 

地面に刺した天獄(テンゴク)を握り直しつつ、ペッパーは口上を述べる。

 

「ウェザエモン・天津気(アマツキ)さん!貴方の絶技を二つ─────使わせて頂きます!」

 

グランシャリオの鋒と其の次の場所に納めた宝玉達が、煌々と光りて輝き出す。彼が使わんとしている『其れ』は、七系統在る晴天流(せいてんりゅう)の中でも唯一『ワンセット』として扱われる、【熱】と【灰】の絶技であるが故に。

 

晴天流(せいてんりゅう)(ねつ)】──────奥義(おうぎ)!」

 

晴天流の【熱】系統は、刀を足元へ垂直に刺して敵の攻撃に対して踏ん張る『防御の型』が本来(・・)の姿なのだが、ウェザエモンは此れに『体内と体外のマナ粒子を操作・振動による熱を発生させて』、得物を通じて『地面に送り込んで火柱(・・)を発生させる』という、超常たる『(ワザ)』に昇華させたのだ。

 

クルリと回した鋒が、クターニッドが作り上げたコロシアムへと突き立てられる。同時にペッパーの体内から発せられる『熱』が増大しながら、腕から指先に送られて行き、其れが剣へと通じて地面に流入し膨張。地面という『檻』を内側から食い破る様にして、顕れ出でるは『三つ首を想わす赤龍達』。

 

「走れ──────『火砕龍(かさいりゅう)』!!!」

 

真っ直ぐに、クターニッドへと伸びる火の龍達。ペッパーが再現して見せた其れを見たクターニッドは、巨大触手を振るいて龍を払いに掛からんとし。だが其の龍達はクターニッドを無視して、夜空へと昇り上がりて交わるや赤い『熱』は、暗雲と共に『灰』へと転じる。

 

晴天流(せいてんりゅう)(はい)】──────奥義(おうぎ)!」

 

晴天流において【熱】とワンセットの関係を持つ【灰】の技達は、熱から転じた『煙』を攻撃へ転用し、火元から離れると空気より重くなる特性を元に、敵を包囲・窒息へと追い込む。そうして生まれた、晴天流【灰】系統の奥義の『一つ』こそが。

 

「囲い包め──────『灰吹雪(はいふぶき)』!」

 

グランシャリオの鋒を振り上げれば、黒雲染まる天より落ちる発動した火砕龍と同じ形の、黒煙と化した火砕龍達がクターニッド目掛けて雨の如く降り注ぐ。だがクターニッドも見上げて殺られる程、甘い思考(AI)はしていない。

 

襲い掛かる火の龍と黒煙の龍を、背中の巨大触手で片っ端から叩いて砕き、狭まる包囲網を己の巨躯を回転させる事によって、ウェザエモンの【熱】と【灰】の絶技二つを真正面から力業で捩じ伏せ、上空の黒雲すらも吹き飛ばす。

 

「フッ………クターニッドさん、確かに火砕龍と灰吹雪の対処法としては正しいです(・・・・・・)。けれど其れは同時に間違いでもあります(・・・・・・・・・)

 

クターニッドは現在『蛸足』を軸に回転している。当然此程の回転を成すには相応のスピードとパワーが必要不可欠。

 

「汝、縫い留めしもの。我、繋ぎ止めしもの。万象に寄り添い、しかして相容れぬ万有の黒を穿つ─────【黒楔の槍(シャドウ・ウェッジ)】!」

 

月光によって照らされながら回転し、暴れ狂うクターニッド──────光に照らされ残る僅かな『影』に、肉薄したペンシルゴンが勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)にしてメインウェポンとする聖槍(せいそう)カレドヴルッフと、強過ぎるが故に弱体化(ナーフ)を受けた魔法(硬直)を打ち込む。

 

ビタリと回転が止まる、耐久に優れたカレドヴルッフの穂先が、柄がビギリと嫌な音を立てる。元々耐久力に秀でる勇者武器がクターニッドを相手に、一秒足らずで耐久値を大きく減らしたという事実がヤバいのか、僅かな時間でも敵を止められた黒楔の槍が凄いのか。

 

