VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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次なる議題、ペッパーが語る




狼談飛躍、実力者の言葉は重い

『5クラン連盟』。

 

其れは嘗て、ペンシルゴンがペッパーに打診する様に依頼し、旅狼(ヴォルフガング)黒狼(ヴォルフシュバルツ)・SF-Zoo・ライブラリ・ウェポニアの五つのクランの間で結ばれていた物である。主な内容としては『四つのクランが旅狼に対してサポートを行う対価として、旅狼は四クランにユニークモンスターの情報を渡したり、ユニーク武器の製作依頼を請け負う』事だった。

 

事実として旅狼は此迄、ウェポニアにはユニーク小鎚の生産、SF-Zooにはラビッツ再訪問に対する便宜を図り。ライブラリには墓守のウェザエモンの一式装備を見せ、黒狼にはゴルドゥニーネの情報でサイガ-0の援軍を要請したりと、一見『何も違反していない』だろう。

 

だが此の同盟は旅狼が他クランに相談せず、無断(・・)で夜襲のリュカオーン(影狼)と深淵のクターニッドを『討伐』し、あまつさえ其のリュカオーンに関しては『小さな分け身をテイムした』事で、完全に『契約違反』に等しい状態と成っていたのである。

 

「少なくとも我々黒狼は契約を遵守していた。であれば、当事者に聞くしかあるまい。何故(・・)、無断で事を進めたのか。其れを説明して貰おうか?」

 

此の一連の出来事に関しては事を行ったサンラクやサイガ-0もそうだが、一番(・・)の責任は彼等彼女等を率いた旅狼のクランリーダーたる『ペッパー』に在る。

 

サイガ-100の研ぎ澄まされた業物の剣の鋒に似た視線が突き刺さり、其れに乗じる形で黒狼の強硬派も視線を向けるが、ペンシルゴンがドス黒い威嚇の視線を向ける形で封じ込めた(黙らせた)

 

「以前サイガ-0さんの援軍要請時に話しましたが、サンラクから明々後日までにフィフティシアへ到着したいという依頼を、クランメンバーとサイガ-0さんと共に成し遂げようとしてました」

 

サイガ-0の方に視線を向ければ、コクリと頷いた最大火力(アタックホルダー)の姿が在る。ペッパーはサンラクにも視線を向け、何時の間にか頭装備を魚面に変えていた彼を見ながら『いや此の局面で何やってんの?』と思いつつも、話を続けた。

 

「サンラク曰く『其の日に旅狼へ紹介したいプレイヤーが居る』と言われ、協力した俺達はサイガ-0さんと共に無果落耀(むからくよう)古城骸(こじょうがい)を進んでいました。其の途中でサイガ-0さんからは『フィフティシアに向かう近道が在る』と教わり、案内を依頼したのです」

 

此れは事実であり、全員一致で願い出たので問題では無い。此処からが本当に厄介(・・)なのだ。

 

「ただ其の近道が『とても複雑で』、サイガ-0さんの案内とはいえども、かなりの時間が掛かり。そして其の道中…………俺達は『夜襲のリュカオーン』に遭遇しました。当時俺達のパーティーにはNPCが三人参加しており、彼等彼女等を逃がす算段も有りましたが、リュカオーンは此方のパーティーを全滅させる気で襲い掛かりました。此れは逃げられない…………そう悟った俺達は、リュカオーンと戦う事を決めたのです」

 

実際パーティーから脱落者が出そうな危ない場面も在ったし、サンラクが閃いた紅鳥扇風機に加えて、レーザーカジキと秋津茜(アキツアカネ)の合体攻撃による、物理的な雲排除の荒業使用。

 

更にはグランシャリオでのヘイトコントロールに、サイガ-0の切札たるアルマゲドンを用いたりと、あの時あの瞬間に各々が成すべき事を成した事で、其の結果に至った訳で在り。

 

「戦闘の結果としましては、クラン:旅狼+サイガ-0さんでリュカオーン(分身)を約二時間半の激闘の末に、旅狼(此方)が全力で削って、最終的にはサイガ-0さんのアルマゲドンで倒しました」

 

