修繕と新規製作
「お、ペッパー。其れにヴァッシュの兄貴」
ヴァイスアッシュに連れられて、ペッパー・アイトゥイル・ノワが兎御殿のビィラックの鍛冶場に向かう途中、サンラクとエムルに出逢った。
「おぅ、サンラクよぉ。ペッパーから話は聞いたぁ、クターニッド相手にエムル達をよく守りきった」
「へぇ……兄貴は此れからどちらへ?」
「ビィラックの鍛冶場にな。サンラク、ちょいと付いてきな」
「解りやした」
サンラクとエムルもヴァイスアッシュに付いていく形で歩き、一度はビィラックの鍛冶場に到着。そして案の定、彼女はリュカオーンの小さな分け身たるノワを見て、顎が外れた様にあんぐりと口を開けっ放しになってしまう。
そしてノワのテイムの経緯や、クターニッドと戦ってきた事を伝えた所──────
「かぁぁぁぁぁぁぁ…………ワリャ等、馬鹿じゃ馬鹿じゃと思っとったが、此処までなるたぁなぁ………」
はぁぁぁ…………と言わんばかりの、ビィラックの大きな。其れも兎生最大の大溜息だった。
「幾ら通常運転なサンラクさんでも、流石にアレは予想外でしたわ………」
「そうさね、ビィ姉さん。シー兄さん含めて全員五体満足で帰って来れた、其れだけで儲けものなのさ」
『ワゥ』
エムルとアイトゥイルの言っている事は事実であり、死んだら甦らず世界から消えるNPCを、死亡率が高いユニークシナリオにユニークモンスターとの戦闘で、大怪我無く乗り越えられたのは、本当に奇跡だったと言える。
「………で?わちん所に来たんは、武器の修理じゃけ?其れに何故にオヤジも居るん?」
「まぁ、先に武器の方の修繕からだなぁ」
アスカロンの事をビィラックに話すつもりだろうと考えつつ、サンラクとペッパーは各々の武器や防具達を取り出していき。そしてインベントリアを通じ、ペッパーに所有権が戻った『破損状態の
「まぁ、クターニッドと殺り合ったんじゃ。ある程度は覚悟しとったけ………。にしても、クターニッドと力を分けた一式装備たぁ、またとんでもない物を託されたの」
「色々とヤバいですよ本当に………」
「まぁな。あぁ、そういやヴァッシュの兄貴。昨日やって来た『SF-Zoo』……あいや、以前ラビッツから叩き出した連中はどうなりやした?」
「あぁ、奴等か………。キッチリ『蛇共』を全部倒して行ったぜ」
サンラクの問い掛けにヴァイスアッシュが答える。どうやらAnimalia達は依頼通りに、沸き出てきた『兎食の大蛇』を一匹残さず倒しきったらしい。
「ビィラックさん。今渡した武器や防具の修繕の後で良いので、新しい武器や防具を御願い出来ますか?マーニや素材は潤沢に在りますので」
「ふむ、そりゃ構わんが………見せてみぃ」
ビィラックが指先でクイックイッと合図をしたので、ペッパーとサンラクはインベントリアから素材達を取り出していく。そうしてどんどん取り出して出来た素材の山々に、ビィラックがストップを掛けた。
「待て待て待てェ!?ワリャ等、どんだけ戦っとんじゃ………?!?」
「俺もペッパーも、まだまだ有るぞ」
「あはは……」
思えば深海三強や其の
「全く…………こがいな時は手順を『逆』にするんじゃけぇ。ワリャ等は何の武器が欲しいか言うてみぃ」
「何の武器、か…………」
インベントリア内と取り出した素材達を見つめつつ、ペッパーとサンラクは思考してか暫く沈黙。其の果てに彼等は各々の欲しい物を、ビィラックにオーダーした。
「俺はそうだな……。先ずは『頭と腰のを含めた一式装備』と、其れから『拳武器』に『片手剣』。後は…………『槍』と『盾』、其れから『小鎚』だ」
