VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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武器に書かれた事




毒を喰らあば一片残さず

リュカオーンの刻傷(こくしょう)

 

リュカオーンの愛呪(あいじゅ)

 

リュカオーンの呪い(マーキング)より派生した此等は能力に多少の差異は有れども、共通して『あらゆるバフとデバフを弾く』という能力を宿している。

 

「「いや、駄目じゃん」」

 

武器に内蔵された能力を一通り見た後、ペッパーとサンラクが同時に呟いた。敵にデバフ・自身にバフを行う対刃剣、武器と己にバフを行う双節棍、武器種を両手武器に変えるショートメイスは、何れも此れも強力なのだが其の身に呪い受けている二人では、其の力を十全には活かせない。

 

だが、此の状況でペッパーが思い出したのは、此の武器達の力を十全にする為の『手段』であり、そして『其れ』を成す為にヴァイスアッシュが働き掛けてくれていた事。

 

「あ…………!先生、もしかして此の武器って!」

「応よ。ソイツ等ァは『無尽のゴルドゥニーネ』から採れる()を用いる事で真価を発揮出来るよう、そしてクターニッドの鎧を使わずとも力を出せるように、そう『作った』んだよぅ」

 

無尽のゴルドゥニーネ。蛇のユニークモンスターであり、シャングリラ・フロンティアに根付く蛇型モンスター達の始祖(はじまり)たる存在。そしてペッパーがコンビを組む、ヴォーパルバニーのアイトゥイルの友を死に追いやった仇敵(・・)で、ラビッツに今尚も眷属や分け身を放ち、侵攻を続ける存在でもある。

 

「御頭」

「アイトゥイル。気持ちは解るがァ、お前にゃあまだ『早ぇ』。少なくともヤツが放った眷属共(れんちゅう)を叩く、防人達の援護に行きな」

「ッ…………解ったのさ」

 

やはり自らの手で仇を取りたいと、彼女の握る拳には力が籠る。其れを見たペッパーはアイトゥイルの視線に合わせるように、自ら片膝を付いて身を屈めながらに言った。

 

「アイトゥイル。お前の気持ちは俺が持っていく、無尽のゴルドゥニーネにお前の想いも、思いっきり叩き付けてやる」

 

ポン……と頭に手を乗せ優しく撫でれば、アイトゥイルの表情から強張りが綻んで。代わりにノワの視線が自分の背中を刺してきたので、同じように撫でれば甘えた表情で『クゥン♪』と鳴き。

 

そんなペッパーとアイトゥイル、ノワのやり取りを見ていたヴァイスアッシュが、掌サイズのアイテムを徐に机の上へと置いた。其の形状は『銃』では有るが『殺傷性』の無い形をしており、謂わば信号を送る為の『フレアガン』である。

 

「兄貴、コイツは?」

「おうよ、こいつぁなぁ……『BC-ビーコン』ってんだ。おめぇさん等、何度か聞いたことがあるんじゃあねぇかい?ソイツはぁ──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バッ」

「バハムート!?」

 

ヴァイスアッシュが放った、たった一言。だが其の一言で、ペッパーの脳内では此迄得てきた情報と考察が繋がり、点と点が骨組みを成して設定へと形を変えた。

 

無果落耀(むからくよう)古城骸(こじょうがい)・其の地下研究室にて科学者が遺した映像と台詞、消える前に残したセツナの言葉、そしてクターニッドにヴァイスアッシュの発言とBC-ビーコン。

 

其れ等によって此の瞬間、バハムート達は『モンスター』では無く、何かしらの『科学』である事が確定し。そして其の科学も『宇宙船』である可能性が、現実味を帯びたのだ。

 

そうなるとジズ・リヴァイアサン・ベヒーモスが其の三機の宇宙船であり、此のBC-ビーコンは其の三機の『何れか』、或いは『全て』を呼ぶ為に必要な『超重要アイテム』となる。

 

「だが、ソイツは『使えば良い』ってモンでもねぇ。今の御時世じゃあよぅ、どんだけ叫んだって聞こえやしねぇからなァ。ソイツを使う為の座標(・・)を、おめぇさん等の足で見付けなきゃあならねぇ」

「座標………ですか?」

俺等(オイラ)ァは敢えて(・・・)教えねぇ。其処に近付けば、ビーコンが自ずとおめぇさん等に教えてくれるだろう……」

 

つまり何処に在るかは知っているが、開拓者ならば世界を自らの力を以て拓き、バハムートの呼び出し位置を探し、そして見付け出せと言いたいのだろう。

 

「さて…………ペッパー、サンラクよぅ」とヴァイスアッシュが二人を見つめ、そして言った。

 

「無尽のゴルドゥニーネの毒を採らせるって約束を、キッチリ果たすとしよう。一週間後、ラビッツの地下に在る『防衛線の押し上げ』を行う………其処におめぇさん等を参加させてやる」

 

「とは言っても」とヴァイスアッシュはエムルにアイトゥイルを見ながら、言葉を紡いでいく。

 

「ゴルドゥニーネの毒は、生半可な(ブツ)じゃあねェ………。仮に『イーヴェル』より下の奴等が毒を食らったならァ、其の身を毒が一気に蝕み一堪りもありゃあしねぇ。だからこそぉ、防衛線に居るヴォーパルバニー達はァ(みぃんな)『死兵』を承知して、暗い穴ん中で戦ってるんだよぅ」

 

ヴァイスアッシュ曰く、ゴルドゥニーネの(呪い)は自分の息子や娘の中でも、エー()ドワードからイー()ヴェルまでのヴォーパルバニーが、辛うじて耐えきれる劇物で有ると共に、ゴルドゥニーネの特性上『分け身』も呪いを刻めるのだとか。

