魔王がやって来て
「ククククク………今日は良い気持ちだ───!俺は成し遂げたのだ………!」
兎御殿にてリスポーンし、ベッドから起き上がったサンラクは現在晴れやかな気持ちの中に居た。交渉の『こ』の字も理解出来ていない
最終的には死亡したものの、欲しかった『目的の物』が手に入った事により、非常に上機嫌な状態である。
「さぁて、ペッパーとエムルは無事に戻れたか……一応確認しに行くか」
用心深くあらゆる事態を想定している彼の事なので、上手く逃げ仰せただろうが、確認は大事であり。サンラクはエムルを探しに、兎御殿の中を行き。
「やぁやぁ、サンラクくぅーん!まさか君もこんな所に隠れ住んでるとはねぇ~?」
畳が敷かれた広間にて、首に致命魂の首輪を着けた黒幕魔王たるアーサー・ペンシルゴンが、ニッコリ笑顔と笑っていない視線を向けながら、此方に挨拶をしてきた事で彼の機嫌パラメーターは一瞬の内に底辺まで爆下がりしたのである。
後方には正座をさせられているペッパーと、其の両肩にはエムルとアイトゥイル、そして正座する太腿にはリュカオーンの小さな分け身たるノワが座り、回りには大量の『ハヤブサ』。そして彼女の足下にはヴォーパルバニーが一羽居る。
「ペンシルゴン、何故此処に!?」
「フッフッフ……実は私、クターニッド戦で『致命武器で盟主サマの片目を穿ったんだよね』。其れがトリガーだったらしくて、昼間辺りに『ケーニ』って子に此処へ案内されたのだよん。因みにソースは、以前君から教わったユニークシナリオ発生条件と、
ドヤ顔を噛ましつつ、ペンシルゴンは自身の足下に隠れている小さな灰色毛並みのヴォーパルバニーを前に出す。着ている服装はコッテコテの『ゴスロリ』衣裳で、其の見た目や幼さから『ロリータ』と形容出来る存在だった。
「此の子は『ゼッタ』、私に付いてくる事になったヴォーパルバニーちゃんだよん。ささっ、おにーさん達に挨拶しようね?」
「は、はじめまちて………ゼッタ、でしゅ。しょの………あぅ」
恥ずかしいのか人見知りなのか、ゼッタはペンシルゴンの後ろへ隠れてしまう。そんなゼッタに対して「よぉく出来ました♪」とペンシルゴンは身を屈めながらに、チビ兎の頭を撫でて。其れを見たサンラクは、驚愕と共に言葉を発する。
「ば、馬鹿な………!?セツナ以外に、ペンシルゴンがNPCと談笑している…………だと?」
「はい其所の鳥頭。取り敢えず一回死んどく?」
「殺れるもんなら殺ってみろやゴラァ!!」
「二人共落ち着け!?此処で暴れたら、先生に何言われるか解らないぞ!?」
『事の発端を作った人間が何言ってるのかな~?』オーラを全開にして、ペンシルゴンの視線がペッパーに突き刺さり。其の視線に反応したノワが『グルルルルルル………!』と喉を鳴らして、あからさまに威嚇を仕掛けてくる。
「さて、あーちゃんにサンラク君。ちょっと私と『オハナシ』をしようか?」
「誰がそんな死刑宣告に付き合うかァ!?」
此処からが本番と言わん表情でニッコリ笑顔になったペンシルゴンに、サンラクは即刻逃げようとしたのだが、ペッパーの肩に乗ったエムルがマジックチェーンを放ち、足首に絡めて転倒させる。
「エムルゥ!?ペッパー、お前かぁ!?」
「違うぞ」
「私が指示しました♪」
「おのれペンシルゴン!?!?」
ガシリッと首根っこを捕まえて、サンラクとペッパーをズルズルと引き摺りながら、ヴォーパルバニー達にノワと食事処にペンシルゴンは移動していく。
「おぅ、ペンシルゴンにゼッタ!そしてペッパーとサンラク、エムル姉ぇにアイトゥイル姉ぇ!卸した魚と炙った貝で『海鮮盛り合わせ』を作ったでぇ!」
「やぁやぁ、ティークちゃん。二人を連れてきたよん♪」