「ビィラックさん、俺が欲しいのは『一式装備』と『盾』と『鞭』に『
「ちょい待ち………槍と盾じゃと??」
「あぁ」
ビィラックからすると、サンラクというプレイヤーの戦い方からして剣や拳が主流。其れが如何なる理由で守って突き刺すのカウンター戦法をしようとしてるのか、解らない様子だと見て取れる。
だがゲーマーという生き物は、狩りゲーでも主力とする武器以外に、様々な武器を使いこなす。ある人曰く『秀でた者程、其の実力は
「…………成程な。ワリャ等の
テレパシーか何かかとツッコミたくなったが、言わない方が良い気がしたので黙っておく。そしてビィラックが二人のオーダーした武器に必要な素材を積み重なった山から各々漁って、遠くに捌けていた最中で『其れ』を見てはニンマリと笑ったのである。
「ははーん………。二人が盾に、ペッパーがハンマーと籠脚の、サンラクが槍欲しい言うたんは『コレ等』が理由か」
彼女が手に持つは『冥王鯱の照鏡骨』、そして『冥帝鯱の轟覇頭骨』に『要塞寄居虫の大前鋏』、更には『大剛嚴蝦蛄の堅業殻』。片や深海三強の一角ことアトランティクス・レプノルカの素材、片や其のアトランティクス・レプノルカの不世出存在のシンボル。そしてペンシルゴンとトレードして手にした、深海三強の一角たるアーコリウム・ハーミットの前鋏にキリューシャン・スフュールの不世出個体の甲殻達だ、盾や槍を初めとしてハンマーに籠脚としたならば、きっと良い物が出来そうだと思っていた。
「バレてたか」
「解っちゃいます?」
「こんなん見れば鍛冶師なら盾と槍、ハンマーと籠脚を作りたくなるけぇ。しかしまぁ、此等の素材達からは
「深海の頂点捕食者達と、アラバはんが言ってたのさ……」
「ルルイアスに集った時は死ぬかと思ったですわ……」
「武器と防具の修理は『大体』三日で終わらせるけ、ただ『双皇甲虫の籠手』は一週間掛かる」
「解りました。よろしく御願い致します」
実際ルルイアスの環境下で無かったら、先ずアイトゥイル達がタダでは済まなかったし、最悪死んでいたのは間違いない。武器や防具に必要な素材を粗方インベントリアから出して、ビィラックへと預け終わったタイミングを見計らってか、ヴァイスアッシュが動いた。
「さぁて…………ペッパー、サンラク、ビィラック。お前さん等に『コイツ』の事を話すとしようか」
ペッパーが渡した『其れ』は、錆び付きて朽ち果てた、変わった形状を持つ『片手剣』。しかして嘗ては
「オ、オヤジ……!?こ、こここ………コレって
「おぉよ。耳をかっぽじって、確り聞きなぁ……」
そう言ってアスカロンを金床へと乗せ、二人と一羽へ語り始めた。
「
『朽ち果てた』とだけあり、此の武器は力を失った状態………そして武器には再び『輝きを宿す事』が必要だそうだ。
「アスカロンはよぉ、
「地の底…………もしかして『火山』ですか?」
活火山の大噴火ならば、確かに雄叫び天を燃やせる。だがシャングリラ・フロンティアに在る其の火山は現在『死んでいる』。名を『
だがあの場所は確か『死火山』とか云われて─────いや待て。取り出したのは、栄古斉衰の死火口湖の火山内で採掘した『
其の時に掘り出した鉱石の『フレーバーテキスト』を思い出した時、ペッパーは『答え』に辿り着いた。
「先生、もしかして………?」
ペッパーが辿り着いた答えに、ヴァイスアッシュはニヤリと笑い。
「おぅよ。あの山なら『まだ死んじゃあいねぇ』ぜ?」
────────と、そう答えた。
アスカロンは火と水を求める