先輩としてアドバイス
「あぁっ!また、転移……びゃう─────」
其の理由としては彼女曰く『ジークヴルムさんの
おそらくだが、あのモンスターは『ギミックモンスター』であると予想したペッパーとサンラクは、シークルゥとエストマに対して幾つかの質問をしていた。
「シークルゥとエストマ。アレって確か豆腐ダイエットだっけ?」
「黒死の天霊で御座る」
「其れじゃあ黒胡麻豆腐になっちゃうよ………えっと其の黒死の天霊は、普段『どんな状況下』で産まれますか?」
「詳しくは知らぬが………一説によれば『大量の死を起因として顕れる』、と何処かの書物に書かれていた……とあるで御座る」
互いに語尾が『御座る』なので、ちゃんと名前で呼ばないとゴチャゴチャになりそうだと確信しながら、エストマの発言からペッパーとサンラクは考察を開始する。
「大量の死を起因………要するに『
「トリガーはそうだが、何と無く『歌う瘴骨魔』みたく瘴気を纏ってるから、ありゃ『アンデッドモンスター』な気がするんだよな」
「となると『聖水』で浄化するのが一番かな?」
「多分……其れで、有っている……かと」
そんな最中、考察に加わってきたペンシルゴンとサイガ-0。そして秋津茜の奮闘を見ていたレーザーカジキは、秋津茜が転移によって首を掴まれながらも、インベントリから聖水らしきアイテムを当てる姿を見て。其れが『一切通用』せずに幾度目になる斬首によって死亡したのを目撃、其の情報を皆に伝えた。
「あの、皆さん……さっき秋津茜さんが聖水を使ったみたいなんですけど、全然効きませんでした」
「マジ?」
「はい………。此れで十二回目の挑戦になりますね………」
「………取り敢えず秋津茜をステイさせて、作戦会議と行こう。ヤツの
此のままではデスペナルティの積み重ねになるだけなのと、精神衛生上悪影響を与えかねないので、先達者として彼女にアドバイスを送る事を決めたペッパーと、彼に付いてきたノワ。そしてサンラクの二人と一匹は、秋津茜の元に向かう。
「あ、ペッパーさんにサンラクさん!其れにノワちゃんも!」
「よし秋津茜、先ずは一旦ステイだ。作戦会議をするぞ」
「はい!」
秋津茜をベッドに座らせ、自分達も胡座を掻きながら彼女を落ち着かせる。何より秋津茜を放置してれば五十だろうが百だろうが、突撃を敢行する『危うさ』を含んでいると考えたからだ。
「取り敢えず客席から見た限り、あの黒い死神………黒死の天霊は『ギミックを解かないと倒せない』&『原理を解かないと掴み攻撃を避けられない』って事実が有る」
「そうですね! 距離を離したり跳んでみたりしたんですけど、全然避けられなくて……。攻撃してもダメージ無いみたいですから………」
「ん~………『ネタバレ』になるが、ヤツの掴み攻撃の『カラクリ』知りたい?」
「はい!ちょっと手詰まりだったので、教えて頂けると助かります!」
アレは第三者視点で見て漸く解る物でもあるし、パートナーのヴォーパルバニー達はモンスターの『出自』を教えてくれるだけで、攻略法に関しては自力で導き出す事を推奨してるのか教えずにいる。
だからこそ、複数の別角度からでしか見えない物も有る。黒死の天霊は『其の類い』のモンスターだ。
「ぶっちゃけると、ヤツの掴み攻撃のトリガーは『影』だ。多分『ホーミング』はしないだろうが、発生が早いから奴が『掴みモーションを始めた時点』で横に回避。そして影が重ならない様に、移動ルートを心掛ける事が重要」
「後は聖水が効かないから『別のアイテム』をぶつけて、死神への有効打を探そう。あとフルダイブで『死に覚え』はオススメ出来ない。故に一戦一戦極力情報を収集し、自分の持ち物やスキルに魔法を確認して『勝利の道筋』を見付けるんだ」
「はいっ!解りました!」
