VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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件の者達は




インパクト・オブ・ザ・ワールド ~シナリオは終わる、戦は始まる~

ユニークモンスター・深淵のクターニッドとの激戦を終え、狂える大群青の再活性化にクターニッドによってルルイアスから脱出を成し遂げたペッパー達は現在、クライング・インスマン号に似通った帆船の甲板にて、びしょ濡れになりながら引っくり返っていた。

 

「戻ってこれた………うづぷ、ぎもぢ悪い………」

「夜と潮風……帰って来たのさね」

『ワゥ!』

 

波に揺られて船酔いに襲われながらに見上げれば、六日振りの海上と本物の夜空、そして夜風の冷たさと潮の匂いに満ちる海の真ん中に自分達は居る。

 

夜の闇に慣れてきたからか、回りを見れば他のメンバーも引っくり返ったり、サンラクが帆船のロープに足を絡めて宙吊りになったり、オイカッツォが空樽に頭から突っ込んでたり、レーザーカジキの周辺に数十羽のフクロウが飛来して来たりと、ツッコミ出したら止まらない光景が広がっていて。

 

そんな中、ロープから抜け出して夜空から落ちてきたサンラクが、空中関連のスキルで落下速度を殺して甲板に降りて来る。皆も立ち上がる中、ペッパーも船酔いに苦しみながらも此処まで纏い続けた深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)とグランシャリオをインベントリアへ収納。

 

代わりに奏でる者の旋律羽衣(ダ・カーポ・シェイルンコート)へ着替えて、フラフラと立ち上がるや『進行任せた』とサンラクに音頭をアイサインで頼んだ。

 

「いやー……まぁ取り敢えず皆。ユニークシナリオEX、六日間の戦いお疲れ様です。俺達はこのゲームを誰よりも早くプレイし、誰よりも速くクリアした。此れは快挙だ、俺達が一番乗りだ」

「だね。いやぁ………六日は長かったよ」

「……………眠い」

「ふぁあ………僕も、眠いや」

 

ルストがうつらうつらし、モルドも欠伸をしている。オイカッツォもペンシルゴンも、サンラクやサイガ-0や京極(キョウアルティメット)秋津茜(アキツアカネ)、そしてレーザーカジキや自分にアラバ達NPCも全員疲労困憊の様子で、激闘を物語るには充分だった。

 

と、ペッパーやサンラクの頭や肩を含めて『音も無く降り立った』のは、白や黒の羽毛を持った『フクロウ』達であり、其れが一羽や二羽ではなく数十羽の大群となって、帆船の至る所に止まって来たのである。

 

「お、お前等大丈夫か!?」

「アハハ……っぷ、知り合いからの連絡みたいな物なので………ぐっふ、ぎもちわりゅ………」

「うわぁ……あの似非魔法少女かよ………スパムメールならぬスパムフクロウって………」

「僕もですね…………」

『ウルァァ……』

 

一羽のメールを見れば、やはりというかキョージュからで。ペッパーとサンラクは共通内容として『是非とも深淵のクターニッドの真理書を拝見したい』と書かれていた。

 

「取り敢えず、ミルキーウェイ使って………つぷ、船酔い状態から脱却、しよう」

 

星天秘技(スターアーツ)ミルキーウェイ起動。船の甲板から離れつつ、ペッパーは『世界の真理書「深淵編」』を黙読し…………絶句。

 

「皆。疲れてる所悪いが、今すぐに世界の真理書を読んで欲しい。とんでもなく(・・・・・・)ヤバい情報が記載されてる。後ペンシルゴン、世界の真理書「墓守編」を返しておく」

 

直ぐ様皆に声を掛けてインベントリから報酬たる攻略本と、インベントリアからグランシャリオを取り出し、嵌まっていた宝玉の一つを書物に戻してペンシルゴンに手渡し。そして他のメンバーも真理書を黙読、其の内容に眠気やらが吹き飛ばされた。

 

「…………ヤバくね?」

「ヤバすぎるだろ………」

「不味い………ですね、コレ………」

「うん、流石にヤバいね。………情報規制というか、開示は控えて貰わないと色々厄介な事に成りかねない」

 

言葉に出さずとも満場一致で『そう易々と開示は出来ない』という意見で纏まった。何せコレを開示しよう物なら、確実に独占(・・)というMMOでは『やってはいけない』事態が起きる。最悪の場合、第二第三の『阿修羅会』が現れる事は避けられなくなってしまう。

 

