VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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探索の後に




地を出て、業火と喧騒に追われる

「俺は今、神となった」

「サンラクさん、やっぱり頭がオカシク……」

「武術的なじゃなく、多方面的な神だよ」

 

キューブをセットしたら光って、地下の研究室を脱出してからのサンラクは、まるで悟りでも開いた様な清々しい表情をしている。

 

「当初の目的は果たしたし、此のまま帰るか………」

「だな。万が一って事が有るし、一応感覚強化スキルで探知してみるよ」

 

局極到六感(スート・イミュテーション)点火、自身の感覚を超強化して眼を閉じ、聴覚と触覚で空気と音を掴み取らんとしたペッパーは──────『恐るべき事』を知る。

 

「………………サンラク、エムルさん、アイトゥイル、ノワ。落ち着いて聞いてくれ…………今俺達が居る此の城が、他のプレイヤーに包囲(・・)されてる」

「……………マジか?」

「あぁ」

 

ペッパーの強化された聴覚が察知したのは、自分達が入ってきた出入口及び周辺を、プレイヤー達が包囲している事。其れも数十人規模では無い、百越えの二百未満に近い大人数での包囲という、よりヤバい物なのだ。

 

(思い当たる節は何だ…………まさかノワが撮影されたとか?サンラクと合流した時に?)

 

スクショによって情報が漏れた─────という辺りまでは正解だが、其れを撮影したのはネチケットが疎い女子プレイヤー達だった事を、ペッパーは知らない。何よりも問題なのは、包囲しているプレイヤー達が『何処の所属』なのかが一番の問題なのだ。

 

ソロでは先ずこんな大人数は集まらない、そうなると大規模クランに候補は絞られる。名の知らないクランなら良いが、一番最悪なのは『黒狼(ヴォルフシュバルツ)』が他のクランを抱き込んで包囲しに来た────になるか。

 

「エムル、取り敢えずマフラーに擬態だ」

「は、はいなッ」

「アイトゥイルはコートの中へ、ノワは俺の影に」

「はいさ」

『ルゥグ』

 

今やるべき事は、自分達を包囲しているプレイヤーの所在を明らかにする事。そして此方からは手を出さずに、形成された包囲網を突破する事の二つだ。

 

「サンラク、包囲時に取るべき行動は何だと思う」

「一番良いのは混乱に乗じた正面突破だな」

「そうだな……相手が其れを許してくれそうにないなら、どうしようか」

「俺が瞬間転移で包囲網を突破、其所からは全力ダッシュで引き剥がす」

「其れで行こう」

 

取り出しますは、投擲玉:炸光。所謂閃光玉の様な物であり、ペンシルゴンがサードレマの城門前にて光と煙を使い、自身の得意とする戦闘領域を構築したのを真似する。音を立てずに、抜き足差し足忍び足で進んで、自動扉の付近にまで着いた。

 

ペッパーは炸光を力強く握り、着弾の瞬間に起動出来る状態を作って、サンラクもスキル:ライオットアクセルを点火、体力を代償に敏捷・筋力を強化したのを横目に、女勇者状態のペッパーは自動扉の前に立ち、反応範囲へ入った事で扉が開いた刹那を狙い、炸光を投擲。同時にレーアドライヴ・アクセラレートで5m後方へ瞬間移動。

 

敏捷関連スキルを点火し、帽子で目元を隠してサンラク共々走り出した其の直後に閃光が炸裂。強烈な光が夜空の元に包囲していたプレイヤー達を照らし出し、悲鳴や驚愕の声が上がる。

 

視線を僅かに上にして光の中に動く輪郭を見渡せば、正面の時点で二十人近く居り、おそらく城の付近にも居ると考えたなら、光の影響を受けなかった連中も先ず間違いなく居るだろう。

 

「サンラク、御姫様抱っこさせて!拒否権は無い!兎に角空中走って逃げるわ!」

「ファッ!?」

 

サンラクの驚愕より尚早く、ペッパーはサンラクの真後ろを取るやダッシュスキルを全開に彼を抱え上げ、扉を出た瞬間にミルキーウェイと共に切札たる窮速走破(トップガン)を使用。己の描かれたマナ粒子の道を駆け走り、包囲網の真上を取って飛び越える。

 

「越えられた!?」

「ッ、待てェ!!」

「逃がすな、追い掛けろッ!」

 

下から包囲網参加プレイヤーの悲鳴や驚愕に怒号が木霊すが、そんなモノで二人は止まらない、止まる訳が無いのだ。

 

「ペッパー、奴等を越えたぞ!御姫様抱っこは充分!其れとエンブレムが『黒狼』の連中のだった!」

「解った!そしてナイス!」

 

