VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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青、覚醒す




倶なる天に示す証明(ホシ) 其の二十

其の【青】を、ペッパーとペンシルゴンにレーザーカジキ、サンラクとサイガ-0、ルストとモルドは知っている。嘗てのルールイアと呼ばれた国を、全滅寸前まで追い詰め。しかしクターニッドによって滅ぼされ、街全域を汚染し染み付いた『狂える大群青』と呼ばれる存在。

 

非活性(・・・)ならば、おそらく『大丈夫』という淡い期待を抱けども、此れが『触れたら一発アウトのフィールドギミック』である以上、そう経たずに此処も『安全圏(セーフゾーン)』では無くなるだろう。

 

「エムル、頭に乗れッ!速く!」

「は、はいなぁ!」

「アイトゥイル、ノワ!」

「はいさ!」

『ワゥル!』

「此れってアレだよね!?」

「まさかとは思うけど………!?」

「ペンシルゴンとモルドの予想通りだと思う!兎に角絶対に『触れるな』!足に自信が無い人は、俺が触手で運送する!」

 

探索系ゲームでは御約束も御約束な『脱出パート』。制限時間以内に脱出出来なければ、即GAME OVERが待ち構えている。オイカッツォも、京極(キョウアルティメット)も、眠気に襲われるルストも、秋津茜(アキツアカネ)も、レーザーカジキも、そしてアラバも立ち上がり、ペッパーは全員脱出を成し遂げるべく聖盾(せいじゅん)イーディスをインベントリアに、空いた八本の巨剛触手(きょごうしょくしゅ)を広げて運送準備をしていた時だった。

 

『忌々しい始源の亡霊め』

「えっ?」

「何だって?」

 

クターニッドが重要な事柄を言った。始源の亡霊………おそらく狂える大群青を指すだろうが、深淵の盟主は其れを親切丁寧に教えるつもりは無いらしい。

 

『人よ。私と力を分けた鎧を纏い、力を示した勇者(・・)よ。汝に其の鎧を託す(・・)。此の場は再び深淵へと沈む……。危機は近い、努々忘るる事無かれ………』

 

深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)を継承する事が決まったと同時、此の場にいる全員が同じ方向を示されたように、其の方角へ視線を向ける。

 

『行け、旅は続く………此の世界に生きる人よ、バハムート(・・・・・)達を見付け出せ(・・・・・・・)

「なっ─────」

「お前、其れは………」

 

ウェザエモンを倒し、消え行くセツナが遺した其の『単語』を、再び耳にする事になろうとは。そうなると『ドラゴン』なのか、そうでないのかが解らなくなってくる。

 

現在(いま)は継がれし『人』の物である。然らば、抗い戦うのもまた現在(いま)を生きる者……』

「よく解らないけど、何時か狂える大群青みたいなヤバイ奴等が現れるって意味か………!?」

「くっ……!ロケートが出されたなら従ってやるよ、走れる奴は走れ!アラバは空泳いで、足が遅いのはペッパーの触手に運んで貰え!此処から脱出するぞ!」

「わ、解った!」

「タコさん、御元気で!」

 

崩壊した街並みを更に壊して喰らい潰す、荒波の如く暴れ狂う【青】の………狂える大群青が活性化していく街並みの中、クターニッドが整えたのか不自然な程に保たれた道を、サンラクと秋津茜が各々のパートナーのヴォーパルバニーを乗せて走り、ペッパーは触手に仲間達を抱えて、アラバと共に夜空を泳ぎ行く。

 

 

『────────』

「えっ………?あ、えと………はい」

 

そんな中、サイガ-0がクターニッドと話をしていたかと思えば。

 

 

『────────』

「クターニッドさん?………解りました」

 

ペッパーの頭にも直接声が届き、唯々彼は頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狂える大群青。例えるなら其れは『スライム』の様な不定形さを持ち、ある意味では『海波』の様に押し寄せる物で、だがまるで『霧』の如くフィールドを満たしていき、そして何かが悍しい程に蓄積している『存在』という事だけは解る。

 

文化の残滓と人の営みが残り、嘗ての栄光を感じられたルルイアス。しかし今は青に青と青が、乱舞して暴れ狂う地獄の一丁目、まるで蛇が獲物を補食するが如く、走り続ける者と空を泳ぐ者共を食らい尽くさんと襲い掛かる。

 

「此の道何処まで続いてるんでしょうか!?」

「ふぉおっ!?」

「多分、島の外………」

「海を泳ぐの!?」

「流石に此のままじゃ青に潰される………!」

「スチューデが、船を用意してれば良いけど!」

「信じましょう、スチューデさんを!」

『ワウ!』

 

