VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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探索は基本




線画の騎士越え、骸城駆けるは我等の脚

古城と思われる内部、神代(しんだい)鐵遺跡(くろがねいせき)でも見た事があるSFチックな廊下を、青の聖杯で女になっているペッパーと、通常の性別であるサンラクは互いのパートナーのヴォーパルバニーに、リュカオーンの小さな分け身たるノワを連れて、地下へと向かう道を探している。

 

「サンラクさん、サンラクさん。此の先に気配を感じますわ………!」

「ペッパーはん、此の先に敵が居るさね」

『グルル……!』

 

エムル・アイトゥイル・ノワの反応に耳を傾けつつ、辿り付くは其れなりの広さの『エントランス』に似た空間、其の中心地に『其れ』は居た。

 

「サンラク、アレが件の?」

「あぁ、レイ氏の言ってた『コントゥアル・ナイト』だ」

 

まるで透過背景に線だけで書かれた事で、嘗てはよく見掛けた『ジャングルジム』のような点と線だけで、騎士という形を形成した不自然さを持っている、中身が無い『線画の騎士』というのは確か。

 

だが其の見た目の貧弱さとは裏腹に、点と線だけで描かれただろう『両手で振るう大剣(ツーハンデット・バスターソード)』が大きく、そして重い『風切り音』を立てたのだ。あの騎士を形成する線は、叩けば折れる非力な骨組では無いと、二人が理解するには充分な要素であり。

 

「成程。どうやらあの騎士は『一対一(タイマン)』が御望みらしい」

「ペッパー、コイツは俺が相手するわ。エムル達を頼むぜ」

 

頭に乗せたエムルを手渡し、サンラクがマッドネスブレイカーを二刀流として構え、前に出る。一瞬の静寂、そして双方共に激突する。

 

「ッ!」

 

騎士が振るう大剣を躱わしつつ、サンラクが懐に飛び込み肉薄。腕を叩き、続け様に胴を叩けば、騎士が『怯む』。其れでも細く華奢な腕から、下手に受けよう物なら押し潰される威力を以て、刃が荒々しく襲い掛かる。

 

何より此のモンスター、対モンスターの様に明確に設定された()が皆無に等しく、敵に攻撃を加え続けて休む暇を与えない、ある種の『対人戦』を仕掛けてくるモンスターでもあった。

 

「中々に手強い………!だが『物理攻撃』が効くなら、負ける気がしねぇんだよ!」

 

ペッパーがウェザエモン戦でやっていた、攻撃引き付け→回避→攻撃という『ヒット&アウェイ作戦』を、自身の戦法『見様見真似(なんちゃって)』で行いつつも、サンラクは線画の騎士へ次々と攻撃を当てていく。

 

「てか、コレ効いてんのかなぁ!?」

 

レベル99、其れもExtendまで到れども、やはり終盤エリアのモンスターとだけあって、簡単には倒れてはくれない。だが其れでも、サンラクは見様見真似ヒット&アウェイ作戦を展開、コントゥアル・ナイトを殴り続け。

 

「良い加減ッ────沈め!」

 

胴体を思い切りぶん殴った所で、線画の騎士は怯んだまま硬直し、細身を構成するポリゴンを爆発させた。

 

「御見事、サンラク。ヒット&アウェイ作戦を真似てたようだが………よく出来てたよ」

「やっぱ気付くか、ペッパー」

 

ドロップアイテムは無し、だが対人戦を想定して挑むならば、此のモンスターは悪くないだろう。

 

「先に進もう」

「あぁ」

 

地下へと続く道を探し、二人と二羽と一匹は進み続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コントゥアル・ナイトというモンスターは、バリエーションに富んだモンスターでもある。身体付きは同じでも、モーニングスターを振り回す個体だったり、巨大な斧槍(ハルバート)を叩き付ける個体だったり、全く同じ盾を二刀流にしてシンバルみたくブチ咬ます個体だったりと、何種類居るのか気になる程だからだ。

 

「まぁ全員共通して魔法は効かないというのは、事実だった訳だ」

「多分だがコントゥアル・ナイト、アレは『魔力』を媒体として動く『バルーンアート』みたいなモンスターだろうね」

「あぁ、其れだ。ずっと気になってたが、名前が出てこなかったわ」

 