「はぁぁぁぁ……………クリアしたと思ったら、また別の問題が出てくるなんて………」

「ログアウトしたら寝るわ………」

「取り敢えず、寝る………」

「僕も………」

「賛成~………あぁスチューデ。ちゃんと帰れそうか?」

「此の方角と星の位置………大丈夫!フィフティシアに帰れるぞ!」

「くれぐれも迷う………なんて事はしないでよ?」

「安全にお願いします!」

 

舵を握り、着水した衝撃で開いた帆に目一杯の夜風を受けながら、帆船は海路を進んでフィフティシアへと向かって行く。

 

「そういや、皆は聖杯何色選んだ?」

 

ミルキーウェイの効果が切れて、再び船酔いに襲われた頃に、サンラクがクターニッドの報酬である『反転の聖杯』について質問してきた。皆各々が選んだ色を言っていき、最終的にはこのようになっている。

 

 

 

 

 

ペッパー:青・緑・白

 

サンラク:青・藍・白

 

ペンシルゴン:青・赤・白

 

オイカッツォ:青・紫・藍

 

京極:青・藍・黄緑

 

秋津茜:青・紫・赤

 

サイガ-0:青・紫・白

 

レーザーカジキ:青・赤・橙

 

ルスト:青・緑・赤

 

モルド:青・黄・紫

 

アラバ:赤・黄・橙

 

 

 

 

 

 

アラバを除き、全員が性別反転の青を取ったのは何かの偶然なのか、其れとも如何なる理由が在るのか。まぁ十中八九『性別専用一式装備を装着する』………という目的の為だろう。

 

メンバーの中で唯一『魔法無効』の黄緑を選んだ京極や、オイカッツォが選んだ色が『割りとガチな方向』だったり、ペンシルゴンが白を使ったら『絶対にヤバい事』しか起きないだろと思わざるを得ない。

 

他にも報酬は有るのだが、如何せん船酔いで頭がヤバ─────「ペッパー!サンラク!レーザーカジキ!」

 

「うぉ、どうしたアラバ?」

「アラバさん?」

「いや、俺はそろそろ故郷へ帰ろうと思ってな」

「………あぁ、ルルイアスから出られ……っぷ、から………ですよね?」

「でも、深夜ですよ………?念には念を入れて、明日の朝まで待ってからが良いと思います!」

 

シャンフロのモンスターの種類は、夜の方が圧倒的に狂暴な連中が多い。タダでさえ視認性が悪い海中の中を泳ぎ、故郷へ帰ろうというのはリスクが高過ぎる。

 

「うむ、そうか………だが………」

「大丈夫……ですから……っぷ………ちゅらい……」

「ペッパーは取り敢えず休んどけ。流石に帰る途中で他のモンスターに食われたら、俺達も目覚めが悪いって話だ。其れに船で一泊するくらい問題ねぇよ」

 

パチンとウインクに、右手でサムズアップを行うサンラク。其れを見たアラバはニッと笑い、一人一人に握手をしながら包容して背中を叩いてきた。まるで気分は、ハリウッド映画の別れの挨拶に似てる。

 

「ペッパー、サンラク、レーザーカジキ。そして勇敢なる仲間達よ。俺もネレイスも皆と出逢わなければ、とっくにルルイアスで『クターニッドの眷属』と成り果てていた」

『ミンナ、ホントウに………アリガトウ』

「もし……君達が『鉱人族(ドワーフ)のガンダック』という者に会う事が有れば、俺の名を出すと良い。アイツは腕の良い鍛冶師だ、きっと力を貸してくれるぞ」

 

好感度が高い状態でシナリオをクリアしたからか、アラバから耳寄りな情報をゲット出来た。鉱人族……ファンタジー物のゲームで御馴染みの種族の一つであり、酒と鍛冶に精通した異種族、そして森人族(エルフ)魚人族(マーマーン)に並ぶポピュラーな存在だ。

 

「鉱人族ねぇ………因みに『エルフ』とは居るのかい?」

「あぁ。森人族(エルフ)獣人族(ビーストマン)、後は………鳥人族(バーディアン)の名は聞いた事がある」

「おぅアラバ、今何で俺の方をチラッと見た?」

 

京極の質問に対し、アラバは何時の間にか鮭頭を鳥頭に変更したサンラクを一瞬見、其れに対してサンラクが首を鳴らしつつ、ニッコリ笑顔を向ける。

 

戦いを終えて、ルルイアスから脱出を果たしたプレイヤーとNPC達を乗せた船は、夜空の下を進んで行く。目指すは六日振りの陸地にして、旅立った港が待つフィフティシアだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして─────────『戦争』が直ぐ其処まで迫っている。

 

 

 

 






思いを馳せて、船は往く


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