VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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やって来たのは




水晶の地に輝く緋色の太陽、そして勇者は武器狂いと対峙せり

慈愛の聖女 イリステラが居る教会にしてクラン:聖盾輝士団の本部を後にしたペッパーは現在、フィフティシアの裏路地を駆使してラビッツの兎御殿へと帰還。アイトゥイルとノワを休憩室に(酒と魚の切り身で)待機させ、エイドルトへ転移して一目散に水晶巣崖(すいしょうそうがい)へ来ていた。

 

「ただ元に戻る(・・・・)だけなら投身自殺でも悪くはないんだが……。どうせなら宝石やら素材やら、獲得してから戻りたいよねって」

 

青の聖杯で反転した性別は『死亡してリスポーンするまでの間』は解除されない特性を持っており、反転させた状態でログアウトしても其のまま。おまけに今回、聖盾輝士団の団長・ジョゼットを色々ヤバめな台詞でノックアウトせしめたので、今後はそう易々と使えないだろう。

 

「さぁて、行くか…………ゴーイングマイウェイ!」

 

煌びやかに輝く水晶の地獄地帯、左手に嵌めた封熱の撃鉄(ニッショウ・トリガー)(スペリオル)を起動させ、夜空の元に緋色の太陽が昇る。

 

水晶地帯を駆け出せば、現れるは水晶を全身に纏う巨大な蠍こと水晶群蠍(クリスタル.スコーピオン)達、其の数も初めは数匹だったのが僅か短時間で数十匹に増え、侵入者目掛けて同胞諸とも押し潰しに掛かった。

 

「タダでは……殺られないッ!」

 

ミルキーウェイで空中を駆け走り、ダッシュスキルで加速すれば『極放熱(ウルティマヒート)』によってヘイトが残された陽炎(・・)が生まれて、蠍達が我先にと群がり出す。しかし蠍達が潰さんとしたのは、熱により屈折した光が残した『残影(ヘイト)』でしか無く、同族同士で激突しては押しくら饅頭によって甲殻や部位が砕け散るのみ。

 

そして押しくら饅頭から復帰するも、影も形も見当たらない侵入者に蠍達は周囲を見渡して、今度は周囲の水晶へ覚醒状態(アクティブ)で擬態・潜伏奇襲態勢を整えた。しかし其れを狙っていたとばかりに、ペッパーは空中ダッシュスキルと重力軽減スキルの組み合わせにより、水晶地帯スレスレを駆け抜けながらに素材を回収、あまつさえ結晶塔に小鎚を叩き付けながら鉱物を採掘し始めたのである。

 

当然ながら其れを見逃す訳もなく、現れた蠍達は今度こそとばかりに侵入者たるペッパーへ襲い掛かり。

 

心拍数(・・・)は此処に満たされた…………!」

 

小鎚の収納と目を閉じて、水晶群蠍を引き付けながらに両手を合掌。一定以上の心拍数を刻むという、一見変わった発動条件を充たした事によって、超星時煌宝珠(クロック・スタリオン)が能力を解放。

 

暖かく強い白光(びゃっこう)が放たれ、まるで閃光弾を彷彿とさせる輝きがペッパーより解き放たれ、水晶地帯という環境によって光が乱反射により屈折、其の光を直視した水晶群蠍達は一時的に視力を奪われる。

 

「解除!からの!採掘フェスティバル!俺の命が尽きるまでェッ!!」

 

視覚を奪い取り、其の隙を狙い白光を解除。そして彼は命の限り小鎚を振るい翳し、鉱物が埋め込まれた結晶柱を掘るのだった。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

 

 

 

 

…………

………

……

 

 

 

 

 

兎御殿・休憩室。

 

「はぁ~…………楽しかった(・・・・・)!」

「ペッパーはん、随分清々しい顔しているさね」

『クゥン♪』

 

水晶群蠍との採掘デッドヒート、金晶独蠍(ゴールディ.スコーピオン)が出撃しての三つ巴の果て、ペッパーは金晶独蠍を水晶群蠍と協力して討伐に成功し素材を回収するも、最終的には残っていた蠍のバレーボールにされて死亡、男性の姿に戻ってリスポーンして戻ってきた。

 

「やぁ、二人共。漸く元の性別に戻れたよ………」

 

ふと気になったのでステータス画面を開き、インベントリアから深淵の雫を取り出して翳しながらに確認すると、今まで見えなかったヴォーパル魂や歴戦値等の隠しステータスが、雫越しに表示された。

 

「ヴォーパル魂は………お、上がってる。やっぱり死地と絶望の中で『己を示す事』で、ヴォーパル魂は上がる傾向に有るんだな」

 

ヴォーパル魂が775、歴戦値は2840に上がっているのを見て、やはりプレイヤーの行動で隠しステータスは変動するのだと確信し。インベントリアに深淵の雫を収納して、彼はベッドから立ち上がる。

