此れは、あるプレイヤー達の話
シャンフロ第2の街、セカンディル。沼渡りに備える街として知られる此所で、多くの初心開拓者達はシャンフロの洗礼を受ける。
「どうしようか…
「機動力が封じられた沼地の戦闘に、相手はデカいエリアボス。複数人で挑んで最後の最後に『アレ』を食らったからな」
「何か策を練らないと、サードレマには着けないね…」
シャンフロには『ギルド』と呼ばれる組合機関が在り、此所で登録した開拓者達は正式な『パーティー』を組む事が出来たり、クエストを受けてマーニを稼げるようになる。
当然ながら、セカンディルにもギルドは在り、其のギルドの一角のテーブル席に座りながら、先程沼掘りとの戦いで撤退に追い込まれた3人編成のパーティーは作戦会議をしていた。
メンバーはタンクを担う重戦士の男、火と水を中心とする女魔法使い、回復やバフ魔法を使う聖職者の男子で、バランス自体は中々に良い。
「もう1人メンバーが欲しいね。敵に斬り込んでいける斥候タイプの」
「そうだな…メンバー募集の看板見てみるか」
「でも、沼掘り相手に大丈夫かな?」
うーん…と悩むパーティーメンバー。
「あ、あの…ちょっと良いか?」と3人に声が掛かる。其の方向を見ると、軽戦士の装備品に身を包んだ男性プレイヤーが居た。
「見たところ軽戦士みたいだな、アンタ」
「あぁ。実は俺、沼掘りにリベンジしたくてさ。最初はソロで挑んで手酷くやられた。奴の攻略に参加させて欲しい。其れと、沼掘りへの秘策のアイテムを持ってる」
パーティーへの加入希望を申し出た男性プレイヤーは、アイテムインベントリから【投擲玉:炸音】を取り出し、3人の前に置いた。
「コレは?野球ボールみたいだけど…」
「さっきエンハンス商会って所のNPCショップが、販売し始めたっていう消費アイテムらしくて、聞く所によると対沼掘りのキーアイテムだとか」
「アンタ、使い方は解るのか?」
「練習もしたし威力も保証する、因みに1玉5000マーニ掛かる」
「ちょっと高いね…でもコレで沼掘りを攻略出来るなら、安い……のかな?」
野球ボール状のアイテムを見ながら、意見を交わしたタンク担当の男は他のメンバーに問う。
「皆、どうする?彼をパーティーに加えるか?」
「私は良いよ。攻撃の手数が増えれば、沼掘りも早く倒せると思う」
「MP管理は大変だけど…頑張る」
「という訳だが、良いか?」
「すまん、助かる。沼掘りの攻略、頑張ろう」
新しい仲間が加わり、一同は沼掘り攻略に気合を入れる。此れは、初心者脱却の難関を越える戦いだ。
四駆八駆の沼荒野・沼峡谷………エリアボスが縄張りとして、侵入者を喰らう為に身を潜める沼地にやって来た一同は、其処で戦いを繰り広げていた。
「こいっ!沼掘り!!」
タンクの男が自身のスキル:挑発を発動し、沼掘りの
「ぐぬぅぅぅぅぅぅ!今だ、攻撃頼む!」
「はい!ファイヤーボール!」
「援護します!マジックアップ!」
聖職者のバフにより強化された女魔法使いの火炎玉が沼掘りの横っ腹に直撃し、其の巨体がぐらつく。
「負けたあの日から、コツコツ採掘して準備を続けてきた…リベンジさせて貰うぜ!沼掘り!!」
軽戦士の男性プレイヤーは、足袋により沼地の強制歩み状態を無効化しながら、アイテムインベントリから2本の湖沼の小鎚を取り出し、エラに攻撃を叩き込む。
『ギジャアアア!』
「深追いはするなよ、軽戦士!」
「アンタもな、重戦士!あと手応えから、アイツの急所はエラだ!」
「よし、エラを狙う!援護してくれ!」
「分かったわ!」
「はい…っ!」
斥候として軽戦士が情報を伝え、タンクたる重戦士が防御を敷いて指示の下、魔法使いと聖職者がサポートを行う。
ファステイアから3人パーティーで貪食の大蛇を攻略し、セカンディルまで来ていた彼等彼女等の実力は確かで、其所に単独ながらも沼掘りをあと一歩まで追い詰めた男が加わった。
今の自分達ならば、負ける可能性は極めて低いと感じる程、士気も気合も十二分に満ちている。
「ふんぬ!」
「オラァ!!」
片手剣による斬撃、2本の小鎚による打撃でエラを攻撃され、赤いポリゴンが零れた沼掘りは、其の身を翻して、沼へ深く潜行していく。
「潜った!?」
「いや、コレは…!」
直後、パーティー全員の足元に振動が走り、足が沼地に吸い着くように拘束される。
「これ、もしかして…!」
「沼掘りの…ソロ殺しの技……!」
「ッ!させねぇ…!」
誰が突き上げられ、落下死するか判らぬ中で、軽戦士は左手の湖沼の小鎚を解除し、アイテムインベントリから投擲玉:炸音を取り出して、力強く握り締める。
「全員!耳を塞げェェェェェ!!!」
右手に力を込め、思いっきり投擲玉を叩く。直後、強力な音波が発生。沼地に響き渡り、彼の足元は爆弾が弾けた様に破ぜた。
其の身は僅かに跳ね上げられて空を舞い、背中から沼地に叩き付けられる。しかし、本来の高さまで飛ばされなかった事で、ダメージは少々負ったものの、沼掘りの特殊行動をキャンセルする事に成功したのだ。
「沼掘りのソロ殺し、攻略してやったぜ…!あと、頼む…!!」
「あぁ、任せて貰おう!!皆、決めるぞ!!」
「「はいっ!!!!」」
大音を間近で受けた事でスタン状態となった、軽戦士の男が後を託すように叫ぶ。彼が作ったチャンスを無駄にしないと、3人は音によるスタン状態の沼掘りへ攻勢を掛ける。
「スキル:首断ち!」
「ファイヤーボール!」
「マジックアップ、アタックアップ!」
聖職者のバフを受け、渾身の火炎玉と首斬り斬撃が炸裂。弱点のエラにダメ押しの攻撃を叩き込まれた沼掘りは、ポリゴンと化して爆発四散。
パーティー全員生存で経験値が入り、レベルアップのSEが同時に鳴り響いた。
「っしゃあ…!やっと、越えられた…!」
軽戦士は漸くスタン状態が解除され、沼掘りを倒せた事に歓喜する。これでサードレマに進める…そう思った時、重戦士の男が手を差し伸べながら言った。
「軽戦士よ。もし君で良いなら、此れからも我々のパーティーに力を貸して欲しい。君が居ると、我々も助かる」
パーティーへの加入を希望してきた重戦士、後ろでは女魔法使いと男子聖職者も、朗らかに微笑み頷き合っていた。
「!あぁ…よろしくな!」
重戦士の手を掴み、軽戦士は起き上がる。こうして、パーティーには新たなメンバーとして斥候して軽戦士が加わった。合縁奇縁が織り成すフロンティアで、また1つ不思議な縁が成される。
世界は動かず、然れども共に歩む者達はまた、手と手を取り合い先へと進む…………。
沼掘りを越えて、いざサードレマへ