交渉に向けて
ペンシルゴン主催の
(今月頑張った分の給料が入ったし、一部はゲームの購入費とゲーセンのプレイ費に回して、残りは食費と貯蓄に………。あぁ、レトロゲームで安いの探してから実家………いや待てよ?永遠を連れて行ったら、恋人紹介になるな?)
父親は母親とも今も盛んであり、自分の嫁と孫を見たいと強欲タラタラだったので、一応良い報告にはなるのだろうか。
(まぁ…………天音 永遠が俺の彼女ってなったら、兄弟姉妹が色々言いそうだもんなぁ。兄や姉は主に『弄り』、弟や妹はクラスメイトに『自慢』する予感しかしないし………)
梓の実家には父母を除くと『八人の兄弟姉妹』が居る。上には兄が一人の姉が二人、下には弟が二人と妹が二人居り、梓は五条家の『次男坊』にして四人の弟妹の『兄』なのだ。
(兄貴や姉貴は家から出た後の事は詳しく聞いてないが、親父が月に一回は実家に顔出してるとか言ったし。チビ達も元気にしてるかなぁ………)
実家の自分の部屋には鍵をして、室内の攻略済みゲームソフトが弟や妹に触れられないようにと、梓は事前対策をしている。其れも父親と母親に対し、大学進学とアパート住まいを前に、血眼かつ念押しで伝えた程だ。
(ウェポニアとソウちゃん、聖盾輝士団とジョゼットさんへの連絡は
予定を脳内でスケジューリングし、其の両足でアパートを目指して歩く。
「あ、そうだ……此の近辺にゲームショップは無いのかな。在ったらレトロゲームを買って、実家に戻った時にやれるようにしたいが」
善は急げとよく言うので、通行の妨げに成らぬ様にと道の端に寄って、早速スマフォで周辺一帯のゲームショップを検索すると、検索結果として一件のゲームショップがヒットする。
「何々………『ロックロール』、か。よし、行ってみよう」
都心部から程好く離れたゲームショップには、時に思わぬ『掘り出し物』が眠っていたりする。ゲームカセットやソフトとは時折『化石』に例えられ、誰かに見付けて貰えなければ記憶から忘れ去られ、他のゲームで作られた地層の中に埋め立てられて、人知れず消えていく。
ゲーマーという生き物は、そんな地層から種類やジャンルを問わず、宝物を掘り出し当ててゲット、其れを攻略して棚に飾り、また再びプレイして楽しむ………此の繰り返しをしている者達なのだから。
午後四時に迫る頃、スマフォの地図アプリで大まかな位置を把握した梓は雨天の中を歩き、視界の先に『GAME-SHOP ロックロール』を発見した。
「彼処か」
大きさは程々、外観も綺麗な事からも『数年以内にオープンしていた』と予測。人の出入りも有るので、そこそこ賑わっている様である。
「ロックロール………何れ程の実力か、見定めさせて貰おう」
そしてあわよくば、未だ見ぬレトロゲームをゲットするチャンスを!────そんな意気揚々に扉の前へ立ち、自動ドアが開いて梓を客として迎え入れる。
「いらっしゃいませー」と声を掛けるブロンドヘアーの女店主。軽く会釈による一礼を行い、先ずはレトロゲーマーの主戦場たる『レトロゲームエリア』の棚を、梓はチェックする。
(グランドダンジョンシリーズ、ハイスピード・イグニッション、スローファームシリーズに、エントロピー・パーティー……。成程、一通りのレトロゲームも取り揃えている感じか。お、アサシンズプライドやウルティマ・ウォーズ、其れにビーファイター………!コアな所も確り押さえてる、あの店主さん─────『出来る』な!)
『レトロゲーマーのツボを押さえている、かなり『やり手』の店長が居るゲームショップ』。其れがレトロゲーマーたる梓の評価としてロックロールに付けられた物だった。そして彼は『本命』となる、セールカート内をチェックし始める。
(ゲームショップの掘り出し物………其の最たる楽しみが此の『セールカート』!中古品だったりクリア済みだったりするが、此の中には俺達ゲーマーが知らないゲームが埋まっていたりする。目当てのカセットやソフトを発見した時の喜び。あの感覚が、俺は堪らなく愛おしく嬉しい………!)
