VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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辿り着いた場所




地の底にて知る、恐るべき事

エレベーターが通るであろう縦穴を蹴り跳ねて、数百メートルは下らない穴の中を壁を伝い、下に下にと降りた最果てでペッパー・サンラク・エムル・アイトゥイル・ノワを出迎えたのは。オート点灯により光が灯り、地下の果ての在る此の場所は、地下深くに作られた『研究所』みたいな物であり。

 

てっきり『地上からの襲撃を想定した司令本部の様な物』が在るかと思われたが、予想が外れた。更に此の空間を見渡せば、既に地下数百メートルの位置から『更に地下へと掘り進められた穴』と、掘削作業を成す為のドリルやシャベルといった『現代でも見る大型重機』の数々だった。

 

「コンピューター………だよな?」

「あぁ………つーか、四か五段階くらい過程をスッ飛ばした気分だわ」

 

おんぶしていたサンラク達を下ろし、聖盾(せいじゅん)イーディスを装備。ペッパーが先頭に立って警戒態勢を敷き、サンラク達がフィールドを見渡しながら、一同は探索を開始する。

 

「此処に居た人は地下にロマンを求めてたのか、其れとも………」

 

降りてきた側の穴とは別の穴からは、死の気配がプンプンする。一定距離に近付いた瞬間に敵が出現、問答無用で取り込まれてガメオベラ………といったレトロ探索ホラゲーでは、十八番パターンがあるので注意するに越した事は無い。

 

「サンラクさん!ペッパーさん!上、上に何か刺さってますわ!」

 

そんな折、エムルの声で一同の視線が彼女の指差す方へと向く。其処に在ったのは『設計上想定された別々の機材に接続されて、其々が合体して一つの何かに成りそうな、全部で三本の三角形の筒』が挿さっていた。駄目押しに其々の筒には『Δ』のマークが。

 

「Δ装置やんけ!」

「先生が言ってた、御使いの品の!」

「やりましたわ!見付けましたわ!」

「エムル、よく見付けたのさ」

『ワン!』

 

エムルの頭を撫でるアイトゥイル、其れとは裏腹にペッパーとサンラクは警戒しつつこう言う。

 

「一応注意しよう………アイトゥイル、ノワ。二人とも何時でも脱出出来るよう、準備をしておいてくれ」

「解ったのさ」

『ワゥ』

「だな………エムル、アイトゥイルとノワと一緒に、直ぐ動けるようにしてろよ」

「は、はいな!」

 

探索ゲームでも重要アイテムを入手したら、脱出イベント開始は良くある事なので何時でも心構えをしておく。取り敢えず『三つのΔ装置』がイベントフラグであり、同時にトラップアイテムという可能性を加味して後回しに、先ずは周辺機材の調査を行う。

 

「電源……電源………あ、在った。よし、入れるぞ」

 

サンラクがスイッチを入れれば、ホログラムの画面が彼の目の前に浮かび上がるや、数度の起動プロセスを経由した後に『三つの映像ファイル』が表れた。

 

おそらく『タッチパネル式キーボード』だろう其れを動かしながら、サンラクが調べるものの三つのファイルの中、前二つは『破損』していて閲覧出来ない状態であり、唯一『三番目のファイル』は無事である事を確認する。

 

「わわっ!?サンラクさん、其れ動かせるですわ!?」

「フッフッフ~……宇宙の果てから別次元まで、数多のSFを潜り抜けてきた俺に掛かりゃ此の程度、御茶の子さいさいって奴よ」

 

ゲームならではの自慢だろうか。何にせよ調べてみよう。ファイルをダブルクリックし、皆が注目する中で映像は再生される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やった! やったぞ! 遂に……!遂に僕は、根元に到達したァ!』

 

 

 

映像に映し出されたのは、コッテコテの台詞に加えて、性格の悪そうな顔・貧弱な身体・ロクな事しかして無いだろう喜び方のスリーストライクなキャラクター。ゲームでも物語上で大抵やらかしをする『マッドサイエンティスト』、或いは『大体コイツのせい』に当たる人物だろう。

 

 

 