道を駆ける者、空を泳ぐ者。不安を抱えながらも開拓者達は、NPC達は進み続け。彼等彼女等は遂に、海岸線へと到達した。

 

「ゴール!」

「こっからどーすんの!?」

「最悪アラバにエムル達を任せるつもりで!」

「俺にか!?」

 

押し寄せる【青】。NPCの命は重く、プレイヤーは死亡してもリスポーン出来る。時間は無い、決断の刻が迫っていた──────まさに其の時。

 

「お前等ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

出逢った時は絵に描いた様な『クソガキ』であって、ルルイアスに引き込まれてからの彼は、唯ひたすらにビビり散らかしまくっていた。

 

だがしかし…………六日間のサバイバルの中で、父親のカトラスと遺された手紙によって、前に進む覚悟と勇気を得た事により、一皮剥けて成長した少年の様な声色が、振り向いた開拓者とNPC達の視界に移る。

 

其処にはクターニッドのモノであろう、巨大な漆黒の触手に掴まれながら、此方へと近付く随分と真新しい巨大な帆船。まるで六日前に嵐の海で出逢った『クライング・インスマン号』を反転(・・)の力で元に戻しただろう物に乗り、船首には赤鯨のカトラスを振り回しながら、声を張り上げては手を振るスチューデの姿が在った。

 

クソガキ(スチューデ)か!」

「スチューデさん!」

「というか其れ(・・)どうなってんの!?」

「俺様に解る訳無いだろ!?兎に角、船は見付けて来たぞ!早く船に乗り込め!」

「皆、さぁ行って!」

「アラバ!お前はすっとろいんだから、先に行け!」

「サンラク、お前はどうするんだ!?」

 

甲板から海岸線に投げられる縄梯子、ペッパーは巨剛触手を操りつつ、船の甲板へ急いで仲間達を乗せながら、アラバにエムルを預けたサンラクと合流する。

 

「俺は滅茶苦茶強いからな。死んでも(・・・・)生きて帰るんだよ!」

「其れに死ぬつもりは毛頭無い……!脱出までの時間稼ぎは任せとけ!」

「………!解った、死ぬなよ二人共!!」

「あーくん!絶対に戻ってきてよ………!!」

「当たり前だ………!」

 

迫り来る【青】の脅威。津波の如く押し寄せる中、サンラクをおんぶしたペッパーが、夜空を飛ぶ。其れを見た【青】はペッパー達を喰らわんとし、重なり合いながら夜空へと昇り上がる。

 

「やっぱりコイツ等、お前を『最優先』で狙って来てるな」

「だろうね。クターニッドさんの力が施された鎧だからか、取り込んで力にしたいのかもね」

 

狂える大群青………おそらく此の存在は『群態タイプのモンスター』の可能性が高い。有機物だろうが無機物だろうが食らい、増殖・侵食・侵略するエイリアンか何かだと言われても納得出来る。

 

だからこそ、脱出する味方の安全確保の為に離れた。其れは同時に『反転の力』を、敵にぶつけられるようにする為でもあり。

 

「『狂える大群青同士で食い合え』!」

 

ペッパーの言霊によって、状況改変(じょうきょうかいへん)が効果を発揮。自身を中心に半径30m内に居た【青】が、ヘイトを別の【青】と向け、物量差の中での共食いを始める。

 

「ペッパー!サンラク!」

「サンラク、確り掴まれよ!」

「あいよぉぉぉぉぉっ!」

 

青の波の中をルーパス・アサイラムと真界観測眼(クォンタムゲイズ)の点火と共に飛び抜け、状況改変の効果で【青】同士が食らい合う、魑魅魍魎の空間を飛び抜ける。

 

そして【青】の荒ぶる空間を抜けきった其の時、近くの海面が轟ッ!と水柱を上げたかと思えば、何かが飛び出して【青】に『無色透明な触手』を叩き付けて、島の内側へと押し返すのをサンラクは見た。

 

しかも其れは彼にとって『見覚え』が有る上に、何なら自分の手で一度『討伐』した相手だったからこそ……

 

「何故生きてるバッカルコーン!!!」

 

そう叫ばざるを得なかった。そんな事は露知らず、ペッパーは一目散に皆が待つ帆船まで泳ぎきって、サンラク共々無事に生還するに至り。

 

「あーくんッッッ!」

『ワゥルア!!!』

「ペッパーはん!」

「うおぁ!?」

「サンラクさぁぁぁぁぁぁん!!」

「ぐべぇ!?」

 

ペッパーにはペンシルゴン・ノワ・アイトゥイルが、サンラクにはエムルが抱き付き、二人共に少なからずのダメージを食らって。

 

「見て下さい、アレ!」

 