地面に下り降りつつ、サンラクも空中で途中下車&フリットフロートによる姿勢制御を行い、二人はイレベンタル方面へ荒野を走り抜ける。

 

「止まれ!其所のサンラクって奴!」

「待ちやがれ、ペッパァァァァァァ!!」

「だーれがそんな殺意マシマシで剣やら持ってる奴等の言う事聞くと思いますぅ~?」

 

サンラクの言う通り黒狼のメンバー達は現在、如何にも高価な武器を握りながら、此方をロックオンして大挙とも雪崩とも捉えられる状態で迫ってきている。

 

そんな黒狼の輩を、サンラクは全力煽り&ダッシュ、そしてバックステップからのバク転跳躍空中逆回転しながら、後方に居るプレイヤー達を『スクショ』で撮影して証拠を獲得した。

 

「よぉし、ペッパー!奴等の写真は撮った!」

「助かる!此処からはイレベンタルかエイドルトで二手に分かれよう!」

「OK 何時もの(・・・・)場所でな!あぁ其れとエムルを預かってくれ、ちょいとマブダチの所に遊びに行ってくる!」

「了解した!」

 

ペッパーはエムルを受け取りつつも、両者足を止めず。サンラクはメロスティック・フットを発動し、御互いにイレベンタルのゲートを目指して、力の限り走り続ける。

 

「くっそ、はえぇ………!!」

「だが問題ねぇ!イレベンタルの前にも人員を当てといた!」

「勝ったな」

 

そして黒狼の団員達は逃げ去るペッパーとサンラクを追い掛け、此のままイレベンタル前で挟み撃ちに出来るかと思っていた。

 

「バイバイ」

「【瞬間転移(アポート)】!」

 

片やレーアドライヴ・アクセラレート、片や短距離転移魔法で、またしても構築していた包囲網を突破され、イレベンタルへ逃げ込まれる。

 

サンラクはエイドルト目指して爆進を続けるべく進み、ペッパーはエムル・アイトゥイル・ノワと共に、安全圏たるラビッツへと帰るべく裏路地へと逃げ込む。

 

黒狼の団員達はサンラクを追う者とペッパーを追う者に分かれて走り、路地裏に逃げたペッパーを追跡する。だがしかし、常に追われる身として裏路地での移動を心得ているペッパーにとっては、夜間帯の暗く入り組んだ路地移動は朝飯前であり。

 

彼等彼女等が路地裏に迷った挙げ句、ペッパーを完全に見失った其の頃には、彼はサンラクから預かったエムルが開いたゲートを潜り抜け、兎御殿へと帰還したのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ………あまりにも大事に成ってるなぁ………」

「はいな………ペッパーさんもサンラクさんも追われてて、セカンディルで追われていたのを思い出しましたわ………」

「あの開拓者達は、見境が無さ過ぎるのさ……」

『グルゥル』

 

兎御殿に無事エスケープしたペッパー・エムル・アイトゥイル・ノワは、一度休憩室へと戻ろうとしていた。

 

「お、アイねーちゃんにエムルねーちゃん、其れにペッパーは─────ひょえっ!?」

 

そんな時、彼女達の弟のピーツが走ってきて。リュカオーンの小さな分け身たるノワにビビって声を挙げた。

 

「おや、ピーツ。どしたん?」

「はっ!そうや、ペッパーはん!実はとんでもない事が起こってな!」

 

そう言ったピーツはペッパー達に説明していく。其の内容というのが…………

 

「兎御殿に新たに『三人』やって来た………本当ですか!?」

「せやで!そんで『二人』は、前にラビッツを訪れた事が有って、内一人は『深淵の盟主の目玉を穿った』っちゅう、中々なヴォーパル魂を持った御方や!」

 

ピーツの言った二人の内、其の一人をペッパーは『知っている』。何なら其の局面を、自身の手で『救出』した覚えが有り。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お。やぁやぁ『あーくん』。いや、今は『あーちゃん』かな?君はずぅ~~~~と『こんな所』に隠れ住んでいたんだねぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりにも『聞き慣れた』、そして忘れる訳が無い『恋人の声』に、ペッパーが振り返れば。

 

ニッコリ笑顔で目が笑っていない致命魂(ヴォーパルだましい)首輪(くびわ)を着けた、クラン:旅狼(ヴォルフガング)がサブリーダーたるアーサー・ペンシルゴンと、足下には『ロリータ』な見た目をした灰色のヴォーパルバニーが一羽、隠れながらに見て居たのである。

 

 

 

 






お ま た せ


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