『地上では今も雑兵共が消費されている頃だろうが……ふっ、ふふふ……!ククク……!褒めてやっても良いだろう、何せ此の僕の、偉業の礎となったんだからなぁ……!』

 

 

 

「サンラクさん、アタシ此の人キライですわ」

「まぁ待てエムルよ。人は見掛けで判断しちゃいけない」

「サンラクの言う通りですよ、エムルさん。穏やかそうな味方ポジションに見えて、実は裏切り者でしたってパターンを、何回か見た事が在りますので」

「そんな奴居るのさね………」

『グルル』

 

細目キャラ+特定の声優=強キャラ&裏切りポジとはアニメやゲームでは良くある事だ。さて、此の男は如何なる存在なのか確かめなくてはいけない。

 

 

 

『何が継承だ、何が次世代だ!天津気(アマツキ) 刹那(セツナ)の理論だけは認めてやってもいいが……アイツらだけはッ!アイツらだけはッッッッ!』

 

 

 

「……セツナさん!?」

「…………もしかしてコイツ、結構重要人物だったりする?」

 

聞き覚えのある人物(ウェザエモンの妻)の名前を男が口走った事で、ペッパーとサンラクのマッドサイエンティストに対する注目度と評価が変動していく。

 

 

 

『馬鹿馬鹿しい!馬鹿にも程がある!!今!此の瞬間を生きる我々が死んでは、何の意味も無いだろう!?アリス・フロンティアも! ジュリウス・シャングリラも!!奴等はイカれているッ!!!そうだ……!嗚呼そうだとも……!人類の救世主は、此の僕だ……!』

 

 

 

「ちょっと待って!?とんでもない台詞吐いたぞ此の人!?」

「待て待て待てェ!?お前噛ませ臭さハンパ無いのに、ガチ設定垂れ流しまくるのやめーや?!」

 

サンラク共々思わずツッコミをしてしまった。何より『アリス・フロンティア』なる存在は、クターニッドの真理書にも記載されていた『名前』であり、クターニッドが『人類』という種族の枠組みの中で、唯一『個』して認識している女性。此の男は少なくとも、アリス・フロンティアとの面識を持っていたらしい。

 

映像の続きは気になるし、確か前にエンハンス商会で見掛け、購入していた物の中に『録画』を可能にするアイテムが在ったので、録画して自分用の鑑賞の為としたり、ルルイアスで手にした本とペンシルゴンの交渉と合わせたなら、ライブラリを相手に相当な価値で取引出来る筈。

 

さて、続きはどうだろうか?

 

 

 

『僕等は()からやって来た、故にこそ空は僕等の領域だ!……天に神は居ない、神は僕達の下に居る(・・・・)んだ……!』

 

 

 

「今の表現は中々面白いな。要するに『宇宙』から彼を含めて人はやって来…………ん?」

「ペッパー、どうした?」

「いや、何か引っ掛かったんだよな……」

 

何かが、何かが『繋がる』気がする。だが触れてこそ有れども、考えれば考える程に答えに辿り着かなくなる気がするのだ。今は一旦置いておき、続きを見よう。

 

 

 

『本来ならば、もっと西で実験を行いたかったが……まぁいいだろう、接続に問題は無い。僕は奴等みたいに悲観主義じゃないぞ……!此の災禍の根本を、僕がぁ……此の手で……!』

 

 

 

直後、映像にノイズが走る。ホログラムによって立体的な映像が途切れ、しかし音声が無事で有る為に聴こえてくるのは明らかに『悲鳴』のような声、金属が『破壊』される音、明らかに人のモノでは無い『咆哮』だ。

 

 

 

『い、嫌だ! 嫌だぁぁ! 僕はっ! 僕が……っ! 違う、僕はこんな、畜生……!!』

 

 

 

「サンラクさん!?何が起きてるですわ!?」

「なんだろうなぁ……まぁ、見当はつくけどさ」

「ペッパーはん!?何か危険な予感がするのさ!?」

「アイトゥイル、落ち着いて。静かにね?」

『ルゥゥゥ………』

 

