皆の戦い
「勝てない………です、ね」
「あの音波攻撃、どうにも『固定ダメージ』を与える感じがするな………」
「もしかして、プレイヤーの『MPを参照してダメージを与えてる』可能性って有りますか?」
「調べて、みます……」
「刺々スピノが喉を鳴らした時、飛ばした刃麟も震えてた。レイ氏、次はアレが回収出来ないか確かめてみましょう」
「了解、です」
かれこれ七回目のチャレンジとなるドラクルス・ヴィルザーク戦に挑み、飛ばして地面に刺さった刃麟を一枚回収出来たものの、直後に不可視の斬衝撃波に内側からズタズタに刻まれて、サイガ-0が死亡してリスポーンした。
「………あの斬衝撃波、固定ダメージ………でした。MP分だけ体力、減りましたので………」
「魔法職殺し、か………」
「レイ氏、ヤツの喉を潰してみましたか?」
「はい。一度……攻撃、してはみましたが……。物理攻撃は効かなくて………次は魔法で、やってみます」
八回目のチャレンジ。喉の魔法耐性を確かめるべく前のめりに前進し、ドラクルス・ヴィルザークが尾を振るい、飛ばした刃麟を躱わしたサイガ-0が肉薄。おそらく中級クラスの火属性魔法だろう其れを、スピノの喉に叩き付けて自身は直ぐ様距離を離す。
一瞬怯むも再び斬衝撃波を放たんとするドラクルス・ヴィルザークだったが、声が出ない事に気付き慌てふためく様子を見せた事で、相対したサイガ-0を含めて全員が『魔法攻撃を喉に叩き込めば、不可視の固定ダメージを封じられる』のだと、確信するに至る。
其処からはサイガ-0の独壇場…………という訳でも無く、必殺を封じられてもドラクルス・ヴィルザークは強かった。刃麟を飛ばし、噛み付きを敢行、元々の馬力の差を叩き付け。
其れでも回復ポーション等による回復でギリギリ持ちこたえた死闘の果てに、最後は脳天を打ち砕くように振るったスレッジハンマーがドラクルス・ヴィルザークの頭蓋を砕き割った事で、其の巨体を構成するポリゴンが崩壊し、討伐へと至ったのだ。
「か、勝てまし………た………」
「お疲れ様、レイ氏。危ない場面が多々有ったのに、流石ですね」
「あ、い、いえ!皆さんの、アドバイスの………おかげ、です!はい!」
グッ!と拳を握って答えたサイガ-0。ドラクルス・ヴィルザーク…………必殺攻撃のギミックが解らないと死亡は避けられず、其の対処法が発覚しても元々のスペックが高かったりと、非常に面倒な相手であった。
「で、レイ氏は此のまま二体目に行きますか?」
「あ、ちょっと疲れて……しまいましたから、少し休み……ます」
あのレベルのモンスターが此の後にも控えているともなれば、休息を取りつつ確りと攻略したい気持ちはよく解る。
そんな時「ペッパー殿、サンラク殿」と木枯しが吹く様な風と木の葉を巻き上げ、レーザーカジキの相棒たるエストマが、突如現れた。
「あ、エストマさん。今まで何処に?」
「カジキ殿。拙者先程、兎御殿に戻っていたで御座る。御二方に『頭』からの伝言を伝えるで御座る」
「俺達二人に?」
「兄貴から?」
コクリと頷き、エストマは伝言を伝える。
「二人の渡した『兎月』、此処に『真化』した」───と。
エストマからの伝言を聞き、ヴォーパルコロッセオから兎御殿へ戻る途中で秋津茜とシークルゥとすれ違い、ペッパーとサンラクは各々のヴォーパルバニーと、リュカオーンの小さな分け身たるノワと共に、ヴァイスアッシュの居る鍛冶場にやって来た。
其処では人参型で年代物の煙管を吹かし、ニヒルな笑みを溢すヴァイスアッシュと、彼が作った武器を見てはヘブン状態になるビィラックの姿が在った。
「おぅ、来たかぁお前さん等。良い出来映えだぁ」
「ほんに……素晴らしいけぇ…………」
「先生。エストマさんからの伝言聞き届け、サンラク共々此処に馳せ参じました」
ヴァイスアッシュの見つめる先に視線を移せば、様々な金を混ぜた様な色に煌めく金の片手剣と、深海の黒を内封した蒼のナイフとも短刀とも取れる短剣からなる二本の剣。
まるで晴れた日の海の碧を含む紺碧色の、其の鋒には握り拳サイズの丸い突起状の物が付いた、二本の青い枹が交差して置かれ。
そして片手サイズのショートメイスは、より黒く艶やかな深い闇を纏った様な鏡面を以て、然れども叩けば命を奪い取る破壊力を等しく掛け合わせる物。
全ての武器が『超逸品』と豪語するに相応しい出来映えだった。