レーザーカジキが指差す先、四つ在る塔の一つの頂上にて二体の封将の姿。他の塔にも同じく封将達が立ち、内側に押し込められた【青】達が、クターニッドの巨大な触手達に叩き潰され、瓦礫と合挽肉(ミンチ)にされていく姿を目の当たりにした。

 

「凄い………」

 

クターニッドの一式装備を継承した者として、大本の存在が成した凄まじい戦いを目に焼き付け、グランシャリオをインベントリアに入れたペッパーは、空いた右手を胴装備の中心にて握る。

 

此の戦いを忘れない事を、受け継いだ者としての責務を果たす事を、甲板の上で船酔いに襲われながらクターニッドへと誓い。そんな中でモルドが気付いて、皆にこう言ったのだ。

 

「ねぇ……皆。コレ………『投げられる寸前』じゃない?」

 

クライング・インスマン号に似た帆船は、クターニッドの巨大触手に掴まれている。そして触手は力を込めていると言わんばかりに、ギチリ……ミチリ……と膨張と力瘤を作り上げながら。まるで紙飛行機でも飛ばすかのように、船は斜め上に傾いており。

 

ふと視線を向けると、ペッパーとサンラクと交代したクリオネの封将………『クリーオー・クティーラ』が此方を、其れもサンラクに視線を向けた後に『あっかんべー』をしていて。其の瞬間、サンラクが叫んだ。

 

「全員船にしがみつけぇーっ!?!」

 

刹那に強烈極まる慣性が、プレイヤーとNPC達に襲い掛かり。本来なら海を進む筈の船が、(そら)を爆速で飛んで往く。

 

猛烈にして驀進───────遠くへと離れ行く中で、ペッパーとサンラクが最後に見たルルイアスは、躍り狂う【青】を潰して覆い尽くし、そして島の全体へと広がる、クターニッドの巨大な触手と共に輝く四つの塔。

 

島を喰らいて、破滅を齎す大群青の波濤を塞ぐは、威風堂々と聳え立つ防波堤。クターニッドが放つ揺るがぬ威光と共に在りて、ルルイアスは再び海底という深淵へと消えていったのだった…………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『深淵のクターニッドは再び倶なる天より別たれた』

『勇者は深淵の盟主より己と力を分けた鎧を託された』

『狂える大群青は再び封じられた』

『ユニークシナリオEX【(ヒト)深淵(ソラ)を見仰げ、世界(セカイ)反転(マワ)る】をクリアしました』

『小さな海賊は明日を恐れぬ勇気と前に進む覚悟を得た』

『ユニークシナリオ【深淵の使徒を穿て】をクリアしました』

『称号【深淵からの生還者】を獲得しました』

『称号【トゥルー・シーカー】を獲得しました』

『称号【フライング・インスマンズ・クルー】を獲得しました』

『称号【赤鯨海賊団名誉船員】を獲得しました』

『称号【継承の証明】を獲得しました』

『称号【力分ける者】が【盟主の威光を授かる者】に変化しました』

『称号【道は違えど心は同じ】を獲得しました』

『称号【一目置かれたアウトロー】を獲得しました』

『一定の条件を充たしたプレイヤーが、称号【一攫万金(ミリオンゲッター)】を獲得しました』

『一定の条件を充たしたプレイヤーが、称号【一攫億金(ビリオンゲッター)】を獲得しました』

『一定の条件を満たしたプレイヤーが、称号【一攫兆金(トリリオンゲッター)】を獲得しました』

『アイテム【青色の聖杯】を獲得しました』

『アイテム【緑色の聖杯】を獲得しました』

『アイテム【白色の聖杯】を獲得しました』

『参加者全員がアクセサリー【深淵の警鐘】を獲得しました』

『参加者全員がアイテム【深淵の雫】を獲得しました』

『参加者全員がアイテム【世界の真理書「深淵編」】を獲得しました』

『ユニークシナリオEX【勇ましの試練:聖盾之型】をクリアしました』

『ユニークシナリオ【勇ましの試練】が進行しました』

『勇者武器を持つ者と雌雄を決するべし』

『ユニーククエストEX【七星の皇鎧よ、我が元に集え】が進行しました』

『ワールドストーリー【シャングリラ・フロンティア】が進行しました』

 

 

 

 

 

 






世界がまた動く




称号紹介


赤鯨海賊団名誉船員:ユニークシナリオ【深淵の使徒を穿て】を、スチューデを再起&父親の遺品全てを発見して届けた上で攻略した場合の隠し称号。所謂『トゥルーエンドトロフィー』。


盟主の威光を授かる者:クターニッドの一式装備・深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)を装備し、条件を達成してクターニッドを撃破する事で獲得出来る称号。類似称号は『天津気の襲名者』。





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