依頼、性能チェック、そして確認
「おや、おいでやす。エムルにアイトゥイル、ペッパーはんに鳥の人」
「御久し振りです、エフュールさん」
アラミースから品を受け取り、やって来ますは兎御殿のドールフロント。何時見ても中々な愛嬌やリアリティを含んだキーホルダー型の人形達を、針と糸で縫って商品棚に載せる彼女はアクセサリー作り……もっと言うと
「エフュールさん。早速なのですが、此れを使って
インベントリアを操作して取り出したのは、サンラクがマブダチと呼ぶ蠍達の水晶を使い、ダルニャータが加工・糸と布の状態にしたスコルスタ・ストリングとスコルスタ・ヴェール。其れをエフュールは受け取り、職人として品定めするかの様に肌触り、そして品質をチェックを行い。
「凄まじいどすなぁ……水晶群蠍の素材
「其れじゃあ……!」
「えぇ、此れなら文句無し。最高の逸品が作れますわ」
エフュールのニッコリ笑顔に、ペッパーがダルニャータへ心から感謝していた時だった。
「時にペッパーはんと鳥の人、あんさんら『中々面白い品』を持ってますな?」
「面白い………」
「品?」
「えぇ。一つ一つ言ってきますと『鯱の頭蓋』に『鮟鱇の結晶』、そして『ヤドカリの剣』って所な」
エフュールのヒントを元に、サンラクとペッパーはインベントリア内を捜索、取り出したのは『アトランティクス・レプノルカの照鏡骨』・『スレーギウン・キャリアングラーの宝臭器官』・『アーコリウム・ハーミットの接続剣尾』。ペンシルゴンとのトレードや、ルルイアスでの狩りで手にした品々ばかりだ。
「サンラク、もう一個手に入れてたんだな」
「お前もな。因みに此の三つで何が出来るんだ?」
「フフフ、此の三つが有れば『水圧に潰される事が無くなります』さかい、其れで『深海の更に下』の場所まで行けるようになりますわ」
「本当ですか?」
「えぇ」と頷いたエフュールに、ペッパーとサンラクは顔を見合わせる。そして暫くの沈黙の先、二人は素材をエフュールへと手渡した。
「加工には何れくらい掛かる?」
「大体『一週間』くらい貰えれば、全部拵えられますな」
「よろしく御願い致します」
こうしてペッパーとサンラクはエフュールにアクセサリー用の素材を預け、キーホルダー型のドールを一部購入。其の脚でヴォーパルコロッセオと向かって行く………。
嘗てサンラクやペッパーが激闘を繰り広げ、スキルやアクセサリーの使用感を確かめ、近い将来に
サンラクにアイトゥイルとノワを預け、コロッセオに設置されたベッドにてリスポーン地点を設定、中心地に立ちつつ何やかんや呪い隠しから御世話に成って、愛着が湧いている旅人のマントと、後学の為に買ったフィンガーレスグローブを取り外し、新たに手にしたアトロフォスの
「なぁ、サンラク。今の俺ってどんな風に見えてる?」
「黒衣服に白い翼が生えた天使」
「堕天使じゃないのね……」
高速でヴォーパルコロッセオを駆け抜けて、効果終了後の
(えっぐ…………、此れヤバいな。
白と蒼の翼に、サンラクの被るトレードマークの鳥面を見ながら考えていると、サンラクがジト目を向けてきた。なので一旦気持ちを切り替えて、外す事が出来ないアクセサリーを除いて外し、封熱の撃鉄に注目する。
「えっと、起動条件は指を鳴らす事か………指パッチンとかでいけるのかな?」
予想からの実証、左親指と左中指に力を込めて指パッチンを行えば、まるでライターが着火する時のシュボっという音から、緋色の炎が内側から発生・全身を包んでペッパーに纏わり付く。
「燃えた!?」
「燃えてますわ!?」
「ペッパーはん!?」
『ワォウ!?』
「いや、コレスゲェ………!!何か内側から、熱い物が込み上げてきて、何かスゲェ!?」
語呂力が死ぬ程のパワーを犇々と感じるペッパー。実際第三者視点からペッパーを見ると、緋色の炎の火元がペッパーの様にも見えており、身体は燃えてこそ有れども衣服やアクセサリーには影響が無く、耐久にも変化が無い。
「あ、やべぶる!?」
注意一秒怪我一生、脇見運転ならぬ脇見走行をしていたペッパーは、コロッセオの壁に真正面から激突し、自身の顔面が潰れて死亡。意識が途切れる前にペッパーが耳にしたのは、サンラク達の声であった。
「ペッパァァァァァァァァ!?」
「ペッパーサァァァァァァ!?」
「ペッパーはぁぁぁぁぁん!?」
『ワォーーーーーン!?』
「うん、やっぱり凄いな…………ダルニャータさんが作ったアクセサリー………」