「お前さん等の兎月達はぁ此処にぃ、真化によって新たな姿と銘を得たァ………。其処に在る金の
「おぉ…………!」
「凄い…………!」
二つの剣は金晶独蠍と冥帝鯱の共通特徴である『水晶』を素材とした事で産まれた『水晶剣』であり、枹はキメラモンハナシャコの持つ甲殻の『色』を写し取り、ショートメイスはより『攻撃的な形状』と『黒』を強調した物へと変貌を遂げている。
改められた武器の性能たるや、一体どうなったか。早速チェックしてみよう。
武器種:対刃剣
対となる刃の名は冥帝輝、金色にして皇の威光を水晶に宿した
此の武器を装備したプレイヤーよりレベルの高い相手と戦闘する場合、クリティカル攻撃に成功すると攻撃対象へ『
皇晶効果:攻撃対象の体力・マナを吸出、結晶化させて表面に流出させる。結晶化させた部位を攻撃・破壊した場合、吸出した数値分のダメージを与える。
装備者の体力かMPを消費する、または月光を受ける事で武器の攻撃性能・クリティカル発生率を急上昇させる。
クリティカル攻撃を当てる事で武器の合体ゲージが蓄積されていき、ゲージがMAXとなる事で『合体状態:
必要ステータス
【筋力100】【技量120】【器用120】
【ヴォーパル魂250】【歴戦値500】
武器種:対刃剣
対となる刃の名は金皇照、昏冥と深海の霊気を水晶に宿した
此の武器を装備したプレイヤーよりレベルの高い相手と戦闘する場合、クリティカル攻撃に成功する度に使用者に『
冥帝効果:自身に蓄積されたカウンターを1つ消費する事で、此の武器から斬撃を発生・飛翔させる事が出来る。此の時発生した斬撃はヒットした物体の肉体・物質硬度を無視し、ダメージ計算を行う。
此の武器を装備したプレイヤーは、体力かMPを消費する事により、冥帝輝の武器形状を変化させる事が出来る。
クリティカル攻撃を当てる事で武器の合体ゲージが蓄積されていき、ゲージがMAXとなる事で『合体状態:
必要ステータス
【筋力100】【技量120】【器用120】
【ヴォーパル魂250】【歴戦値500】
武器種:双節棍
致命兎の魔法が込められた、二対一体の青の
此の武器を装備したプレイヤーよりレベルの高い相手と戦闘する場合、対象の熱とマナを吸収・蓄積する。また吸収・蓄積した熱とマナを、自身か武器へ付与する。
自身に付与:攻撃速度・筋力の強化、及びMP・スタミナの急速回復。
武器に付与:武器耐久値の回復・クリティカル発生率強化、及び鋒より衝撃波を飛来させる事が出来る。
クリティカル攻撃を当てる事で武器の連接ゲージが蓄積されていき、ゲージがMAXとなる事で『連接状態:
必要ステータス
【スタミナ150】【筋力80】【技量100】
【ヴォーパル魂300】【歴戦値450】
武器種:ショートメイス
全てを呑み込む闇、其れすらも喰らう月を宿した豪なる鐵塊にして、不動なる月。致命兎の魔法が込められた此の武器は、真たる姿を夜天覆う暗空の先に示す。
此の武器によってクリティカル攻撃を当てた時、周囲のマナ及び物質を武器の表面に付着させる。
此の武器に付着したマナ・物質を消費する事で、王撃ゲージを追加する(ショートメイス時は最大200%、巨大メイス時は最大300%)。王撃ゲージは一定値を消費する事により、以下の能力から1つを選択・其の効果を此の武器に付与する。
・30%:クリティカル発生率上昇効果
・50%:装甲貫通効果
・80%:装甲破壊効果
・100%:耐久値急速回復効果
・200%:武器種を『両手武器【
・300%:専用スキル【
必要ステータス (ショートメイス時)
【スタミナ100】【筋力80】【技量70】
【ヴォーパル魂300】【歴戦値300】
必要ステータス(巨大メイス時)
【スタミナ160】【筋力160】【技量130】
【ヴォーパル魂300】【歴戦値300】
とうとうヴォーパル魂を必要ステータスに要求してきた兎月達。真化の素材に使ったモンスターの素材が良かったのか、積み重ねてきた戦いの質が良かったのかは解らないものの、此の武器達に見合うだけの開拓者と成れよという、ヴァイスアッシュからの隠されたメッセージが込められている気がする。
サンラクの武器達は各々でエネミーに対するデバフや装備者に対するバフを行い、自分の武器はゲージが一定値になれば両手武器へ武器種変更するという、中々面白い能力を──────
…………バフ効果に両手武器?
真化した武器達、そして問題発生