VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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新章開幕




龍の大戦は幕を開け、双狼の戦は人心を揺らす
デュアルウルフ・イグナイト


深淵のクターニッド撃破の日の翌日。大学の講義を終えて、昼休みに昼食という心休まる時間を手にした梓は現在、スマフォを近くに置きつつも冷たい蕎麦を啜っていた。

 

「……………はぁ」

 

彼が調べていたのは、シャンフロ関連掲示板にSNSといった情報であり、其の中でも『あるクラン』に関する物を中心に検索していたのである。

 

勿論クターニッドの撃破に関する事や、自身のアバター『ペッパー』に関する記事も見たが、まさに典型的な『悪目立ち此処に極まれり状態』だったので、彼は其の内見る事を止めた。

 

そして調べたクランに関しては、やはりというか『大事』になっており、彼は一人深い深い溜息と共に頭を抱えたのである。

 

(まぁじで、どーすんの『コレ』…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレンド登録したキョージュからのスパムフクロウは、深夜帯であったので目立たないと思った矢先、フィフティシア近辺に近付いた頃に再び襲い掛かった。まるで渡り鳥の大移動の如くフィフティシアの街中をフクロウが飛んで行けば、人間其処に一体何が在るのだろうと気になる生き物だ。

 

クターニッドとの戦いを終えて、スチューデの操舵でフィフティシアまで無事帰る事が出来たペッパー達は、ヴォーパルバニーを各々擬態させ、アラバには船内に隠れさせつつ、一番の大問題に成りかねないノワを影に擬態させて降りた先、多数のプレイヤーとNPC達に出迎えられる事となったのだ。

 

「やぁ、ペッパー君にサンラク君。深淵のクターニッドの討伐おめでとう」

「キョージュさん。えっと、ありがとうございます」

 

初見では絶対に吹くだろう、幼女の身体から激渋男性ボイスと共に、ペッパー達へと話し掛けたのは考察クラン:ライブラリのリーダー・キョージュ。其の後ろには複数の、ライブラリ所属のプレイヤー達の姿も在る。

 

「やぁやぁ、おじーちゃん。私達今すっごく疲れててさ、オハナシなら暫く後にしてくれるかな?」

「フフフ……まぁ確かに、彼等彼女等を見ていれば解るとも。かなりの『激戦』だったようだね」

 

チラリとキョージュが見れば、参加したプレイヤー達にも疲労の色が見えており、語らずとも考察と予測は可能だった。そんな中、プレイヤー達の視線を集めたのは『二人のプレイヤーの相対が二つ』起きていた事であり。

 

 

『…………………………………』

『…………………………………』

 

シャンフロ最高峰の呪術師にして、クラン:SF-Zooの園長(リーダー)Animaliaと、レーザーカジキ。

 

『…………………………………』

『…………………………………』

 

シャンフロの最前線を走るクラン:黒狼のリーダー・サイガ-100と、クランの切札にして最大火力(アタックホルダー)のサイガ-0が、各々向き合い無言で睨み合っているのだ。

 

「うわぁ、凄まじくギスってら」

「何言ってんのサンラク君。レイちゃんに関しては、君にも『責任』が有るんだからね?」

「はぁ?何でさ」

 

疑問符を浮かべるサンラクに対し、ペンシルゴンは説明を開始した。

 

「そりゃあ、仮にも自他共に認めるトップクランの黒狼が、二度もユニークを逃した訳だしィ? しかも二度の討伐アナウンスの両方に聞いた事無い名前が出てたら、そりゃあ当事者達は気に食わないでしょ?」

「えぇ…………」

 

だとすると解らないのは、サイガ-100やAnimaliaが此方をターゲティングしないのは何故か。記憶を掘り返してみればサイガ-0とサイガ-100はリアルでは『姉妹』、Animaliaとレーザーカジキはリアルでは『姉弟』だった事を思い出す。

 

「…………コレ、もしかして『アレ』か?弟や妹にユニークモンスターを『先取り』されたのが、よっぽど許せないって『怒りの感情』だったりするのか?」

「あーくん、正解だよ。『姉より優れた妹や弟なんざ存在しない!』ってね?」

「お前………何時か『クオン』に刺されても、文句言えないぞ………」

 

