VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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此れは世界を調える神と、世界を創りし神の話




インパクト・オブ・ザ・ワールド ~世界の調律神~

ペッパーが特殊クエストを攻略し、次なるクエストを解放した、ほぼ同時刻………。

 

現実世界にあるシャングリラ・フロンティアを開発したユートピア社では、地下10階にある女性がやって来ていた。黒のショートヘアに研究白衣と黒のミニスカートを着け、黒の女性物の靴を履いている。

 

彼女は『原典閲覧室』と呼ばれる大部屋の前に在る、認証装置の前に立って社員証を翳し、指紋認証と網膜認証の三重認証を行い、ロックが解除された扉の先に歩いていく。

 

「…………おい『継久理(つくり)』、お前また私に隠して『弄ったか』?」

 

彼女の名は『天地(あまち) (りつ)』。シャングリラ・フロンティアのエグゼクティブ・プロデューサーであり、神ゲーたるシャンフロを『ゲームとして成立するレベルまで』調整を施した女性だ。

 

継久理(つくり) 創世(つくよ)がシャンフロの創生神であるならば、天地 律はシャンフロの世界を調える調律神の様な存在である。

 

「何よ天地。私が何か変なことでもした?」

「お前の場合は目を離すとシナリオやら何やら書き換えに走るから、私が目ぇ付けとかないと直ぐに暴走するだろうが」

「此の『私の世界』で、おこぼれ貰って生きてる様な寄生虫には、決して言われたくないわ」

「其の私の世界とやらのゲームバランスさえ、お前じゃ『マトモ』な調整出来ねぇから、私がやってんだよ」

「言ったわね…!」

「あぁ色々言ってやるよ…!」

 

額同士をぶつけ合い、今にも爆発して喧嘩が始まりそうになる。其の時だった。

 

 

ピロリン♪『自動送信メール1件』

 

 

ディスクトップに自動送信メール1通が届く。創世は律を無視して、直ぐ様ダブルクリックで其の内容を確認する。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ユニーククエスト:【インパクト・オブ・ザ・ワールド】 第二段階(セカンドフェーズ):【沼地に轟く覇音の一計】のA+クリアを確認。

 

クリアユーザー:ペッパー

 

称号【沼鮫の鎮圧者】【覇音を成した者】【種族は違えど志は共に】【投擲道具のパイオニア】【エンハンス商会御用達】を獲得。

 

シャングリラ・フロンティア内、全エンハンス商会及び一部道具屋のアイテムカテゴリー【投擲玉】の解放完了(アンロック)を確認』

 

 

 

 

 

 

 

「…………………嘘でしょ」

 

ディスクトップに表示された、ユニーククエストの第二段階クリアの報せに、創世の表情はより険しくなる。当初想定していたクリア日数を、此のユーザーは圧倒的なスピードで攻略してしまった。

 

幾ら何でも早すぎる(・・・・・・・・・)

 

「何々、ペッパー…?………あぁ、コイツだよ。私が話したかった、ユーザーってのは」

 

其の後ろから、表示された画面を見た律は当初の目的を果たす為に、創世に言った。

 

「夜襲のリュカオーンの『AI』は、お前の要望通り……『前衛職』にしか呪い(マーキング)をプレイヤーに付与しないようにしてある」

「じゃあ何で、私に聞いてきたのよ」

 

創世の疑問に律は、ただ存在する事実を言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此のペッパーって奴は、メイン職業がバックパッカー。……つまり『後衛職』なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………は?」

 

沈黙と静寂。そして…動揺。

 

「そんな筈無いでしょ!?私の可愛い、夜闇の支配者のリュカオーンちゃんが、か細くて弱い後衛職のバックパッカーにマーキングするなんて有り得ないわ!?!」

「其れが有り得たから私は来たんだよ!?一体どうなってやがるんだ!?大本の『原典』やらにそういう事態が起きるとか書かれてなかったのかよ!?」

 

律と声を張り上げて言い争い、創世は肩で息をしてディスクチェアにドカッと腰掛けた。

 

「………………一応、後衛職がリュカオーンのマーキングを受ける方法は、在るわ。

 

大前提として、夜襲のリュカオーンと『レベル差が100以上離れていて』尚且つ『単独状態(ソロ)』で遭遇する事。

 

そして戦闘開始から『ノーダメージで20分以上適正距離を保ち続けてダメージを与える』、もしくはリュカオーンに『残照が残る程の傷を刻み付ける』………其れ以外は無い」

 

前髪を鷲掴み、創世は大きな溜息を溢す。

 

「……『普通』は無理よ、後衛職は大体MPや器用にリソースを使う。敏捷やスタミナにステータスを振る余裕なんてレベルカンストに近付いて、余裕が出来たくらいしか無い………!」

「………ペッパーってユーザーが何を思って、どういうステ振りをしたかは知らねぇが、リュカオーンがコイツを『認めた』。………其れだけは、変えようの無い『確かな事実』だ」

 

調律神たる律もまた、ペッパーというユーザーの存在に睨みを効かせ。対して創生神たる創世はペッパーの名を見ては、恐ろしい言葉を吐き捨てる。

 

「………ペッパー、此のユーザーは危険過ぎる(・・・・・)。後衛職でありながら、リュカオーンちゃんに『認められて』、あまつさえ『ヴァイスアッシュ・シナリオ』に絡んで。何れ私の……私の世界のシナリオを『根幹から狂わせる』可能性すら含んで………」

「おい創世、勝手にシナリオやシステムを書き換えるなよ?アイツの首が飛ぶぞ」

「……解ってるわよ」

 

(………対策は必要。そうなると『オルケストラ』に観測させる?いえ、まだね………『色々足らな過ぎている』。なら、インパクト・オブ・ザ・ワールドの第五段階(ファイブフェイズ)の最終試練の難易度調整と、ヴァイスアッシュ・シナリオの実戦的訓練の最終試験で『ポポンガ』を絡ませましょう……)

 

 

 

神々は見つめている。

 

世界を動かさんと、藻掻き足掻く者を。

 

其の異質なる存在を、神は赦しはしない。

 

其のシナリオを崩さんとする者を、神は認めない。

 

 

 

世界を創りし神が、筆を取る。

 

異質なる存在を、詰ま着かせる為に。

 

其の心を減し折り、砕く為に。

 

 

 

世界は進まず、動かない…………。

 

 

 






標されたコタエが、神々を揺らす


※リュカオーンの呪い(マーキング)付与条件(後衛職)は本作品のオリジナル設定です
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