サンラクが試しにエムルにマジックエッジの指示を出し、コントゥアル・ナイトへ攻撃を当てさせた所、線画の騎士は華奢だった身体が肥大化・強化される光景を目撃した事で、其の手のタイプであると気付き。同時に魔法さえ吸収させなければ斬撃・打撃でも、其れなりにダメージが通るモンスターだと結論付けた。

 

『ワゥ!ワゥ!ワゥ!』

 

と、此処で影に潜んでコントゥアル・ナイトとの戦いから離れ、フィールドを探索していたノワが戻ってきた。其の鳴き声は、何かを『発見』したようにも見える。

 

「ノワ、何か見付けたのか?」

 

『ワン!』と吠えて駆け出すノワを追い掛け、辿り着いたのは『壁と一体化したかのような破損具合』の、初見では見付かりづらい『エレベーター』であり。エムルやアイトゥイルの、ヴォーパルバニーが一羽でなら通れるくらいの小さな穴からは、隙間風が吹き込む音が鳴り聞こえて来る。

 

「此の下………だろうな」

「あぁ。間違い無くな」

 

恐らく何処かに在る『階段』を見付け、地下に向かうのが『正解』なのだろう。そしてサンラクは近くに落ちていた錆びた剣を拾い上げ、穴の中へ突っ込み押し込むや、聞き耳を立て。其れから暫くしてカラーン………と小さな音が鳴ったのを聞き、先に在る穴は相当な深さだと確信する。

 

「よし、降りるか」

「まぁ、階段探し…………サンラク何て?」

 

だがそんな中で、サンラクのトチ狂った発言に耳を疑い、全員の視線が半裸の鳥頭に向けられた。

 

「言葉通りだ。此のまま降りる」

「いや、通れないだろ此の穴じゃ」

「フッフッフ………今の俺は『魔法使い』にだって成れるんだぜ?」

 

そう言いつつサンラクがはためかせたのは、以前ダルニャータが製作し、アクセサリーとして彼に渡された品の一つ『瑠璃天(ラピステラ)星外套(せいがいとう)』であり。

 

「…………?……………!…………?!?!」

 

そして唯一羽、サンラクがやろうとする事に気付いたエムルが、白毛の顔を真っ青にする中で、彼は種明かしをしてきた。

 

「此のマントってさ、魔法を吸収(コンバート)して設定(セット)出来る能力を持ってるんだよな。で、現在コイツには短距離転移魔法の【瞬間転移(アポート)】を備えてる」

「…………………マジでやる気?」

「マジだ」

「……………解った、取り敢えず『おんぶ』しとく。アイトゥイル、ノワ。確り掴まっておいて」

「は、はいさ!」

『ワゥル』

 

サンラクをおんぶし、アイトゥイルとノワをエムル共々サンラクの肩と頭に乗せ、そして叫ぶ。

 

「瞬間転移ッ!」

 

魔法エフェクトと共に一瞬の、しかし固まった二人と二羽と一匹の座標が、5mという短距離でこそ有れども、壁を通り抜けて穴の中へと移動する。眼下には深淵のクターニッドの第四形態・仮想態時の漆黒重力穴(ブラックホール)に似た暗闇のみ、落ちれば漏れ無く全員死ぬ運命(さだめ)が待っているだろう。

 

「お、落ちッ………!?」

「ペッパー!」

「任せろ!」

 

漆黒という空間、故に発動条件を充たした星天秘技(スターアーツ)・ミルキーウェイと、自身に対する重力の枷を解き放つ頂天律驚歩(ヌフールァウォーク)、そして運搬スキルのストレングス・キャリアーの三種スキルの起動。

 

シャンフロにて最大高度(スカイホルダー)を取った其の実力は伊達や酔狂に非ず、ペッパーが思い描くマナで作られた道が、彼等彼女等の落下死という運命を断ち切り、空中をゆっくりと駆け出していく。

 

「ペッパーさん、凄いですわ………」

「サンラクには劣るよ……あんまり時間は無いから、ちょっとペースを上げるね……!」

 

アトロフォスの白蒼翼(はくそうよく)によって燃費や回転率は上がれども、スキルは永久には続かない。効果が切れ、途中からはグラビティゼロを用いての壁蹴り降下をペッパーは続けて。

 

そしてパーティーは最下層へと到着したのだった…………。

 

 

 

 






進む意思は誰にも止められない


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