 

「アイトゥイル、ノワ。今からソウちゃん……此処ではSOHO-ZONEさんとの交渉に行くんだけど、二人には此処で待機していて欲しいんだ」

「何か理由が有るのさね?」

『ウゥル……』

「理由としては黒狼(ヴォルフシュバルツ)と鉢合わせになった場合、二人を守ってフィフティシアから脱出するのが困難になる可能性が高い。そうだな………今から二時間後に転移先に扉を作って欲しい」

 

黒狼との衝突の可能性を考慮して、自分一人が狙われるなら良い。だがアイトゥイルかノワのどちらかが捕まり、人質に取られた場合に話が面倒な方向になるので、安全第一に尽きる。

 

「……………解ったのさ。ペッパーはん、気を付けてなのさ」

『クゥン………』

「…………ありがとう二人共」

 

アイトゥイルとノワを優しく、ギュ~~~と抱擁(ハグ)したペッパーは、先にビィラックの元へと向かい『ある武器』の製作を依頼して。そして彼女が開いたゲートを越えて、再びフィフティシアへと向かうのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャンフロ第15の街・フィフティシア。

 

其の街から少し離れた小高い丘の上………其処には嘗て明かされる事無く秘匿されてきた『勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)聖盾(せいじゅん)イーディス』が置かれていた場所であると共に、一番最初に発見したSOHO-ZONEが仲間と共に付近の敵の一掃と、周辺の整地を行ってクラン:ウェポニアの本拠点を建てた此の場所に、ペッパーは今宵交渉の為に単身で訪れていた。

 

「今晩は、SOHO-ZONEさん。待ちましたか?」

「いや、寧ろ到着を心待ちにしていたからねペッパー君。何の問題も無いよ」

 

朗らかな笑顔を浮かべ、クランリーダーのSOHO-ZONE直々の案内でウェポニアの本部を進みながら、ペッパーは過ぎ行く景色やクランメンバーの様子を見る。ある者は鍛冶師として武器の製作に励み、ある者は生産された武器の耐久チェックと使用感を記載し、またある者は得られたデータをシャンフロのwikiに反映している姿を目撃し。

 

全員が共通の目標を見据え、唯一つの事柄に心血を注ぐ…………其れがクランの『本来在るべき姿』なのだと彼は思う。そしてクラン:ウェポニアの場合、其の目標は『シャンフロの武器を徹底的に調査・研究・解明を目指す事』を目標とする、謂わば『SF-Zoo(動物狂い)』に似た理念を掲げているのだ。

 

(黒狼は元々リュカオーンの討伐さえ出来れば良かったのに、何時の間にかトップクランで居続ける事を注力し続ける方向に成っていった…………と、ペンシルゴンが言ってたな)

 

何処で軌道が擦れたのか興味が有るが、好奇心は猫をも殺すとの諺がある。そんな事を考えて居れば、SOHO-ZONEの脚が一室の扉の前で止まり、開いた先には会議室らしき空間が一つ。ソファやテーブルが並んだ、其れなりの値段がするだろう家具が並ぶのみで、派手さは無く謙虚な空間が其処には在る。

 

「どうぞペッパーさん、御好きな所へ」

「失礼致します」

 

テーブルを挟み、ソファへと腰掛ける両者。

 

「さて……ペッパー君。連絡してきたのは『リュカオーンのヘイトを集める武器』を見せて頂けるのでしょうか?其れとも変化した『影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)』の事を教えて頂けるのでしょうか?」

 

ニチャリ……そんなSEが聞こえる表情を浮かべるSOHO-ZONEを見て、ペッパーは深呼吸を一度行い。

 

「前置き無しの単刀直入に言うよ、ソウちゃん(・・・・・)。俺達旅狼(ヴォルフガング)と黒狼の戦争時に、俺達の側に付いてくれない?」

 

ペッパーがインベントリアを操作する。彼が取り出すのはウェポニアからすれば、結成当時からずっと探していた()。出土していた遺機装(・・・)なる未知なるの武器種と形状から判明していたが、其れを復活させる方法が一切判らず仕舞いであった()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達が示すのは一つ(・・)。クラン:ウェポニアが発掘したという遺機装(レガシーウェポン)………其れを直す宛が有る(・・・・・・)と言ったなら。────どうする?」

 

取り出した武器の種類は『銃』、其の名を『規格外武装:長銃型【サジタリウス】』。

 

ユニークモンスター・墓守のウェザエモンを討伐し、五人のプレイヤーの共通報酬として贈られた腕輪型のアクセサリー。其の中に眠りし今は十種(・・)となった遺産の一つで、現在も『稼働する遺機装』を見せながら言ったのだった。

 

 

 

 

 






銃の重さ


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