VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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面会




黒耀の女傑と黒兎と闇狼、聖女に謁見す

クラン:聖盾輝士団がクラン:旅狼(ヴォルフガング)の側に付いた。Eメールアプリでペンシルゴン・サンラク・オイカッツォに連絡を取ったペッパーは、現在イリステラが居る部屋へとやって来ている。

 

ジョゼットは盛大に自爆した為に復活するまで少々時間が掛かったが、最終的にはサウナで汗を流して水風呂で整った様な顔になっており、他の団員が居る場所ではキリッとした団長としての顔を、居ない所では艶々満面の笑顔をしていた。

 

「イリステラ様。ペッパー殿を御連れ致しました」

「──────入ってきてください」

 

ノックを数回。要件を伝えた後に、ガチャリと優しくジョゼットがドアを開き、ペッパーもまた「失礼致します」と中へ入る。

 

(アイトゥイル、ノワ。聖女様の前だから、粗相の無いように頼むよ)

(はいさ)

(ワゥル)

 

帽子を外し、片膝を着き、女傑は聖女を前に頭を垂れ。コートの中からはアイトゥイルが現れて、同じく片膝を着きて聖女を前に謁見する。ノワは影に擬態したまま待機し、少なくともイリステラがアクションを起こすまでは、擬態状態を解かずに獲物を狩る様にして待つ。

 

「御久し振りで御座います、イリステラ様」

「御久し振りです、ペッパー………どうして『女性の姿』に?」

「深淵のクターニッドさんからの試練を越え、性別を変えられる物を手にしましたので」

「そうですか………。改めましてペッパー、そしてアイトゥイル。御久し振りです。そして私のわがままを聞いてくれて─────ありがとうジョゼット」

「我等聖盾輝士団は貴女様の盾、故に貴女様の願いを聞き届け、其れを成す事に私達は誇りを持っています」

 

深々と頭を下げる、ペッパー・ジョゼット・アイトゥイル。そしてペッパーには『ある予感が有った』。おそらく一番厄介な問題を、イリステラが行ってくる可能性が高いと睨み。

 

「ペッパー。貴方が宿敵として定めた、七つの最強種が一柱・夜襲のリュカオーンの『小さな分け身』を従えたと、私は運命神から御告げを受けました…………其れは『事実』ですか?」

 

彼女の言葉にジョゼットは目を丸くし、ペッパーを見詰めながらもイリステラの前に立ち、防御を固めてきた。流石は聖盾輝士団の団長、イリステラの身を第一とするクランの判断は早い。

 

「はい。私が御世話になっている『先生』にも、其の手綱を確りと握るようにと、警告を受けました」

『ワンッ』

 

ペッパーが呼び出すよりも速く、影が蠢きて姿を顕し、形を作るのはリュカオーンの分け身にして、彼女()が名付けたテイムモンスターのノワ。其の視線はペッパーに注がれて、足元に寄り添いながら小さな身体を擦り当てている。

 

そうしてペッパーは何故此のような事が起きたのかをイリステラに説明する為に、己の右手を───リュカオーンの愛呪(あいじゅ)が刻まれた右手を、彼女達に翳しながら話し始めた。

 

「今、自分の右手には『リュカオーンの愛呪』と呼ばれる、リュカオーンの呪い(マーキング)が変化した物が刻み込まれています。およそ十日程前に、私達旅狼はフィフティシアへ向かって深夜の行軍をしていましたが、其の道中にて私に呪いを施した夜襲のリュカオーンと遭遇、逃げられない状況下で戦闘を行いました。其の果てに協力者の御力添えも有り、リュカオーンの『撃破』には成功しましたが、私が初めて遭遇して呪いを施したリュカオーンは影狼(かげろう)────即ち『分身』でした」

 

サイガ-100に説明しようとすれば、凄まじい剣幕と圧を掛けてきて、あまつさえノワの身柄を引き渡せ等と、此方の話を一切聞く気は無くなるだろう。

 

そしてAnimaliaに説明したなら、絶対に撫で撫でを要求してくる所かスクショの嵐が巻き起こるので、より面倒な方向に話が拗れるのは火を見るより明らか。

 

だからこそ聖女と、彼女を守護する聖盾輝士団に事の話を行う。此れは謂わばペッパー自身が、彼女達を『信頼』しているが故の行動でもある。

 

「影狼たるリュカオーンに私は勝敗が一勝一敗である事、そして次に戦う時に決着を付けようと宣言しました。其の結果、リュカオーンの呪いはリュカオーンの愛呪へと変化し、能力を見た所『夜の帝王の寵愛を受けた証』である事が判明しました。そして私達はある『クエスト』で深海に在るという『ルルイアス』という都市を…………『クターニッドさんが根城』とする場所を訪れ、其処で恐ろしき怪物との戦いを繰り広げ。再び目覚めた時にリュカオーンの小さな分け身…………此方に居る『ノワ』が私の元を訪れ、自らの意思で『テイムされに来た』のです」

 

ジョゼットの目は丸くなり、ペッパーとノワに注がれる。其れもそうだ、七つの最強種(ユニークモンスター)・夜襲のリュカオーンに寵愛を賜り、分身とはいえども自ら其の者の元へとやって来た事が、あまりにも衝撃的過ぎるのだから。

 

だがペッパーというプレイヤーは、嘘を言っている訳では無い。一部脚色を加えてこそいるが、其の話は殆ど『事実』からなる物で出来ている。信じるか否かは別としても、ジョゼットの目の前にはリュカオーンの小さな分け身が居て、ペッパーに身体を擦り当てながら懐いているという、嘘のような事実の光景が在る。

 

「此の話は黒狼(ヴォルフシュバルツ)のサイガ-100さんには話していません。彼女自身、幾度もリュカオーンに敗れて来た相手から寵愛の証を賜った者の言葉を聞いたのならば、怒りに狂い私の仲間達に被害を出す可能性が有ると思います。故にイリステラ様とジョゼットさんには、今度の日曜日に行われる黒狼との話し合いの場に置いて、立会人(・・・)として談合の場に御立ち頂きたいのです」

 

要約すれば非常にシンプル、ペンシルゴンが言ったクラン談合時に、何かしてくるとも限らない上に下手すれば血傷沙汰を起こし得るだろう、イキり立った黒狼側の連中────即ち『強硬派の面々』を黙らせる事に有る。

 

聖女ちゃんと言われる程に人気なネームドNPC・イリステラ、もし彼女が居る前で()を起こしたのならばどうなるか………想像するに容易いだろう。問題は此の話をイリステラが受けてくれるかどうかだが。

 

「解りました」

 

至極あっさりと、イリステラは承諾したのである。

 

「イリステラ様」

「大丈夫です、ジョゼット。貴女や貴女と志を同じくする方々が、私を守ってくれますから」

 

彼女の身を案じるジョゼットに、微笑みながらに声を掛けたイリステラ。其れによってジョゼットは感涙を溢した。

 

「御心遣い、感謝致しますイリステラ様」

「ペッパー。貴方に神々の御加護が在らん事を」

 

此れにてミッションコンプリート。一先ず聖盾輝士団への協力取り付け及び、談合の場に置いてイリステラの立会が決定したので、戦果は上々と言えるだろう。

 

深々と再び頭を下げたペッパーは、アイトゥイルをコートの中へ、ノワを影に擬態させて教会を後にする。此のままウェポニアの本部へ殴り込み─────はせず、先ずはノワとアイトゥイルをラビッツに返して、一度性別を元に戻す為に…………。

 

 

 






働き掛けてくれる、頼もしき御方


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