 

そして其の呪いは更に厄介な事に、他のユニークモンスターの持つ呪いと異なり、ゴルドゥニーネの毒は他の生物に『感染』するという能力が有り、呪いを振り撒いた分け身を討伐しない限りは、感染したヴォーパルバニー達はラビッツに未曾有の被害をもたらす為に、帰る事が出来なくなる。

 

故に呪いに掛かった彼等彼女等(ヴォーパルバニー)達は、ラビッツに被害を出させない為に地下に在る『ゴルドゥニーネが掘ったトンネル』の中で死兵と成り、分け身が差し向けた眷属と戦い、軈て朽ちていくのだと。

 

「作戦内容や詳しい事は、執務室に居る『エードワード』に聞きなぁ。彼奴は防衛線押し上げの陣頭指揮を執っている」

 

そう言ってヴァイスアッシュは去って行く。ペッパーとサンラクは作戦内容を聞くべく、パートナー達と共にエードワードの元へと向かうのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘗てSF-Zooのラビッツ再訪問の答えを受け取るべく訪れた、国の宰相が運営を担う執務室。ドアを数回ノックして入室すれば、灰色の毛並みを持つエムルとアイトゥイルの兄にして、ヴァイスアッシュファミリーの長男たるエードワードが居た。

 

「ペッパー殿にサンラク殿。其の様子では、父さんから話を聞いたようですね」

「あぁ。兄貴………此処ではヴァイスアッシュと呼ぶが、一週間後に行われる防衛線押し上げに、俺とペッパーも加わる事に成った。俺達も末席とはいえ、此の国の『名誉国民』として認められたからな」

「成ればこそ国民としての義務を果たし、先生の恩に報いたいと考えています」

「確かにリュカオーンの傷と寵愛を受けた、貴殿方二人ならばゴルドゥニーネの分け身が放つ毒にも対抗出来るでしょう」

 

今回の目的は勇魚(イサナ)兎月(トゲツ)金皇照(こんおうしょう)】の皇晶効果(おうしょうこうか)による成分結晶化と、象牙(ゾウゲ)兎月(トツキ)呑黒(どんこく)】の物質付着能力を用いて『無尽の毒』を採取する事だ。

 

其れを用いれば、サンラクとペッパーは一時的だがリュカオーンの呪いを無効化し、武器・防具を装備する事が出来るようになる。

 

「地下トンネルの制圧は、ラビッツにとって重要事項です。はて、地図を何処に置いたか……此れですね」

 

そう言って筒状に巻かれ、立て掛けられた半羊紙をエードワードが取り、テーブルに拡げて二人と二羽と一匹に見せる。

 

其の地図には『真っ直ぐラビッツと反対側を繋ぐ太い一直線のトンネルだけで無く、ラビッツ側の側壁面から根っこのように細いトンネルが幾つも伸びており』。逆側の何処(・・)へ繋がっているかは描かれていない物であり、此の時点でゴルドゥニーネが掘ったトンネルが『かなり厄介な状態に在る』事が判った。

 

「嘗てゴルドゥニーネ本体が掘り起こした中央トンネル、我々が安全を確保したのはトンネルの三割程度であり……此処から先は未確認。もしくは封鎖できていない横穴(・・)がある可能性も有る。そして更に其の先が、眷属と我々の戦場の最前線となっています」

 

指先で示し、円を囲むようになぞりながら、エードワードは此方が解るよう説明していく。

 

「エードワード、一つ質問良いか?」

「何でしょう」

「此の細い横穴、別の場所を掘削してゴルドゥニーネが奇襲噛ましてくるって事は有るのか?」

「既存の横穴を使用された場合はそうですが、新しい横穴を掘っていれば『音』で気付けます。………と言っても人間の聴力で可能なのかは、私には判り兼ねますがね……」

 

感覚強化スキルか、もしくはアクティブソナーで探知するしか方法が無い以上、突発的な奇襲を受ける可能性も視野に入れて置く必要が有る………という事だろう。そしてエードワードは二人に対し、やるべき課題を述べたのだ。

 

「ゴルドゥニーネの分け身…………抜け殻(・・・)がいるのはトンネルの此処辺り。もし仮に貴方達が『分け身に挑む』というのならば、安全に出発可能な地点だとしても、其処から雪崩れ込むゴルドゥニーネの眷属を潜り抜け。そして駆け抜ける必要があります…………『貴殿方に出来ますか』?」

 

RTAや戦闘回数縛りをしていれば、エンカウントを避けるルートを自ずとゲーマーは探す生き物だ。電撃速攻戦ならば迫る兵を飛び越えて、一気に本丸を叩くのが定石中の定石。そして人生とは違い『ゲームであるからこそ』、何度でも挑戦出来る。

 

「出来なくてもやる。出来るまでやる。何時かは出来る。其れが俺達開拓者(ゲーマー)って奴さ」

「エードワードさん。戦術的勝利を成せるように、俺とサンラクでゴルドゥニーネの分け身を倒して見せます」

 

ダブルロールプレイで答えを示す。さて、どうなるか。

 

「父さんが見込んだだけ有る………手銭を切るたぁ豪勢な人達だ。貴殿方の活躍、期待しています」

 

何故か一瞬、エードワードの口調が『素』に成った気がしたのは、自分の気のせいか?其れとも単なる聞き間違いか?

 

だが此れで、無尽のゴルドゥニーネの分け身が放つ毒を採取する為の戦いに、ペッパーとサンラクは参加する事が決まった。

 

そして其の翌日には、黒狼(ヴォルフシュバルツ)との談合が待っている………。

 

 

 

 

 






蛇との決戦


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