我が恋人ながら人間関係で一悶着有りそうだと心配になっていると、ペンシルゴンが二つの睨み合いに対して仲裁へと入った。

 

「ハイハイ、其処の二組さん。こんな所でバチバチにやり合ってないで、自分達の所でやって頂戴な」

「………トワ(・・)コレ(・・)もお前の手の内か?」

アーサー(・・・・)ペンシルゴン(・・・・・・)だよ『100(モモ)』ちゃん。生憎だけどね、此の件に関しては以前に『レイちゃん』から相談を受けていたのさ」

 

互いに互いのリアルネームを呼び合う仲か、そんな矢先にサイガ-100とAnimaliaの視線がペッパーへと向けられる。深呼吸で眠気を押さえて向き合いながら、彼は仲間を護る為に立つ。

 

「先ずは謝罪を。サイガ-0さんとレーザーカジキさんを六日間、此方の都合で巻き込んでしまい申し訳御座いませんでした」

 

初手謝罪は日本人の美学、兎に角穏便に済ませなくてはいけない。

 

「サイガ-100さん、御先にどうぞ?」

「そうか。では単刀直入に聞かせて貰うとしよう……『夜襲のリュカオーンのユニークシナリオを発生させ、リュカオーンのヘイトを集められる武器を所持している』………其れは事実か?」

 

他のプレイヤー達がざわついている。ふと視界の端にはサイガ-0がペッパーとサンラクを見ながら、申し訳なさそうに頭を下げていた。ペンシルゴンや京極からは聞いていたものの、予想以上に事は大きく成っていたらしい。

 

「えぇ、持っています」

 

簡潔に事実を述べれば、またしてもプレイヤー達がざわめき立ち。

 

「ほほぅ……………其れは実に(・・)興味深い事を聞きましたよ、ペッパー君?」

 

バッと視線を向けた先には、クラン:ウェポニアのオーナーにして『武器狂い』の異名を持つ『SOHO-ZONE』がニチャア……と。そう表現するしかない笑顔を向けて、歩み寄ってくる。

 

「リュカオーンのヘイトを集められる武器………シャンフロ内でも見た事も聞いた事も無い、私の知らない未知の武器………!一体どんな姿をしているのでしょうか……!是非、是非、是非ともっっっ!私に見せて頂きたいのですが………ペッパー君宜しいか?」

「相変わらずだなぁ…………」

 

こんなドが付くような修羅場の中、通常運転処かテンションフルマックス状態で話せる旧友が、今此の瞬間だけは羨ましいと思う。対するサイガ-100は鋭い視線を………例えるなら『剣の鋒』を首筋に突き付ける様なプレッシャーを放ち、Animaliaは動物を傷付ける者に対する絶許のオーラを放ち。

 

だがそんな彼女等の怒りの矛先も、武器狂いのニヤケ顔も、キョージュの考察も、其れ等を全て吹き飛ばす一撃が『サイガ-0』、そして『レーザーカジキ』の口から放たれた。

 

「其の前に、話が有ります姉さ………。────いいえ。クランリーダー」

「……今一度聞いてやる」

「Animaliaさん。僕からも貴女に話が有ります」

「…………何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は、クラン:黒狼から脱退し。新たにクラン:旅狼への加入を考えています」

「僕はクラン:SF-Zooからのスカウトを断り、クラン:旅狼に入らせていただきます」

 

サイガ-0の其れは、以前に聞いた話では『移籍』の方向だった事。しかし提示されたのは、まさかの『脱退からの加入』であった事。其れを聞いた瞬間、プレイヤー達のざわめきはどよめきへと転じ、ペッパーは唖然となり、ペンシルゴンはサンラクの顔面を徐にぶん殴ったのである。

 

最早カオス以外の何物でもない光景、プレイヤー達のどよめきやサイガ同士の対立に加えて、レーザーカジキとAnimaliaの睨み合い。後のシャンフロの歴史において『狼双戦争(デュアルウルフウォー)』と呼ばれるクラン対クランの序章が、深夜のフィフティシアにて起こったのだった………。

 

 

 

 

 






触発の火花は、闘争の業火へ変わる


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