暫く探していた時、彼の目に止まったのは『一つのゲームソフト』。ディスプレイ専用ゲームであり、其のタイトルには『戦場のヴァルキュリア』とロゴが振られていた。
(マジか!?夢…………じゃない!?ソフト……有る!マジか本物だ!ヨッッッッッ─────シャア!!)
ずっと探せど見付からず、中身を確認すればソフトが有り。欲しかった逸品を発見した事に、レトロゲーマーの彼からすれば至福の時間を過ごせ、満足気なホッコリ笑顔を浮かべていた時だった。
「なんか良い感じのクソゲー有ったりします?」
聞き慣れた声が耳に飛び込む。視線を移せば半袖半ズボン姿の男の子、そして其の顔はコンビニでよく見ている顔だった。そして其の背後には、入ろうか入らないかで迷う、白い半袖とロングスカートを着けた女の子が一人居る。
(あ、楽郎君だ。彼も此のゲームショップを利用してるのかな?)
大戦果を挙げた事でウッキウキになりつつも、表面では冷静を保ちながらにレジへと向かうと、楽郎が梓に気付く。
「あ、コンビニのお兄さん」
「やぁ、楽郎君。君もゲーム探しに?」
「そんな所っすね。お兄さんも?」
「うん。レトロゲーム探しに、近所にゲームショップ無いかなって検索したら此処がヒットしたんだ」
「何々?二人共知り合い?」
そんな二人に反応してか、女店主が声を掛けてくる。
「近所のコンビニで働いてる人ですね。其れと俺の所属してるクランのリーダーしてます」
「初めまして、梓って言います。よろしく御願いします」
「そうなんだ。私は
御互いに軽い自己紹介をした所で、真奈は楽郎のオーダーに対する回答をしようとした時、自動ドアが開く音が鳴り。先程まで入ろうか否か迷っていた女の子が入ってきて、楽郎を見た瞬間にサッと商品棚の影に隠れてしまった。
「ハーイイラッシャアーイレイチャーン。ソンナトコデツタッテナイデ、ハヤクコッチニラッシャーイ」
「あ、あぅ………」
顔を赤らめてモジモジしながら楽郎を見つめる、レイなる女子学生。楽郎が会釈した事から二人は知り合いなのかと梓は考える。
「えっ、何すか其の棒読み」
「CVに妥協は絶対許しちゃ駄目だよ」
「解りますわ、其れ。特にゲームの一枚絵だとしても、声優さんの熱演で化ける────なんて事、多々ありますから」
「お、よく解ってるじゃん」
乙女ゲーでも其の手抜きのせいでストーリーが台無しになったパターンは有るので、やはりキャラに声という命を吹き込む声優は偉大なのだと染々思う。
「で、クソゲーだっけ?クソゲーって訳じゃないけど、其のゲームの
「ゲームの裏ボス?」
楽郎の問い掛けに真奈が頷き、取り出したのは『龍宮院富嶽全面協力! VR剣道教室・極』という、所謂VRゲームの中でも
「まぁ良いや、ハウマッチ?」
「4210円だよ」
「結構安いっすね………斎賀さん?」
五千円札を対価に購入した楽郎、其の教材をじっと見つめる『斎賀 レイ』なる少女。此の時、梓の脳裏には何か記憶の琴線に触れたのだが、答えには至らなかった。
「あ、ごめんなさい!えっと……実は私も、此のゲーム持ってまして………」
「え、そうなの?」
「は、はい………実は私でも、其の………『裏ボス』を、倒せてないので…………」
「…………俄然興味が湧いてきたな。よっしゃ、其の裏ボスとやらに挑んでやるぜ………!」
クックックッと笑い、楽郎の瞳にモチベーションの炎が瞳に灯ったのを、梓と玲は感じた。
「真奈さん、其の教材って購入しても良いでしょうか?」
「おや、梓君も?」
「えぇ、ゲーマーとして気になったので」
戦場のヴァルキュリアのソフトをカウンターに置きつつ、教材を追加購入した梓は五千円札一枚と千円札三枚をカウンターへ乗せた。
「其れじゃ斎賀さん」
「あ、あの!ひ、陽務君!」
「ん?」
「………えっ、と………実は……其のっ…………」
顔を真っ赤にしながら、何か言おうとしている少女。梓は其の空気を察知してか真奈へ一礼した後に、そそそっと店を後にするのだった………。
其れを手にして、君は何処へ向かう?