「そうだなぁ……」
ヴォーパルコロッセオの控室のベッドで目覚め、胡座の空間にスッポリ収まったノワと、アイトゥイルを頭に乗せながら、ペッパーは改めてアトロフォスの白蒼翼と封熱の撃鉄を見る。
片や機動力と再使用時間の回転率を高めるマント、片や緋色の灼熱を纏いながら陽炎を残せる革手袋、どちらも使いこなし手にした物と併用する事で、今まで以上の挙動や戦闘スタイルを確率出来るだろう。
「あ、そうだペッパー。一時的で良いんだが、其のマントと手袋貸してくんね?」
「実際に使ってみたいの?」
「応っ」とサンラクがストレートに答えたので、ペッパーは少し考えた後に「解った」と、承諾して二つのアクセサリーを一時的にサンラクへと譲渡する。
「よっしゃ、やってやるぜぇ!」
随分ハイテンションなサンラクを見つつ、ペッパーはエムルを預かり。サンラクが検証を終えるまでの間、クターニッドとの戦いで獲得した報酬を確かめる。今回自分が手にした品は、青・緑・白の三つの『反転聖杯』と『世界の真理書』。深淵の名を冠した『雫』に、ヤバい気配の漂う『ベル』の合計六つ。
先ずは反転の聖杯達だが、青は『性別反転』・緑は一定時間プレイヤーの色調反転……ではなく『周辺色調』の反転、そして白は自身を含むプレイヤーの『アバター反転』。性別反転は文字通り男を女へ、女を男へと変える上に『声質』も反転させる事が可能なアイテム。此の世界の何処かに在る夜襲・無尽・冥響の女性用一式装備を纏う為に、必要不可欠な代物だ。
白は一定時間、自分以外のプレイヤー同士の反転が出来たり、自分を別のプレイヤーとアバターを入れ替えたり出来るので、色々と面白い事が出来る気配が漂う。ただ其のデメリットも厄介で、アバター反転中に入れ替えた片方が死亡した場合、もう片方も死亡するという所謂『一蓮托生』状態になる。青も同様に死亡してリスポーンするまで、元の性別には戻れないデメリットを持つので、使うタイミングに気を付けなくてはならない。
最後に緑。藍色か紫を選んでも良かったのだが、プレイヤーの周辺色調を変えるという、
世界の真理書「深淵編」。ユニークモンスター・深淵のクターニッドの誕生の経緯や攻略法、クターニッドの一式装備・
「さて………残り二つはっと」
取り出すは『外側が青く中心が黒い雫の宝石』と『海色の鈴』。どんな能力を持っているか、ペッパーはフレーバーテキストをチェックした。
深淵の雫
深淵の盟主から贈呈された結晶。見えざる物を見る力を宿す其れは、表の世界を裏に映し、裏の世界を表に映す。
此のアイテムでステータス画面を見る事で、持ち主の隠しステータスを確認出来る。武器の真化に使用可能。
深淵の警鐘
其れは深き淵より送られた警鐘、迫る危機を感知し告げる海色の鈴。[ワールドクエスト四段階目で解放]に反応し、持ち主に危機を告げる。
嘗ての人々は失敗した、次はお前達だ。
(片や真化の素材にして隠しステータスの確認可能なアイテム、片やヤバい事しか書かれてないアイテムなんだが?此の鈴の書いてる事、どう考えても戦争ゲームの中盤辺りに『強大な第三陣営』が介入してくるヤツじゃん。其れで争ってた二つの陣営が対抗する為に同盟結ぶ『激アツ展開』作るヤツじゃん………。
えっと確か、ウェザエモンさんとクターニッドさんを倒した時のアナウンスで、シャンフロの『ワールドストーリーが進んだ』とか言ってたから、現時点が『第三段階』。あと一体のユニークモンスターを倒したら、此の鈴が『何かの到来』を報せてくるって事か)
テキストを其のまま読めば、
だが此のアイテムをクターニッドがやったように見方を『反転』させたのなら?其れは警報から
(とはいえ、現時点じゃ情報があまりにも少ない……。何か考察の鍵になる物が、見付かれば良いが………)
「ウハハハハハハハハ!!!!ヤッベェ、スッゲェ楽しいわ!!アッハッハッハッハァー!」
「サンラクさん、一周回って頭がオカシク……」
「大丈夫だと思うよ………多分」
「あからさまに大丈夫じゃないのさ………」
『クァ………』
アイテムをインベントリアへ収納し、ペッパーはヴォーパルコロッセオで二つの撃鉄によって、緋色に燃えて黒雷を纏いながら、ハイテンションで大立ち回りをするサンラクを、エムル・アイトゥイルの姉妹と共に見るのであった………。
そしてノワは大きな欠伸をし、ペッパーの胡座の空間にて丸まったのだった………。
其れは盟主よりの贈り物