此の手のタイプは『サブキャラのバッドエンドかデッドエンド』の映像だろう。其れが思い入れのあるキャラの死に様ならば、精神面(メンタル)のダメージが相当な物になるのだが。

 

 

 

『くそっ! くそっ! くそおおお! ただで死んでたまるか畜生! 記録……ああそうだ、記録だ! よく聞け、誰だっていい! いいか、全ては()だ! 空を見上げたって代わり映えのない宇宙があるだけだ、時間の無駄でしかない!!がっ…………!?う、腕が……!?此のッ、化け物めッ……僕を、引き摺り込むつもりか……! クソ、掘削アーム起動! 時間を稼げ─────ッ!?!?ワァァァァァァァァ!?!?死にたくない……!死にた……くそッ!?うぐぅ……!?いいか、()なんだ! ジズは……ダメだ……!リヴァイアサンとベヒーモスなら、良し……良が、うがぁぁぁぁ!!?』

 

 

 

ガタンゴトン!!ズガンドガン!!と、肉と金属が激突し合い、明らかな異常である事を『音』という現状無事な要素が、視聴者である者達に告げている。

 

そうして少し離れた場所で、何かが爆ぜたのだろう爆発音が肉と金属の音を掻き消し響き続けた後─────。僅かだが、途切れた映像が回復して。

 

「ぴぇっ!?!?」

「ひゅきゅ!!?」

「ッ!?」

 

 

体の半分を何かに(・・・)よって、進行形で喰われている男の姿が映されたのだから。

 

 

 

例えるならば其れは『ミミズ』の、言い換えるなら『触手』の、或いは『蛆』の様な。グズグズな腐敗と蠢き動くモノを足して二で割った、そんな中間のような動きと共に、男の左半身を侵食している。

 

其の光景は男の右半分の無事な顔から涙や鼻水を垂れ流しまくり、表情を歪ませているのを見れば、想像するに容易いだろう。

 

何よりも『インベントリアに入れていた深淵の警鐘』が、映像の『アレ』に対してジャンジャンと。其れは其れは『けたたましく音を鳴らしている』事からも、ヤバい存在だと判断出来る。

 

 

 

だが、それでも。

 

 

 

自分が此処で死ぬのだと自覚した其の男の目は、まだ死んでいなかった(・・・・・・・・)。絶望に塗り潰された瞳には、まだ『炎』が灯っている。諦めない、最期まで抗ってやる………そんな『決意』を宿していて。

 

 

 

『もう此の際ジュリウスでもアリスでもいい!良いか!お前たちがやろうとしてる事は、糞尿に消臭剤を散布しただけに過ぎないんだ!『根本の解決』に成って無いんだよッ!Δに僕のプログラムを入れた!癪だがお前達に『託すぞ』!』

 

 

 

彼は『繋げる』事を。自分の積み重ね、本当は己独りで成そうとした研究を。誰かに託すという、そんな『選択』を取ったのだ。

 

 

 

『痛い!痛い!痛い! くそっ! 役立たずのポンコツ共が!綱引きすらも満足に出来ないのか!まだだ、まだぁ……!嗚呼、畜生……こんなものッ、外に出せる訳が無い、だろう……ッ!クソッ、なんでこうなるかなぁ……!!だけど、それでも僕は……………!!起動コード「反物質の終幕(ナキマ・スクエ・スウデ)」! 限界までアレに近づかないと……ひぃっ!?むぐぉ!? お、ご、ごげぎっ! ぐ、おおおおおああああああ!!』

 

 

 

悲鳴という名の断末魔と共に、穴へと引き摺り込まれて行く男。暫くグチュリグチュリと音が鳴った後、響き渡る轟音と閃光によってホログラムは塗り潰され────映像は終わった。

 

総評を出すなら、男がやったのは『盛大な自滅行為』であり、しかしながら『自分でやった事の落とし前を自らの手で行った』と、そう判断するに至り。

 

そして此の映像を見届けた、サンラクとペッパーは顔を見合わせ、そして互いにこう思った。

 

 

 

 

コレ、ヤバくない?─────と。

 

 

 

 






其れは一人の男の終わりの記録


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