VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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サンラクとレーザーカジキは




兎の国に集う者、紡いだ願いを託す者

「サンラクさん、あの………ありがとうございました」

「良いって事よ、レーザーカジキ。取り敢えずSF-Zooも旅狼(ヴォルフガング)に付いてくれたから、目標達成だな」

 

エムルをマフラーに擬態させ、レーザーカジキと共に歩いていたサンラクだったのだが、此処で自然に隣を歩いている少年魔術師に疑問を覚える。

 

「……………ん?というか、レーザーカジキ。お前『宿』で休まないのか?」

「あ、えっと……実は最近『拠点』を変えまして。今は其処で御世話になってます……はい」

「そうなのか」

 

何故か他人事ではない予感を抱きながら、二人と一羽が辿り着いたのは、フィフティシア内の『某路地裏』であり。

 

「えっと………『エストマ』さーん。来ましたよー」

 

レーザーカジキの呼び掛けに、路地裏の暗闇で『ボワン』と音が鳴り。シュタタタ………と走り現れたのは、忍者装束に身を包んだ灰色の毛並みを持つ、一羽のヴォーパルバニーだった。其の額当には致命魂(ヴォーパルだましい)の首輪や腕輪のマークと同じ模様が刻まれて、背中には忍者刀らしき物を背負っている。

 

「漸く戻られたか、カジキ殿よ。む………貴方がラビッツで噂に聞く『鳥の人』で御座るか。そして『エムル姉さん』よ、毎度思うが其れは『擬態』とは言わぬで御座る」

「エストマ、私のヴォーパル的擬態術も日に日に進化してるんですわ!サンラクさん、此の子は私の弟のエストマですわ!」

 

此の時点でサンラクは、SF-Zooにレーザーカジキが取り込まれなかった事を安堵していた。エストマ………即ちヴァイスアッシュの息子の一人を、レーザーカジキがパーティーに加えているとSF-Zooに知られたなら、より話は面倒な方向に行っていたのは間違いないのだから。

 

「って事はクターニッドの時にヴォーパル魂を満たした感じか、レーザーカジキ」

「はい……まさかもう一度ラビッツを訪れる事が出来るなんて、夢にも思いませんでした…………」

 

つまり現時点でペッパーと自分を除けば、秋津茜・ペンシルゴン・レーザーカジキの三人がラビッツの、延いては『ヴァイスアッシュのユニークシナリオ』に挑戦する権利を得たという事になる。

 

そうなると実戦的訓練クリア者として、三つのΔ装置をヴァイスアッシュに渡し、次の段階へ先んじても良いだろう………そう考えてサンラク達はエムルが開いたゲートを潜り、兎御殿へと帰還したのであった………。

 

 

 

 

 

「あ、サンラク……さんに、レーザーカジキ………さん。どうも……こんばんわ、です…………」

「わ、わわっ!スゲー、本物の鳥の人だ!本物だぜウォットホッグ!!」

「ブィイ!」

 

そして何故か兎御殿に居た最大火力(アタックホルダー)のサイガ-0と、黒毛で小さな猪の子供………ウリ坊に乗った一羽のヴォーパルバニーに、サンラク・レーザーカジキ共々目をパチパチさせたのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ、サイガ-0さん!?もしかしてピーツさんが言ってた三人の最後って、貴方だったんですか!?」

「あ、えと………はい」

「おー!蒼空を舞う勇者だぁスゲー!しかも小さな夜の帝王まで居るのスゲー!!」

「ブビィ!?」

 

サイガ-0から事情を聞いていた最中、兎御殿に帰って来たペッパーが、(彼女)の姿を見て驚愕の声を上げる。そしてペッパーと傍らに居るノワを見て、其のヴォーパルバニーは声を上げ、ウリ坊は逆にノワを見て震え上がる。

 

「相変わらず元気やね『エクシス』。サイガはんは強い人さね、確り強くなるのさ」

「うん!アタイ頑張るよ、アイトゥイル姉ぇ!な、ウォットホッグ!」

「ブルルッ!」

 