上機嫌な様子で陶磁器に盛り合わせられた、彩り豊かな魚の刺身と炙られ香ばしい匂いを放つ貝の切り身、そしてホカホカの熱々に暖められた熱燗が、席に付けられた三人と一羽、エムル・ゼッタ・ノワには熱燗以外の同じ海鮮盛り合わせが運ばれて。そしてペンシルゴンによる、大切な『オハナシ』が始まったのだった…………。
黒幕魔王、説明中……………
「えー………つまり『俺達のどっちかがユニークモンスター・夜襲のリュカオーンをテイムした』という情報が、野良プレイヤーを通じて拡散されて、クラン:
「まぁ、具体的にはそんな感じだねぇ~。ぶっちゃけると黒狼とは『完全敵対コース』に入っちゃってさぁ………。ライブラリのおじーちゃんが一応同盟クランへの通達に、情報屋ギルドに渡りを付けて前々から黒狼の内部に『探り』を入れてたんだ」
既にペンシルゴンから『ある事』についての話を聞いていたペッパーは、当初の目的から外れないでくれと祈り。同時にウェザエモンの一式装備の極秘開示を対価に、ライブラリを味方に付けていた事が此の緊急事態で活きた事に安堵した。
そして敵対状態に在る黒狼の内情を、サンラクは嘴を開けて鳥面を奥に在る口に刺身を運んで食し、ペンシルゴンに問う。
「んで?結果はどんな感じさ?」
「簡潔に言うと、黒狼は元々『リュカオーンを倒せればOKな穏健派』が多数を占めていたクランなんだ。でも
やれやれ具合な表情をしながら、御猪口に熱燗を注ぎ入れて飲んでいるペンシルゴン。そんな時サンラクは何かを閃いてか、自身が撮影した『スクショ』を彼女に見せる。
「ペンシルゴンよ、コイツを使えば面白い事になりそうじゃね?」
「どれどれ………ははぁ~ん、コレは中々面白い事になるねぇ?談合時に100ちゃん相手に『責任追及』出来そうだ。フフフフフ………」
「実際俺とペッパーは『巻き込まれた側』だからなぁ。………なぁに二人で事情説明すりゃ、どっちが『悪』かは明確だろうて…………」
ゲスい笑みを浮かべ、クックックと笑うサンラクとペンシルゴン。やはり外道故に、考えてる事が同じ場所に行き着くらしい。
「一応カッツォ君や京極ちゃんにも連絡を入れたし、他のメンバーには事が鎮静化する迄、シャンフロには入らない方が良いとも伝えてある。レーザーカジキ君は園長さんとの交渉があるから残って貰うし、談合に関してはライブラリを通じて100ちゃんから『今週の日曜日午後九時に黒狼館で話をしよう』って言ってきたんだ」
「んじゃ、俺達は何するんだ?戦争に備えてメンバー募集するか?」
「メンバー募集はしないよ。代わりに
つまりは談合に備えて他のクランを旅狼側に付け、話し合いの場面で盛大なネタばらし言う名の、爆弾を盛大に起爆するのだろう。しかも其れが
「となると、SF-Zooやウェポニアにも交渉するとして、他は何処を巻き込むつもりだ?ペンシルゴンよ」
「其処等辺は既に決めててね………『午後十時軍』に『聖盾輝士団』辺りも巻き込んじゃおうかなって」
「聞いた事あるクランだな……」
「其れくらいやんなくちゃ、今回の一件は解決しなーいの。今日は一旦解散にするけど、サンラク君とあーちゃんには後で『チャット部屋』に来て。其処で
そう言ってオハナシは終わりを告げ、ペンシルゴンはEメールアプリを使ってチャット部屋のパスワードが付与されたメールを送る。
ティークが卸し、調理した魚と貝は何れもとても美味であり、全てを食べ終えた其の瞬間、サンラクは称号【美食舌】を獲得した。
ティークに御礼を述べた後、ペンシルゴンは一足先に休憩室にゼッタと共に向かって行き、ペッパーとサンラクもまた、ヴァイスアッシュにΔ装置を渡さんと捜しに、兎御殿を回ったものの見付ける事は叶わず。二人は此の日のシャンフロを終えたのだった……。
戦争準備