そうして秋津茜が再び死神へと挑みに行き、影を意識しながら動いて────いや、死神自身が
「わわっ!でも、さっきみたいにやられません!」
此方のアドバイスによって学習したか、己の影と死神の影が重ならない様に、ひたすら動いて避け続ける秋津茜。先程まで死神に殺られ続けていたのが、情報を組み込んだ事で其の挙動が『最適化』されていくのを見た事で、ペッパーとサンラクは秋津茜のスタイルは『トライ&エラーを繰り返す中で、行動を修正・最適化していくRTAタイプのプレイヤー』であると悟る。
「えいっ!」と、彼女がインベントリから取り出し投げたのは『回復ポーション』。クターニッドとの戦いで紫の杯を破壊する時に用いた戦法であり、NPCが販売している何の変哲も無い回復アイテム。秋津茜自身も駄目元で投擲した其れは、クルクルと弧を描きながら死神の頭へと当り。
割れた硝子瓶から治癒の液体がぶちまけられ、死神が『悶え苦しんだ』。
「あっ!効い……ひゃう」
其の直後。死神が放った掴み攻撃に捕まり、今度は首チョンパでは無く、ウェザエモンの絶技・
「あ、秋津茜殿ー!!」
そしてシークルゥの叫びが木霊した。
秋津茜がラビッツに在るショップに回復ポーションを買い込みに、シークルゥと共にヴォーパルコロッセオから走って行ったのと交代で、ペンシルゴンが
「全く………さっきまで見てた死神も大概だけどさぁ!此の金蠍も理不尽モンスターじゃないの!?」
レーザー型の毒液を回避し、接近からの大振りで振るう右前鋏を屈みつつ、甲殻の隙間を槍武器スキルで刺すペンシルゴンは、自身に課せられた一体目のモンスターに文句を垂らしながらも食らい付いていく。
「ペンシルゴンよ。全力で戦ってリスポーンしたら、俺から『ヒント』教えるから頑張れ」
「ヨッシャ!おねーさん全力で頑張っちゃうぞー!!?」
「お~お~、ペッパーよぉ~?ペンシルゴンと何処まで行ってるんだぁ~??ん~~???」
恋人からのエールにペンシルゴンが燃え上がって金蠍に肉薄し、其れを見ているサンラクがニヤニヤ顔で言ってきたので、ペッパーは軽く流す。
レーザー・単発・散弾の毒液を飛ばす遠距離、馬力が桁違い過ぎる近接攻撃をペンシルゴンは躱わし、金に輝く甲殻の僅かな隙間を突き刺して、指先から伝わる感触から情報を収集している。
だがやはりというか、
そして再生を止めんと攻めに転じたペンシルゴンは、凄まじい速度で飛来した針攻撃の受け流しに失敗、バランスを崩した所を前鋏に胴体を両断されて死亡、リスポーンしたのだ。
「ははーん?さては金蠍って『クソモンスター』だね?」
「まぁ、マブダチの中の戦闘特化……もとい同族しか食えない
サンラクの解説にペッパーもコクコクと頷き、そして約束通りペンシルゴンへアドバイスを送った。
「金晶独蠍の回復行動は、先ず『両鋏』が存在している事が条件。後は其の鋏が『綺麗』じゃないと、回復力が落ちる」
そう、青の聖杯で入れ替わった性別を戻す為に
『金晶独蠍が行う再生行動による傷の修復度合いは、鋏の状態と比例しているのか』
其の仮説を元に、水晶群蠍達を叩き起こしからの金晶独蠍を引っ張り出して。三つ巴の大乱戦の中で鋏が傷付き、光沢がくすみ、そして汚れた事により、回復力が目に見えて落ちた事を確認したのである。
「となると………再生行動をさせない為には『昼間』の内に倒すのが良い感じ、かぁ………」
「そんな所かな」
「後は………うん、アレとアレ……其れにアレが有れば………。多分イケる」
何やら攻略法を思い付いたらしいペンシルゴンは、今日の実戦的訓練を切り上げるや、ゼッタを連れて兎御殿へと戻っていく。そして其の際にペッパーの耳元にて────
「アドバイスの御礼、たっぷりさせてあげるね♪」
────と、妖艶な言葉を呟いたのだった。
見付け出したら、突き進む