「カッツォ君!京極(キョウアルティメット)ちゃん!シークルゥちゃん!エムルちゃんにアイトゥイルちゃん!クターニッドの軸蛸足を掬うよ!」

「赤・青・黄色!三色混合────拳気(けんき)過重黒衝(かじょうこくしょう)】ッ!!」

秘剣(ひけん)獅子(しし)()りッ!」

「最後の一発!【加算出力(アッドブースト)マジックエッジ】ィィィィィィ!」

「食らうのさ、ワイの【華魔威断(カマイタチ)】!」

「魔力を振り絞った此の一撃!御覧有れ、深淵の盟主よ!我が【タケノミカヅチ】をッッッ!!!」

「私もぉ!!!!!」

 

黒雷を纏う衝撃が、格上を切り裂く斬撃が、巨大な魔法と風を乗せた斬撃が、竹林を産み出す魔法が、そして致命の槍と共にエフェクトを纏う刺突が、クターニッドの回転に用いた軸足の後側を渾身極まる力で穿つ。

 

カレドヴルッフが砕かれ折れて、反動で動けなくなったオイカッツォを引っ張り、プレイヤーとNPCが一目散に避難を開始。同時にクターニッドの巨躯が、バナナの皮でも踏んづけた様に、つるんと背中から地面に落ちていく。

 

だが───────クターニッドは自身の触手を二本使い、倒れ込む巨躯を支えて背中から落ちるのを防いだのだ。

 

「な……『ワゥルァ!』……ん!?」

 

クターニッドの執念の凄まじさを目の当たりにし、触手を何とかせんとした一同を間を速く走り抜け、夜空へと跳躍する一つの影を見る。

 

「えっ、ノワ!?」

 

そう、ペッパーがテイムしたユニークモンスター・夜襲のリュカオーンの小さな分け身、テイムモンスターのノワが夜空と月光が輝く中で右前肢を掲げ、次の瞬間には闇を集束・巨大な『狼の右手』を作り出した。

 

『はぁ!?!?』

 

サンラクやペッパーを始めとして、此の場に居た全員が驚愕する最中、ノワの右前肢がクターニッドの顔面に叩き付けられる。其の速度は刻傷(こくしょう)愛呪(あいじゅ)を刻んでいった『あの』リュカオーン程では無いものの、狼という生物の『狩猟本能』故か完全にクターニッドの不意を突く一撃として、倒れ掛けていた巨躯を押し込み、背中を地面に着けさせた。

 

そしてノワは勢いを其のままに、空中で数回の回転の後にコロシアムの観客席へと着地。自らの存在を示してか、はたまた今だと言うてか高らかに遠吠えをしたのである。

 

「ペッパー、俺を運んで夜空へ!レイ氏、今だ!!!」

「了解ッ!」

「行きます……【巨神の崩撃(ティタノマキア)】!!」

 

サイガ-0が持つ使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)の中でも最高額にして、時価『5億マーニ』を記録した『最強の魔法』が、(彼女)の意思をトリガーとして封じ込めた魔法を解放する。

 

現在判明している土属性魔法の中でも最上位に匹敵し、ある程度の範囲に『地面が在る事』を条件として発動出来る其れは、元々のルルイアス(ルールイア)が『島』であった事で発動条件を満たした。

 

大地が鳴動し、クターニッドが作り上げたコロシアムを破り顕現するは、巨神を思わせる『巨大な土の拳』と皹割れた拳の奥に宿るは、赤く光り輝く灼熱を帯びた『光』であり。巨神の一撃が青天井に倒れたクターニッドの背中を、夜空の星と月が輝く真上へと思いっきり殴り飛ばす。

 

其れは無限潜航によって夜空を泳ぎ、インベントリアから聖盾イーディスを取り出し、巨剛触手にグランシャリオ共々握りながら、納めた宝玉の位置を変更しつつ、昇り上がるペッパーと。巨剛触手に巻かれながら、共に往くサンラクを追い抜いた。

 

皆が成すべき事を成した、此処からは彼女(・・)の仕事だ。

 

「「ルスト!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同じ頃、コロシアムから離れた場所にて二人のプレイヤーが。此の戦いの成否を分けるフィニッシャー達が、漸く『補給』の時間を終えた。

 

「アラバさん、ありがとうございました!」

「お陰でマナも完全回復しましたよー!」

「礼には及ばない!二人共、頼んだぞ!」

『ガンバッて、フタリとも』

 

アラバがレーザーカジキと秋津茜を、コロシアムへと運び始めた。決着は迫っている。

 

 

 

 






各々の成すべき事


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