一部脚色は加えたが、ほぼ事実から成るリュカオーンとの激闘を語り終えたペッパー。ただ其れで納得出来るなら、話がトントン拍子で進む訳も無く。

 

「リュカオーンが簡単に倒せるワケねぇだろうが!一体どんなチート(・・・)を使ったのか白状しやがれや!」

 

やはりと言うか、此方の証言に対して黒狼の団員が反論してきたのだ。見た所では中量級の剣士であり、其の男性プレイヤーはよりにもよって、ペッパーの踏んではいけない(・・・・・・・・)────所謂『地雷スイッチ』を踏み抜いたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チート。

 

其れは古今東西ありとあらゆるゲームに置いて『不正行為』に該当するものであり、グリッチや裏コードと並ぶゲーム内のルールの外側(・・)、ゲームの埒外に存在している『力』によって成された物と、ペッパー()本人は認識している。

 

であれば。自分達は実力(・・)で裏ボスを倒した上で、具体的に掛かった時間も含めて説明したにも関わらず、確たる証拠も無い中で『チート使ったんだろ?』等と言われたならば、彼の其の人間に対する感情は一気に冷める(・・・・・・)事をペンシルゴンは知っている。

 

「成程…………チート、ですか。成程成程……………では其のチートをしたと言う『確たる証拠』は在るんですか?此のゲーム、チートやグリッチを使った時点で『アカウント停止処分が下される』のが、利用規約に掛かれている事を御存知(・・・)無いので?」

 

先ずシャングリラ・フロンティアというゲームは、プレイヤーに対して『グリッチやチートの其の一切(・・)を認めていない』。仮に其れをやろう物なら、サーバー側からの逆探知&即刻アカウント停止処分が下され、ゲームから『永久追放』される結末が待っている。

 

「仮にアカウントが停止されたなら俺達旅狼全員は、もう此の世界には『存在』してません。運営側からの通告も無ければ、制裁も下されていない………。ウェザエモンさんも、リュカオーンも、そしてクターニッドさんも、俺達旅狼は『己等の実力を以て攻略してきました』。俺達への『侮辱』は。戦ってくれた彼等を、そして彼女等を『侮辱する事』と同義です」

 

静かに立ち上がり、其の者の前にレーアドライヴ・アクセラレートで瞬間移動。男性プレイヤーが驚愕でバランスを崩して尻餅を付いた刹那に、底冷えした両眼で見詰め。怒気を孕んだ言葉を以て、彼は其のプレイヤーに言ったのである。

 

「ゲームを『本気で楽しめない人間』が、ゲームを『本気で楽しんでいる人間』を馬鹿にして良い理由には成らない。じゃあ──────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「な、何を………」

「──────答えも出ません、か………。楽しんでいる人間なら、直ぐに答えられる筈なのに。残念だ……非常に残念で他ならない」

 

そう言ってペッパーは其のプレイヤーを、更には黒狼の面々を見る。其のプレイヤー達の中には答えが見付からずに首を傾げる者と、そうでない者の二極化が起きており、彼は席に戻りつつ話を続けた。

 

「俺はリュカオーンと戦い、右手に呪いを受けた。武器を両手に装備出来ない中で、自分に出来る事を探し続けた。貴方は『オールマイティー』を求めたのでしょうが、少なくともユニークモンスターやレイド相手に役割遂行をするなら、ある程度『ステータスを割り切る事』も重要だと思いますけどね」

 

彼は言葉を紡ぎ、そして座る前にこう言って話を〆た。

 

「俺自身、大概の罵倒には慣れています。けれど、軽々しくチートやグリッチって言う事は止めた方が良いですね。其の発言、同じ様にゲームをプレイしている人全員を馬鹿にしてる事と同じ(・・)ですから」

 

着席、そしてペッパーは一息付く。普段温厚で大抵は笑って許したり、答えられる事に関しては丁寧に対応する彼が、此処まで静かな怒りを見せた事にサイガ-100にサイガ-0、そして黒狼と聖盾輝士団に旅狼の面々は目の当たりにする事となった。

 

「こっわ………初めて見たわ、ペッパーのキレる所」

「俺もだ、普通に怖いわぁ……」

「普段温厚な人を怒らせちゃいけない理由って、まさに此れって感じだね」

「フフフ……さっすが私の(・・)あーくん。効果適面、予想以上だよ」

 

