衝撃の初手より
二つの狼による談合、其れはペッパーが仕掛けた聖盾輝士団と慈愛の聖女 イリステラの参戦という衝撃展開によって、予想だにしない開幕と成った。
「さて、自己紹介は省かせて貰う………。我々は連盟内容について今宵、今一度確認する予定であったが、其の前に解決しなければならない事案が有る」
サイガ-100の発言と同時に、此の場に居る殆どのプレイヤーの視線がクラン:
PKによって装備を失った事で貧相な格好となった
「ふぅーん、そこからか……まぁいいや、じゃあ単刀直入に言うけど『八割』。……は、流石に冗談だよ100ちゃん。此処は『五割』で手を打とう」
「黒狼全員での対処も加味しろ『二割』だ」
「いーや。最大譲歩しても『四割』が限界だね」
京極がPKして奪い取った装備を八割で売却しようとして五割に引き下げたペンシルゴン。其れに対して黒狼のクランメンバー全員で旅狼を潰すから二割にしろとサイガ-100は言い、ペンシルゴンは四割より下は認めないという、業界用語か要点だけの会話をしている。
「い、一体何の話をしてるんだよ……」
「おや解らないのかい? 君らのリーダーは『僕の装備』を幾らで買い取るのか、家のサブリーダー兼交渉役との『値下げ交渉』に臨んでるんだよ?」
「なっ……何で『俺の装備』に、金払わないといけないんだ普通に返せよ!」
加害者が被害者に殴りたいニッコリ笑顔で教えるという、ある種の畜生極まった状況にフリーズしていた被害者が、年相応に高い声で怒鳴る。其れを観ていたサイガ-100は頭を抱え、ペンシルゴンは凄く悪い笑みを浮かべている。返して欲しいならば割増価格で支払えと言われている理由が理解出来ていないのか、目の前に聖女と呼ばれるNPCが居るにも関わらず声を上げられたのは、若さ故の無知か蛮勇かはペッパーには解らない。
だが勘違いしてはいけないが、今は亡きPKクラン:阿修羅会が存在していたように、シャングリラ・フロンティアでは『PK行為自体』は容認されている。罰則が厳しくなりPKerがキルされたならば、全財産没収とカルマ値に応じた罰金支払いが発生するが、京極含めてPKerは其れを『承知の上』で行っているのだ。インベントリアが在る京極にとって、武器・装備の全没収は問題の範疇にも入らないのだろうが。
「なんでって、君の『アセンションブレード改六』含めた防具やらの所有権は
「元々俺のだろうが!」
「やれやれ………良いかいボクゥ? このゲームではPKは別に『違法行為』では無いんだ。ゲームシステム側が『プレイスタイル』の一つとして設定している。つまり僕は君達から装備を巻き上げたけど、別に其れは
プレイヤーからの粘着にクラン同士のいざこざ、そしてPKerとの戦いに敗北した結果であり、あのプレイヤーは至極当然の結末を迎えたに過ぎない。
巻き上げた装備を
「………聞いてる此方が殴りたくなったわ」
「京ティメット、奴は中々の逸材のようだ。しかぁし、奴は四天王の中でも最弱よぉ」
「えー、四天王じゃなくて魔王ポジが良いんだけど私ー」
「じゃあ僕、四天王の一人だけど最終的に光属性になる系のキャラで」
「そういうキャラって結構創作じゃ見かけるけど、普通にダブルクロスなコウモリで、よくもまぁ堂々といられるよなーって思わない?」
「其れに関してはオイカッツォに同意する。敵になるのは良いが、割り切ってくれた方が助かるみたいな」
「葛藤し続けてもウザいんだよねぇ、そーゆーの」
「知ってるか?ストーリー上ではウジウジ悩むくせ、戦闘中は敵の時のボイスそのまま流用してるせいで、嘗ての味方をノリノリで虐殺するキャラが出るゲームがあるんだが」
「酷くない?システム的に大丈夫なのソレ?」
「どう考えてもクソゲーじゃん」
敵の懐、しかも戦場の真ん中で四面楚歌ながら語らう光景は、黒狼からすれば『異常』な光景に見えなくも無いだろう。
「サイガさん!何でコイツ等の言う通りにしなくちゃいけないんですかぁ!?」
どうやら被害者の方が我慢出来ず、サイガ-100に助けを求めた様子だ。だが忘れてはならないのが、彼女自身が最初から『買取前提』で話を進めているという点であり、代償無しに手元に戻る事は有り得ないという所である。そしてサンラクは京極が奪い取った装備の値段が気になった様で、彼女に合計金額を問い掛ける。
「因みに巻き上げた装備達って御幾ら?」
「鑑定持ちNPCに聞いたら、他の人のも全部合わせて『3000万マーニ』だったよ。あ、悪いけど『一括払い』で御願いね?」
「「鬼かよ」」
想像以上に京極がヤバい事をしたと確信してペッパーは頭を抱え、四割増しでも4200万を要求してきた彼女にサンラク・オイカッツォがツッコミを入れた。
「ッ………!」
「まぁ、見た感じ『ユニーク武器』って訳でもなさそうだし?無くした分はスパッと諦めて、また
被害者が歯軋り睨み付けるが、当の京極本人は笑っている。人間という生物は普通に罵倒されれば少なからず腹が立つ、正論は時に人を容易く傷付ける凶器なんて言われるが、まさに其れだ。
おそらく何かしら言われたとしても、サンラクが撮影したスクショを叩き付け、家のクランリーダーとメンバーが黒狼に襲われた等と理由を付ける算段だろう。多分ペンシルゴンならば、そう指示しているに違いない。
「まぁまぁ京極ちゃん、言ってる事は間違いじゃなけど其処等辺にしてあげなさい」
「ふふふ……サブリーダーがそう言うなら、僕とて鬼じゃない。ちょっとくらいは譲歩するさ………『分割払い』でもいいよ」
「「「譲歩するの其処かよ」」」
サンラク・オイカッツォ・ペッパーのスリーゲーマー全員のシンクロツッコミだった。
最早選べる手段は一朝一夕では揃えられない高い代金を支払って装備を買い戻すか、諦めて泣き寝入りするかの二択のみ。そんな選択肢を強いる弱小クランに、黒狼の強硬派が纏う雰囲気は一段と負の感情に染まるが、サンラク・オイカッツォ・ペンシルゴン・京極は関係無しと言わんばかりの、何処吹く風状態である。
そして必然的に其のヘイトは、彼等彼女等を従えて、外道組に頭を抱えるペッパー唯一人に向くのだが、其れをやればペンシルゴンの放つ『ドス黒いオーラ』に当てられて、引っ込む以外の選択肢が存在しないし、ハッキリ言って『此れは酷い』の一文が頭に浮かんだのは、自分だけではないだろう。
ともあれ、京極が巻き上げた黒狼所属プレイヤーの装備云々は、京極の肩を道理が持った事で終結し、本題前の前哨戦は旅狼側が殆ど優勢勝ちという形に収まった。
さて次の議題……寧ろ此処からが本番と、次なる議題に入ろうとした其の時。黒狼館の正面玄関の扉が開かれ、純白の鎧を其の巨体に纏う、シャンフロ内ゲーム
「……其の……遅れて、ごめんなさい……」
「あ、レイ氏……こんばんわ」
とても気不味そうに挨拶をしたのだった………。
最大火力現着