同じ黒毛そして何処かエムルに似ているエクシスなる兎は、ウォットホッグなる小さなウリ坊共々フンスフンスと鼻息を荒げている。元気が有り余ってるというか、空回りしないと良いが。

 

そして其れはまるでタイミングを見計らっていたかのように、人の気配集まる場所に祭りの予感を嗅ぎ付けたかのように、彼女はやって来た。

 

「やぁやぁ、あーくんにサンラク君!しかもレーザーカジキ君にレイちゃんまで!二人ともユニークシナリオの受注したんだねぇ」

「エクシスおねーたま、アイトゥイルおねーたま」

「あ、サイガさん!ペッパーさん!サンラクさんにレーザーカジキさん!こんばんわです!」

「御晩に御座る」

「おぉ、シー兄ィ!」

「シーにーたま……!」

 

悪巧みさせたらNo.1、嘗て一つの世界(ゲーム)を支配したアーサー・ペンシルゴン。そしてそんなペンシルゴンを含めて外道四人衆を、纏めて浄化する光属性の権化たる秋津茜(アキツアカネ)がログインしてきた。

 

こうして見るとユニークシナリオの参加者は六人、其の大半が現状旅狼(ヴォルフガング)のメンバー、もしくは関係者である為にラビッツのユニークシナリオが外部に漏れれば、独占やらで難癖を付けられそうな予感がする。

 

「さてさて……あーくんにサンラク君、クラン交渉は上手くいったかな?」

「ウェポニアとの交渉は成功した」

「ノワのブロマイドでレーザーカジキの引き抜きとクラン協力の打診通した。ペンシルゴンはどーなんだ?」

「無論、交渉成立だよん♪まぁ、何せ『クターニッドは再戦可能なユニークモンスター』ってのを伝えたら、目の色を変えてねぇ………あと午後十字軍も味方に加えたからさ」

 

そう、そうなのだ。深淵のクターニッド…………此のモンスターはシャンフロの中でも、現状唯一の『再戦可能』なユニークモンスターである事が、真理書を通して発覚したのだ。

 

九つの杯から二つ選べた時点で周回要素の匂いを感じていたのだが、まさか再戦可能だった等と思いもしなかった上に、何れルルイアスを別のプレイヤーやクランが訪れるとなれば、遠からず深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)の存在に対する追及が襲い掛かるだろう。

 

「あの……、皆さん、は……此れからどうします、か?」

 

そんな折、口を開いたのはサイガ-0。此の後の予定について確認をしようとしているみたいだ。

 

「僕は実戦的訓練を受けようかと……」

「私もです!」

「茜ちゃんとカジキ君が行くなら、私も一回挑戦しようかなって。レイちゃんは?」

「…ほんの、少し……気になります………」

 

どうやら目的地は四人共ヴォーパルコロッセオに決定したようで、皆各々の兎に案内されて向かって行き。ペッパーとサンラクに、各々のパートナーが残る。

 

「サンラクはどうする?」

「俺は他メンバーの戦うモンスターが気になるから、ちょいと観に行くわ。ペッパーは?」

「ビィラックさんの所へ、渡し物を届けに行く」

 

軽い話を少しして、サンラクはエムルを頭に乗せてヴォーパルコロッセオへと駆け出し、ペッパーはアイトゥイルとノワを連れて、ビィラックの鍛冶場へと歩き出す。

 

「ビィラックさーん」

「おぉ、ペッパーか。どうしたんじゃ?」

 

彼女の仕事場に辿り着くと、其処では武器を直して装備を作るビィラックの姿が在った。

 

「実は御願いが有りまして………他の武器や装備が直し終わった後で『コレ』を直す事って出来ますか?」

 

そう言いペッパーがインベントリアから取り出すのは、SOHO-ZONEから託された遺機装(レガシーウェポン)であり、形状からして『拳銃』であろう土錆び色の武器。

 

「コリャ確かに遺機装じゃな……ただコイツの修繕には『かなり時間』が掛かるけぇ、其れでもエェか?」

「御願いします」

 

SOHO-ZONEには報せてある、後はビィラックに任せる事とし、ペッパーもまたヴォーパルコロッセオへと向かうのだった………。

 

 

 

 






仕込み上々、意気揚々


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