旅狼の面々がやんややんやと言う中、ペッパーがペンシルゴンを見れば、ニッコリと笑顔に成っている。彼女からのメールには『談合時に必ずチートやら、ヤジを飛ばしてくる連中が居る。其れを誠実温厚な、あーくんの静かなキレと正論を叩き付けて黙らせて』と書かれており、彼は其の通りに事を実行したに過ぎない。

 

「……ウチのメンバーが、失礼を言ってすまない」

「………いえいえ、大丈夫ですから」

 

サイガ-100の謝罪に対し、ペッパーは普段通りに受け答えを行う。ただ先程の怒り具合を目の当たりにした黒狼メンバーは縮こまっており、視線を向ければ更に小さくなったのを確認した。

 

「まぁ………誰にでも『隠したい秘密』は有りますが、連盟を結ぶ間柄なので教えます。俺は単騎で『リュカオーンの足を一本、一撃で斬り飛ばせる技能』を習得しています。流石にサイガ-0さんの『アルマゲドン』や、他のメンバーが所有している『切札』の()()()()()()()()()()()()

 

其の一言に黒狼・旅狼・聖盾輝士団の全てのプレイヤーに衝撃が走った。黒狼と聖盾輝士団はクランリーダーを始めとして、旅狼構成員全員が『戦略を覆し得る大火力を保持している』事に驚愕し、此の場に居る旅狼メンバー全員は『ヤバい事を言いやがった!?』と驚愕して。

 

「リュカオーンを倒したのは俺とサンラク、オイカッツォに京極(キョウアルティメット)。ペンシルゴンに秋津茜、サイガ-0さんとレーザーカジキ、そしてNPC三人の計十一人で倒しました。全員が持てる力を以て戦い、全員生存で成し遂げた勝利でした……」

 

思い出せば本当に濃密で濃厚な死の気配漂う激闘であり、何か一つでも噛み合わなければ全滅していたのは間違い無かった。

 

「リュカオーンの討伐とユニークシナリオの進行については、黒狼に連絡する予定でした。ですが此の事をサイガ-0さんに相談した所、サイガ-100さんに伝えれば振り回される可能性が高いので、一週間程黙って置いて下さいと言われました」

 

サイガ-100がサイガ-0を睨み付けるが、(彼女)は一切怯む様子は無く。そして彼女を良く知る黒狼のメンバー達は、彼女に見えない所でウンウンと頷いている。

 

「クターニッドさんに関しては前提となる『ユニークシナリオ』をクリアして、ユニークシナリオEXを出現させてから『5クラン連盟の連合軍で攻略する』つもりでいたのですが、まさかの『直通運転』で。海底都市という『物理的閉鎖空間内』に閉じ込められ、伝書鳥(メールバード)も送れませんでした。────申し訳有りません」

 

連合軍設立攻略に関してはペッパーの嘘偽りの無い考えであり、連盟を結んだクランへ約束を果たそうとして。其れを誰かに甘過ぎるやら言われそうだが、彼はそうしたいと自分の意志を貫く覚悟が有った。

 

「つまりはペッパー君……………君が言いたいのは、其処に居る愚妹(サイガ-0)を引き連れ、リュカオーンとクターニッドを撃破したのは、全てが『偶然』だと?」

「───『偶然』が積み重なったのかは、俺にも解りません。其れでもこうして、俺達が此処居るという『必然』。其れは決して変わらない『真実』だと、俺は思います」

「………………そうか。良いだろう…………」

 

今此処に立っている事を伝えきり、ペッパーはサイガ-100を見る。対するサイガ-100は一拍置いて、本題を口にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我々クラン:黒狼は連盟内容に基づき、クラン:旅狼が持つ『ユニークモンスターの情報の全て』と、旅狼がテイムした『リュカオーンの分け身』及び『クランリーダー・ペッパーの身柄引き渡し』を要求する」

「絶対ヤダ☆」

 

そしてペンシルゴンは真っ向から、サイガ-100の要求に唾を吐き付け、叩き返したのであった。

 

 

 

 

 

 






当然の既決


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